月別アーカイブ: 2014年5月

リニア新幹線整備の理由(名古屋-大阪間:混み具合編)

リニア新幹線の現行計画では,名古屋-大阪間を奈良経由で結ぶことになっており,結構大きな都市である京都をスルーすることになっている.リニア新幹線と既存の東海道新幹線の分担予想は,東京−大阪間全体で概ね半分程度とされているが,はて,ちょと待てよと思う.
この予測の内訳や計算方法等詳細については公表されていないが,例えばこういうことを前提にしてないだろうか?

  1. 京都発着の客は乗り換えが面倒なので,横浜や東京(品川)に行く場合も東海道新幹線を使い続ける
  2. 横浜発着の客は新横浜から東海道新幹線を使って西にゆく
  3. 山陽新幹線方面から来る客で名古屋までの客は東海道新幹線を必ず使う

1.について考えてみると…
S:京都→(のぞみ119分)→新横浜→(JR13分)→横浜:途中のロス込みで139分
L:京都→(のぞみ36分)→名古屋→(リニア40分)→品川→(JR16分):ロス込みで122分(17分早い)
S:京都→(のぞみ119分)→品川:134分
L:京都→(のぞみ36分)→名古屋→(リニア40分)→品川:ロス込みで91分(43分早い)
ということで,急ぐ人は横浜ですらリニア経由の方が早いので,大半の京都発着の人はリニアに乗り換えてしまいそう.そうすると,リニアの座席は新大阪-名古屋間で空席になりやすいということか?

次は2.について考えてみよう…
S:横浜→(JR11分)→新横浜→(のぞみ82分)→名古屋:途中のロス込みで107分
L:横浜→(JR16分)→品川→(リニア40分)→名古屋:途中のロス込みで71分(36分早い)
ということで,新横浜の次の駅の名古屋ですら東海道新幹線には乗りそうもない.

さらに3.については…
S:(新大阪以遠)→(のぞみ52分)→名古屋:52分
L:(新大阪以遠)→(リニア25分)→名古屋:途中のロス込みで40分(12分早い)
ということで,比較的近距離のはずが,リニアの方が早い.

時間だけで言えば,いずれもリニアの勝利.ただ,乗換1回あたり時間換算30分前後のロスと同程度という話もあるので,3.については新幹線乗り通しが標準かなぁ.大阪発着については,もちろんリニア一択.
そうすると見えてくるのは,全線開業時には「予想以上にリニア大人気!特に東京-名古屋間は席を確保しにくいPlatinumチケット!」という風景だが,その陰で,リニアの新大阪-名古屋間は割と空いているという感じだろうか? その空きは名古屋-新大阪間のリニア区間客で埋まるからいいんだろうか.
これを京都経由にするとどう変化するだろうか.京都から名古屋でリニアに乗り換える客の分,新大阪-名古屋間の空席は少なくなる一方で,名古屋-新大阪間の客の分が減る?…ちゃんと数字拾って計算しないと難しいなぁ.
まぁ,そんな難しいこと考えなくても,現状の東海道新幹線はピーク時でも無い限り毎時片道9本でリニアの片道本数と同じ.座席は普通車5列がリニアで4列になるが,どうせ「B席」はピーク時間帯を除いて空いていることが多いので,京都経由でも名古屋-大阪間は大半の時間帯は問題なし(現状の東海道新幹線と大差なし).
リニアの品川-名古屋間については,京都を通ろうが奈良を通ろうがPlatinumチケットということになるだろうか.

津波を避けて引っ越しした話

最近,巨大津波をおそれて,静岡県などで内陸に引っ越す人が増えているらしいが,それを聞いて思いだした話がある.うちの実家がそうだった.実家は海沿いの町にある.今は海は見えない位置に引っ越したが,かつては海まで道を挟んで5-6m(5-6kmではありません)という位置にあった.海-道-家-ミカン山.外洋に面しているわけではないので,干満はあるが波はほとんどなく,普段は至って平穏.海というよりは川の河口に実態は近い.
昭和の南海地震の際に津波が家の中まで入ってきて,畳が浮き始めたので,婆さんが小学校に上がる前の父を抱いて裏山に駆け上がったらしい.その後,30年くらい経ってから孫が生まれたのを機に内陸に引っ越し.どうして周囲に親戚の少ない,学校の校区も違う場所に来たんだろうと思っていたが,最近の公表されいる浸水予想図を見て納得した.
引っ越し元はもちろん浸水実績有りだが,現実家の位置は浸水予想図では浸水高0m.どうやら,まぁ,そういうことなのかなと.なお,昔の引っ越し前の家は,今もミカンの貯蔵小屋として使用されている.
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写真は実家から徒歩10分ほどの所.ここは左から順に国道-線路-市街地になっているが,数メートルの浸水が予想されており,国道については付け替えが計画されている.付け替え後の国道は現実家のほぼ真横を通るようである.線路(JR)についても,津波に関する訓練はここで行われたらしい.

