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デジタルATCの流儀の違い

JR東系のデジタルATCは,「ボクにぶつからないように,●●●までに止まってね」と後ろの電車にメッセージを送る.

JR海系のデジタルATCは,「ボクは×××あたりを走ってるので,ぶつからないようにしてね.どこで止まるかは自分で考えてね.」と後ろの電車にメッセージを送る.

通常の使い方だと優劣はさほど無いように見えるが,将来的な高密度運転には後者の方が優位かな.

この流儀の差は微妙なものだが,少なくとも一旦立ち止まって頭を切り換えれば混乱は無い.走りながら,しかも安全側で判断しながら,両方の流儀に対応するのは少々面倒そう.車両側についてはある地点を境に判断基準を切り替えればいい.

だが,後ろの電車に送るメッセージは変換しないといけない場合がある.「ボクにぶつからないように,●●●までに止まってね」は,「●●● = ×××」と単純変換すれば「ボクは×××あたりを走ってるので,ぶつからないようにしてね.どこで止まるかは自分で考えてね.」とは(効率はともかく安全側の判断で)簡単に整合がとれる.

ところが,「ボクは×××あたりを走ってるので,ぶつからないようにしてね.どこで止まるかは自分で考えてね.」というメッセージについては,「××× = ●●●」と単純変換するだけだと「ボクにぶつからないように,●●●までに止まってね」と解釈すると前の新幹線に追い付いてぶつかってしまうかもしれない.なので,後続電車の性能を地上に教えた上で適切な停止位置を地上で計算した上で新たに「●●●」の位置を後続電車に教える必要がありそう.

…というふうに,異なる2つのデジタルATCを走りながら切り替える際の課題の対象法を考えてみたりして.

“雑魚な客数のために面倒なことできるかよ!” と返答してJR東海が失ったかもしれないこと(その4)

やっちまったかもしれないお話の(その4)である.

今回は,輸出への影響についてである.日本の新幹線については,海外から見れば「新幹線」のワンブランドのはずだが,その実,細かなシステムがJR東系とJR海系とで異なっており,そのまま両方を直通で走れる列車は現存しない.

かつて国鉄末期には(アナログATC時代だが)両方走れる車両も試験車として開発され,試験走行もされていたかと思うが,今や昔の話.

さて,米原で北陸新幹線と東海道新幹線が直通運転を行っていたとすると,その車両はJR東系とJR海系とのシステムの差異を克服できる車両ということになったはずだった.

ところが,それを実現させる機会が失われてしまったがために,新幹線を海外販売する際に「オタクの国のシンカンセン,保安装置が統一されなくて面倒なんだってナア」と突っ込まれた際に「いえいえ,両方ちゃんと走れる方法も準備してあります」と返答する術を失ってしまった.

欧州系の高速鉄道が各種のシステムを規格化し,統一して,いわゆるインターオペラビリティを向上させてきているのに対し,日本のシンカンセンはガラパゴス化が進み,日本国内ですら自由に走れないほどタコツボ化が進行していることを証明してしまったとさ.

#システムの多様性という点では,青函トンネルにおける在来線との供用区間(三線軌)の存在や,ミニ新幹線システム(=低速在来線との乗入れ),在来線の保安システムへの対応,異なる電源周波数の切替,雪への対応,総二階建て,320km/h運転,2編成併結運転,地下駅の存在,長大山岳トンネル,etc…JR東日本系の新幹線システムの方が,海外から見ればメニューが豊富で魅力的に見えるかもね.

東海道新幹線の雪落とし作業

#例のごとく与太話なので,あんまり真剣に読まないようにしましょう.

毎冬,雪が降ると東海道新幹線の関ヶ原前後の区間で速度を落として走行し,名古屋駅などで車体に付着した雪を落とす作業をしている.

恒例作業だが,恒例ならいっそ車庫にある洗車機みたいなので,床下を重点的にするような雪落とし機を設置しとけばいいんじゃないかと思うんだが.いかんのか?

#そこまでするほどの稼働率にはならないかも.

新幹線の速さのイメージ

皆さんの新幹線の速さのイメージというと,こういう感じだろうか?
(音量注意)

 

たぶん,あまり違和感が無かったかと思うが,でも,実はこれ2倍速に編集してあり,x1倍再生だとこうなる.(こっちも音量注意)

 

 

皆さん,かなり高速交通に神経が慣らされてますね.(最初のビデオは先日の講演会の終わりでプレゼン画面に挿入したものだが,倍速編集だということにはあまり気付かれていない模様.)

リニアと新幹線(*)の速度の比はだいたい倍なので,最初のビデオがリニア新幹線実現時の列車通過イメージという感じだろうかねぇ.

