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「小浜-京都トンネル」について

北陸新幹線のルート別の試算結果が示されたが,ちょっと気になる点がある.

どこをどう通るのか,詳細はまだこれから決めるのであろうが,例えば小浜-京都ルートでは小浜を出ると京都までの約60km弱にわたって,ほぼ完全にトンネルであろう.

整備新幹線は260km/h運転とか何とかどこかに書いてあったかと思うが,その主な背景は騒音問題であったかと思う.だとすると,この約60kmほどの区間を律儀に260km/h運転することに何の意味があるんだろうか?

(そういう電車を準備しなければならないが)もっと高速運転すれば所要時間が短くなってB/Cの値が変わってくるんじゃないの? などと考えてしまう.場合によっては2割くらい変わるかも.

2兆円も投入するなら,もっとスピードアップしようぜ!

続・B/C=1.1について

北陸新幹線のルート別の試算結果が国交省から公表され,いろいろと議論になっているが,交通ネットワークのB/C評価というのは実は少々厄介である.

先日述べたように,既に並行して高機能な路線があったりすると,B/Cで議論すると必要なところに必要な路線整備ができなくなってしまったりするが,このほかにも,本当はプロジェクト全体で評価しなければならないものを,部分部分評価してしまったりしてしまったがために必要とされる全体が完成しなかったりといったことが起こりかねない.

北陸新幹線について言えば,北陸新幹線は北陸地方と近畿,北陸地方と首都圏をそれぞれ結ぶことが主目的であるので,評価すべきは着工する部分部分ではなくて,今回の議論ではほんとは次のような評価が必要なはずである.

まず,今回の「敦賀以西」は北陸と近畿を結ぶ区間なので,評価すべき対象プロジェクトは北陸と近畿を結ぶ路線全体である.したがって,評価対象は以下の各プロジェクトのはずであった.

  1. ほんとの米原ルート:北陸3県〜敦賀〜米原(〜大阪)
  2. ほんとの湖西ルート:北陸3県〜敦賀〜京都(〜大阪)
  3. ほんとの小浜京都ルート:北陸3県〜敦賀〜小浜〜京都〜大阪
  4. ほんとの小浜ルート:北陸3県〜敦賀〜小浜〜大阪
  5. ほんとの舞鶴ルート:北陸3県〜敦賀〜小浜〜舞鶴〜京都〜大阪

これらは,ルート全体の投資額と効果を比較すべきであって,着工区間だけのBやCの議論はあまり適切ではなかったように思われる.

これらの比較の中において,本来の目的である北陸地方と近畿を短時間で結べるか,投資額に見合った(かつ,目的に沿った)効果が見込めるか,運営上の問題が生じないかを検討すべきであったが,なんだか議論が矮小化されてしまっているのが悲しいところ.

#はるか向こうの山頂を目指すには,どうするのがいいだろうか? その場その場での坂道の上を目指せば山頂にたどり着けるだろうか? 答えは「否」である.近場の丘の頂にたどり着くだけかもしれない.わかるかなぁ?

 

FGT前提計画は未開発技術採用

かつて東海道新幹線が建設されたとき,一応,未開発の技術ではなく当時使用実績のあった技術を集めて開業に至った.

その後の整備新幹線は言わずもがな.

スーパー特急方式は,狭軌200キロ運転は実績がないが,160キロ運転程度なら試験列車の実績があった.

ミニ新幹線は,車両だけ狭軌広軌両用で,(細々とした部分はともかく)特に新規の技術はなかった.

リニア新幹線も技術開発が一定水準に達したことを確認してから建設することになった.

ところがFGTはというと,技術開発が現在進行形である.にもかかわらず,まだ完成していない技術を九州新幹線長崎ルートで使うことが予定されている.まるで実験線だね.一時期,北陸新幹線の敦賀以西でも使用が想定されていた.

なんか違和感あるなぁ.まだ実用になるのかどうか分からないので,FGT採用を前提とした路線計画は,技術開発が要求水準に達したことを確認してからあらためて立案した方がいいかも.