青函トンネル対応の新幹線電車考

北海道までもう間もなく新幹線が走ろうとしているが,皆様ご存じのとおり,困った問題がまだ解決されていない.青函トンネルでの運転速度の問題だ.
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青函トンネルそのものは新幹線規格で設計されており,時速260キロ,いや昨今の強力なモーターなら,騒音のことを気にしなくても良いので,(誰も話題にしようとしないが)もっと高速で運転できる(はず).おそらく架線等の設備を対応させれば時速320キロ運転もできるんじゃないだろうか.
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ところが実際の運転速度は時速140キロにまで抑えるという.反対側の線路を走る貨物列車が風圧で転倒しないようにするためらしい.本来の高速運転をするために,トンネルをもう一本掘ろうか,などという話さえある....がしかし,これは今になって判明した話ではなく,東海道新幹線の開業前からある程度わかっていた話である.
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東海道新幹線の建設時には(建設の遂行のための方便という話もあるが)貨物列車の運転が検討されていた.そのために,実際に風圧の影響が検討され,実験もされ,時速150キロくらいまでなら何とかなりそうだが,それ以上になるとヤバそう,解決は先送りね...となって,実際に貨物列車の運転そのものが先送りになると,問題解決も先送りになり今に至る,という感じである.要するに,50年以上前からわかっていた話.
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そんなわけで,(連続勾配もあるということもあり,)青函トンネルの新幹線の通過速度は青函トンネルを掘り始めた当初ですでに時速160キロ運転想定になっていたのではないかと思う(ちょっとうろ覚え).
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さて,風圧で車両が転倒する可能性が高まる理由は,日本の新幹線の線路規格に起因している.上下線路の間隔が欧州の高速鉄道線路よりも小さく,車両と車両の壁面の間隔が小さい.ドイツの高速新線などでは,貨物列車の運転を考慮して複線の線路間隔をわざわざ広げている区間もある.
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ということは,高速で運転したければ,すれ違う際の車両の間隔を広げればいいということになる.子どもの砂遊びではないので,今さらトンネルを大きくするわけにはいかないが…発想を変えると,トンネルを大きくするんじゃなくて,車体断面の小さな車両を走らせることは出来る.
フルサイズの5列の新幹線電車は幅3.35m,いっぽう秋田や山形に行くようなミニサイズの新幹線だと幅は2.95m,その差は0.4m.左右それぞれ0.2mずつ小さくなるので線路間隔を約0.2m拡げたのと同じ効果があるかもしれない.車両の断面積も15%ほど小さいので,押しのける空気の量もそれだけ少ない.
この差によるすれ違い時の影響の差は…残念ながら分野外で何とも…ではあるが,すれ違い速度向上には役立つ可能性はある.(まぁ下手の考え休むに似たり,の可能性もあり.この程度の検討はしていると思うが.)
#写真は,話の進行とは直接関係ありませんが,青函トンネルの写真です.上から順に,「木古内付近の在来線と新幹線の合流予定部分」「青函トンネル北海道側入り口」「青函トンネル内」「本州側出口」「本州側の在来線と新幹線の分離予定部分」「特急車内のトンネル説明」である.

鉄道後進国ニッポン(既に独仏に抜かれている編)

2011年現在,20万人以上の都市でTGVサービスの全くないフランスの都市は…オルレアンとクレルモンフェランの2都市.
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2011年現在,20万人以上の都市でICEサービスの全くないドイツの都市は…ケムニッツだけ.
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2011年現在,20万人以上の都市で新幹線サービスの全くない日本の都市は…
札幌,松山,大分,金沢,長崎,富山,和歌山,旭川,いわき,高松,高知,那覇,宮崎,函館,徳島,水戸,佐世保,松本,上越,佐賀,鳥取,つくば
…あと,まだ,あったっけ(ふぅ,疲れた)
まだあった,福井,津,四日市,いわき,奈良…
(大都市圏除く,近隣に新幹線駅がある場合除く)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(番外編+まとめ)

この意見の各項目を考えてみるシリーズの番外編.フルバージョンだけに書いてある内容である.