(*)GPSで測ってみると,新幹線が本当に最高速度で走っていることは少ない.

 

初夢鉄道2017(物流事情編)

休みボケの平日,午睡の間にこんな夢を見た.

高速道路経由の自動運転トラックが運行されており,自動運転トラックが隊列を組んで走行しているが,荷台に勝手に侵入して窃盗を働くものが多くなり,荷室の密閉性についての議論が行われている.人通りの少ないルートでは,わざとトラックの進路妨害をすることで自動停止させ,荷物を強奪する事件が増えている.

トラックの運転手不足に加えてこんな事情もあり,鉄道貨物の地位がさらに向上している.

在来幹線の輸送能力が問題になってきており,株式上場を果たしたJR貨物が自社線路を持ちたいと考え始めている.特に東京-大阪間は全国的なネットワークの要になっているので,ここをなんとかしたい.かつて物流新幹線構想というのがあったが,仕様がやや突飛で実現しなかった.今度は曲線半径は130キロ運転対応程度で設計され,勾配は妙な補機を付けなくても良いように最初からゆるい勾配にするようである.

東海道新幹線では実現しなかったが,山陽新幹線と北陸新幹線が直通運転されるようになったこと,両新幹線の線路容量に余裕があることから,ボディに黒い猫がペイントされた薄緑色&クリーム色のツートンカラーの荷物専用新幹線が運転されるようになった.荷下ろしと積み込みの時間を短縮できるように,最初から荷物の自動積み込み装置が標準装備である.

専用列車の他にも,北陸山陽新幹線(かつては東海道山陽新幹線と呼ばれることがあったが,今や北陸山陽新幹線と呼ばれることが多い)の各列車の車端1両は荷物車になっている.自動積み込み装置のおかげで必ずしも荷物列車は直通運転する必要が無くなり,中継駅での自動積み替えを介して関西-北海道間や関東-九州間などでよく利用されているようだ.

平成時代末期には各家庭への末端の配達が問題になっていたが,集合住宅では宅配ボックスの設置が義務づけられ,幾分状況は改善しているようである.

IoTと称して各種機器のネット接続が試みられたが,意味の無いネット接続も多く,街中を歩くとwebブラウザのポップアップ広告のように各種の広告が半強制的に視界に入るようになり,景観汚染が問題になっている.同時に進行した無線に反応するチップの導入が物流面で進み,使い捨てチップが段ボール箱に貼り付けられることが標準になった.だが,使われているチップの絶対数が多すぎて無線チップ汚染が進んでいる.

…というところで目が覚めた.

機関車の推進軸

電車のモーターは車輪のすぐそばにあるが,ディーゼル機関車のエンジンは車体そのものに収まっている.

そうすると,車体のエンジンから台車に回転力を伝える必要があるので,こういう太い丸棒でエンジンと台車とが結ばれることになる.

剛結すると役に立たないので,振動や台車の回転を吸収できるように継ぎ手が付いており,このおかげでこの丸棒が自由に回転できる.

なら電車もこういう方式にすれば,FGTのようなややこしい台車を若干簡単にできるわけだが,欠点もある.

この丸棒,整備不良でたまに線路に落っことして運行不能になったりする.運行不能になるだけならいいが,運が悪いとこの丸棒のおかげで車両が破損したり脱線転覆したりする可能性もある.

ちゅうことで,新幹線のような高速運転する電車にはあんまり向いておらず,FGT改良の切り札にはなかなかなりそうにない.

「米原ルート」の開業時期(3)

さらに話は続く

今日は「JR東海リスク」を回避し,乗入れOKの判断を待って米原ルートを着工することを考えてみよう.

最初に判断結果が変わる可能性があるのは,リニアの名古屋開業である2027年である.この段階までは判断を変える具体的な材料の変化は発生しない.それまでに環境影響評価を終わらせておいて,即着工するとすると2027年着工で2037年開業.これだと小浜-京都ルートを現時点で確定させて着工に向けて財源確保の努力をするのと開業時期は変わらない(か,むしろ米原ルート採用の方が遅い).

2027年段階で色よい返事を得ることが出来ずに2037年まで着工を延期したとしよう.乗入れOKの返事をもらって即着工し,10年で開業させたとすると2047年開業.これだと,財源確保サボタージュ方針の2031年着工で2046年開業の小浜-京都ルートと変わらない(か,むしろ米原ルート採用の方が遅い).

さらに最悪のケースとして,2037年まで着工を延期したものの,乗入れNGの返事が返ってきた場合は,この段階から小浜-京都ルートの建設を開始しなければならなくなる.環境影響評価から開始して工期15年なら2057年開業.当webサイトをご覧の読者の半分くらいは(悪いことをしていなければ)天国から様子をうかがうレベルの時期である.

