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幹線鉄道計画のPDCAはまわっているか?

授業期間が終わると学生が部屋に訪ねてくる機会もめっきり減るので,この時期になると「BGM」をかけながら仕事をすることが多い.

音楽を聴くと…唄が頭の中をぐるぐる回って仕事にならない.ラジオもおしゃべりは同じようなもので,話に気をとられて仕事にならない.歌詞のない音楽は,まぁ許容範囲か.ピアノ曲あたりが無難.

そして最近発見した仕事に最適な「BGM」はこれだ.

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

名付けて,「Back Ground Meeting=BGM」

内容は下手なニュース番組よりもよっぽど中味がある(当たり前か).時々新幹線ネタや国土整備ネタも出てくるぞ.変な「マスコミフィルター」がかかってないので,お勧め.難点は長いこと.会期中は毎日7時間とか.並行して委員会が開かれていることも多いので,延べ時間はものすごいぞ.衆参でダブルだ.

さて,最近この国会中継でよく聞くようになったキーワードがある.それは「PDCA」.JABEEだけでなく,ついに国会でもPDCAを聞くことになったとは,時代も進んだものである.

Plan→Do→Check→Action→Plan→…

計画立ててみて,やってみて,うまくいったかどうだか検討して,内容修正して,またやってみて,の繰り返し.

ところで,標題の幹線鉄道計画だが,1970年代に法律つくって,73年に具体的な計画立てて,…いまだに73年に閣議決定されたから云々ということが論拠になって話が続くことが多いが,冷静になって考えてみよう.

おかしいだろ.

1872年に鉄道が初めて走って,最初の鉄道政策である鉄道敷設法までが20年.
1892年に鉄道敷設法ができて,建主改従,改主建従の議論があって改正されるまでが30年.
1922年に改正鉄道敷設法できて,太平洋戦争開戦から「もはや戦後ではない」までの15年を除いて,初の新幹線政策ができるまでが33年.
1970年の全国新幹線鉄道整備法ができて,今年で45年目

おかしいだろ.

日本の幹線鉄道計画のPDCAはまわっているか?その答えは…?

#サボってる?>担当部署殿

北陸新幹線開通で富山に行くのが面倒になりそうな件

時刻表2015年3月号を入手.【祝】北陸新幹線開業なのだが,富山に行くのが微妙にめんどくさそう.

金沢-富山間はサンダーバードで約35-40分.これが北陸新幹線開業で大阪方面からがどうなるかというと…

金沢着 乗換時間 金沢発 富山着 金沢着→富山着
946 10分 956 1019 33分
1023 8分 1031 1054 31分
1102 //
1113 9分 1132 1155 42分
1156 10分 1206 1229 33分
1217 17分 1234 1257 40分
1256 10分 1306 1329 33分
1317 16分 1333 1356 39分
1356 10分 1406 1429 33分
1420 //
1456 10分 1506 1529 33分
1556 10分 1606 1629 33分
1653 10分 1703 1726 33分
1756 11分 1807 1829 33分
1852 11分 1903 1925 33分
1913 10分 1923 1946 33分
1956 12分 2008 2031 35分
2015 //
2056 10分 2106 2129 33分
2121 14分 2135 2157 36分
2209 10分 2219 2242 33分
2256 10分 2306 2329 33分
2329 8分 2337 2359 30分

乗換が1回増で,時間短縮が5分くらい.

山形新幹線が乗り換え1回減で,その後の調査で客の動向が約30分短縮相当らしいので,北陸新幹線の開業で富山が心理的に25分くらい遠くなる感じか.まぁ,「金沢止め」が少なくなって実質本数若干増なので,その辺はちょっと改善か(青字).

大阪の人がボーッとしているうちに,北陸が首都圏方面へと離れて行く.

常磐新線160KM/H運転計画はいずこへ?

つくばエクスプレスこと常磐新線.都心は全く地下鉄そのものだが…

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地上に出ると近郊電車そのもの.

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そしてさらに都心から離れると,何とも立派な真っ直ぐな線路.確か元々は160km/h運転を想定して計画されていた路線のはず.

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その昔,全国新幹線鉄道整備法に基づいて全国的な新幹線網を構築すべしという基本計画が立てられる前,どのようなネットワーク形態が適切かを検討した際の案の一つとして,首都圏5方面に短距離新幹線を建設する案があった.

