大学にいると、いろんな電話がかかってくることは、ずいぶん前にも書いたが、最近は職員住所録がどこかで出回っているらしく、自宅にも電話がかかってくる。
先週末のように、まったりとした時を過ごしている土曜の午前中などにかかってくれば、30分ほどお話・・・というか、如何にあなたのセールスが客を納得させるのに不十分であるかなどについてご説明して差し上げたが、まぁ、個人情報保護法が施行されている昨今、社内コンプライアンスがいい加減な会社の人の話に数千万円も投じる人がいるんだろうかと首をかしげたくなる。このお話の詳細については、気が向けばまた別の機会にでも。
さて、大学にかかってくる電話は、マンション販売のほかにもマスコミ関係の取材とおぼしきものもある。部屋に不在の場合には再度架けてくる場合もあるが、たいていは諦めるようである。時には在室中にかかってくる電話もある。
先日の大手新聞社支局員からの電話。
(電話)ピロピロピロ・・・ | |
私 | 「はい、Webmasterです。」 |
新聞記者 | 「こちら、○○○新聞社の××支局の△△と申します。ただいま、LRT・・・(略)・・・」 |
この人は、一体何を聞きたいんだろう? | |
私 | 「はぁ」 |
新聞記者 | 「そこで、先生のご専門の立場から見解をお聞かせいただきたいと思いまして・・・(略)・・・」 |
ようやく本題に入った | |
私 | 「はぁ」 |
新聞記者 | 「LRTとまちづくりの関係について、お話をお聞かせいただけませんでしょうか。」//(質問終) |
ん? あまりにもプリミティブな質問である。この質問にまともに答えるなら、都市計画と交通システムのレクチャーを少なくとも90分ずつしなくてはならない。そういえば、webmasterもコンサルリサーチャー時代は手元の資料に行き詰まると、電話に手が伸びたっけ。でも、ちゃんと話を聞きたいときには、菓子折持って先輩リサーチャーや上司とともに出かけだぞ。 | |
私 | 「んん・・・そういうお話でしたら、図書館や本屋に行くと、LRTとまちづくりのことを書いた本がたくさん出版されていますので、そちらをお読みになるのがよろしいかと思います。」 |
新聞記者 | 「はい、わかりました。」 |
意外にあっさり引き下がった。こいつでは話にならんと思われたのかもしれないが、質問が原始的すぎて、端的に言うならば「もいっぺん、勉強してから出直してくれ」である。 |
マスコミ取材の内情については友人や身内から話を聞く機会もあり、なかなか勉強してから記事を書く時間がないのは知っているが、日々100万人単位の人が読む活字メディアなら、入門本の斜め読みくらいはしてから質問したり記事を書いた方がいいと思う。
本屋や図書館に行く暇がないのなら、WEBの検索でもかなりの基礎知識を得られる時代なので、その程度はした方がいいだろう。
そうすれば、「LRTはまちづくりと関係が深いとされていますが、自動車の利用を規制すればかえって衰退を招きはしませんでしょうか?」とか「LRTはまちづくりと関係が深いとされていますが、LRTでまちづくりができるのならバスでもいいんじゃないでしょうか?」とかいうような質問ができるようになる。
ちなみに、学生が「せんせー、授業がまるっきりわかりません」という質問をしてきた場合は「どこまでわかっていて、どこからわからなくなったのか?」と聞いてみて、それでも「最初から全部わかりません」と言われた場合には、「来年同じ内容で授業をしますから、もう一回授業を受けてください」と答えることが多い。
#その後、それらしき記事が載っていたとの噂を聞いたが、記事の内容を実際にしゃべった人と、取材先として記載されていた人の名前が食い違っていたそうである。
交通機関で1人を1キロ運搬する際に排出されるCO2の量については、最近、いろんなところで見かけるようになってきた。排出量の単位や調査年次などが異なるので、完全に同じ数値であるとは限らないが、自家用車が電車やバスに比べて極めて環境に悪いということは共通して読み取れる事項である。
さて、このような数値は、全国的な調査の結果をもとに平均的な値を用いて計算されるので、例えば乗合バスが1人1キロ運搬する際に19g-Cの排出があるといっても、それは大都市圏内の混んだバスも、田舎のガラガラのバスも含めたものになっている。
