鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

新幹線はえぇ

年末年始の帰省である.

荷物満載,乗員満載の移動なもんで,我が家も例に漏れず自動車移動である.大阪から愛知県へ,その後,和歌山県へという移動だが,いつものコースの新名神→東名阪自動車道が事故渋滞だという.自然渋滞は概ね1kmあたり5分のロスを見込んでおけば到着が読めるが,事故渋滞は軽微なものはどこが事故渋滞か分からないものから,ひどいものは半日通行止めまで様々なので,可能なら避けたいところ.

草津P.A.付近の電光掲示板によると名神高速道路には主要地までの時間が表示されているが新名神方面は時間が表示されていないので,リスクヘッジのために久しぶりに名神高速経由で愛知県方面に向かった.

名神なので途中所々で東海道新幹線と並行する.あちらも輸送のピークなので,かなりの頻度で新幹線列車と併走する.いや,併走するなどと書くと競っているように誤解を与えてしまうので正確に書くと,あっさり追い抜かれる.新幹線速えぇ.

高速道路,高速鉄道などと並べて書くと鉄の車輪かゴムタイヤの違いくらいしかないような誤解を与えてしまいがちであるが,高速道路は低速道路ということを実感した瞬間であった.

ということで,新年になりました.
平成29年,2017年,あけましておめでとうございます.

幹線鉄道の残存価値

新規の路線整備をする際,しばしばB/CやB-Cが話題になるが,これについては計算上の仮定である割引率が現実離れしているとかプロジェクトライフが実際よりも短すぎるとかいった課題が提起される.

割引率については数%の数字を設定して年々のBやCの値を現在の値に計算し直して集計することで上記の2指標が計算されており,数%を設定する理由としては経済が成長するからであるとか長期の貸出金利がそうであるとか,様々な理由が添えられる.…が今や成長率が毎年数%あるわけでもなく,金利がそんなに高いわけでもないので,この数%って一体何だ?という話になっていたかと思う.

プロジェクトライフについても40年とか50年とかいった数字が設定されるが,東海道新幹線が50年を迎えたから,あるいは山陽新幹線が40年を超えたから,それぞれ線路を引き剥がして用地を売り払ってしまおう,などという話も聞いたことはない.

これらとは別に,ここ数日気になっているのは残存価値である.これについては今のところあまり話題になっていないが,整備新幹線については以下のような手順で残存価値を設定するようである.

・ 用地費:取得費の全額を計算期末に計上。
・ 建設費(償却資産50年以上の費目):建設費総額の10%を計算期末に計上。
・ 建設費(償却資産50年未満の費目):建設費の全額を計算期末に計上。
・ 車両費:耐用年数を15年とし、計算期末の残存簿価を計上。

#2つ目と3つ目は逆じゃないかと疑っている

詳しい額は調べていないが,もし第一項目について「用地取得費の全額」を50年後に額面そのままで計上していれば割引率の分だけ目減りさせていることになっている.だが,実際には新幹線の用地価格は物価等の上昇以上に上昇しているであろう.第二項目も大きな問題かなとも思う.この項目が整備費の大部分を占めると思うが,確かに減価償却後の会計処理はそういう処理をするものの,50年を経過しても新幹線のトンネルは修繕されながら現に新品のトンネルと同様に機能を発揮している.こういったことの結果,現行の方法では残存価値を著しく小さく評価している可能性はないだろうか.

残存価値については再調達価格という方法での評価をするというやり方もある.そういう方法で例えば東京-大阪間に海岸沿いに設計速度200km/hあまりの標準軌新線を建設して50年間機能させようとした場合,どれくらいの費用を要するのかという基準で費用を見積もった場合,その費用が再調達価格になるだろう.実際の線路施設は古びているので,修繕費の分をさっ引かなくてはならないの.そういう差し引きをすれば本当の残存価値になるのかもしれない.

例えば東海道新幹線は1964年価格で約3800億円だったが,建設工事費デフレータで調整すると約1.6兆円になる.おそらく上記の整備新幹線の方法で残存価値を計算すると近年実施された補修工事費分程度以外はほとんど価値ゼロになると思うが,果たして東海道新幹線の資産価値はゼロだろうか.同じようなものを現時点で再整備した場合には,たとえ半径2500mとかいった旧式の線形であってもおそらく数兆円の費用がかかると思うが,施設が古びている分をさっ引いても兆単位の資産は残っているだろうと思う.

