鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

東北に行ってみた(水没した地区編)

石巻市内だが中心街の北東,北上川河口付近に行った.

IMG_4817多数の小学生が亡くなった大川小学校は北上川の堤防付近にあり,小学校からは北上川の様子は見えない.河口からも距離があり,海も見えない.まさか津波が堤防から溢れてくるとは想像できなかったのだろう.学校の裏山に登ったこどもだけが助かったようだが,筆者がこどもの頃から祖母に良く言われた言葉を思い出す.「大きな地震が起こったら,まっすぐ山に登れ.捜し物などしててはいけない.廊下や階段に物は置くな.足に引っかかって転べば,逃げ遅れて死ぬ.山に登るときは,山道を登っていては間に合わない.斜面の急な方向に,まっすぐ登れ.」



IMG_4821小学校の周囲には何も無かった.小学校は原則として小学生が徒歩で通う学校である.ということは,かつてはこの学校の周囲には学校1つ分の児童が通うに相応の集落があった.今は平らな荒れ地である.



IMG_4851さらに河口方向に向かうと湿地帯のような風景が広がる.野鳥が羽を休め,どう見ても湿地帯である.

IMG_4848ここはかつては陸であり農地が広がっていたが,大地震に伴う地形の変化で,土地が水面下に没してしまった.今は地図上でも海扱いになってしまっている.(→その後,「干拓」は進んでいる模様)

元々は海とは砂州のような地形で隔てられ,その内側の堆積平野のようなところが農地や集落になっていたようだ.津波で砂州のような部分が破壊されるとともに地盤が沈下して地形が変わり,海の一部のようになってしまっている.巨大地震ではこのような通常では考えられないようなことも発生することがあるという例である.

(2012年12月現在)

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-南海トラフ編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の4つ目は,「南海トラフの大地震-東海地震-により東海道新幹線が途絶するので,バイパス路線が必要」というものであった.

これには一定の説得力があり,整備計画審議の段階でも論拠として示されているが,やはりいくつかの指摘ポイントが存在する.

  1. 大地震で新幹線が途絶したケースは山陽新幹線,上越新幹線,東北新幹線でそれぞれ各1回ずつあったが,いずれも3ヶ月以内で復旧している.もしもこの程度であるのならば,わざわざ新線建設をするほどでもない
  2. 数ヶ月程度であるのなら,やや所要時間はかかるが北陸新幹線を全通させておけば,少々我慢している間に復旧できるレベルなのかもしれない
  3. 名古屋以西は南海トラフ地震が発生しても,壊滅的被害になることは無さそうなので,例え北陸新幹線が一部区間を共通使用して重複していても,東西間交通は確保できる
  4. そもそも,名古屋駅(および近傍区間)は大丈夫か?
  5. 名古屋から西側区間の整備論拠も”南海トラフ大地震”なの?

リニア新幹線については無いよりはあった方が冗長性確保の観点から望ましいが,単に一時的な輸送確保なら別策で十分,ということである.それとも,やはり壊滅的な途絶が発生するのか?

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-輸送力限界編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の3つ目は,「東海道新幹線の輸送力が限界に達するので,バイパス路線が必要」というものであった.

当時の東海道新幹線は,信号システムと東京駅での列車折返し能力の問題から,最小運転間隔が約4分であり,計算上の片道あたり運転本数が,毎時15本であった.東京駅と新横浜駅の間には新幹線の車庫への分岐線があり,毎時15本の能力のうち,毎時4本程度は東京駅と車庫との間の回送列車のために空けておかなくてはならなかった.
これでは輸送需要に応えきれなくなるので,バイパス路線としてリニア新幹線が必要,という主張であった.しかし実際には,以下のような状況変化があり,東海道新幹線の輸送能力は足りてしまっているのが現実である.