・・・とすると、田舎のガラガラのバスは自家用車よりも環境に悪い可能性があるのかというと、そのとおりだろうと思われる。研究者でも、この点についてはゴニョゴニョと言葉を濁して、何となく田舎のバスは環境に悪いんだということを主張したそうな雰囲気の方もたまに見かける。
じゃぁ、バスを廃止して自家用車で運べばいいのかというと、そうとは言えない。もちろん、今後も永続的にガラガラのバスを運行することが確定しているのならば、車体を小型化するなり、乗り合い路線タクシーのような形態にするなりの方策が有効だろう。
でも、こういう考え方もある。自家用車をやめてバスに乗るようにすれば、自家用車の走行距離が短くなる分だけ、排出されるCO2の量は確実に減る。じゃぁ、逆にお客が増えた分だけバスからの排出量が1人1キロ運搬するごとに19g-C増えるかというと、実際にはこちらはほとんど増えない。でかい車体に1人くらい増えたところで、ほとんど変わらないというのが実態であろう。バスを増便しなくてはならないほど客が増えたときに、初めて大きくCO2排出が増えるだけである。
つまり、ガラガラのバスは、今後、本気でCO2削減をしなくてはならなくなってきた際の受け皿になりうるということである。せっかくたくさん運べる交通機関があるのなら、とことん活用する必要がある、ということである。もちろん、「バス」を「汽車」に置き換えればローカル鉄道線についても同じことが言える。
先日、沖縄で研究発表をした際、webmasterの1つ手前の発表が交通や都市分野の研究者ではなくて、エネルギー分野の研究者の発表であった。そのプレゼンテーションの中に、やはり欧州では50%あるいはそれ以上のCO2削減が検討されている旨の内容が含まれていた。マイナス6%などという生ぬるい設定では、会議の面目が保てても、温暖化が止まる保証はないのかもしれない。
さて、運輸部門でこの面目を保つには、22%の排出削減が必要であり、結構たくさん自家用車の削減をしなければならないという丼勘定は先日お見せした。もし、22%じゃなくて、上のような50%が必要であるといわれたら、果たして自動車交通はどの程度の削減が必要だろうか。
再び、2002年の交通経済統計要覧という資料の数字を使うと、現状の日本では1人が1km移動すると、平均的には112.1グラムのCO2が出てきているので、これを50%削減すると、112.1×(1-0.50)=56.0 つまり、平均的には56.0グラムのCO2しか出さないようにしないといけないということである。そういう状態になるように比率を逆算すると、下の表のようになる。グラフにすると、右である。色を塗った面積の合計は50%減少している。
交通機関 | 旅客輸送のシェア | 1人1km運んだときのCO2排出量(g) |
---|---|---|
鉄道 | 69.6% | 19g-CO2 |
バス | 7.0% | 53g-CO2 |
自動車 | 20.6% | 175g-CO2 |
飛行機 | 2.7% | 111g-CO2 |
鉄道のシェアが、32から69になるので2.18倍、自動車は0.38倍になるので、62%減ということである。
さらに、削減量に関するいろんな数字を見ていると、最も強烈な数字としては80%削減が必要などというものも見かけることがある。
この場合だと、112.1×(1-0.80)=22.4 つまり、平均的には22.4グラムのCO2しか出さないようにしないといけないということである。そういう状態になるように比率を逆算すると、下の表のようになる。グラフにすると、右である。色を塗った面積の合計は80%減少している。
交通機関 | 旅客輸送のシェア | 1人1km運んだときのCO2排出量(g) |
---|---|---|
鉄道 | 92.3% | 19g-CO2 |
バス | 7.0% | 53g-CO2 |
自動車 | 0.6% | 175g-CO2 |
飛行機 | 0.08% | 111g-CO2 |
こうなると、自家用車使用禁止令でも発動しないと実現不可能である。だが、場合によってはこういうシナリオも存在しうるという点で、頭の隅にちょっと置いておいてもいい話だと思うが、いかが?