つまり現時点で路線計画をたてるのなら,これまでの例に倣うと,FGTの使用を前提とせずに計画した方が適切かも.などと思う今日この頃.

新幹線なのに牛歩戦術?

北陸新幹線のルート案の試算結果をよく見ると,小さな字でこう書かれていることに気がつく.

「平成43年度着工を想定」

ん? 平成43年は今から15年後なので,2031年だよね.敦賀開業後速やかに着工するんじゃなくて,10年もそのまま何もしないの? 工期15年だと開業は2046年だよね.

たぶん,積極的な資金確保をしない前提で書いてあると思うが,リニアの時と同じく,「開業する頃には,もう死んどるわ!」という反応が返ってきそう.

それとも,開発再開した例の車両の完成を密かに待って,「もうこれでええやん」と言ってしまおうという「牛歩戦術」か?

B/C=1.1について

北陸新幹線のルート別の試算結果が国交省から公表されたが,特急列車が毎時2本,最大12両編成で運転されているにもかかわらず,意外とB/Cが小さいなと思った方も多いと思う.

この原因は湖西線にある.関西と北陸を結ぶルートとして1970年代に建設された北陸線は,新幹線ではないものの距離の短縮と在来線での高速運転を目指した路線であり,かなり高規格だ.

大都市圏の市街地の工事が入る分,B/CのCが大きいことも原因だが,Bの方にもいろいろ課題がある.

B/CのB,つまり便益を計算する際,プロジェクトが実施された場合の基準になるのはあくまで現況であって,出来上がった後の水準ではない.というわけで,現況の水準が高ければ高いほどB/CのBは小さく出るという,なんとも皮肉な指標である.がんばってこまめに整備すればするほど,いいプロジェクトを実施してもらいにくくなるという指標だ.

B/Cは1を上回ることは必要と言えばそうだが,B/Cが最大にものを選びさえすれば望ましい結果が実現できるかどうかは分からない.

プロジェクト評価の方法として,いきなりB/Cを出す方法はそろそろ止めて,まずは旅客の流動に見合った望ましい水準を示し,それを実現するプロジェクトのB/Cが1を上回るかどうかを示すという方法がいいのかもしれない.

#その後も相変わらずネット上にはB/Cの正しい解釈をできる人が少なそうで,これが世間の縮図なのかなと感じてしまう.B/Cが小さいことが需要が小さいことを表しているわけでは無く,またB/Cが小さいからといって採算が悪いわけでも無いということに注意.(11/20追記)

FGT年内にも試験再開へ

 国土交通省は、九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)に投入する新型車両フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の耐久走行試験を、年内にも再開する方向で調整に入った。車輪の間の幅を変え、レールの幅が広…

情報源: フリーゲージトレイン、年内にも試験再開へ 長崎新幹線:朝日新聞デジタル

…という話があるようだ.

  • 台車が重いので軌道強化した在来線でないと走れない
    • 新幹線化してほしいと思っている基本計画線のような区間では,つらいケースが多い
  • 特に曲線が苦手
    • 新幹線化してほしいと思っている基本計画線のような区間では,曲線が多いので速度がかえって低下する
  • 新幹線線路上では整備新幹線区間なら走れるが,300キロ運転はできない
    • 新幹線化してほしいと思っている基本計画線のような路線では,ぜひとも東海道山陽新幹線や東北新幹線などに乗り入れたいと思っていることが多いが,走ると他の列車の邪魔になる

といった課題があり,主要在来幹線を新幹線化(つまり昔からの整備新幹線の建設)する際に暫定的に一部区間について在来線を走らせるような用途か,あるいは,ごく短区間の支線に乗り入れさせるような用途でないと使いづらそう.

本当に問題なく走らせられるのなら佐賀県下の長崎本線に使うというのは一つの方法だが,もう開発始めてから20年以上経過してるよねぇ.