本当に幹線鉄道の残存価値の計算方法はそれで適当なんだろうか,と,ふと思った2016年の年末であった.

#JR東海は重い負担だと折に触れてブー垂れているが,1991年に東海道新幹線を約5兆円で有償譲渡された際の再調達価格はそんなもんではなかったのかなぁと思う.「再調達価格」については,確か英国鉄の民営化の際にも登場する概念だったかな.

 

アベノミクス消費拡大遠く

 個人消費や雇用に関する11月の経済統計が27日、発表された。有効求人倍率はバブル期以来の高水準となった一方、消費者物価指数や消費支出は低迷。第2次安倍政権発足から4年がたち、雇用指標は改善したが消費は依然力強さを欠き、デフレからの完全脱却は見通せない。

情報源: アベノミクス4年:消費拡大、依然遠く – 毎日新聞

「消費の拡大」というお題目を唱えるだけで,金さえ潤沢に供給すれば使うと思ったんだろうかしら?

資金不足だと使いようが無いことは確かだが,どういう局面になると人は消費をしたくなるのかということの分析が不十分じゃなかったのかと想像する.

社会が高齢化しているという.高齢者は消費したがるかというと,むしろ逆である,もう大概に買い換えればいいんじゃないかと思うようなものでも,使えなくなるまで使い続けるのが高齢者である.

若い頃に子育てをする際に資金的余裕が少なかった経験が染みつき,資金に余裕が出来るようになった頃には,あと何年生きるか分からないのに新品を買うのはもったいないと考えるようになり(実際にはリタイアしてから20-30年あるんだけどね).かといって若い人は相変わらず資金不足だし.

企業はというと,ここも不況が長かったせいでいつ好景気が終わるのかおびえながら設備投資に二の足踏んでるし…などなど,資金を供給しさえすれば行動が変わるかというと,もはや染みついたパターンは変えようがないというのが現実ではないだろうか.1人あたりの消費を大きくしようとしても,誰もが24時間ずつしか与えられていないという制約はかなり厳しいし.

じゃぁ,一体,思い切った消費をするのはいつだろうかというと,ヒントは生活パターンが大きく変わる瞬間,具体的には,進学・就職・結婚・出産・転居・家の購入,企業でも移転.このあたりだ.心機一転の際には持ち物の高度化が図られることも多い.

進学・就職・結婚・出産・家の購入,このあたりは人口問題そのものなので,地道な取り組みが必要だが,転居や移転はある程度コントロールが可能だ.

都市のコンパクト化に伴う転居,国土上の各種機能の配置転換に伴う転居などなど,都市計画・国土計画上の立地の適正化に伴う消費の拡大というのは選択肢として残されている可能性はあるように思われる.

 

初夢鉄道2016答え合わせ(西日本大震災編−2)

今回は「初夢鉄道2016(西日本大震災編)」の「答え合わせ」(その2)である.

まだ3日今年が残っているが,まぁ大きな出来事は無かろうと言うことで,答え合わせシリーズのファイナルである.

地域振興を裏目的として制定された副首都は結局大阪になっていた.震災前は順調に機能し,関西活性化に役立っていた.だが,今般の南海トラフ地震に伴う大津波は太平洋岸各地を襲うだけでなく,紀伊水道から大阪湾まで入り込み,淀川や大和川流域まで入ってきた.もちろん,大阪の中心街にも入ってきた.

こっそり「大阪都」を復活させようとしている気配はあるものの,新たな基軸の提案は出来ていないようであり,この構想自体は盛り上がっていない.だが,首都機能自体を東京に置いておくことの危険性は年々増していることは確かであり,やれオリンピックだやれ市場の移転だなどと騒いでいる場合ではない.しかし,正常性バイアスとは恐ろしいもので,もはや東京の人々は茹でガエル状態のようである.