  • 番外編:リニアに「まちづくり」の将来をかけていいのか――“過大な期待による過大な投資”は地域経済を押しつぶす

旧タイプの新幹線でも,いろいろと期待するけど,リニアは超高性能新幹線なので,『「まちづくり」の将来をかける』のは普通の行動だろう.この千載一遇のチャンスを逃してなるものか,というのが普通の行動.もちろん,「過大な投資」というよりは「的外れな投資」は意味が無いが,千載一遇のチャンスを見す見す逃すなどあり得ない.

  • 新幹線開通後の地方経済をみると、「効果」だけではなく、「ストロー現象」の影響も慎重な検討が必要である

新幹線の無い地方を見てから言った方がいいですよ.新幹線があった方がマシ.無いともっと悲惨な状況になってますよ. そういう場所には,新幹線も高速道路も無くて,なかなか遊説に訪れる機会そのものが少ないかもしれませんけど.
「ストロー」については,新幹線に限らず,交通機関で結ばれると,結ばれた地域が相互に変化してゆきます.とある機能に着目すると肥え太るものもあり,別の機能はやせ細るものもあり,全体としては適材適所に機能が再編されてゆき,「選択と集中」状態になって効率が上がります.新幹線で結ばれた都市群システムに組み込まれて,特定の機能に特化してしまうけどみんなで賑やかにやってゆくのか,それとも,どことも結ばれること無く従前のまま細々と(多くの場合,先細りで)独りでやってゆくのか.どちらかなんですよ.
「リニア頼みじゃ無い策」で,なおかつ「リニア頼みに匹敵する策」って何かありますか? 具体的に!と言われると,小規模なものを除いてあんまり思いつかないでしょ?あれば,もうやってますよ.

  • まとめ:「多様な意見」は重要だが,多少調べてから意見を組み立てた方がいい項目が多そう. 

東北に行ってみた(BRT編)

既にご存じの方も多いが,気仙沼線では被害が大きく,復旧の見込みが立たないことから,使用できる路盤を道路転用し,バス専用道化して「BRT」として運行されている.
拠点の停留所は「駅」として整備されており,それ以外についても屋根付きの停留所になるなど,バス路線の設備としては比較的行き届いているようだ.
下の写真は志津川.元の駅ではなく仮設商店街併設になっている.
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こちらは歌津駅と一般道からバス専用道への出入り口.
[map] 歌津駅 [/map]

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元々の歌津駅はこのような状態である.
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いくつかのトンネルを抜けた後の専用区間北端.
[map lat=”38.736199″ lng=”141.530651″ zoom=”15″] [/map]
 
 
 
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ここから先は橋梁等破壊されている.
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IMG_5143(2012年12月現在)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(安全確保編)

この意見の各項目を考えてみるシリーズの5つ目である.フルバージョンはこちら.

  • 5つ目:運転手が乗車せず遠隔操縦で運行するなど、安全確保への大きな不安を“置き去り”にする建設になっている

すいません,これ見たとき,思わず笑ってしまいました.これじゃぁ,この指摘主は今走っている普通の新幹線にも乗れないなぁ,って.失礼,すいませんwww.こういうご懸念,数十年前の東海道新幹線の建設時にも某新聞がネガキャンしてましたよね.
じゃぁ,ちゃんと説明します.全ての交通機関が目視運転で安全確保されているかというと,そうではなくて,適切な保安装置があってはじめて安全確保できます.逆に適切な保安装置が無ければ,いくら運転士が乗っていても安全ではありません(例えば尼崎の列車事故).完全に目視確認だけで運転している鉄道は路面電車くらいなものです.
リニアの前に,普通の新幹線について書いておくと,新幹線の運転士の目視で確認できるのはせいぜい数百メートルだそうで,運転士が「危ない」って感じて即座にブレーキをかけても,200−300キロで走っている場合には絶対にそこまでには止まれないそうです(新幹線の運転免許を持っている方に聞いた話).2kmくらい走ってしまいますから,全く役に立ちません.
特に夜間や雨天時は顕著で,夜間に前照灯が照らせるのはせいぜい100−200メートル程度で,前を見ることについて言えばほとんど役に立たないようです.あれは列車の前か後ろかを識別するという役割が大きいようです.(新幹線の前照灯の正規式名称には「照」の字が入って無かったと思う.)
雨天時は雨粒が窓に当たって前方はほとんど何も見えないそうで,どこを走っているのかは,運転席の横の窓を見ながら風景で判断するそうです.そういうわけで,新幹線の運転士には前方注意義務が無いそうです(在来線の運転士には前方注意義務があるらしい).
じゃぁ,どうやって安全を確保しているかというと,線路に特殊な電流を流しておいて列車の存在を感知しておき,列車間隔が詰まってしまったり駅が近づいたりした場合には,列車の車載装置が自動的にブレーキをかけます.この自動ブレーキは非常ブレーキでは無くて,毎日毎列車駅が近づく毎に使われています.運転士が手動操作するのは列車のドアと乗客の列をぴったり合わせる微調整操作くらいで,停車動作については現時点で既にほとんど自動運転になっています.
倒木や崖崩れ等を検知する装置がついている箇所もあります.このへんは検知装置が無いと目視で見つけても間に合いません.つまり,リニア以前に,現時点で既に高速鉄道の安全は機械に頼ったものになっています.
リニア新幹線にも類似の保安システムを入れることくらいは検討しているでしょう.「機械は信用できん!」と言われてしまえばそれまでですが,それじゃぁ,エレベータは怖くて乗れないよね.
#必ずしも「運転士がいない」=「乗務員がいない」では無いことに注意すべし.
#運転士に前方注意義務の無いような交通機関だが,天皇陛下もご乗車されている.