その一つは千葉方面の成田新幹線であり,整備計画にもなったが沿線の反対に遭って廃案.甲府方面への新幹線は,東京大阪間の中央新幹線計画に吸収されて消滅.

そして常磐新線は常磐新幹線計画を祖とする計画であり,高速運転が構想されていた.常磐新線160km/h運転計画はいずこへ? 競争相手がいないなら130km/h十分という判断か?

航空コンテナがあるなら新幹線コンテナがあってもいいじゃないか

・・・と,いつも思う.

東海道新幹線が計画された際に(方便だとは良くいわれるが)貨物電車を走らせて,いわゆる国鉄コンテナを東京−大阪間で輸送しようという計画があった.そのための風圧試験も行われて,150キロ運転くらいまでなら何とか使えそうだが,それ以上は転倒しそうだということで,解決が先送りになっている.

東海道新幹線貨物列車は,夜間に150キロ運転で東京−大阪間を結ぶという話が一応あったが,皆がよくご存じのように夜間は保守作業に充てられ,実現はしていない.

その後,放置されていた課題は青函トンネルの貨物列車と新幹線の風圧問題へと,50年の歳月を経て繋がるわけだが,そもそも裸のコンテナを積載して走らせるから問題なわけで,車体内に収納するコンテナならばさほど問題ないはずである.

ボディ内に収納するコンテナといえば,これ.

DSCN0019

そう,航空コンテナである.いくつかのサイズの規格があるが,標準的なサイズのものはそのまま新幹線の車体内にも収まりそうなサイズである.

DSCN0021

TGV郵便列車のような専用車両で,車内に航空コンテナを収容させて走らせれば高速走行でも何の問題も無いと思うのだが,ダメかな.既にある技術の組合せで実現できるので,割と簡単に実現できると思うのだが.

新聞記事の精度(読売新聞四国編)

ほとんど事実関係だけ書いているので,さほど引っかかる点は無いのだが・・・

四国新幹線実現へ、4県トップら愛媛でシンポ : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE).

・・・(いつまでリンクが生きているかわからないが)この記事の記述.

  • 波床はとこ正敏・大阪産業大工学部教授が基調講演を行い、「全国で高速道路や空港などが整備されたが、都市の発展にはほとんど貢献していない。新幹線が通ると政令指定都市クラスに成長し、絶大な効果をもつ」と持論を展開した。」

→都市の発展にはほとんど貢献していないんじゃなくて,国土の均衡ある発展を実現するまでには至っていない,というあたりが最も正確.それから,「持論(=あることに関して前から主張し続けている,その人独自の意見。)」という表現.間違っちゃぁいないんだが,論拠無くむやみに言っているように聞こえかねないので補足.

この手の講演では時間が限られているのでわかりやすい部分を使って話をするのだが,その背景はもしも話せば結構長かったりする.実は交通整備と地域の発展に関する研究は,いくつかの研究テーマのうち最も基本の部分であり,博士論文がそのテーマだったりなんかする.つまりいわゆる「1丁目1番地」.説明すると長すぎるので,最もわかりやすいお話しを取り上げているということである.なお,講演で使うスライドは,元々は学部1年生の授業用であり,講演内容のリクエストと時間の長さによっては「汽笛一声新橋を」から話し始める.

詳しくはこのサイトの下の方にある「明治期以降の交通網整備が我が国の地域構造に及ぼした影響に関する研究」のpdfファイルを参照.全部説明すると,2時間はかかる.

LinkIcon表紙 [PDF 20KB]LinkIcon序 [PDF 12KB]LinkIcon目次 [PDF 16KB]LinkIcon第1章 [PDF 60KB]LinkIcon第2章 [PDF 160KB]LinkIcon第3章 [PDF 276KB]LinkIcon第4章 [PDF 312KB]LinkIcon第5章 [PDF 236KB]LinkIcon第6章 [PDF 104KB]LinkIcon第7章 [PDF 288KB]LinkIcon第8章 [PDF 28KB]LinkIcon謝辞 [PDF 8KB]

GCT01-201(フリーゲージトレイン)

伊予西条駅に隣接して設置されている「四国鉄道文化館」.赤い電気式ディーゼル機関車や0系新幹線が有名であるが,こういう珍品も展示保存されている.

新幹線?新型特急?いえいえ,もっと珍品.