  1. 信号システムが更新され,運転できる本数が増えた
  2. 東京-新横浜間の車庫分岐線よりも新横浜寄りに品川駅が開業し,回送列車の影響を回避可能になった(→さらに実際には,回送列車の影響をわざわざ回避しなければならない事態は,ほとんど発生していない)
  3. 日本の人口が減少局面に入り,輸送需要そのものが頭打ちになりつつある
  4. 北陸新幹線を整備すれば,首都圏から北陸方面や,北関東から関西方面への需要を分散させることができる

ということで,2014年時点ではこの主張は引っ込められてしまっているようである.しかし,よくよく考えてみると,「男の中の男」「女の中の女」ならぬ「幹線の中の幹線」であるリニア新幹線は,ひとたび開業すればその切符はプラチナチケットと化すのではないかと思うほど全国的効果絶大であり,「東海道新幹線の輸送力が限界なので必要」ではなくて「全国の皆様の移動時間短縮のためには東西間の輸送能力の大幅な向上が必要」という主張に修正されてもいいと思われる.が,しかし,ローカル新幹線として基本計画が立てられているので,考え方もそこから脱皮できていないようである.

東北に行ってみた(石巻市街編)

大震災から2年弱経過した頃,いっぺん見に来ないかという声をかけていただいたので,行ってみた.2012年の暮れのお話し.

IMG_4400まずは,石巻の中心市街.石巻駅付近.もともとシャッター街化しつつあったと思われるが,津波で壊れた店舗の部分が歯抜けになり,アーケードも壊れたままで復旧していない.所々に仮面ライダーの等身大の人形が飾られている.



IMG_4425中心街から川を越えて東側の石巻漁港付近は,市街地に空き地が目立ち,いや目立つと言うよりはほとんど空き地であり,個々がかつて住宅地であったことを想像するのは難しいほど破壊され,そしてきれいさっぱり無くなっている.比較的強固だった建物も,1階部分が破壊され,骨組みだけになっているものも多い.



IMG_4747日和山公園から海沿いをみると,かつての市街地がほぼ消滅している.もともと石巻の旧市街地は,海岸から一段上がった段丘上の地形の上側にあったそうだが,市街地が拡大する際,それまであまり人が住んでいなかった海岸沿いの浜辺が市街地化されたそうだ.上の写真はその浜辺の市街地だった場所.市街地が消滅している.
(2012年12月現在)

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-新首都編)

  • リニア新幹線の必要論として,かつて主張されていた項目の2つ目は,「首都機能移転時における新首都機能のサポート」である.

首都機能移転に関しては何十年も前から議論があり,以下の三点が主な理由になっている.しかし,移転費用が概ね10兆円と見積もられた経緯もあり,国会で決議されたものの,実質立ち消えになろうとしていた.

  1. 国政全般の改革の促進
  2. 東京一極集中の是正
  3. 災害対応力の強化

間もなく国土交通省の担当部署も取り扱いをやめようかというまさにその時,東北〜関東の大震災が発生し,首都直下地震も近いのではという話になり,首の皮一枚で存続になっている.
さて,リニア新幹線との関係であるが,首都機能をリニアの沿線に配置し,機能を相互に結べば東京一極集中を緩和できるのではないか.既存の大都市圏とも短時間で結ばれれば新首都を成立させやすくなる.そのためにもリニアは必要である,という主張であった.現時点でもその議論の結果の一部を確認することができる.
この観点は2014年時点で存在してもいいはずなのであるが,上に書いたように費用の問題で立ち消えになった.再度議論しても良いはずである.いや,首都直下地震がいつ発生しても不思議ではない昨今,是非とも早急に議論すべきであるが,その割には議論は低調である.そんなに時間はないはずであるが,当事者として東京でお仕事されている政治家,官僚の皆様は茹で蛙状態に陥っているのであろうか.
現在の日本の国土構造は,東京におんぶにだっこ状態である.東京終われば日本も終わり.緊急地震速報が鳴るのは今日か,明日か,明後日か?

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-経済圏形成編)

中央新幹線計画については,1973年に基本計画が立てられながらも長らく整備計画になることはなかったが,今から10年くらい前はまだ整備計画には格上げされておらず,プロジェクト実現に向けていくつかの必要性の論点が展開されていた.

