リニア新幹線整備の理由(昔の主張-輸送力限界編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の3つ目は,「東海道新幹線の輸送力が限界に達するので,バイパス路線が必要」というものであった.

当時の東海道新幹線は,信号システムと東京駅での列車折返し能力の問題から,最小運転間隔が約4分であり,計算上の片道あたり運転本数が,毎時15本であった.東京駅と新横浜駅の間には新幹線の車庫への分岐線があり,毎時15本の能力のうち,毎時4本程度は東京駅と車庫との間の回送列車のために空けておかなくてはならなかった.
これでは輸送需要に応えきれなくなるので,バイパス路線としてリニア新幹線が必要,という主張であった.しかし実際には,以下のような状況変化があり,東海道新幹線の輸送能力は足りてしまっているのが現実である.

  1. 信号システムが更新され,運転できる本数が増えた
  2. 東京-新横浜間の車庫分岐線よりも新横浜寄りに品川駅が開業し,回送列車の影響を回避可能になった(→さらに実際には,回送列車の影響をわざわざ回避しなければならない事態は,ほとんど発生していない)
  3. 日本の人口が減少局面に入り,輸送需要そのものが頭打ちになりつつある
  4. 北陸新幹線を整備すれば,首都圏から北陸方面や,北関東から関西方面への需要を分散させることができる

ということで,2014年時点ではこの主張は引っ込められてしまっているようである.しかし,よくよく考えてみると,「男の中の男」「女の中の女」ならぬ「幹線の中の幹線」であるリニア新幹線は,ひとたび開業すればその切符はプラチナチケットと化すのではないかと思うほど全国的効果絶大であり,「東海道新幹線の輸送力が限界なので必要」ではなくて「全国の皆様の移動時間短縮のためには東西間の輸送能力の大幅な向上が必要」という主張に修正されてもいいと思われる.が,しかし,ローカル新幹線として基本計画が立てられているので,考え方もそこから脱皮できていないようである.