すずさんの嫁入り列車

久々の記事更新である.だが,今回のネタは大半の人には意味不明だろうと思う.映画ネタ系である.タイトルを読んでピンとこない人は読み飛ばした方が無難である.

広島県呉市というと最近は大和ミュージアムなどで知られているが,元々は海軍の軍港である(今も海上自衛隊の基地).webmasterの祖父も戦時中は呉の工場で大砲を作っていたらしいので,円太郎さんと似たような仕事を近くでしていたということだ.灰ヶ峰の大砲を作っていたのか,はたまた戦艦の大砲を作っていたのかは今となってはわからない.

祖父はあまり多くは語ろうとしなかったが,ひどい空襲が複数回あったこと,隣の広にも空襲があったこと,戦艦ヤマトを見たことがあること,そして原爆のキノコ雲が立ち上るのを見たことがあることなどを話していた.これらの歴史的出来事は映画の中でも描かれており,祖父はすずさんと同じ光景をリアルタイムで見たということのようだ.

さて,映画の中ではいくつかの交通機関が登場するが,いずれも結構描写が詳しい.このうち,昭和19年2月にすずさんが広島市内の江波から呉市内へと嫁入りする際に乗車した列車が気になったので,ちょっと調べてみた.

原作では,さらっと江波から路面電車で横川へ,そしてそこから汽車で呉へという経路が描かれているだけである.映画では広島駅のホームの様子と途中駅,そして走行中の列車の様子,呉駅到着時の様子が描かれている.

走行中の列車の様子からは32系客車編成された大阪行きの急行で,すずさん一行は三等車に乗車していること,呉駅のホームの時計はお昼前の11時55分頃を指していることがわかる.列車の特定できるかな.

昭和19年2月ジャストの時刻表は持っていないが,昭和17年11月号と昭和19年5号(12月号)なら参照可能だ.まずは昭和17年11月号から.

昼頃に呉駅に到着する列車としては,徳山発京都行き318列車(各停)の11時10分着,広島発大阪行き320列車(各停)の12時55分着,鹿児島発東京行き4列車(急行)の13時25分着が見える.このほかにも広島駅発呉行き918列車(小運転列車)の12時14分着がある.だが,大阪行きの急行列車は無さそうだ.

鹿児島発東京行き4列車は起終点間を乗り通すと車中2泊になる超長距離列車で洋食堂付きの寝台列車であり,「櫻」「富士」を名乗っていた優等列車の名残である.当時は呉市は全国的に見ても重要な大都市だったので,山陽本線ではなく呉線経由であったようだ.

さて,この後,すずさんの嫁入りまでには昭和18年2月と10月の2度ダイヤ改正がある.さらに昭和19年4月と10月に改正があった後の昭和19年12月のダイヤはこうなっている.(厳密には昭和19年5号掲載の時刻は昭和20年1月25日付け改正後のものであるが,呉線に関しては改正ではなく訂補となっており,小修正のみのようだ.)

昼頃に呉駅に到着する列車としては,広島発大阪行き312列車(各停)の11時46分着,広島発発東京行き6列車(急行)の12時30分着が見える.またこの表には無いが広島駅発呉行き914列車(小運転列車)の11時31分着がある.だがやはり,大阪行きの急行列車は無さそうだ.

改正を挟んでいるので,この間に呉線経由の大阪行き急行列車があった可能性は捨てられないものの,上の2つの時刻表では大阪行き各停と東京行き急行が昼頃に呉駅に発着している点は共通しており,昭和19年2月当時も実際はそうであったのではないかと思う.

ということで,すずさんの嫁入り列車としてはほぼ次の二択ではないかと思う(前者かな?).

(1)広島発大阪行き各停312列車(映画中での「急行」が間違い)
(2)広島発東京行き急行6列車(映画中での「大阪」が間違い)

#約30年前に神田の古本屋で見た昭和18年の時刻表を買っておけば良かった.(当時の売価1万8千円也)

新型新幹線−停電時に自力走行

【名古屋】JR東海は2020年度に運行開始予定の東海道新幹線の新型車両「N700S」に、停電時に自力走行できる機能を導入する。床下にリチウムイオン電池を搭載し、地震発生による長時間停電時にトンネルや橋梁から自力で走行して脱出。乗客を避難させやすくする。3月に完成する確認試験車に搭載し、実用化に向けて試験する。

情報源: JR東海、新型新幹線車両の床下にリチウム電池搭載−停電時に自力走行 | 商社・流通・サービス ニュース | 日刊工業新聞 電子版

似たようなシステムは既に地下鉄にもあったかと思うが,地下鉄車両が停電時に自力走行するのと新幹線が大地震時に自力走行するのとでは安全性が大きく異なる.

新幹線は大地震発生時に架線の電気を止めることで非常停止することになっており,まずはこの段階で被害を軽減できる.その後,停電が続いた際に電池で自力走行して適切な場所に移動させようということだろうと思う.

ところが,停電が長く続くような大地震の場合には走行しようとしている線路自体の安全性が保証されていないと考えられるので,場合によっては新幹線が動いたがために地震後の線路が二次的に壊れるという事態もありうる.

ということで,使えるのは大した地震動がなかった区間であるが停電が復旧しない場所や,たとえ線路が崩れるリスクがあってもその場に居続ける方が危険が大きい場所—例えばこんなところかな—からの脱出という使い方になるんだろうと思う.

なお,電池積むなら起動時の大電力を一時的に電池からも供給するようにすれば,時折やらかしてしまう「運転中止から運行再開時における変電所のブレーカー落としちゃいました事故」を防げる可能性なきにしもあらず,かも.