  • 最初の必要論は,「巨大かつ効率的な経済圏の形成」である.

それぞれが世界でも有数の大都市圏である首都圏,中京圏,京阪神圏を端から端まででも1時間程度で結び,巨大都市圏をつくり出し,経済的な効果を引き出そう,という構想である.この機能こそがリニア最大の効果であるが,いくつかの課題が存在していた.
現時点では若干方向が修正されつつあるものの,10年前の時点では効果の話がリニア新幹線沿線ばかり主張され,まるで整備新幹線5線(北海道,東北,北陸,九州(鹿児島と長崎))と同じような視点が持たれていた.これでは議論が広がるはずも無かった.沿線で友好団体が結成されていたが,これではまるでローカル新幹線であった.
ちょっと計算してみればわかる話であるが,東京-名古屋-大阪間にリニア新幹線が整備されると,都市間の所要時間が短くなるのは三大都市圏沿線相互間だけではなく,接続される「遅い新幹線」沿線にもおよび,全体の効果は沿線相互間だけに比べて数倍はある.リニア新幹線は「男の中の男」「女の中の女」じゃなくて「幹線の中の幹線」である.全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論が必要であった.
残念ながら,リニア新幹線の全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論は整備計画のための審議の中でも十分に行われることはなく,整備計画が策定された後の最近になってようやく国土計画の中で位置づけられつつあるようである.議論の手順が全く逆で,これではリニア新幹線の整備意義も整備方法も整備内容も満足に検討されるわけがない.実際,現行のリニア新幹線計画には幹線鉄道ネットワーク計画としては不十分な点がいくつか見られる状態にある.

リニア新幹線整備の理由(全幹法読み直し編)

リニア新幹線は「主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」の条件に合致するので,新幹線である.この条件は,全国新幹線鉄道整備法という法律に書かれている.
この法律の冒頭には新幹線整備の目的が書かれているが,出だしがこうである.「高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ…」ふーん,そうなんだ,と思うかもしれないが,この法律が1970年に出来たものであり,時代背景が1969年制定の新全総だというと合点がゆくだろう.
「新全総」を含む一連の全国総合開発計画の基本思想は「国土の均衡ある発展」である.そしてそのバージョン2の新全総のインフラ整備の手法は「大規模プロジェクト構想」つまり高速交通の全国展開と大規模工業地の形成が主眼だった.田中角栄氏の「日本列島改造論」と言った方が分かりやすいだろうか.その頃の基本的な考え方が色濃く残っている法律である.
この法律の目的は,このように続く.「新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」と.要するに,最後の部分に書かれた以下の三項目が目的である.

  1. 国民経済の発展
  2. 国民生活領域の拡大
  3. 地域振興

そんで,どんな路線にすべきと述べているかというと,「全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるもの」と書かれている.

  1. 幹線鉄道網を形成
  2. 中核都市を連結

この二点のみ.上に書いた背景を理解すると,なるほど,と感じることだろう.しかし,制定後,40年以上にわたってこの法律はメジャーバージョンアップが無く,背景が代わってしまっているという状況が生じている.
さて,この法律に従って基本計画,つまり新幹線網の基本構想を立てる際には以下の各項目を考慮することが求められている.

