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LRTの電線はどこで支えているか

ヨーロッパ方面などに出かけた際,一緒に行った人からよく「変な写真ばっかりとっている」と言われる.たしかに.この写真もそうかもしれない.

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LRTを日本で整備する際に問題となるのが,架線の処理である.架線レストラムを導入するような話が多いが,地中埋め込み式はコスト高だし,バッテリ式はまだ実績が少ないし,なかなか悩ましいところである.

じゃぁ電線は仕方ないとして,電柱は何とかなるかというと,欧州の市街地では上の写真のような処理が多い.建物の壁で支えている.路面電車の通る街路に面した建物は,協力する義務があるそうで,当然ながらそれを前提とした構造になっているんだろうと思う.頭上の電線は残るが,電柱が無いとかなりうっとうしさは軽減できている.

じゃぁ,建物があまりないところはどうかというと・・・緑化電柱!

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電柱があっても,ビーム部分を含めて形状を工夫すると,さほど鬱陶しさがないのは,うまい処理と言うべきか.

 

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秘密の地下鉄トンネル

今は道路だけが通じている大阪港の夢咲トンネルであるが,道路の上下線間には地下鉄用の空間が既に準備されている.
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DSCN0077もちろん,まだ舞洲と咲洲を結ぶ鉄道の計画は決まっておらず,近隣では咲洲まで地下鉄中央線が伸びてコスモスクエアで止まっており,これを延伸する形になると思われる.地下鉄中央線がコスモスクエアまで延伸された際,ニューラムとの接続駅がWTC前ではなくてコスモスクエアだったのはこういった将来構想が影響しているのだろう.(あるいは,北側からJRが舞洲経由でこのトンネルを通ってコスモスクエアに至るのかもしれないが,定かではない.)

今後どうなるのか定かではないが,トンネル部分だけは既に完成している.道路がこの沈埋トンネルに入るとき,上下道路間が微妙に開いているのは,この秘密の地下鉄空間があるからである.

ちんまいトンネル?

「小さいトンネル」のことではない.正しくは「沈埋トンネル」と言って,あらかじめ箱状につくっておいたコンクリート製のトンネルを,川や海の底に掘った溝に埋めるタイプのトンネルのことである.造船所のドックで作られて,現場に運ばれる.

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青函トンネルなどは,海底下をまさに掘り進めて作ったトンネルであるが,沈埋トンネルは港湾部などにある比較的短距離の浅い水深のところに作られるトンネルで,分割して作れるので割と短期で完成することが多く,浅いので延長も短い.この写真のトンネルは夢咲トンネル用である.

最近ではボスポラス海峡の地下鉄トンネルが沈埋トンネルでつくられている.

長いものでは,サンフランシスコのバートという高速地下鉄の海底トンネルは5−6kmもある.

沈埋トンネルで大阪湾を通って関空や淡路島へリニアを通してしまえ,という意見もあったと思うが,見てのとおり鋼材を多用しているので,たぶんちとつらい.

大阪駅のホームのリニューアル工事

なかなか無い光景である.駅のホームというのは,古いホームに継ぎ足し継ぎ足し使われることが多いのだが,このホームは足の部分から作り直している.確か大阪駅は地盤があんまりよろしくない場所に建っており,不同沈下でホームや線路が波打ちやすいのが辛いところ.

さてここでクイズ.その昔,特急つばめ号が大阪駅から東京に向かって走るとき,全行程で最も急な勾配はどこにあったでしょうか?

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まぁ,この項目でのクイズなので,答えはバレバレであるが,大阪駅の構内にあったらしい.理論上は平らだが,不同沈下で波打っているので部分的に急勾配があり,そこに機関車がはまり込んでいると列車を引き出すのがなかなか大変だったそうな.

部分複線化(関西本線編)

都市間連絡路線でも高度経済成長期に設備投資してもらえなかった路線では未だに単線区間があったりなんかする.関西本線もそのような路線の一つで,奈良−大阪間は大阪都市圏の通勤路線として複線電化されていたが,名古屋口は長らくほったらかし.比較的近年に電化および複線化の工事がされている.

複線化といっても,必要最低限の部分複線化で,途中には珍しい信号場があったりなんかする.この駅部分は複線.

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ここで複線終わり.

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ここは複線にしたくても隣に近鉄が走っていて厳しそう.

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ここからしばらくは複線だが,よく見ると右側通行.つまり,複線区間ではなくて信号場の構内と言うこと.

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ここで終わり.

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途中のインフラは複線化を前提に設計してあることも多い.線路をまたぐ道路跨線橋を観察すると複線化の構想があるかどうかわかりやすいことが多い.明確な予定がなくても,出戻り工事を防ぐために2線分をまたぐ設計になっていることが多い.

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あと50日

大阪の人がうかうかしているうちに,北陸新幹線が東京から長野を経て金沢まで来ようとしている.車庫には新しい電車が.

IMG_0742金沢から東でサンダーバードやしらさぎ,はくたかを見かけるのもあと少し.

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IMG_0787あと50日らしい.沿線にカメラ小僧が多い.