テレビのニュースによると、化石燃料の代替燃料としてのバイオエタノールの実験中らしい。映像には、どこかで見たガソリンスタンドの映像が映っていたようである。CO2を吸収した木材、その木材の廃材からつくった燃料なので、CO2を排出していないのと同じなのだそうである。ガソリンに若干混ぜて使用し、「運輸部門の排出量削減目標の2割ほど」が削減できるそうである。
この「運輸部門の排出量削減目標の2割ほど」が「マイナス6%」の2割か「マイナス22%」の2割かは定かではないが、目標達成にはまだまだ遠いことだけは確かそうである。
さて、運輸部門でCO2排出削減する方法は、主として2通りある。1つは「移動しないこと」である。通信で代替しようという発想や、荷物の共同配送で無駄な動きを減らそうという種類の対策はこちらになる。もう一つは「移動はするけど、出てくる量を減らそう」である。自動車の燃費を良くしたり、上に書いた代替燃料を使ったりというのは、こちらの発想である。
さて、いろんな方法があるのだが、運輸部門、とくに自家用車の対策が急がれることは先日書いた。移動量を減らさずに環境にやさしい鉄道に移行させるならば、どの程度の自動車を減らして、鉄道をどの程度増やさないといけないのか、計算してみよう。今日は旅客部門編である。
2002年の交通経済統計要覧という資料の数字を使うと、主な交通機関が日本全国の旅客移動量の何%を運んでいるか、1人を1キロ運ぶと何グラムのCO2を排出するかを表にしたものが下にある。それを図にすると、右のようなイメージになる。面積が大きい交通機関が排出の元凶ということになる。
交通機関 | 旅客輸送のシェア | 1人1km運んだときのCO2排出量(g) |
---|---|---|
鉄道 | 32% | 19g-CO2 |
バス | 7% | 53g-CO2 |
自動車 | 54% | 175g-CO2 |
飛行機 | 7% | 111g-CO2 |
それぞれの交通機関の1人1km運んだときのCO2排出量(g)と輸送のシェアを掛け合わせて平均をとると、112.1という数字が出てくる。つまり、日本では1人が1km移動すると、平均的には112.1グラムのCO2が出てきている、というのが現状である。
これを22%削減すると、112.1×(1-0.22)=87.4 つまり、平均的には87.4グラムのCO2しか出さないようにしないといけないということである。そういう状態になるように比率を逆算すると、下の表のようになる。グラフにすると、右である。色を塗った面積の合計は22%減少している。
交通機関 | 旅客輸送のシェア | 1人1km運んだときのCO2排出量(g) |
---|---|---|
鉄道 | 49% | 19g-CO2 |
バス | 7% | 53g-CO2 |
自動車 | 39% | 175g-CO2 |
飛行機 | 5% | 111g-CO2 |
鉄道のシェアが、32から49になるので1.52倍、つまり5割り増し。自動車は0.73倍になるので、27%減ということである。この数字は、ほんとに温暖化が止まるかどうかわからない京都議定書レベルをクリアするためだけの数字である。
いかに現状の交通部門における環境対策が生ぬるいかがよくわかる数字であると思うのだが、皆さんの感想はいかが?
