鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

軌間可変電車(FGT)の台車のお話し

GCT (= Gauge Changeable Train)というか,FGT (Free Gauge Train) というか,新幹線の広めの軌道と在来線の狭めの軌道を直通運転できる電車の開発が始まって,かなり経過した.
乗ったことはないのだが,実物の初代試験車両はある鉄道車両製造工場で見かけたことがある.写真は…許可が下りなかったので,無い.最新型の試験車両についても,台車だけは別の鉄道車両製造工場で見かけたが,やはり写真は…許可が下りなかったので,無い.
さて,この軌間可変電車であるが,スペインでは営業用車両として走っているにもかかわらず,日本ではなかなか営業車として登場しないのは,1つにはスペインの場合は広軌(1668mm)と標準軌(1435mm)であるのに対し,日本の場合は標準軌(1435mm)と狭軌(1067mm)であり,サイズが小さくて実現しにくいことと,もう一つは日本の軌道,特に在来線の軌道があまり重い電車が高速運転することに耐えられないからであるようだ.
試験車が試運転した路線では,日々の軌道の保守が面倒で・・・という話はネットの噂話かと思っていたら,かなり信頼できる筋からも同じ話を聞いたので,やはり本当のようである.(逆に,重量級高速貨物列車が多数走っている路線なら,さほど問題ないということか?)
ところで,台車が重いとか軽いとかいうお話しでは,最近,こんな製品が開発されつつあるようだ.
まだ営業車を使っての試験段階のようだが,熊本電鉄の電車が履いている川崎重工性のefWINGという台車は炭素繊維強化プラスチック製で,軽いらしい.素人の浅はかな考えでは,この軽い素材と構造が,例の重くて困っている台車に応用されるようになれば,「日々の軌道の保守が面倒で」という軌間可変電車の欠点が克服されるのかなぁと.
新幹線で製品化するには大変かもしれないので,まずは都市鉄道の軌間可変台車にして,近鉄の京都駅から吉野行きとか,阪急電車を関空まで乗り入れるとかやってみるといいかも.

武豊線電化工事中(ぱっと見,ほとんど終了)

武豊(たけとよ)線は,東海道線の愛知県下の大府駅から分岐し,知多半島の武豊までの20km弱の路線.中部国際空港開港時にはアクセス線にしようかという話もあったが,延伸が必要だったため,お流れ.
上に「大府駅から分岐し」と書いたが,これは正確な表現では無い.実は名古屋近辺の東海道本線を建設する際,知多半島に資材を陸揚げして武豊線で運搬したので,東海道本線よりも先に建設されたという歴史のある路線である.したがって,「大府駅から分岐し」たのではなくて,武豊から北に延びる線路の途中にあった大府駅に東から来た路線が接続されたといった方が実態に近い.
さて,大府駅停車中の列車であるが,左右どちらが武豊線だろうか?
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正解は,右が電車で左が汽車である.つまり,左が武豊線の列車.どう見ても両者の区別が付かない.近年沿線の住宅等の開発が進み,名古屋までの直通客が増えたので都市近郊線として電化することになった模様.
電化開業は2015年春らしいが,すでに大府駅を出ると架線が張られている.
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信号機にも電車の電力用の電流と信号機用の電流を分けて通すための装置が付けられている.(でも,自動信号化はしないように見える)
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全線30分あまりなので,15分毎に列車交換する.
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架線は上側に電力供給を兼ねた太い線,下がパンタグラフと擦れ合う細い線.最近,首都圏や近畿圏で時折見かけるようになったタイプである.
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変電所も設置されており,架線と結線されている.もうすぐ試運転始まるかな?
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空港内鉄道のデザイン

大きな空港に行くと,電車のようで電車でない乗り物があったりして,しかも,特定のゲートの乗客だけが乗れるようなシステムになっていたりして,なかなか興味深い.
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こういうデザインがなされていることもあり,なかなか凝っている.
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通常の一般の鉄道ではなかなかできないデザインでも,採用されていてなかなか楽しい.
(10年以上前の米国オーランド空港)

CANADIAN RAIL(”2階建て”列車編)