  1. 輸送需要の動向
  2. 国土開発の重点的な方向
  3. 効果的な整備を図るため必要な事項

この部分については,40年を経た現在でも大きな問題は無い.つまり,この3項目が無ければ完全に時代遅れな法律になってしまっているのだが,「国土開発の重点的な方向」を考慮することで,時代時代の政策に合わせられるようになっており,「輸送需要の動向」を考慮することで,人口分布や社会経済状況に合わせられるようになっている.そして「効果的な整備を図るため必要な事項」を考慮することで,鉄道会社が民営化された昨今でも対応できるようになっているはずなのだが….法律の文面上では…
実際には,この法律が出来た1970年の直後である1973年に決められた基本計画,つまり新幹線網の全体構想はほとんど見直されること無く現在も残存している.国土計画が新全総から三全総、四全総,五全総(21cの国土のGD),国土形成計画と4回もバージョンアップしているにもかかわらず,具体策である新幹線は旧態依然なのである.国土計画のタイトルから「開発」の看板が下ろされたのは16年前.国土計画の根拠法が改正されたのが6年前,そして大震災,迫り来る大震災×2.
1970年代に基本計画を立て,直後に一部路線の整備計画を策定したところでオイルショック,低成長になり,ほとんど何も進まなかったため,実質手つかずのまま改定するのは忍びない,という関係者の心情は分からないでも無い.しかし,さすがにこれはまずくないか?

鉄道後進国ニッポン(新幹線は航空路)

ドイツのフランクフルト空港に着くと,そこから郊外電車に乗ってフランクフルト市内のホテルにでも向かうのが標準コース.
最近はドイツ版新幹線と言われるICEの発着する長距離旅客駅も併設されているので,そのままICEやIC(在来線特急みたいなもの)に乗って,例えばマンハイムなどに行ってしまうというのもアリである.フランクフルトに用が無ければ,そっちの方がホテル代が安いので.
さて,下の写真はフランクフルト空港併設の長距離列車発着駅である.空港なので「ルフトハンザ」のオレンジ色の案内板はさほど珍しくないが,よく見ると「Air Rail」と書いてあり,チェックインカウンターがある.日本にもちょっと前まで市街地にあった「City Air Terminal」の駅版…ではない.
IMG_1073
これは,ルフトハンザのチケットで鉄道に乗るためのチェックインカウンタである.何のことかわからないって? 下の写真は発車案内板なんだが,上から順に…
IMG_1079

8:53発 ICE513 マンハイム,シュツットガルト経由 ミュンヘン行き 5番線
8:53発 ICE1013 マンハイム,シュツットガルト経由 ミュンヘン行き 5番線
8:53発 LH3632 シュツットガルト行き 5番線
8:58発 ICE1656 マインツ経由 ヴィースバーデン行き 7番線
9:01発 ICE1597 フランクフルト,フルダ経由 ドレスデン行き 4番線
9:09発 ICE614 ボン,ケルン経由 ドルトムント行き 7番線
9:09発 LH3606 ケルン行き 7番線
9:13発 ICE11 フランクフルト行き 5番線
9:20発 ICE571 マンハイム経由 シュツットガルト行き 6番線
9:25発 ICE820 ケルン,デュッセルドルフ経由 エッセン行き 7番線

こう書いてある.例えば上から3つがナゾであるが,ドイツの場合,列車2本が連結されて,それぞれ別の行き先と列車番号が割り当てられていることはざらにあるので(「はやて」と「こまち」みたいなもの),1つ目と2つ目が同じ時刻,同じ行き先,同じホームなのは理解可能な範囲であろう.
ところが3つめであるが,1つ目,2つ目と同じ8:53発で同じ5番線の発車.行き先が1つ目(2つ目)の経由地のシュツットガルト.そして,列車番号が「LH3632」.
つまり,この3つめはルフトハンザ航空LH3632便なのである.その実態は,ICE513(もしくはICE1013)ということで,シュツットガルトまでは航空機の代替として走行するということである.予約サイトで確認してもこの通り.何と,シュツットガルト中央駅は鉄道駅なのにIATAの空港コード(ZWS)が割り当てられている.
Lufthansa ® - Your flight selection
こうして,鉄道ネットワークと航空ネットワークが結合されているのだが,日本ではどうだろう.立派な空港アクセス鉄道があっても,宝の持ち腐れになってやしないか?

リニア新幹線の開業日(京都の主張は間に合うか編)

さて,リニアの名古屋-大阪間の経路に関しては,京都(府と市)が「ちょっと待った」と言っているが,けっこう時間的にタイトだというお話し.今回はその中味の是非ではなくて,単純にスケジュールのお話し.
大阪までの全線開業に関するスケジュールの話は,ちょっと前に書いたが,単純に大阪まで工事をするにも,全線同時開業を目指すとなると,そんなに余裕は無いように見える.さらにルート変更の話が入ると,中味はともかく,そもそも時間的に間に合うのか検討してみる.