再び、通勤途上の駅で見かけたポスターである。これには「列車を選ぶ人は、君のいいなを願う人です」と書いてあり、下には小さく「日本の旅は列車です」とある。そうそう、こういう光景いいよねぇ。
いやまぁ、例のごとく、楽しそうでいい写真なんだが、標準的な子ども連れの鉄道旅行の実態とは少々距離感のある写真だ。
実際には、まず、子どもの席が確保しにくい。特に未就学児を連れていると、基本的には運賃その他タダなのだが、膝の上で何時間も過ごさせることができるかというと、実際には不可能である。席を確保しようとすると、小児運賃が必要になる。稼ぎが少なくてお金が必要な若い世帯では、この小児運賃がなかなか出ない。解決策としては、始発駅から乗って自由席を確保するか、鉄道利用をあきらめるかであるかだが、後者を選んでいる人が多いのではないだろうか。海外では、運賃ゼロのれっきとした指定席券を発行してくれるところもあるので、日本の鉄道輸送はまだまだ、とも言えるが、事業者だけの努力では限界がある。
写真の左上は、山陽新幹線のものだが、これはなかなかいいサービスである。だが、こういうサービスは残念ながら日本の標準的な鉄道サービスとは言い難い。右下と左下は、おそらく四国の特急列車であるが、北欧などでは子供用の車輌を連結しているケースはあるものの、やはり日本の標準的な鉄道サービスではない。子ども連れで鉄道利用の場合、周囲の視線を気にしながら過ごすというケースがほとんどである。
真ん中のおむつ換えシートや右上の車イス対応トイレについても、最近新しく製作された電車についてはついているものの、まだまだ幅をきかせている日本国有鉄道の時代に製作された電車にはほぼ皆無である。電車は自動車よりも使用される年月が格段に長いので、社会的なニーズと合わなくなってきてしまうことが多い。
再び同じ結論である。子どもと楽しく鉄道旅行を楽しむというスタイルは、このポスターの中には存在している。だが、現実にそういう列車を利用できる若い家族は少ない。日本の列車は、優れた輸送機関ではあるが、優れた生活空間ではない。かつて日本家屋がウサギ小屋と揶揄されたが、鉄道車輌もまた然り、かもしれない。
部屋の掃除中である。掃除というか、模様替えに入ったのは、このサイトによると、9月の下旬ごろであるが、部屋でいろんな作業をしながらであるので、11月上旬現在、まだ終わらない。
掃除をしようとすると、いろんな仕事の依頼がくるので、特段の期限が設けられていない部屋掃除は後回しになりがちである。期限のない仕事はしなくても良いという説もあるくらいなので、なかなかはかどらない。
風邪はおおむね治ったが、勤続12年目にして、12年前と基本的な組織の人員構成に大きな変化がないため、仕事は受ける一方で頼む相手は基本的にはいない。敢えて言えば、オーバーロードなので明らかに"こいつに頼むと期限内に終わりそうに無さそうでやばいぞ"という仕事は代わっていただけるが、それでも連投せざるを得ない構造に変化はない。今日は休日であるが、仕事を依頼した人たちはお休みのようである。13連投目。
先月は、一般企業なら労働基準監督局が確実にチェックにやってくるくらいのオーバーロードだが、残念ながら大学教員は裁量労働制なので、そういう概念はないようである。したがって、過労で倒れても労災適用にはならない。教育と研究だけなら裁量の範囲はそれなりにあるとは思うが、実際には、学校運営の比重が大きくて裁量の範囲は極めて限定的である。労災認定の基準は14連投だったっけ? このままでは20連投くらいいきそうである。
部屋掃除であるが、あまりに掃除の進行がのろいと「部屋を散らかす速度=部屋を掃除する速度」になった時点で、部屋の掃除の進行が停止する。均衡状態と呼ぶ。この状態下に陥りつつある。一見部分的には掃除が進行しているように見えるが、一方で散らかってゆく。この部屋の掃除は永遠に終了しないのであろうか?