GO-trainは2階建ての通勤列車だったが,Via-Railの列車もある意味2階建てである.日本では行き先の違う列車を併結して走る場合は独立した2本の電車列車を連結して走るが.機関車が引っ張る列車が多かった頃は,分離する駅で新な機関車を準備しておいたりということになるが,Via-Railの列車は最初から,独立した機関車牽引の2本の列車を,そのまま機関車を途中に挟む形で連結してしまう.
つまり,こんな感じ.途中の小駅は,1つ目の列車の乗降が済んだら2つ目の列車の乗降をするという風に2度停車する.
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CANADIAN RAIL(GOTRAIN編)

クルマ社会のカナダであるが,主要都市には一応,通勤鉄道がある.ただし,朝は都心方向だけ,夕方は郊外方向だけというケースがほとんどなので,興味本位で乗車すると帰ってこられない可能性があるので要注意.
例えば,オンタリオ州のトロントには「GO train」というのがある.クルマではなくて列車で「GO」というネーミングには,「via rail」と似たような切迫感がある.ただし,「GO」は「GOvernment」つまり,州政府で運営であることを表している.
車両は2階建て車両で,例の汎用機関車が端っこに付く.
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もちろん,パーク&ライド対応
QB0301-040機関車が端っこに1両だけで,いちいち終点では機回ししない.反対側の客車には運転席があり,いわゆる制御客車である.反対向きには推進運転になる.GetOnVIA10-042

CANADIAN RAIL(VIA RAIL CANADA編)

カナダの旅客鉄道は,VIA Rail Canadaといって,カナダ国鉄(CN)とカナディアンパシフィック鉄道(CP)の旅客部門を統合して設立された公社である.なぜ「VIA」なのかは定かではないが,クルマ社会にやられて,社名に「クルマでなくて鉄道でね」という意味を込めたかったのであろうことは容易に想像が付く.「via」は「by way of」の意味を持つ前置詞である.
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さて,このVIA(というかカナダ)の列車であるが,かつては新幹線の刺激をうけて運転された「ターボトレイン」もある.
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だが,今はもう無く,写真のような列車が走っている(といっても,10年前だが,機関車が変わっているだけで,基本的には今も同じようである).いかつい電気式ディーゼル機関車である.
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後ろに繋がっている客車は,こんな感じだが,マニアの皆様はお気づきだろうか.これ,実は「振り子式」である.そういう目で見ると,車体の裾が絞られていたりすることに気がつくはず.
Ottawa1_10-026Ottawa1_10-025機関車と客車が合ってないように見えるが,そのとーり,合ってない.実は専用の機関車があり,その組合せでは160km/h(=100 mph)で走行でき,曲線もスイスイだったはずなのだが,カナダであるこということが災いした.下の写真が,本来の専用機関車.
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専用機関車がカナダの粒の細かい雪を吸い込み,高速運転できなくなってしまった.ということで,凡庸な汎用旅客機関車が登場.走りもマイルド.トロント-モントリオール間500キロほどを4-5時間ほどかけて走る.曲線では,言われてみれば傾いているかなーという感じだが,そもそも大陸なので,そんなに厳しい曲線はない.
ちなみに,鉄道後進国カナダであるが,世界の産大鉄道車両メーカーになってしまったボンバルディアの本社はカナダである.(鉄道部門はドイツ)

しおかぜ9号松山行き,本日の最終便です(えっ!?)

これを書いているのは9日土曜日.手元にあるのは,岡山駅12:35発のしおかぜ11号の切符.台風接近中.
岡山で乗り継ぐべく,山陽新幹線乗車中に不安になってJR四国のサイトを見ると・・・朝の段階では「12:35発のしおかぜ11号まで運転」とあったのが知らぬ間に「11:34発のしおかぜ9号まで運転」に変わっているではないか.えっ,台風で運休?
今なら間に合う,予定よりも早めののぞみ号に乗れば,岡山駅で4分乗換.隣の親子も4分乗換とか言っている.
そして,・・・何とか間に合った.ただいま,しおかぜ9号松山行き,本日の最終便の中.席が無いので「乗務員室」と書かれたデッキのイスを確保.
紫雲丸事故などをきっかけに瀬戸大橋が本州と四国の間に架けられ,昔に比べれば「海外」感は少なくなったが,こういった異常時には「海外」を実感させられる.橋よりはトンネルの方が(景色はイマイチだが)輸送の安定度は大きいと感じた日であった.
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プレメトロ(どう見ても”ペイ”はしないけど)

