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「米原ルート」の開業時期(2)

昨日の話の続きである.

整備新幹線の工事は,それぞれ当初段階ではその時々の資金状況のままだった場合を想定して建設時期が表明されている.だが実際には,これまでの整備新幹線の建設工事では,建設部隊の手が暇にならないように工事事業が連続して発生するように日本全体での新幹線の建設工事工程が組まれるとともに,それを実現すべく資金確保の工夫がその都度行われていると思われる.

ということで,何らかの資金確保が出来て,2031年まで待たずして建設工事が開始できる場合を考えてみよう.おそらくこっちの方が現実に近いと思う.

まず京都-小浜ルートの方を先に考えてみよう.数年の環境影響評価で詳細ルートを確定させた上で,2021年着工としよう.長大トンネルが多くて工期は15年かかるとしよう.そうすると2036年開業となる.リニアの大阪開業の2037年と変わらない,それならばリニアが大阪まで開業すれば東海道新幹線の線路容量が空くので,米原ルートでの大阪乗入れが出来るから,米原ルートでいいではないか,という話になると思う.一応,その話は正しい.ただし,一応,である.

米原ルートの最大のネックは東海道新幹線利用である点だ.現状ではJR東海のトップは乗入れできるかどうか「先のことだからわからない」と発言している.個人的には,2017年の現時点でも毎時1-2本程度は乗り入れ可能だと思っているが,まぁ当の鉄道会社のトップの判断なので,致し方がない.

じゃぁ,「先のこと」ではなくなるのはいつなのかをよく考えてみる.最初のタイミングが訪れるのは現在の2017年ではなくてリニアの名古屋開業である2027年である.この段階で東海道新幹線の旅客数が名古屋以西で段落ちしている分,東海道新幹線の大阪-名古屋間の本数を減じることが可能という判断になれば,目出度く米原から北陸新幹線を乗り入れることが可能となるかもしれない.

次の「先のこと」ではなくなるタイミングは,リニアの大阪開業の2037年ということだ.この時点で東海道新幹線の電車の本数を減じることが可能となれば北陸新幹線を乗り入れることが可能となる.

じゃぁ,米原ルートを現段階でルートとして採用し,2021年頃着工,2031年頃米原まで完成,その段階で乗り入れ可能なら乗入れ,不能ならば数年間は米原で乗り換え,2037年には乗り入れ開始,という段取りが可能かというと,これはリスクを伴う.

どういうリスクかというと,2037年のリニア大阪開業を待っても,いろいろと難癖付けて「乗入れNG」とJR東海が返答する可能性があるからである.こうなれば米原駅で永久に乗換を強いられることになる.

米原ルートの最大の利点は東海道新幹線利用(による工費節減)だが,最大のリスクも東海道新幹線利用(による乗入れ拒否)だということである.

(つづく)

 

「米原ルート」の開業時期(1)

話が長くなりそうなので,3回シリーズである.

北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートについては,与党が小浜と京都を経由するルートにする方針であることを表明しているが,これに対してしばしば米原ルートは建設延長が短いので5年程度で出来るという主張がなされている.が,本当にそう簡単なんだろうか?

小浜-京都ルートの完成時期は国交省の資料によると2031年着工で2046年開業とされている.これは2030年度に北海道新幹線が開業した後に手を付ける,という意味であって,資金がその時期にならないと都合がつかないからだということでもある.要するに積極的に資金確保をしないと,そういう時期にしか開業できないという意味でもある.

じゃぁ,米原ルートを採用して若干工期が短くなれば,しないシリーズ姿勢の国交省が早期着手するかというと,JR西日本自身が「ワシが金を出す」とでも言わない限り見通しは明るくない.要するに,基本的には米原ルートであっても2031年着工であろう.福井-滋賀県境にはかつての柳ヶ瀬越え区間があり,工事が容易と言うほどでもないので標準的な10年を工期と見積もれば2041年開業,つまりせいぜい数年早まる程度ではないだろうか.

まぁ,この程度の話は簡単だが,まだまだ込み入った話は続く.

(つづく)

豊予海峡経由で大阪→大分2時間16分

そう言えば,こういう記事もあった.

 大分市は22日、大分、愛媛両県を結ぶ豊予海峡ルート(約14キロ)の工事手法や費用、完成後の経済効果を試算した調査結果を公表した。

情報源: 海底トンネル案が軸 豊予海峡ルート調査結果公表 大分市 – 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate

 

紀淡海峡と豊予海峡にトンネルや橋を建設して「第2国土軸」にしようという話は30年以上前からあるが,具体的な建設費が出てきたのはここ2-3年かな.

ここは水深が割と深く,確か230mくらいあったと思う.津軽海峡に比べて100mほど深い.青函トンネルと同程度の勾配でトンネルを掘ると延長が50kmほどにもなるが,(海底部分の長さはどちらも同じなので長さを短縮できる割にはあまり安くならないそうであるが)新幹線線用と割り切ってある程度勾配のきつい(*)トンネルを掘れば30kmほどになる.

