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整備新幹線の貸付料の延長について

整備新幹線の線路などの利用料として、JR各社が国に払う「貸付料」について、国土交通省は、開業から30年としている支払いの期間を30年延長し、支払額の変動も可能にする方針などをとりまとめました。北…

情報源: JR各社が国に支払う整備新幹線の「貸付料」 “次の30年”の延長方針を国交省がとりまとめ 増額もありうる仕組みにJR東日本など懸念も(TBS NEWS DIG Powered by JNN) – Yahoo!ニュース

この話(リンク先はリンク切れになりやすいかも). 時折マスコミからコメントを求められるが,どこも話した内容に比して短く編集されていて,「なんだかなぁ~」という状態である.ということで,フルバージョン.

【貸付料の延長】

JRは,30年間の貸付期間が終わった後は,格安で借りられるような「JRと国の約束」があったとしているが,そもそも約束した時期(1991)は株主が国だった頃で,しかも旅客鉄道会社法という法律のもとにあった状態で,一種の「国の組織の中での約束」のような状態である. その後完全に民営化して,JR東は2002年に,JR西は2004年に,JR東海は2006年に,JR九州は2016年に,それぞれ株が全部売り払われて,法律の縛りからも完全に解き放たれている.

今や純然たる民間会社であり,東急とか阪急とかのような昔からの民営鉄道と同じ扱いである.そんな民間会社に国有資産をタダ同然で貸し出すことはできない. 国民の財産を純然たる民間企業に対して,勝手にタダ同然で貸し出すと,背任行為を問われる可能性すらある.本来なら入札しなければならない案件だ.(だが実際には応募できる能力=新幹線の運営能力のある事業者が国内にはほぼ無い*ので,話し合いで決めざるを得ない.)

実際に,民鉄の方から「JRって,国鉄の借金帳消しにしてもらって借金ゼロでスタートして,新幹線という収益が出る線路を貸してもらっていて,羨ましいなぁ」的なことを言われたことがある.

*将来的には,海外から新幹線の線路貸し出しの解放を要求される可能性はあると思う.かつてのNTTはドアtoドアの通信網を独占していたが,今や固定通信網ですら影が薄い.

したがって,貸付料を今後も徴収することは妥当である.

ただし,北陸新幹線の高崎-長野間については,他区間と異なるスキームで建設されており,駅・線路ともJRが半額程度を拠出して建設しているので,貸付料を減額する理由にはなりうる.

【貸付料の算定】

民間会社側のロジックとしては,リース期間終了後の物件は残価相当の簿価しかないので,(例えば,数年経過したリースのパソコンが二束三文で買えたり,格安で再リースできたりするように),安価にリースすべきだという理屈かもしれない.

だが,インフラに関しては再調達価格(=全く同じものを現時点で整備した場合の価格)という考え方もある.今同じ物を作れば,地価は上昇しているし,建設物価も上がっている.高収益を生み出しているという実績もあるので,新幹線は超優良物件である.このような高額優良物件については.必ずしも格安でリースというわけにはいかない.

もっとも,再調達すれば高価な優良物件とはいえ,相応に劣化しているので,物件の劣化した分を補修する大規模修繕費用を(JR側が出すのなら)差し引くという考え方はありうる.あるいは,大規模修繕費用を国側が出すのなら,再調達価格を元に30年間のリース料を計算し,リース料収入から修繕費用を拠出するという考え方もある.

【関連事業を貸付料算定の根拠にできるか】

大都市圏の民営鉄道(例えば東急とか阪急など)では,鉄道の運輸収入だけでは儲けが少ない(場合によっては赤字)ため,沿線で物販や不動産などの事業を手広く経営し,グループ全体で収益確保を図っている.開発利益の還元とか,外部経済の内部化とかいう方法だ.

新幹線のリース料による整備費用回収スキームでは,沿線開発の利益を回収する手段を持っていないので,スキームとしては開発利益の還元に失敗している.貸付料の算定に含めることは,理論的には妥当であるが,異なる主体間でのやり取りになるので,当事者間の合意形成が必要な案件である.

開発利益の受益者には,沿線自治体(地方)もあるが,沿線自治体については,建設段階で費用負担しているため,大きな問題にはなっていない.

【根本受益の問題】

基本的には上の話と同じである.

当該区間の当初想定していた利用者数が隣接区間の開通などによって上回った場合については, 貸付料計算の基礎条件が変わったわけであるので,割増徴収すること自体は合理的である.逆に,下回った場合は減額できるということにもなる.

ただ,あまりやりすぎると,事業者の増収に対するインセンティブを失うので,程々に,ということになる.