日本では地平面を走るLRTの整備ですら「採算ガー」とかいう話になりがちでさっぱり話が進まないが,海外に行くと「採算ガー」と言うような視点では絶対に「ペイ」しないような交通システムが存在していたりする.
学生によくするどんぶり勘定である.
延長5kmのLRT路線を整備したとしよう.30億円/kmの整備費用がかかったとして30×5=150億円.この線路上をLRTが走る.(実際には難しいかもしれないが)金利が3%ほどで建設費を30年で返済したとしよう.そうすると総支払額は2倍あまりの350億円ほどとして,年間の支払いは,350億円÷30年=11.6億円/年.1日あたりにすると,11.6億円÷365日=320万円.朝6時から夜11までの17時間走ったとしよう.そうすると,18.8万円/時間.片道あたりだとその半分で9.4万円/時間/片道.5分毎に走ったとして,毎時12本なので,9.4万円÷12=7800円/列車.1人あたり200円払ったとして7800円÷200円/人=39人.朝から晩まで5分毎にやってくる電車は全て約40人乗っている・・・・全て運賃で賄うって厳しいねぇ.まだ電気代も,人件費も払ってないよぉ.
さて,ベルギーのアントワープ駅の地下にはLRTの発着場があり,地下鉄風だが走ってくるのはLRT用の小さな電車である.プレメトロという.
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和蘭のアムステルダムでも地下鉄かと思いきや,LRT風電車が2編成併結でやってきたりする.
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こういった地下線は,地平に線路を敷くよりも建設費がかなり高く,キロあたり100〜200億円くらいはする.そうすると,上に書いた計算式の数字はそれぞれ5倍くらいになり,おおよそLRT用の電車では運びきれない数字になってしまう.
つまり,こういう地下を走るLRTというのは,日本の「採算ガー」とかいう風土では絶対にあり得ない交通機関なのである.でも,ベルギーやオランダには存在するし,クルマ社会の米国サンフランシスコにもあったと思う.交通機関単体では「採算ガー」採れませんが,都市全体としてはこうした方が適切であるとの判断で導入されている交通機関であるとも言える.
日本の「採算ガー」・・・何とかなりませんかね.それにこだわって失ってるものがいろいろありそうです.

消費税不況(って,前から分かってたよね)

本職の経済学学者に叱られるくらいかなり簡単に書くと,消費税率が上がると,経済活動量が下がるので,A<0

  • (経済活動量)=A×(消費税率)+B ・・・[1]

税収は経済活動量が多くて,消費税率が大きいほど大きくなるので,C>0であり・・・

  • (税収)=C×(経済活動量)×(消費税率) ・・・[2]

両式から(経済活動量)を消去すると・・・

  • (税収)=C×{A×(消費税率)+B}×(消費税率) ・・・[3]

つまり,税収は消費税率の二次関数で,A<0,C>0なので,AC<0,すなわち上に凸(釣り鐘型)である.

  • (税収)=AC×(消費税率)^2+BC×(消費税率) ・・・[4]

あとは高校1年生でもグラフが書ける.どういうことかというと,税収を最大にしたいのなら最適な税率が存在して,それ以上の税率だとかえって税収が下がるというわけである.今回,5%→8%にして,概ね3%税率が上がったが,もしも経済活動量が概ね-3%よりもさらに低迷すると,税収そのものも下がる.そのあたりが今回の増税の評価の目安であるとともに,次の増税の是非の目安である.(詳しくは本職のどなたか,よろしく)
税率を上げて社会構造を変化させたいのか,それとも税収を大きくしたいのか,目的をはっきりさせたほうがよさそう.
#追伸: 年率換算前年同期比経済成長率が-6.8%らしいが,最適税率超えてるのかも.少なくとも,税収は「減収」だよね.これじゃぁ「借金返済」からはかえって遠のいたよね.増税による増収については失敗では? 増収か減収かについて,誰もコメントしないのは何故??

TRANSPORT IN CANADA(これだけ車線があっても渋滞)

トロントは都市圏人口約500万人.概ね大阪府と同程度である.
郊外の高速道路,往復6車線でもダメ.渋滞している.
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往復12車線でも渋滞気味.前方のクルマがブレーキ踏んでいる.
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この差は何かというと,まともな都市鉄道があるかどうか,である.