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富山ライトレール以前の最新路面電車新線

新設の路面電車というと2006年開業の富山ライトレールが有名であるが,それ以前の新設区間というと1982年開業の豊橋鉄道の軌道線の支線(運動公園前)約600mであった.
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今は駅前の乗り入れ方法の変更等で全国各地に少しづつ新設・移設の例があるが,当時は参考事例がこの豊橋の事例(この支線と,駅前乗り入れ区間の延伸部分)しかなく,建設単価などでは良く引き合いに出されていた.
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一つ手前の井原電停で赤岩方面と分岐し,それまで複線区間であったものが赤岩,運動公園前ともに単線になっている.運転本数も半々である.
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駅前は広場まで乗り入れ延伸されている.最近は珍しくなくなったが,先進事例の一つである.
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新聞記事の精度(朝日新聞編)

朝日新聞のweb版にこういう記事がある.
香川)経団連、四国の新幹線構想に慎重姿勢:朝日新聞デジタル.
経団連の会長が四国の新幹線構想に関し,「4県都を結ぶルートでも1・5兆円。出来た道路にしろ、新幹線にしろメンテナンス費用がかかる」と指摘し,続けて「国の厳しい財政事情を考えると、他地域のプロジェクトに比べ、これだけメリットがあるとアピールすることが重要」と発言し,何となく否定的なイメージのコメントをしたことになっているのだが,ちょっと引っかかる内容である.
そもそも,「朝日新聞」の時点で,事実関係の伝聞の精度に問題がある可能性が高く,単なる記者の創作料理,じゃなかった創作記事の可能性があるのだが,いずれにせよはっきり言えるのは・・・

  • 完成した新幹線のメンテナンス費用を国が出すことはない

ということである.東海道山陽新幹線や東北新幹線に比べて客が少ないとしても,電気代や乗務員の人件費,線路の保守費などが出せないほどのレベルの新幹線はさすがに建設されない.市街地の一般道路は建設後の維持費は税金により賄われるのだが・・・

  • 新幹線の維持は運賃(と料金)により賄われる

ということを認識していない記事である.経済人が誤ったのか,記者が誤ったのかはこの記事だけでは判断できないが,いずれにせよレベルの低い記述で頭が痛い.
なお,この件に関する他社の書いた記事ではそういうネガティブなことは書かれていないようなので,印象操作を目的とした創作記事(あるいは,そういう意図がなくても正確な記事を書く能力が無くなってしまった記者が書いた記事)の可能性が高い.
多様な見地からの意見は大事であるが,事実関係が把握できていないと正しい結論には至らない.そろそろポジショントークは止めて,反対意見でもけっこうなので,正確に議論して欲しいものである.
(追伸)私が絵本以外で親に買ってもらった最初の本は「日本の鉄道」と「続・日本の鉄道」朝日新聞社刊である.今見ても,なかなかクオリティーが高い.

アンダーパス(建物の・・・)

日本でアンダーパスというと,線路 と道路がクロスする際,道路側を地下化する場合などについて「アンダーパス」と呼んだりする.
じゃぁ,このケースは?
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DSCN5283これ,よく見ると,ショッピングセンターの下を道路とLRT軌道が「アンダーパス」しているというものである.日本でもありそうな気がするが,・・・たぶん無いと思う.ビルを高速道路が突っ切っているのはあったと思う.ビルの1階部分が柱だけで,そこを道路が通過・・・と言うか,道路の上部空間を利用して店舗等になっている例もあったと思う.
上のは,ショッピングセンターの下をくぐっている.珍しいなと思うが,・・・そうでもないかな.

【祝】整備新幹線開業前倒し(だが・・・)

まだ決まったわけではないのだが・・・整備新幹線(北海道,北陸,長崎)の完成時期を早めるべく,資金計画の練り直しがされつつある.
その点だけを取り上げれば「【祝】整備新幹線開業前倒し」なのだが,そう手放しでも喜べない.
新しい資金計画のポイントは,各整備新幹線が開業することによって発生することになっている将来のリース料収入を担保にして,借金をして建設資金に充当して完成を早めるというものである.新たな国庫財源を探すことなく建設時期を早められるということであるのだが,ちょっと待てよ・・・その案は,タコが自分の足食ってるに近いぞ.
確かに開業は早まり,発生する便益を早期に享受できる.そういう点では社会的便益は大きい.ところが,各整備新幹線が完成するに至った場合,新たに完成した新線のリース料収入は借金の返済に充てられ,リース料収入を財源とした新たな路線の建設はできないことになる.
つまり,どういうことかというと,「今着手している路線の建設が終わったら,新幹線の建設は終わり,終了」ということである.
1970年の全幹法成立直後の基本計画が,2010年代半ばの段階の観点において建設すべきか,せざるべきか,しないとするならば他の都市間鉄道サービス改善の代替案は存在するのか,等々の一切の検討をすることなく,「今着手している路線の建設が終わったら,新幹線の建設は終わり,終了」である.
この国には,幹線鉄道網計画全体を俯瞰できるリーダーは,残念ながら存在しないようである.ちゃんと財源探そうよ・・・