巨大地震そのものも起こっていないが,対策が画期的に進んだわけでもないので,状況自体はほとんど変わっていない.最悪の場合,大阪市の中心部では御堂筋あたりから西側が浸水する可能性があるが,それを考慮した都市計画が進んだという話もなく,どちらかというと危険地帯への都市機能の集積は進行し続けている.

もとより海抜の低かった大阪平野の海岸沿いでは浸水被害が大きく,大阪市内の主要な地下街は水没している.遮水対策はしていたが,全ての浸水経路を防ぎ切れていなかったため,当分地下施設は使えなさそうである.地下変電所もやられたので,大阪市内のかなりの部分で電気が使えない状態になっている.オフィスが機能しないので,市内に立地した副首都機能も満足に動いていない.地域活性化ばかりに目を奪われて,国土のリダンダンシーのことを後回しにしたツケが回ってきた.日本はぼろぼろの東京首都圏でなんとかしなくてはならなくなってしまった.

発災はしていないが,対策も進んでいない状況なので,悪夢の発生可能性は大きくなりこそすれども,小さくはなっていない.

首都もぼろぼろ,主要国土軸もぼろぼろ,瀕死の状態になってしまった.国籍不明の偵察機が頻繁に上空を横切っているが,もはやそれをなんとかする力も残っていない.一寸先しか見ずに先見の明の無い指導者に導かれた結果がこれであった.

怪しい近隣の偵察機は相変わらずウロウロしており,状況的には1年前と比べてほとんど何も変わっていない.

「正夢」にはならなかったが,このままでええのか?

JR九州社長…軌道可変「お受けできない」

JR九州の青柳俊彦社長は記者会見で、九州新幹線長崎ルート(博多-長崎)で導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発遅れについて、「安全性など運…

情報源: JR九州社長、長崎新幹線「フル規格」要請を示唆…軌道可変タイプは「お受けできない」

まぁ,そらそうなるよな.

国土交通省のFGT推進の現政策は,「未完成のものが設定した期日までに完成してほしい」という願望の上に成立っているからなぁ.

これまでの新幹線で採用された技術は,高速走行技術の要である台車ですら,50年前の時点ではBrandnewというわけではなかったらしい.東海道新幹線の開発というと,よく試験台での台車の試験中画像が映されるが,その当時のその台車,そもそもドイツの実績のあった台車をよく“研究して”設計されたものらしいので,一応200km/h程度の運転実績のある設計だった模様.

FGT台車はスペインの技術導入がされているらしいという話もあるが,確かあちらの台車は「機関車+客車」の無動力客車か,電車でもモーターは床下に置いて推進軸で駆動するタイプ(ディーゼルカーのエンジンをモーターにしたようなもので,推進軸の落下事故が多い)なので,日本のものとはずいぶん違う模様.

さすがに自社の列車を「試験列車」にして,客を人柱にするわけにはいかんわな.「新しいヘッドライトを試験導入してみました」とか「新しいエアコンを試験導入してみました」とか「新しいインバーター装置を試験導入してみました」とか,そういうレベルなら営業車でも可能だろうが,台車はさすがにヤバイ.

技術開発が完了してから導入を考えるべきだよね.ちゅうか,普通は低速走行列車で実績を積んでから高速列車に応用するのが筋だと思う.

セルカニアスの地下駅の線路

たぶん,タイトルを見ても何のことが分からない人が多いと思うので,解説を.

スペインの都市近郊鉄道は「セルカニアス」というが,そのセルカニアスの発着する都心の地下駅のお話.こういう乗り物である.

そんで,気になったのは,電車の方ではなくて線路.日本の地下鉄の線路などとはずいぶん雰囲気が違っており,ほとんど路面電車の線路である.

コンクリート板に溝が掘られており,そこにレールがはめ込まれているように見える.いちいち細かな調整が不要でメンテナンスフリーなのかも.レールとコンクリート板の間に樹脂が充填されているようにも見えるので,騒音レベルも小さくなっているのかな.

日本では地下鉄というと,騒音の激しいものの代名詞になっているが,こういった騒音防止策もある模様.ところ変われば品変わる.