さて、鉄道工事のうち、整備新幹線の工事は着工してもなかなか完成しないが、これは活線工事だからではなく、資金の制約によるところが大きい。どこかで聞いた話だが、資金さえあれば、今でも東海道新幹線の突貫工事のように、どんな新幹線路線でも5〜6年あれば完成できるそうである。実際に、整備新幹線の建設区間のうち、資金の準備ができた区間については、あっという間に高架橋が立ち並ぶ。
アルペンルートのお話番外編である。アルペンルートは富山の立山と長野の大町を結ぶ観光ルートであるが、その一部は黒部ダム建設に実際に使用された輸送ルートである。発電所建設の輸送ルートは実はほかにもある。黒部川の電力開発は黒部ダムだけではなく、黒部ダムの下流側にいくつかの発電所が建設されている。
その発電所群の建設に使用されたのが黒部川沿いの黒部峡谷鉄道である。黒部第四発電所もこの鉄道の延長部分が達しており、上部軌道と呼ぶ。延長部分は一般客には非公開であるが、人数限定で見学ツアーが開かれているようであり、立坑があったり、高熱トンネルがあったり、角度30度(30パーミルではない)以上のケーブルがあったりと面白い。この上部軌道についての詳しいことはこちらへ。
黒部峡谷鉄道は、今は観光鉄道として有名だが、かつては建設資材・人員運搬用、現在もメンテナンスのために使用されており、トロッコ列車に乗ると、時々、そのような列車とすれ違う。始点の宇奈月温泉駅の改札には、作業員専用列車のダイヤが置かれているようである。
例えば、この鉄道の沿線にある発電所(黒部川第二発電所)の写真をよく見ると、赤い橋には線路が敷かれている。つまり、今も資材運搬にこの鉄道が使用されているということである。
また、別の駅の構内からは、トンネル内へと引き込み線が延々と続いている。トンネルの先には黒薙第二発電所という発電所があるようだ。
峡谷という険しい地形のために、通常の道路建設ができないのでこういう輸送形態になっているわけだが、鉄道しか存在しないという別世界を形成している。
歴史をひもとけば、明治の路面電車初期のころは道路は歩行者や牛馬のものであり、そこに18km/hの電車が導入されたのでトランジットモールとほとんど同じであるという話は先日したが、話がまだ終わってなかった。
明治の京都では、歩行者の安全対策のために、電車の前に少年を走らせて告知した。これを"Kyoto Method Ver.1"と呼ぶことにしよう。ところがこの"Kyoto Method Ver.1"は、あまりいい方法ではなかった。足場が悪い軌道敷きに少年を走らせたために、少年が転倒して轢かれるという痛ましい事故が起こってしまったようである。改良が必要だった。
現在なら、「軌道から人を排除してしまえ」というソフトウェア方式で改善を図るのが主流だが、明治の人は偉かった。
人と電車が接触して問題なのは、ケガをしたり轢かれて死んでしまうことである。ケガをしなければ問題はないわけである。そこで、電車側に高性能安全装置を導入したのだった。ハードウェア方式による改良である。
京都の梅小路公園に行くと、明治の頃の路面電車が動態保存されており、乗ることができる。その電車の前部には、歩行者の安全を確保するための安全装置が今も確認できる。左の写真が、その電車の前の部分を写したものだが、安全装置があるのがわかるだろうか? え、わからないって? 網がくっついてるでしょ? 網! 名付けて"Kyoto Method Ver.2"
網の効果は絶大だったようで、網設置直後もしばらくは少年が走っていたそうだが、ある時、少年が転倒し、あわや轢死かと思いきや、網に救われて大したケガもなかったそうである。
さて、現代のトランジットモールであるが、慣れさえすれば、特に問題が発生しないことは欧州の例を見ればほぼ確実なのだが、それまでの措置として、電車に救助用の網を設置してはどうだろうか? え? ダサイって? そこは何とか、いいデザインをお願いしますよ > メーカーのデザイナー殿
べつに網でなくても同等の機能なら問題ないと思うので、LRVに歩行者救助装置。近代化された"Kyoto Method Ver.2"、つまり名付けて"Kyoto Method Ver.3"
こういうソルーションも考えてもいいんじゃないかと思うが、いかが?
「チーム・マイナス6%」のアクションプランがどうやら今一歩だという話や、実は「チーム・マイナス6%」ではなくて、「チーム・マイナス14%」でなければならないという話も先日書いたが、じゃぁ、交通関係だけに限るとどういう状況なんだろうか。
最近は国土交通白書もwebで閲覧できる便利な時代だが、平成17年度版の第II部国土交通行政の動向、第1節地球温暖化対策の推進を読み進めると、こんなことが書いてある。
《国土交通白書そのまま》 「運輸部門からのCO2排出量の約9割は、自動車に起因するものである。特に、平成15年のCO2排出状況を平成2年と比べると、自家用乗用車からの排出量は、走行距離の増加・車両数の増加等により49.8%増と大幅に増加している。」
ん? 1990(平成2)年比で6%削減が目標だったよな? どうして5割もクルマが増えてるんだぁ? ダメダメじゃん。
この文章には、上の図が添えられているが、排出量の内訳では、貨物自動車も公共交通も減っているのに、自家用自動車だけが大幅に増えている。どうりで自動車会社がもうかるわけだ。台数増の割には排出量が増えてないと言えばそうだが、じゃぁ、誰のせいかな?