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妻面の名盤にはこう記されている.つまり「フリーゲージトレイン」.新幹線用の標準軌と在来線用の狭軌の両方を走れる車両である.GCT01系.車重が45トンもあり,最近の電車が30トン弱から40トン弱程度であることを考えると,重量級である.この重さがなかなか在来線で高速走行できなかった原因の一つかも.

IMG_8382

そしてこの電車の最大の特徴は台車である.車軸の真ん中にジャバラのようなものが付いており,ここが伸縮か?

IMG_8384

車軸端部分.

IMG_8386

ダンパが2つも付いており,重装備.速度があまり出ない割にダンパを2つも付けているのは,車輪間の軌間の精度が悪くて蛇行動しやすいからだろうか?

IMG_8389

IMG_8390スペインにも軌間可変式の「電車」が存在するのだが,モーターが台車ではなく車体床下に付いているようであり(ディーゼルカーのエンジンをモーターに変えたような構造?),構造がだいぶ違うようである.

岡山駅の路面電車停留所予定地

そのうちにBefore & Afterの比較写真を並べてやろうと,あらかじめ写真を撮っておくのだが,なかなか実現しないのも多い.

例えば,岡山.低床式電車の「MOMO」で有名だが,多くの電車はこんな感じ.

DSCN9935

岡山駅前まで来ているのだが,駅舎からはちょっと離れている.

DSCN9952

駅前広場に乗り入れる構想があるのだが,バスの取り回し方が難しいらしく,なかなか実現しない.実現していれば下の写真の右上から左上−中あたりまで軌道が延びてくるだろうと思っているが,いつAfterの写真が撮れるやら.

DSCN9943

あれ?住民投票できるんじゃなかったの??

大阪府民だから,「府市統合(大阪都構想)」のコメントしても良いよね.おととい聞いた話なんだが,まぁ詳しいことはリンク先読んだ方がいいんだけど…

  • 【事実1】今回の住民投票で決まっても,「大阪都」にはなりません.
    →知ってた.
  • 【事実2】今の「都構想」は,要するに「大阪市を解体して五つの特別区に分割する」ことです.
    →まぁ知ってた.
  • 【事実3】年間2200億円の大阪市民の税金が市外に「流出」します.
    →ふーん,そうなんだ.(府民だが市民ではないので)大阪市民大変そう.
  • 【事実4】流出した2200億円の多くが,大阪市「外」に使われます.
    →まぁ,そやろな.市民じゃない府民はトクかもな.
  • 【事実5】特別区の人口比は東京は「7割」,でも大阪では「たった3割」
    →言われてみりゃ,大阪市って大阪府下では割とこじんまりしてるし,人口分布は思い切りドーナツ化してるし,そうかもな.
  • 【事実6】東京23区の人々は,「東京市」が無いせいで「損」をしています.
    →そやろな.
  • 【事実7】東京の繁栄は「都」という仕組みのせいでなく,「一極集中」の賜(たまもの)です.
    →そうそう.そうやで.ローカルな都市の仕組みの問題とちがって,国の構造の問題やで.「すべての道路も鉄道も航空路も,東京に続く」やで.本社も東京ばっかりやで.大阪を見限って東京に移転した会社が山ほどあるし.大阪に「名ばかり本社」しかない会社もけっこうあるし.リニアとか,北陸新幹線とか,山陰新幹線とか,四国新幹線とか,その辺の方が影響絶大やで.でも,このことを指摘すると大阪人ってすぐ怒るで.

そして,個人的には最も驚いたのが,ここ.冒頭部分.「えーっ,知らんかったん!?」って言われてしもうたがな.

  • 今年平成27年の1月,「大阪都構想」を実現するかどうかを決める,「住民投票」を行うことが決まりました.住民投票の対象者は,現在の「大阪市民」です.

んん?あれっ?府民も住民投票するっちゅう話じゃなかったっけ?
「府市統合」だよね.なんか,最初と話が違うような…

「大阪市解体決定」=「府市統合goサインの民意」?

あれ?「府民の民意」はどう反映されるんかいな?

#アホとかバカとか言ってないで,誤解を受けていると思うなら丁寧に説明するのがお仕事.ましてや前例の少ない事例ならなおさら.

地震動予測地図とリニアの近畿圏サブターミナル

全国地震動予測地図2014年版の観察はまだ続く.このファイルのp.72やp.108を参照.今回は近畿編である.

