「情報屋台」の精度

メールでの問い合わせに返答しただけなのに,勝手にweb記事に引用として登場させているのを発見.お行儀悪いのね.

この記事

羽越・奥羽のフル規格新幹線整備を応援している大阪産業大学の波床(はとこ)正敏教授ですら、報告書を評価しつつ、「高速鉄道を単線で整備することを考えなければならないようなケチ臭い国は日本以外にはありません」と、その内容に疑問を呈している。

あぁ,確かに書いたけど,「その内容に疑問を呈している」んじゃなくて,「鉄道にカネをあまり出さない”国の政策”がケチくさい」という指摘なんだけどね

この(山形県ほかの作成した)報告書について(というか,日本におけるいずれのインフラ計画でも共通して)疑問を呈した部分としては,費用対効果の指標である「B/C」の計算における社会的割引率の設定だ.低成長社会の実態に合わず,相変わらず大きな値が設定されたままだという点なんだけどね.

「お問い合わせメール」にもそのことは書いたんだけど,この人,「社会的割引率」がわからなかったのかな.

なお,この部分も理解が足りていない模様.

運行システムをどんなに優れたものにしても、保線作業をどれほど熱心にやっても、鉄道にはトラブルが付きものである。倒木や土砂崩れで不通になったりもする。そういう時に素早く復旧させるためにも、高速鉄道なら複線にするのが常識であり、当然のことなのだ。

鉄道に対する一般論としてはそうだが,明治や大正時代に作った在来線は地形にへばりついて建設したおかげで「倒木や土砂崩れ」で不通や遅延を招くことが多い.東北新幹線の遅れの原因が,在来線の線路を改軌しただけの山形新幹線や秋田新幹線のことが多いのは,東北の人なら常識のはず.

だが,新幹線は単線だろうが複線だろうが高速運転するためには,険しい地形はトンネルや橋梁で通して真っ直ぐな線形にすることになるので,在来線に比べて遅延が非常に小さくなる.東海道新幹線の平均遅延は,関ケ原で冬季に遅れまくっていても1分以下.在来線が雪で埋もれていても北陸新幹線は無傷のことも.

つまり,遅れにくい新幹線だからこそ単線で建設しやすいというわけ.(でも,そんな事を考えないといけない時点でケチくさいけどね.)

それから,新幹線の「盛土」は,東海道新幹線なら当たり前の構造.比較的最近建設された北陸新幹線の長野以南でも割と多く使用されているので念の為.