(*)きつい,とは言っても,北陸新幹線の飯山駅付近と同程度.

この調査でも ”新幹線を単線で” と書いてあるが,昔から難所を越えるインフラを建設する際は複線ではなくて単線で建設することが多い.いろんな手法はあってしかるべし.

いろんな構想が出てきた.上から目線の大手マスコミ(というか,東京マスコミ)の論調は総じて「田舎は死ね」だが,中央政府殿,どうするかね?

#今から30年近く前,国道九四フェリーで三崎から佐賀関まで渡ったことが懐かしい.出発してかなりの間,佐田岬半島の横を航行するので,時間がかかった割には本当の海峡部分は短かったような記憶が.

青函「第2トンネル」構想

 津軽海峡の海底下を通る「第2青函トンネル」の建設を将来実現させようと、大手建設会社や土木の専門家らが、動きだした。財源の確保など課題はあるものの、実現されれば北海道新幹線のさらなる高速化が可能になり、貨物列車の輸送力向上なども期待できる。

情報源: 青函に「第2トンネル」専門家ら構想 貨物線で新幹線高速化 | どうしんウェブ/電子版(経済)

貨物列車専用線を在来線規格の単線トンネルとして建設する案らしいが,どうせ掘るなら単線は単線でもフル規格新幹線サイズの電車が通せるように掘るべし.

現在の青函トンネルは,新幹線が通るトンネルにもかかわらず夜中も貨物列車が通るような線路になってしまっているので十分な保守時間がとれていないんじゃないのかな.

加えて,青函トンネルは掘削開始からもう50年.開業から間もなく30年.大規模な修繕も遠くない将来に必要だろうし,日々のメンテナンスも増えてくるだろう.

そうした場合に,日常的な利用法としては第2トンネルは在来線貨物列車用だとしても,「第1トンネル」のメンテナンススケジュールの必要に応じて新幹線電車も通せるようにしておいたほうがいいだろう.

北海道新幹線としては青函トンネルはまだ1才.だが,懐妊期間があまりにも長かったので,第2トンネルのことを考えるのなら,そろそろ「第1トンネル」の高齢化の心配もしながらインフラ計画を考えた方がいいかもしれない.

 

幹線鉄道の残存価値

新規の路線整備をする際,しばしばB/CやB-Cが話題になるが,これについては計算上の仮定である割引率が現実離れしているとかプロジェクトライフが実際よりも短すぎるとかいった課題が提起される.

割引率については数%の数字を設定して年々のBやCの値を現在の値に計算し直して集計することで上記の2指標が計算されており,数%を設定する理由としては経済が成長するからであるとか長期の貸出金利がそうであるとか,様々な理由が添えられる.…が今や成長率が毎年数%あるわけでもなく,金利がそんなに高いわけでもないので,この数%って一体何だ?という話になっていたかと思う.

プロジェクトライフについても40年とか50年とかいった数字が設定されるが,東海道新幹線が50年を迎えたから,あるいは山陽新幹線が40年を超えたから,それぞれ線路を引き剥がして用地を売り払ってしまおう,などという話も聞いたことはない.

これらとは別に,ここ数日気になっているのは残存価値である.これについては今のところあまり話題になっていないが,整備新幹線については以下のような手順で残存価値を設定するようである.

・ 用地費:取得費の全額を計算期末に計上。
・ 建設費(償却資産50年以上の費目):建設費総額の10%を計算期末に計上。
・ 建設費(償却資産50年未満の費目):建設費の全額を計算期末に計上。
・ 車両費:耐用年数を15年とし、計算期末の残存簿価を計上。

#2つ目と3つ目は逆じゃないかと疑っている

詳しい額は調べていないが,もし第一項目について「用地取得費の全額」を50年後に額面そのままで計上していれば割引率の分だけ目減りさせていることになっている.だが,実際には新幹線の用地価格は物価等の上昇以上に上昇しているであろう.第二項目も大きな問題かなとも思う.この項目が整備費の大部分を占めると思うが,確かに減価償却後の会計処理はそういう処理をするものの,50年を経過しても新幹線のトンネルは修繕されながら現に新品のトンネルと同様に機能を発揮している.こういったことの結果,現行の方法では残存価値を著しく小さく評価している可能性はないだろうか.

残存価値については再調達価格という方法での評価をするというやり方もある.そういう方法で例えば東京-大阪間に海岸沿いに設計速度200km/hあまりの標準軌新線を建設して50年間機能させようとした場合,どれくらいの費用を要するのかという基準で費用を見積もった場合,その費用が再調達価格になるだろう.実際の線路施設は古びているので,修繕費の分をさっ引かなくてはならないの.そういう差し引きをすれば本当の残存価値になるのかもしれない.