 

 

新幹線の旭川・新千歳乗り入れを

 11月に北海道商工会議所連合会の会頭に就任した岩田圭剛氏は日本経済新聞のインタビューで、北海道新幹線の札幌延伸前倒しと2026年冬季五輪の招致を重点課題にあげた。新幹線の旭川や新千歳空港までの乗り入

情報源: 新幹線、旭川・新千歳乗り入れを 道商連・岩田新会頭  :日本経済新聞

北海道新幹線を旭川や千歳空港へというのは,ごく当然出てくるアイデアかな.

北海道の場合,直流電化区間は無いので,電気設備は新幹線と共用できる可能性もある.そうすると三線軌の雪対策さえうまく行くのなら,例のトリビアが有効かもしれないよね.

#トンネルあると無理かも.高架橋も厳しい箇所あるかも.

東海道新幹線の浜名湖の件

別途書くと言った浜名湖の件である.

南海トラフ系地震に対する東海道新幹線の浜名湖付近の線路の置かれた状況については,ずいぶん前に書いた.詳しくは,以下の各リンク参照.
東北に行ってみた(水没した地区編)
リニア新幹線整備の理由(東京-名古屋編)
浜名湖を渡る鉄道(今切れ口編)
浜名湖を渡る鉄道(村櫛伝説編)
浜名湖を渡る鉄道(鉄橋観察編)

これに対して当該鉄道会社は公式には「津波の影響はない」と言っており,上のリンクの2つ目の内容を国交省にお知らせした後も内容の訂正は無いようなので,安全だと思い込んでいるようである.2-3年前の時点では『静岡文化芸術大の磯田道史准教授が浜名湖上を通過する東海道新幹線の津波に対する安全性に疑問を投げ掛けていることに関して「どういう根拠で言っているか分からない」』などと少々小馬鹿にした発言をしていたかと思うが,この歴史学者先生,映画「武士の家計簿」の原作者だとか,NHK教育の歴史番組の司会者だと言った方が分かりやすかっただろうか.

さて,今回は浜名湖付近の東海道新幹線が安全かどうかという点の議論ではなく,南海トラフ系の大地震で津波が新幹線の線路を襲うことを前提としたお話である.

東海道新幹線が大地震で不通になることに対しては,東西間交通の確保の観点では中央新幹線が有効であろう.だが,たとえ中央新幹線が開通した後であっても,リニア新幹線の輸送能力が低いであるとか,静岡から愛知県にかけての地域が全国的に見て重要な産業地帯であるという点を考慮すると,東海道新幹線はなおも重要な新幹線である.中央新幹線が完成しさえすれば壊れて消滅してもよいというわけではない.

これに対して鉄道会社は古くなった新幹線インフラの更新を徐々に進めるとともに高架橋の橋脚に鉄板を巻いたりするなどの対策を進めているところである.

だが,浜名湖をわたる線路については流失の可能性があり,国鉄末期にはせめてこの部分だけ線路を付け替えることができないかということで,当時の国鉄総裁が調査を開始しようとした,という話を耳にはさんだことがある.

対津波という点では,橋脚がしっかりしており,橋梁部分が最大波高よりも上ならば東日本大震災においても流失を免れていることから,現線路の北方の湖面上を新橋梁で通過するという方法は有効ではなかろうか.この現線路の北方を通過するというルートは,東海道新幹線建設時に当初計画されたルートであるとともに,国鉄末期に線路付け替えのルートとしても候補になったルートのようである.

じゃぁ,どの程度の費用がかかるのか,勝手に試算してみよう.現線路の北方約1kmを通すとすると,こんなライン取りか?

工事延長約13.3kmなので,工費をちょっと高めの200億円/kmと仮定すると,約2700億円かな.

まさかとは思うが,「津波でこの線路が被災してから,国費で直してもらおう」なんて考えてないよね.もし現線路が津波で被災したら「浜名湖の入り口を新幹線が通るなんて危険きわまりない.線路を直す際には迂回させるべきだ」という議論になるんじゃないだろうか.そうすると常磐線の復旧工事のように内陸迂回路線になり,浜松市の動物園付近から東名高速の付近を経て三ヶ日湖南岸,二川駅付近に達する工事延長30km超の大工事になりかねない.工期は調査を含めて突貫工事で10年か?

いろいろ後手だね.