  • まず,2027年に名古屋まで開通した後,2045年に大阪まで延伸すれば良いというスケジュールなら,8年くらいは余裕がありそうである.
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工 (8年の余裕)
2022 (工期13年) 基本計画見直し
2025 整備計画見直し
2027 開業
2028 環境影響評価
2031 着工
(工期13年以上)
2045 開業
  • ところが,同時開業を目指し始めると,急速に厳しくなる.まずは,名古屋開業の4年後に全線開業を目指す場合はこんな感じか?
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工
2015 (当初計画の差し止め)
2016 基本計画見直し
2017
2018 整備計画見直し
2019
2020 (工期13年) 環境影響評価
2021
2022 着工
2027 開業 (工期10年)
2031 開業
  •  さらに,ほんとに2027年同時開業を目指すと,こういう感じか?
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工  (当初計画の差し止め)
2015 基本計画見直し
2016
2017 整備計画見直し
2018
2019 環境影響評価
2020 (工期13年)
2021 着工
2022
(突貫工事6年)
2026
2027 開業 開業
  •  もはや,通常の工期ではかなり厳しい状況かも.鈴鹿山系のトンネルを6年程度で貫通させて,その他の工事も速やかに実施できるなら実現可能.基本計画見直し,整備計画見直し,環境影響評価にそれぞれ2年程度かかるとすると(つまり,「揉めない」という前提),既に現時点でスケジュールがかなりタイトかも.

リニア新幹線の開業日(京都の主張の難易度編)

リニア新幹線の名古屋-大阪間のルートに関し,京都が「奈良経由でなくて京都経由で」と主張している件であるが,実はなかなか難易度が高い.
まず,昔のお話しとして東海道新幹線の京都駅の位置の話であるが,これについては最終的な現位置の他にも,現駅の約2km南方を通る案や五条通の地下に駅を設置する案などがあり,1959年の着工後の1960年になって現位置に決まったという経緯がある.この時代には全国新幹線鉄道整備法もリニア新幹線もなく,細かな位置はともかく,京都市に対して新幹線のサービスを提供しようという多かれ少なかれの意思はあったと思われる.そういう点では,駅の位置は(当の京都市には失礼ながら)細かなお話しといえば細かな話である.
さて,最近のルートの議論といえば,北陸新幹線の敦賀-大阪間の話や,リニア新幹線の長野県下のルートの議論があった.
北陸新幹線については,基本計画では長野と富山が経過地として指定され,その後,整備計画のための調査の段階で小浜が追加されているため,公式には小浜ルートである.このほか,湖西線に沿って京都に至るルートや米原までの短絡線を作って東海道新幹線を経由するルートなどが出てきて,決着はついていないが公式に議論されている.だが,よく考えてみると,小浜は都市や周辺地の規模が小さいので(小浜近辺の方には申し訳ない話だが)北陸新幹線全線に対する影響という点では枝葉の話であり,どのルートが採用されても北陸新幹線の大きな目的であるところの東京大阪間を北回りで結びながら北陸地域を東西の大都市圏に接続するという目的は達成できる.
リニア新幹線の長野県下のルートについても,諏訪に寄るか寄らないか,寄るならその西側のルートはどの谷を通るか,というAルート,Bルート,Cルートの議論があり,整備計画の審議の一部として公式に議論された.これについてもリニア新幹線が三大都市圏を高速で結ぶとともに,懸案事項である海溝型の大地震による東西間の連絡途絶を避けるという目的からすると,極めて枝葉の話である.
ところが,リニア新幹線の名古屋-大阪間については,奈良を経由することが基本計画レベルの段階で決められており,かなり根源的なところから見直す必要がある.つまり,枝葉の問題とは言えない部分を議論の対象にしなければならないため,結構な難問である.