スイスのローカル鉄道支線への等間隔運転導入に関する分析および日本への適用検討
研究代表者:波床正敏
研究期間 :令和7年度~令和10年度
課題番号等:科研費基盤(C) 25K07972
1.研究の社会背景
スイスの鉄道政策Bahn 2000(1987〜)および後継政策により,幹線での毎時1〜2本以上の等間隔運転が導入され,拠点駅で短時間で路線間の乗り換えが可能となった.また,幹線に接続する支線の列車等についても同期して運行されている.
その整備資金はBIF (鉄道インフラ基金)によっており,使途はスイス連邦鉄道(SBB)の幹線だけでなく,支線,公営鉄道,私鉄線にも投入され, (線路が1本の単線での)交換設備増設,線路付替,複線化,新線整備,速度向上等の投資項目が確認できる.図は1998年以降の幹線の特定断面における旅客数の推移のグラフを示しており(含むSBB以外),Bahn 2000後に幹線の断面輸送量は各々ほぼ倍増している.また多くの支線は細線で表現され,断面輸送量が5,000人未満である.
さて,日本では新幹線整備に伴い並行在来線(および支線)は「問題」化して,新「幹線」との連携はほとんど議論されず,鉄道網全体を効果的に活用できていない.他方,スイスは九州程度の面積で2/3は山岳地帯,人口密度は四国程度しかない.だが,同国では日本的感覚ならば廃止が議論されそうな路線(国鉄の廃止対象基準は輸送密度4,000人未満)に対しても設備投資が行われており,上述のように鉄道利用者の顕著な増加も見られる.
我が国の既存の政策および研究は効率性の視点に立脚するが,既存の視点は大都市圏にしか利点がなく,発想の転換が必要である.一方,スイスの政策には次の特徴がある.①必ずしも効率最大化でない.②新線建設が最小限なので少コスト.③ローカル線にまで配慮.④実際に成功.これより,スイスの政策分析と日本への導入検討は価値があると考えた.