嬉野と武雄市議会 全線フル規格化求め意見書可決

ずいぶん前の記事で恐縮だが…

嬉野市と武雄市の両市議会は18日、九州新幹線長崎ルートについて、2022年度開業の厳守や、開業後の全線フル規格化などを求める意見書を可決した。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発遅れによ

情報源: 嬉野と武雄市議会 全線フル規格化求め意見書可決|佐賀新聞LiVE

同じ県内であっても地域によって目指すべき方向が違う例.

「フリーゲージトレイン」が何の問題もなく開発され,本当に新幹線と在来線を自由自在に行き来できればこういう話にはなりにくいのだが,実態はなかなか理想通りには話が進まない.

今を去ること15年くらい前,神戸にある車両メーカーの中で調整中とおぼしき初代FGTを見たのが初めての遭遇だった.2代目は博物館展示物として四国でお目にかかり,まるで量産先行車のような3代目は見たこと無いが,さっぱり役に立っていない模様.

さて,こういった地域により意見が異なるというのはこの場所に限った話ではなく,どこでも起こりうることであり,本来ならばどこかの部局が大所高所から全体をどうするか決めて,それに向けて説得を図るべきなのだが,「どこかの部局」の姿は見えず,全体構想の方針も定まらない.

短区間ならば,同じ整備方式で連続させてしまうのが長期的視点では得策なのだが,この九州新幹線長崎ルートに限らず(北陸新幹線のルート問題や山陰新幹線の分岐問題なども),路線通過地の沿線がその都度計画の主導権を握ってしまうという,広域交通ネットワークの計画としては本来あってはならない変な方法がまかり通っている.

(全体の最適) Σ(個別の最適)

というのが一般的なんですけどねぇ.

仕事してる?
どうすんのさ?

「なにわ筋線」JR・南海で共同運行

 JR西日本と南海電気鉄道が大阪都心を南北に貫く鉄道新線「なにわ筋線」を共同運行とし、南海電車のJR新大阪駅への乗り入れを検討していることが28日、分かった。関係者による協議が決着すれば、30年近く建設が検討されながら着工のめどが立たなかった、なにわ筋線の計画が前進する。関西国際空港の利便性も飛躍的に高まる。

情報源: 大阪縦走「なにわ筋線」、JR・南海で共同運行 : ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

なにわ筋線のJRと南海の共同路線という話は特段目新しい話ではないが,昔から南海はがんばっても梅田が限界という話はよくあった.

JRの特急はるかは関空開港時は毎時2本運行で多客期は9両編成もあったが,最近は毎時1本で6両のことが多く苦戦中.対京都ルートはLCCの台頭もあり,運賃に渋い客が多いと見えて南海電車の急行+堺筋線直通の阪急電車というのが定番になってきている.

一方,関空快速は環状線をぐるっと回って遠回りな阪和線経由なので時間がかかる上,大阪駅始発ではないので着席サービスに難アリ.

JR側から見れば,JR線の運賃を丸々客から取れないとしても,南海阪急ルートから多少なりとも客を移転できるのではという算段か?(まだ合意したわけではないようだけど)

#趣味的には「おぉ,もしかしたらラピートが京都駅で拝めるのか」などと考えてしまう.でも東武のスペーシアが新宿で見られるご時世なので,アリかも.

#JR特急が南海線路上を走ると使用料の精算が面倒なので,南海の特急をJRの線路上に走らせることで相殺するかも.りんくうタウン-なんば間と大阪-京都間は,だいたい同じ距離.電車のサイズもだいたい同じ.

 

県が独自の期成会-東九州新幹線整備へ

これで概ね出揃ったかな?