必ずしも全排出源を一律に1990年比-6%でなければならないというわけではないが、全排出源の中で排出量が増えているのは運輸部門くらいのものである。じゃぁ、今からだとどれだけ削らなければならないのか計算してみよう。
年次 | 1990年=100 とする排出量 | 増減 | 備考 |
---|---|---|---|
1990 | 100.0 | --- | 基準年 |
1997 | 123.6 | +23.6% | |
2003 | 119.8 | -3.1% | |
2010 | 94.0 | ?% | 目標年 |
上の図を解読すると、事実関係としてはこういうことのようである。そうすると、2003年から2010年にかけて、119.8を94.0にしなければならないのだから、94.0÷119.8=0.785(つまり、2003年比21.5%減)である。
現状では、21.5%減にしないと、京都議定書の目標であるマイナス6%を達成し得ないんだから、「チーム・マイナス22%」にしないといけない。
ほら、やっぱり「マイナス6%」じゃぁ生ぬるいじゃないですか。どう? > 関係者殿
アルペンルート最後の乗り物は、再びトロリーバスである。レールがないだけで、それ以外の設備はほぼ電車である。
このトロリーバスも、狭いトンネルの中を走る。走行するトンネルは、黒四ダム建設のための資材輸送に活躍した大町トンネルという工事用トンネルである。工事が終わってからは、保守と観光に使用される。トンネルは黒部ダム付近で分岐し、10キロほど先で、ダムから導かれた水で発電する地下発電施設につながる。こちらの発電所に向かう方のトンネルは原則として一般には公開されていないが、人数を限定して見学会は開かれているようである。
大町トンネルは2500m級の山々を貫いて掘られているが、地盤は必ずしも良くなく、破砕帯--つまり、岩盤の中にある断層で、そこだけ岩ではなくて岩クズのようになっているところ--で地下水が吹き出し、難工事だったようである。現在もトンネル内では破砕帯の位置がわかるようになっており、壁に青いランプが設置されている。
トンネル内は湿度が高く、ほとんど全区間にわたって霧が立ちこめていた。狭いトンネルなので、バス同士のすれ違いができないので、こちらのトロリーバスにも中央部付近にすれ違いのためのトンネル径の大きな区間が存在する。webmasterの乗ったバスは最終便だったので、反対向きのバス隊列の姿はなく、そのまま通過する。
終点の扇沢に着くと、アルペンルートの出発地である立山まで我々を乗せてきた観光バスが待っているではないか。立山から糸魚川を経由して姫川沿いに南下し、半日かけて日本アルプスを迂回してきたようである。以前では考えられないことだが、道路整備のなせる技か。
さて、公式情報を参考に、アルペンルートの各輸送機関の輸送能力を計算してみよう。それぞれ、乗り降りする時間を5分とすると、ケーブルカーやトロリーバスのように、いったん出発したら反対向きの列車やバスが到着しないと同じ方向に出発できない交通機関では、走っている時間に5分を加えた時間が、最も短い出発間隔になる。地下ケーブルカー(黒部ケーブルカー)のように、1台が単純に往復しているだけの場合は、(乗っている時間+5分)×2が最も短い出発間隔になる。高原バスのように向かいから来る列車やバスのことを気にしなくてもいいのなら、客の乗り降りのことだけを考慮すれば、だいたいの運転間隔は決まる。
出発間隔が求まると、1時間に運転できる本数が決まり、1時間に運転できる本数が決まると、定員を掛け合わせてやると、1時間に運べる客数になる。そうやって計算したものが、下の表である。
乗り物 | 距離 | 複線・単線など | 所要時間 | 最小運転間隔 (乗降5分) | 毎時本数 (片道) | 定員 | 毎時 輸送能力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
立山 ケーブルカー | 1.3km | 単線 (中央で交換) | 7分 | 12分 | 5本 | 119人 | 595人 |
高原バス | 23km | 複線 (連続輸送可) | 40分 | 5分 | 12本 | 50人 | 600人以上 |