【大規模修繕とか他路線の整備費用の捻出財源とか】

大規模改修費は路線新設に比べると微々たる額であるので,貸付料で賄うことはさほど難しいわけではない.

問題は,基本計画線のような今後の新設路線に資金を回すスキームである.だが,これはJRにとっては知ったことではないと思う.物件の賃貸契約とは関係ない話であり,勝手にそちら(国)の中で話し合ってくれということになると思う.

そもそも,日本で新幹線の整備資金が度々話題になるのは,国家規模のインフラ整備であるにも関わらず,(建設資金計画上は毎年数千億円あって,それなりに確保されているように見えており,アホなマスコミが毎年ぶっ叩くが),純然たる国費は昔から700-800億円規模(国家予算120兆円の0.07%=700ppm)しか確保されていないことにある.

海外では環境対策(自動車に比べるとCO2排出が格段に少ない)を理由に,鉱油税(日本のガソリン税)の一部を投入したり,生活に必要なインフラであることを理由に,付加価値税の一部を投入したりして建設費を捻出しており,運行事業者(つまりその背後にいる新幹線利用者)に多額の支出を強いている国はあまりない.  

新幹線整備の地方定額負担案

現行の新幹線建設スキームでは,建設される路線の沿線で地方負担が発生し,(実態はかなり色々ややこしい財源構成になっているが,一応は)国:地方=2:1になっている.

ところが,山岳地帯ばかりで駅の設置もできないのに高額な請求書が来ることを警戒する動きが無きにしもあらず.

例えば,北陸新幹線の高崎-敦賀間は延長470.6kmに対し,新設された駅数が18駅(高崎駅除く)なので,平均駅間距離は26.1kmである.つまり26km分の建設費負担をすると1駅付いてくるということが期待されるわけだ.

ところが,今もめている北陸新幹線の敦賀ー新大阪間については,(小浜京都ルートの南北案だと)駅間距離は次のような感じ.

敦賀-小浜:35km,小浜-京都:63km
京都-松井山手:20km,松井山手-新大阪:27km

1区間以外は,概ね平均的な駅間だが,小浜-京都間が平均26kmの倍以上ある.しかも,(どういう割り振りするのか不明だが)都市部の地下線工事で異様に建設単価が高い.そりゃぁ「請求書」に警戒するのも頷ける.

整備新幹線で駅間距離が長い区間は実は他にもある.それは,北海道新幹線の奥津軽いまべつ−木古内間の74.8kmで,青函トンネルを含む区間だ.

じゃぁ,青函トンネルの建設費を青森県と北海道が折半したかというと…してない.建設時期が異なるし,整備新幹線計画が正式に動き出す前に建設開始されたので,地元負担の考え方がないので,全額国持ちということになる.もしも現行の「2:1」のスキームができた後でのトンネル建設だったなら,おそらく地元負担で揉めたであろう区間でもある.

ということで,青函トンネルを参考に,地形が険しくて駅が設置できないような区間については,国の負担を原則とするという方法は考えられる.

もっと簡単なルールにするなら,地元負担は「設置される駅1つにつき線路26km分」に設定するとういう方法もある.

(地下線など)難工事で工費が高くなる区間の沿線と,田畑に単純に線路を敷くだけの区間では同じkmの建設でも負担が異なる.だったら,工事単価にかかわらず,地元負担は駅1つと線路26km分の定額払いに設定するという方法もある.

整備新幹線地方負担分の出来高払い案

例えば佐賀県では整備新幹線なんぞ要らんと言っている.だが,開業すれば相応の利用増があり,利便も向上するはずで,メリットがあるなら受益者負担があってもいい.ゴネまくって払わずに着工してFree Ride出現はさすがにまずい.

ところが,おそらく,佐賀はそんな「メリットがあるはず」という不確実な話には応じたくないだろうと思う.

そこで,リスクヘッジ案.出来高払い案である.

九州新幹線(鹿児島ルート)沿線の熊本では,在来線時代比137%(博多‐熊本間)のようなので,(ちょっと丸めて) +40%なら満額負担.+20%なら半額負担,+10%なら1/4負担,+0%以下なら負担なし,(逆に,+60%なら1.5倍負担)でどうだろう.

もちろん,開業前には実績はわからないので,満額30年間の分割払いを基本(+40%の場合)として年々の負担額を決め,これを基準に毎年の支払額を増減させるってのはどうだろうか.

Pey per Ride方式.

「おっ,新幹線運賃に上乗せすればいいのか」と思ったあなた,それは違います.
地元負担の話です.

# 合意したものを守れと言っても,技術的に困難なものはできないよねぇ.