 「東九州新幹線」構想について、広瀬勝貞知事は20日、県独自の「整備推進期成会(仮称)」を立ち上げ、官民を挙げて構想実現に取り組むことを表明した。

情報源: 県が独自の期成会 東九州新幹線整備へ 東九州新幹線 – 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate

全幹法に基づく基本計画線のうち,羽越新幹線や奥羽新幹線は建設の要望が出ているし,中央新幹線は工事中,山陰新幹線や四国の新幹線各線についても建設の要望が出ている.北陸中京新幹線は北陸新幹線の米原ルートという形で建設の要望が出ており,いよいよ全く動きのないのは北海道新幹線の旭川までの延長部分と北海道南回り新幹線くらいなものになりつつある模様.(あと,九州横断とか,中国横断とかもあったっけなぁ)

こういったプロジェクト案件は,国土交通省の仕事の範疇なのであるが,担当部局は日本の鉄道ネットワークの将来像を描けていない模様.

どうすんのさ?
無視する?
それとも仕事する?

「新幹線は政治案件だ」などと愚痴っているらしいが,政治の介入をしてほしくないのだったら,口出しされないように先回りしてやっておくのが得策.口出しされてしまうのは,後手後手で仕事をしているから.

整備新幹線の先が見えてきたら,次の話が出てくることくらい,何年も前から分かってることで,何も手を打ってないので愚痴ることになる.

 

北陸新幹線を使った非常時輸送体制の検討開始を!

またもや大きな地震が起こってしまった.お亡くなりになる人はいなかった.だが,いよいよ次がヤバイといわれ始めた.

今を去ること20年ちょっと前,阪神淡路大震災が起こったときに,西日本で内陸の大きな地震が発生し始めると20年ほどで南海地震が来る,などと言われていた.そうかなぁ2030年代半ばって言ってる専門家がいるんだけどなぁ,などと思っていた.

その後,(西の方から並べると)鹿児島県西方沖,福岡,熊本,芸予,鳥取西部,今回の鳥取中部,阪神淡路,能登,など多数の中規模以上の地震が発生.あと大きめのが来ていないのは四国東部(徳島ではあったっけ?)と紀ノ川沿いと京都と奈良と琵琶湖,若狭湾か.

1000年以上前の貞観地震前後に全国で発生した大きな地震についても,その時と同様の地震がここ何年かで発生してきている.あとは首都圏と南海トラフ系だけか? 青木ヶ原樹海も富士山の貞観大噴火の際にできたものらしいじゃないか.

鳥取で大きめの地震が起こったら,いよいよ南海トラフ系リーチという専門家の話もあるようだ.破局的な結果を招きかねない重大なことについては,”いよいよリーチ説” を信じて準備した方が良さそうだ.

さて,日本の動脈である東海道新幹線については,ようやく「バイパス」と称する中央新幹線の工事が始まったところだが,品川駅と名駅というターミナルが対災害的にちょっと微妙な位置である上に,開業がまだ10年ほど先である.

もしかしたら,(開業後でも東海道新幹線の名駅以西が動くのか微妙だが)リニア開業前に南海トラフ系地震が発生したらどうなるだろう.静岡と愛知の各県下で東海道新幹線の線路が大震度に見舞われるとともに,大津波が海に近い線路を襲ったら,数日どころか年単位で不通になる可能性すらある.日本経済沈没だな.

もう,具体的な検討をしておく必要がある状況になってしまったんじゃないかと思う.誰かの顔色を見ている時期ではないだろう.

明日「南海トラフ発生」とすると,航空は臨時輸送体制に即座に入るだろうが,空路の座席はさほど多くない.そうすると陸上ということになるが,高速道路も東名は使えないであろうし,新東名もどの程度使えるのか分からない.使えるとしてもせいぜい片側3車線しかない(しかも,そこは緊急輸送優先だ).

やはり大量輸送機関である鉄道ということになる.東京-金沢間は新幹線,金沢-京都・大阪間が在来線ということになるが,平常時の体制のままだと,席数が足らなくなってしまいそう.車両をかき集めてくるとしても,新幹線にしろ在来線にしろ最近はどこでも走れる電車というのが少なく,路線ごとに使える車種が限られている.言い訳してもできるようになるわけじゃなし.大丈夫か?

もうリニアも北陸新幹線全通も間に合わないかもしれない.
現状の北陸新幹線を使った非常時輸送体制の検討開始を!
そして実際の準備を!