立山トンネル トロリーバス | 3.7km | 単線 (中央で交換) | 10分 | 15分 | 4本 | 72人 ×4台隊列走行 | 1,152人 |
立山 ロープウェイ | 1.7km | 複線 (連続輸送不可) | 7分 | 12分 | 5本 | 80人 | 400人 |
黒部 ケーブルカー | 0.8km | 単線 (単純往復) | 5分 | 10分 | 6本 | 130人 | 780人 |
関電トンネル トロリーバス | 6.1km | 単線 (中央で交換) | 16分 | 21分 | 2.9本 | 72人 ×4台隊列走行 | 823人 |
トンネルバスや単純往復のケーブルカーが輸送のネックかと思いきや、そうではなかった。ロープウェイがネックのようである。観光シーズンピーク時にはロープウェイ乗り場でかなり長時間待たされるらしいが、その原因は、輸送力の小ささにあるようだ。
もう一本、同じようなロープウェイをつくってちょうどくらいかもしれないが、ここの乗り場の大観峰は、たいへん景色がいいので、まぁ、ゆっくり順番が来るまで待てばよいという話もある。
日本ではトランジットモールが難しそうだという話を先日したところだが、早くも具体的な話が出始めた。
場所は富山駅の南北を貫く部分、つまり、今年開業した富山ライトレールを富山地方鉄道の市内軌道線に接続するために延伸する部分ということになる。適当な写真がないのだが、右の写真に書き込んだ赤い線の部分ということになろうか。約250mだそうな。
しかしまぁ、富山だからできるのかもしれないし、他の都市でも警察がウンと言うかどうかは、まだわからない。
そこで秘策である。歴史をひもとけば、日本にもトランジットモールと同じような状態が存在した時期があった。そう、路面電車という乗り物が走り始めたときである。当時は当然、道路はクルマのものではなく、歩行者や牛馬のものであった。そこに電車登場。最高速度約18キロ。これから導入しようとしているトランジットモールとほとんどそっくりではないか。
LRTシステムのトランジットモールは、歩行者と電車やバスだけの道路空間である。当然ながら、LRT用の電車が時速50キロや100キロで走れるからといって、そんなスピードをトランジットモールで出してはいけないのは当然である。左の写真はフランスのストラスブールの軌道の上の方にあった速度制限標識であるが、専用の軌道ではない芝生敷きの広場を横切るような区間では時速25キロ制限となっている。つまり、徐行である。
さて、路面電車の登場した日本、つまり、明治の京都市内であるが、歩行者の安全対策をどう講じたかというと、電車が走ってくる前に、少年を走らせ、電車がやってくる旨を歩行者に知らせたということである。
そういえば、例の有名なネズミーランドの幼児向けの一画には、子どもが走り回る道を遊具だが立派な電車がやってくる"トランジットモール"がある。ここでは、電車がやってくる前に係員が軌道のそばにやってきて、「電車が来ますから下がってください」みたいなことをやってたかなぁ。少年が走るわけではないが、明治の京都方式である。
もっとも、LRTの軌道に沿って係員を配置するわけにも行かないし、かといって、少年を走らせるわけにも行かないので、ちょっと工夫が要りそうである。例えば、ぶつかっても害のないくらい小型の「先導車」を走らせて、軌道から人を出すとか、あるいは、ASIMO君に走ってもらうとか、京都ならムラタセイサク君に自転車で走ってもらうとか・・・・・・(今日は、帰ろうっと)
正式には、黒部川第四発電所と黒部ダムである。とにかく大きく、まるで道路のようなダム本体は、端から端まで500mほどもある。1枚に収まらないので、この写真は8枚を合成してつなぎ合わせたものである。ダムの上端に観光客がいるのだが、ダムと比べて小さすぎて、写真では判読できない。
水がたたえられた黒部湖を見ると高さがわかりにくいが、水深が163m、つまり40〜50階建てのビルの高さがある。
写真に写っている放水は単なる観光用であり、発電用の水は取水口から取り入れられ、山の中に設置された管を流れ下って、水圧でえいやと発電機の重いタービンを回せるくらい下のところに発電所本体が設置される。そんなわけで、ダムと発電所は10Kmも離れており、落差は500m以上にもなる。つまり、水はダムから吹き出しているのではなくて、ずいぶん下流で再び川に流される。