東北に行ってみた(原ノ町編)

常磐線の代行バスや部分開通区間を乗り継いで来ることのできるのはここまでである,南相馬市の原ノ町駅.
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ここから先は,線路には背の高い草が生えており,復旧にはまだまだ時間がかかる様子である.
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原ノ町駅には小規模な車両基地があり,震災発生時に取り残された電車がそのまま残されている.
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(2013年11月現在)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(環境編)

この意見の各項目を考えてみるシリーズの4つ目である.フルバージョンはこちら.

  • 4つ目:リニアは使用電力が新幹線の3倍以上で、エネルギー浪費型の社会、交通体系を導入することには道理がない

そこだけ取り上げればその通りなのだが,やはり見落としがある.この部分は鉄道会社も見落としているんじゃないかと思われる.
単純に東京−大阪間の既存の新幹線客をリニア新幹線にシフトするだけだと,おっしゃるとおり,エネルギー効率が悪くなってしまう.ところが,そのエネルギー効率があまりよろしくないリニアよりもさらに効率の悪い交通機関がいくつか存在する.航空と道路輸送である.
東京側から見た大阪以遠,もしくは大阪側から見た東京以遠の区間で,現状において航空依存の区間というのが存在する.例えば東京−九州などだ.これがリニア開業によって競争力が上がり,新幹線+リニアに置き換えることができれば国土全体ではエネルギ効率が上がる.
それから,(こういう話は当の鉄道会社はあまりいい顔をしていないようだが)リニア完成後に比較的暇になった東海道新幹線を使って物流などを行ってトラック輸送の一部を置き換えることができれば,これもエネルギ効率が上がる.
木を見て森を見ていない批判的意見ですね.(鉄道会社もPRが下手)
「リニア新幹線じゃ無くて,時速350キロ運転,いや出来れば400キロ運転の鉄輪式新幹線にすべきだ.そうすればリニアに比べて10〜20分ほど遅いだけで,他の路線とも直通できるし,エネルギ消費も少ないし,部分開業しても乗り換えさせる必要が無いし,方式変更すべきだ」という批判建設的代案の提案ならわからないでもない.…が,とにかくリニアが憎いようである.批判するなら合理的に.

鉄道後進国ニッポン(英国快速も225キロ運転)

ずいぶん前に,ドイツの快速列車がめっちゃ速いという話を書いたが,英国の近郊電車もめっちゃ速い.
テレビのCMでみたことのある人も多いと思うが,日立製の電車であり,ロンドン郊外のアシュフォードというところから,ロンドン市内まで走っている.最高速度は公称225km/h. 乗車してみると,内部は特急列車風ではあるが,デッキとの間仕切りはなく,イスもビニール張りの簡素なものである.
英仏海峡を通過するユーロスターの走る高速新線を間借りして走行し,車内の内装さえ気にしなければ走りっぷりは日本の新幹線と寸分変わらない(日立製なので). ロンドンオリンピック期間中は選手村と競技場との間の輸送に使われ,その後は高速通勤鉄道線になっている.
日本にはこういう発想ないんだよなぁ.(昔は首都圏でそういう構想があったが,有耶無耶になった.つくばエクスプレスはその名残.160キロ運転はどうなった>TEX)Javerin-2Javerin-1