以前にも書いたように,全国新幹線鉄道整備法が想定する新幹線網の最大の弱点は大阪だ.具体的には新大阪駅になろう.かといって,リニアが近畿まで達した場合に終点を大阪(新大阪駅)にしないわけにはいかない.つまり,ネットワークのリタンダンシーを考慮する場合は,それ以外の面で工夫することになる.つまりサブターミナルだ.

東西間交通のリスクを避けるためには,東海道新幹線とリニアは完全に別経路にすべきだという意見があるが,両者とも地上線ならそういう話になる.だが,リニアは都市部では大深度地下線が基本だ.つまり,地下鉄.阪神淡路大震災では,ごく浅いオープンカット工法で作られた地下鉄駅がつぶれた例はあるが,それは例外で,一般的には今でも地下構造物は地震に強いと言える(ただし,水没に強いかどうかは別問題なので,リニア名古屋駅とリニア品川駅については,慎重な対策が必要).すなわち,地下駅なら東海道新幹線と交差してもさほど地震リスク上は大きな問題はない.逆にリニアと新幹線が別経路でも,地上駅だと影響が出る可能性がある.

さて,リニアの近畿圏サブターミナルの要件としては,東海道新幹線途絶時にも京阪神圏に出やすく, なおかつ広域的なアクセスにも使えることである.

前者については,サブターミナルが京都の場合はJR線,阪急,京阪などいくつかの方法で大阪平野に達することができる(ただし,淀川水系付近の低地は地震のリスク高め).京都でも奈良でもない中途半端な位置でも,JR片町線や近鉄線を使って大阪平野に達するのは可能(ただし,大阪平野東部は地震のリスク高め).奈良であってもJR関西線や近鉄線で到達できる(ただし,大阪平野東部と奈良盆地やや南側は地震のリスク高め).ということで,大阪平野へのアクセスではさほど決定的な差はない.

次に広域利便性という観点では,京都については山陰新幹線や北陸新幹線が京都経由で整備されていれば広域的なサブターミナルになり得る. 京都でも奈良でもない中途半端な位置の場合は,山陰新幹線や北陸新幹線が京都経由で整備されるとともに,京都-奈良間にも高速なアクセス鉄道でも整備されていないと少々辛いかもしれない.奈良の場合はさらに広域アクセス性は低下するので,サブターミナルの性能は低下する.

そして,もしも副首都機能が近畿にやってきて,大阪の東隣のリニア駅がその地区に隣接するのなら,それもまた良し.

こういう議論が審議会であっても良かったと思うのだが,自由な議論ができるような雰囲気ではなかったのかしら.

なぜ「遷都」や「首都機能移転」ではなく「バックアップ」なのかをゲスる

今から20-30年前には「遷都」についていろいろと議論があった.「首都機能移転」と言葉を変えても,基本的には首都を移すという意味では同じである.リニア新幹線整備とともに,首都を移転させたり,あるいは沿線に首都機能を分散させたりといった案が様々に議論されてきた.

ところが,実際に巨大地震が東北で発生し,全国地震動予測が改訂されて首都圏が大地震に襲われる可能性が高いことが明確になってきたにもかかわらず,「バックアップ」の議論しかできていない.そのバックアップも,なぜか立川らしい.それって,意味あるのか?

もし「遷都」あるいは「首都機能移転」が実施されると,東京のビル賃料や地価が下がり,不動産価値は低下するだろう.企業は土地や不動産を保有しているので,資産価値が減少すると含み損が増大し,何かと経済活動がしにくくなるかもしれない.

だが,まさかとは思うが,そんなことを考慮して,東京の会社に気配りするあまり,「遷都」あるいは「首都機能移転」をためらって東京の機能を残す「バックアップ」にとどまり,その「バックアップ」も骨抜き状態にしようとしているのなら具合が悪い.

そういえば,原子炉の資産価値低下を心配して,海水注入を躊躇して事故をこじらせた前政権と電力会社というのもあったっけ.

早急に東京の経済活動を「疎開」させ,少なくとも本格的な「バックアップ」,できれば「遷都」あるいは「首都機能移転」が実施されなければマズいぞ.

今の日本は「東京転けたら,みな転けた」になりかねないので,このままでは30年以内の日本の滅亡確率が70%なのかもしれない.