最近は大きな構造物に見慣れてしまっている人も多いと思うが、この大きなダムが、山奥、つまり、ケーブルカー、バス、トロリーバス、ロープウェイ、地下ケーブルカーを乗り継いで四半日かかるようなところに、40年以上前につくられていることが偉大である。
建設に多大な労力とエネルギーを要し、建設前後で周辺環境を大きく変えてしまうが、いったんできてしまえば、発電そのものは天地の恵みである位置エネルギーを電気に変えるだけなので、非常にエコである。発電された電気は、地元北陸ではなく、近畿地方に送られる。
工事が困難を極めたことは、映画やテレビ番組等で有名であり、殉職者は171名にもなる。ただし、この手のインフラ整備を志す人のために申し添えると、現在では死者を多数出すような工事現場は安全管理上問題であるので、40年以上前に比べて格段に安全になっている。
ダムの向こう側の、アルペンルート最後の交通機関である地下トロリーバス乗り場の売店では、プロジェクトXのビデオがエンドレスで流れる。
仏国鉄ご自慢のTGVのネット予約サイトでは、利用する区間における交通機関別のCO2排出量の表示を始めたそうである。日本の一部の交通検索ソフトでもCO2排出量が計算されるそうである。
日本の新幹線は、TGVよりももっとエコなので、もっと積極的に航空輸送に切り込んでもいいと思うのだが、控えめな国民性が邪魔しているんだろうか? 世界はだんだんと鉄道の環境優位性を認識し始めているようである。
写真はちょっと変わったTGVである。英仏海峡トンネルのユーロスター用の車輌を色を塗り替えてTGVとして使っているものである。
「チーム・マイナス6%」のアクションプランがどうやら今一歩だという話は先日書いたが、それだけでは無さそうである。
先日の新聞記事によると、京都議定書クリアどころか、CO2排出量が増えてしまって14%削減しないとクリアできないらしい。これでは京都の名が泣く。
「チーム・マイナス6%」の「6%」とは、1990年に比べて6%だけ排出量を減らしましょうという意味である。決して現況から6%減らしましょうという意味ではない。
ということは、実は「チーム・マイナス6%」ではなくて、「チーム・マイナス14%」でなければならないということである。この点でも、「マイナス6%」は国民に誤ったメッセージを送り続けていると言える。
先日の表を書きあらためると、より一層、いかに誤ったメッセージかがよくわかる。これではCO2排出量は減りそうもない。
プランの番号 | キャッチフレーズ | 実行する内容 | CO2削減比率 | マイナス14%の・・・ |
---|---|---|---|---|
ACT1 | 温度調節で減らそう | 冷房28℃に、暖房20℃に | 0.5%削減 | 28分の1 |
ACT2 | 水道の使い方で減らそう | 蛇口はこまめにしめよう | 1.1%削減 | 13分の1 |
ACT3 | 自動車の使い方で減らそう | エコドライブをしよう | 0.7%削減 | 20分の1 |
ACT4 | 商品の選び方で減らそう | エコ製品を選んで買おう | 示されず | ??? |
ACT5 | 買い物とゴミで減らそう | 過剰包装を断ろう | 1.0%削減 | 14分の1 |
ACT6 | 電気の使い方で減らそう | コンセントからこまめに抜こう | 1.1%削減 | 13分の1 |
実は、さらにもっと強烈な話がある。京都議定書の削減目標は、必ずしも温暖化を食い止めるための削減量ではないという話もある。温暖化を食い止めるのには、50%、いや80%くらい削減しないといけないのではないかという話まであり、欧州の専門家の間では常識になりつつあるらしい。
こんな数値を挙げて議論をしようとすると、日本では「いやぁ、そんな過大な数値をあげられてもねぇ」などという反応が返ってくるようであるが、温暖化が1980年代には始まっていたということから考えても、1990年レベルでは十分とは言えない可能性が高そうである。
交通分野については、さらに話が続く。続きは後日。