 

添削してみ……読売新聞社説

 与党の作業部会が、北陸新幹線で未着工の福井県・敦賀から大阪への延伸ルートを決めた。福井県・小浜と京都を経由する「小浜―京都案」だ。

情報源: 北陸新幹線延伸 熟慮を欠く決定に疑問が残る : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

今回は読売新聞社の社説である.朝日新聞の場合と同じく,これも,社会的問題提起をしたいという主旨を尊重しながら,事実関係の分析の浅い点などを考慮して添削してみよう………と一度は考えたが,ほとんど朝日と変わらないような感じなので時間の無駄のような気がして,やめた.

10年くらい前から,日本経済新聞の記事が朝日新聞の記事と変わらなくなっていると社会基盤整備分野の研究者の間でささやかれていたが,ついに読売新聞社もその範疇に入ってきたかな.

反対意見を書くことが問題なのではなく,事実関係の収集が不足するとともに,分析が表層的で浅く,目立つフレーズを使いたがる,というのが共通項かなと感じている.

#ちなみに,地方新聞や地方放送局からは割と取材を受けることは多いが,大手新聞社やキー局と呼ばれる放送局からはほとんど取材は来ない.(別に聞きに来いと言ってるわけじゃ無いが)その辺の手近な資料だけで記事書いてない??

大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について「(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には

情報源: 沿線自治体負担「現行ルールで」 北陸新幹線巡り大阪知事

スポーツ新聞風タイトル付けてみました.大阪府知事の発言云々以前に,この日本経済新聞社の記者の分析は正しいんだろうかと疑っている.元記事については有料会員ではないので,無料部分だけしか見ていないが,その範囲を引用してみると…

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には関西広域連合などで再び議論するように望む意見も出ていたが、松井知事は再議論の必要性を認めなかった。

 整備新幹線はJRの貸付料などを除くと国が3分の2、自治体が3分の1を負担することにな…

…事実関係は太赤部分のみ.つまり,日経新聞が付けた記事タイトルの「現行ルールで」は記者の推測なワケだね.

もし本当に大阪府知事が「現行ルールで」と発言したとすると,下馬評では有力とされる京都駅から新大阪駅へと直接結んでしまう北ルートが採用された場合,京都府下にできる駅は京都駅のみ.京都駅は府県と同格を持つ政令指定都市の京都市内なので,京都府にとっては資金を出してもメリット少なし,という状態になる.

最悪のケースでは,京都府が京都市に大半の負担を求め,府は負担の意思ほとんど無しということになりかねない.こうなると,福井県境-京都駅-大阪府境の区間の建設が暗礁に乗り上げ,敦賀以西の整備自体が不能になる可能性が高くなる.つまり「大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?」という状態だ.

だが,どうも「現行」とは言っていないようなので,単に「ルール」と発言しただけならば,『 合理的な方法で決めるべきであり,声の大きさだけで決めるべきではない』という趣旨の発言をしただけじゃないのかなぁ? プロジェクト全体が暗礁に乗り上げかねない意見をわざわざ大阪府知事ともあろう人が軽率に言うかねぇ?

それからたとえ「現行」を付けたとしても,確か広域連合では米原ルートが採用になった場合に広域負担をするような話になっていたかと思うので,その際の手順を準用することを指して発言した可能性もある.

どっちにしろ記者の推測が多くて,伝達精度の低い記事っぽいなぁ.

ちなみに,百歩譲って,路線の通過延長に比例させて沿線自治体に建設費を負担させる現行の方法を採用するとした場合,府県と政令指定都市とは行政的には同格なので,福井県の通過距離,(京都市以外の)京都府の通過距離,京都市の通過距離,(大阪市以外の)大阪府の通過距離,大阪市の通過距離,以上の5者によって按分するのが「現行ルール」になるのではないかという識者の意見もある.そんなわけでこの百歩譲った場合であっても,無議論で自然と負担額が決まるわけでは無いかもしれないので,念のため.

#政令指定都市が整備新幹線の沿線になるのは,今回が実質的には初めてかも.熊本市は政令指定都市だが,着工時後に指定されたので,負担割合決定時には普通の県庁所在都市じゃなかったかと思う.

(追記)こっちの記事の方が正確かも.