結局,この最悪の2037年小浜-京都ルート着工や永久米原乗り換えの可能性を考えると,2027年に米原ルート着工というのも実際には採択しにくい.

全体の話をまとめると,米原ルートはJR東海が乗入れOKの返事をいつするかに依存しており,現実的には,2017年の現時点でOKの返事をしていない限り採択しにくい案,ということになる.米原ルート採用は現時点でJR東海を説得していることが必要である.誰か説得できるの?

 

「米原ルート」の開業時期(2)

昨日の話の続きである.

整備新幹線の工事は,それぞれ当初段階ではその時々の資金状況のままだった場合を想定して建設時期が表明されている.だが実際には,これまでの整備新幹線の建設工事では,建設部隊の手が暇にならないように工事事業が連続して発生するように日本全体での新幹線の建設工事工程が組まれるとともに,それを実現すべく資金確保の工夫がその都度行われていると思われる.

ということで,何らかの資金確保が出来て,2031年まで待たずして建設工事が開始できる場合を考えてみよう.おそらくこっちの方が現実に近いと思う.

まず京都-小浜ルートの方を先に考えてみよう.数年の環境影響評価で詳細ルートを確定させた上で,2021年着工としよう.長大トンネルが多くて工期は15年かかるとしよう.そうすると2036年開業となる.リニアの大阪開業の2037年と変わらない,それならばリニアが大阪まで開業すれば東海道新幹線の線路容量が空くので,米原ルートでの大阪乗入れが出来るから,米原ルートでいいではないか,という話になると思う.一応,その話は正しい.ただし,一応,である.

米原ルートの最大のネックは東海道新幹線利用である点だ.現状ではJR東海のトップは乗入れできるかどうか「先のことだからわからない」と発言している.個人的には,2017年の現時点でも毎時1-2本程度は乗り入れ可能だと思っているが,まぁ当の鉄道会社のトップの判断なので,致し方がない.

じゃぁ,「先のこと」ではなくなるのはいつなのかをよく考えてみる.最初のタイミングが訪れるのは現在の2017年ではなくてリニアの名古屋開業である2027年である.この段階で東海道新幹線の旅客数が名古屋以西で段落ちしている分,東海道新幹線の大阪-名古屋間の本数を減じることが可能という判断になれば,目出度く米原から北陸新幹線を乗り入れることが可能となるかもしれない.

次の「先のこと」ではなくなるタイミングは,リニアの大阪開業の2037年ということだ.この時点で東海道新幹線の電車の本数を減じることが可能となれば北陸新幹線を乗り入れることが可能となる.

じゃぁ,米原ルートを現段階でルートとして採用し,2021年頃着工,2031年頃米原まで完成,その段階で乗り入れ可能なら乗入れ,不能ならば数年間は米原で乗り換え,2037年には乗り入れ開始,という段取りが可能かというと,これはリスクを伴う.

どういうリスクかというと,2037年のリニア大阪開業を待っても,いろいろと難癖付けて「乗入れNG」とJR東海が返答する可能性があるからである.こうなれば米原駅で永久に乗換を強いられることになる.

米原ルートの最大の利点は東海道新幹線利用(による工費節減)だが,最大のリスクも東海道新幹線利用(による乗入れ拒否)だということである.

(つづく)

 

「米原ルート」の開業時期(1)

話が長くなりそうなので,3回シリーズである.

北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートについては,与党が小浜と京都を経由するルートにする方針であることを表明しているが,これに対してしばしば米原ルートは建設延長が短いので5年程度で出来るという主張がなされている.が,本当にそう簡単なんだろうか?

小浜-京都ルートの完成時期は国交省の資料によると2031年着工で2046年開業とされている.これは2030年度に北海道新幹線が開業した後に手を付ける,という意味であって,資金がその時期にならないと都合がつかないからだということでもある.要するに積極的に資金確保をしないと,そういう時期にしか開業できないという意味でもある.

じゃぁ,米原ルートを採用して若干工期が短くなれば,しないシリーズ姿勢の国交省が早期着手するかというと,JR西日本自身が「ワシが金を出す」とでも言わない限り見通しは明るくない.要するに,基本的には米原ルートであっても2031年着工であろう.福井-滋賀県境にはかつての柳ヶ瀬越え区間があり,工事が容易と言うほどでもないので標準的な10年を工期と見積もれば2041年開業,つまりせいぜい数年早まる程度ではないだろうか.

まぁ,この程度の話は簡単だが,まだまだ込み入った話は続く.

(つづく)