都構想の陰で進行する大阪長期衰退の始まり(第2話-産業振興VS交流編)

第1話-新幹線偉大なり編の続きである.

「地域の発展」というと,昔は富国強兵,殖産興業だが,比較的最近なら全国的な発展度合いを均衡化しようとしていた,つまり国土の均衡ある発展を目指していた一連の全国総合開発計画が思い浮かぶ.

全総関係のプロジェクトはいろいろあるが,大きく分けて交通系の大規模なプロジェクトと,地域開発系の大規模なプロジェクトとがある.地域開発系のもので有名なのは社会科の教科書にも出てくる「新産業都市」である.

新たに工業都市を設置して,それを核に地域開発しようというのが新産業都市であり,主として地方部に配置された.よく似た「工業整備特別地域」の方は,新産業都市が新規設置であったのに対して,こちらは既にある程度開発が進んでいた地区を指定して工業促進を図ったものである.

その全国的な分布の概略が下の図であり,緑色の星印が新産業都市で基本的には地方部に位置する.黄色の星印が工業整備特別地域であり,太平洋ベルト地帯に多い.

semi-041a均衡ある発展を目指したプロジェクトだったはずなので,成功すれば地方部にも人口が張り付いて,例えば人口ベスト15から落選した都市にいくつか返り咲きが生じても不思議じゃぁ無かったわけだが,そうでもなかった.

結局は緑色の星の配置よりは,新幹線の配置の方がしっくりくるという結果になる.つまり,産業を意識的に配置するよりは,新幹線の方が影響が大きかったということだろう.

つまり,大阪(および近畿一円)の発展のためには,自地域における産業を直接的に活性化するという視点だけでは長期的な繁栄はおぼつかないということである.とかく大阪の人は自らが頑張れば何とかなると思いがちなのだが,こういった地域間の連携につながる策が必要なのだが…(…逆ギレしないでね.)

semi-033

経済学が専門の人に「簡単すぎる」と叱られるのを覚悟で簡便化して説明すると次のような話になる.地域というのは,全国的に金太郎アメなワケでは無くて,場所場所によって得手不得手がある.

例えば,甲地域は商品Aを生産するのが得意で,100円という安価で生産できる(別に商品でなくてもサービスでも良いが,あまり細かい話は置いておく).でも商品Bを生産するのはあまり得意ではなくて,200円かかる.

一方,乙地域では商品Aの生産は得意ではなくて200円かかるが,商品Bの方は得意であり,100円で生産できる.

このとき,甲地域も乙地域も,それぞれ商品Aを100個,商品Bも100個必要だったとして,お互いの交流が全くなく,必要なものは自地域で全て生産したとしよう.そうすると,全体で必要な生産費用は下の図のように60,000円になる.

give-take.024

さてさて,ここでお互い得意なものを交換できるようになったとしよう.得意でない方の商品は生産を止めて,甲地域は商品Aを200個,乙地域は商品Bを200個生産して,それぞれ100個ずつ交換する.交換の際に相手側に渡す際の値段を100円ではなくて150円にしたとしよう.

そうすると,お互い交換する商品については,値段と量が同じなので(輸送費等の話を脇に置いておくと)相殺できたとして,全体で必要な生産費は40,000円になる.先ほどの場合と比べると全体の生産費は下がった.必要なものはそれぞれの地域で必要な個数確保できている.

地域間交流ばんざい,なのかもしれない.いわゆる「選択と集中」の基礎だろう.自由貿易の基本概念だろう.交通整備が必要な基礎的背景はここにあるといえる.(同時に自由な取引を阻害すべきでないという基礎もここにある)

give-take.025

ただし,このシステムは必ず成功するとは限らない.自由貿易論者が隠している別のシチュエーションが存在しているので要注意である.

Give & Takeの関係が成功してWin-Winの関係が構築できるのは,それぞれの地域が必ず他地域に差し出せるだけのレベルと量の「得意なもの」を持っているという暗黙の前提がある.

例えば,下のように甲地域は商品Aも商品Bも生産が得意でない場合,甲と乙を結んでしまうと全体の生産コストは下がって効率化が進むが甲では何も生産できずにただ買うばかりになってしまい,地域の経済が破綻する.それでも交流が開始された地域間では効率化が進むので,全体としては何もしていない地域群に比べると強い地域圏が形成される.新幹線はそういった地域圏を形成する効果があるといえる.

give-take.027 が…まだ第2話である.これだけで話は終わらない.

つづく

関連記事

  • BEFORE & AFTER の写真を撮るのは大変BEFORE & AFTER の写真を撮るのは大変 交通整備のBefore & After […]
  • 岡山駅の路面電車停留所予定地岡山駅の路面電車停留所予定地 そのうちにBefore & […]
  • 南海電車の紀ノ川鉄橋南海電車の紀ノ川鉄橋 南海電鉄本線で難波から南へ約1時間.もうすぐ終点の和歌山市駅というところに,割と長い鉄橋がある. 紀ノ川に架かる鉄橋で,中央がトラス橋,両岸付近がガーダー橋になって […]
  • 列車版LCC列車版LCC 欧州では,線路とその上の鉄道運行が基本的に上下分離されている.旅行者としてはICEやTGVをよく使うのでほとんどそのことを意識することはないのだが,最近,特にドイツなどでは比較的 […]
  • 山形新幹線・米沢―福島間で抜本的な防災対策山形新幹線・米沢―福島間で抜本的な防災対策 こういう話がある.  豪雨や大雪による運休、遅れが多い山形新幹線の米沢―福島間に関し、JR東日本は本年度から2年をかけて、抜本的な防災対策の調査検討を始める。吉村美栄 […]
  • 新函館北斗駅付近探訪(渡島大野編)新函館北斗駅付近探訪(渡島大野編) 新函館北斗駅付近探訪した時の話である.といっても,まだ全く工事が手つかずの頃のお話. 函館からの列車で到着.2両編成.もちろんディーゼル.1時間か2時間に1本という […]
  • 完成したのに未使用の超高級インフラ完成したのに未使用の超高級インフラ 普通なら,会計検査院がすっ飛んできて大目玉ということになりそうな話のはずだが,完成したのに使っていない超高級インフラが存在する. それが,これ. そう,瀬戸大 […]
  • 北陸新幹線のルートの話(並行在来線の定義って何?)北陸新幹線のルートの話(並行在来線の定義って何?) 新幹線を新たに建設しようとすると,しばしば問題になるのが「並行在来線」である.ところが,この並行在来線,定義がイマイチはっきりしないのでどの路線が該当するのか議論になりことが少な […]