例えば東海道新幹線は1964年価格で約3800億円だったが,建設工事費デフレータで調整すると約1.6兆円になる.おそらく上記の整備新幹線の方法で残存価値を計算すると近年実施された補修工事費分程度以外はほとんど価値ゼロになると思うが,果たして東海道新幹線の資産価値はゼロだろうか.同じようなものを現時点で再整備した場合には,たとえ半径2500mとかいった旧式の線形であってもおそらく数兆円の費用がかかると思うが,施設が古びている分をさっ引いても兆単位の資産は残っているだろうと思う.

本当に幹線鉄道の残存価値の計算方法はそれで適当なんだろうか,と,ふと思った2016年の年末であった.

#JR東海は重い負担だと折に触れてブー垂れているが,1991年に東海道新幹線を約5兆円で有償譲渡された際の再調達価格はそんなもんではなかったのかなぁと思う.「再調達価格」については,確か英国鉄の民営化の際にも登場する概念だったかな.

 

初夢鉄道2016答え合わせ(西日本大震災編−2)

今回は「初夢鉄道2016(西日本大震災編)」の「答え合わせ」(その2)である.

まだ3日今年が残っているが,まぁ大きな出来事は無かろうと言うことで,答え合わせシリーズのファイナルである.

地域振興を裏目的として制定された副首都は結局大阪になっていた.震災前は順調に機能し,関西活性化に役立っていた.だが,今般の南海トラフ地震に伴う大津波は太平洋岸各地を襲うだけでなく,紀伊水道から大阪湾まで入り込み,淀川や大和川流域まで入ってきた.もちろん,大阪の中心街にも入ってきた.

こっそり「大阪都」を復活させようとしている気配はあるものの,新たな基軸の提案は出来ていないようであり,この構想自体は盛り上がっていない.だが,首都機能自体を東京に置いておくことの危険性は年々増していることは確かであり,やれオリンピックだやれ市場の移転だなどと騒いでいる場合ではない.しかし,正常性バイアスとは恐ろしいもので,もはや東京の人々は茹でガエル状態のようである.

巨大地震そのものも起こっていないが,対策が画期的に進んだわけでもないので,状況自体はほとんど変わっていない.最悪の場合,大阪市の中心部では御堂筋あたりから西側が浸水する可能性があるが,それを考慮した都市計画が進んだという話もなく,どちらかというと危険地帯への都市機能の集積は進行し続けている.

もとより海抜の低かった大阪平野の海岸沿いでは浸水被害が大きく,大阪市内の主要な地下街は水没している.遮水対策はしていたが,全ての浸水経路を防ぎ切れていなかったため,当分地下施設は使えなさそうである.地下変電所もやられたので,大阪市内のかなりの部分で電気が使えない状態になっている.オフィスが機能しないので,市内に立地した副首都機能も満足に動いていない.地域活性化ばかりに目を奪われて,国土のリダンダンシーのことを後回しにしたツケが回ってきた.日本はぼろぼろの東京首都圏でなんとかしなくてはならなくなってしまった.

発災はしていないが,対策も進んでいない状況なので,悪夢の発生可能性は大きくなりこそすれども,小さくはなっていない.

首都もぼろぼろ,主要国土軸もぼろぼろ,瀕死の状態になってしまった.国籍不明の偵察機が頻繁に上空を横切っているが,もはやそれをなんとかする力も残っていない.一寸先しか見ずに先見の明の無い指導者に導かれた結果がこれであった.

怪しい近隣の偵察機は相変わらずウロウロしており,状況的には1年前と比べてほとんど何も変わっていない.

「正夢」にはならなかったが,このままでええのか?

新幹線の旭川・新千歳乗り入れを

 11月に北海道商工会議所連合会の会頭に就任した岩田圭剛氏は日本経済新聞のインタビューで、北海道新幹線の札幌延伸前倒しと2026年冬季五輪の招致を重点課題にあげた。新幹線の旭川や新千歳空港までの乗り入

情報源: 新幹線、旭川・新千歳乗り入れを 道商連・岩田新会頭  :日本経済新聞

北海道新幹線を旭川や千歳空港へというのは,ごく当然出てくるアイデアかな.

北海道の場合,直流電化区間は無いので,電気設備は新幹線と共用できる可能性もある.そうすると三線軌の雪対策さえうまく行くのなら,例のトリビアが有効かもしれないよね.

#トンネルあると無理かも.高架橋も厳しい箇所あるかも.

東海道新幹線の浜名湖の件

別途書くと言った浜名湖の件である.

南海トラフ系地震に対する東海道新幹線の浜名湖付近の線路の置かれた状況については,ずいぶん前に書いた.詳しくは,以下の各リンク参照.
東北に行ってみた(水没した地区編)
リニア新幹線整備の理由(東京-名古屋編)
浜名湖を渡る鉄道(今切れ口編)
浜名湖を渡る鉄道(村櫛伝説編)
浜名湖を渡る鉄道(鉄橋観察編)

これに対して当該鉄道会社は公式には「津波の影響はない」と言っており,上のリンクの2つ目の内容を国交省にお知らせした後も内容の訂正は無いようなので,安全だと思い込んでいるようである.2-3年前の時点では『静岡文化芸術大の磯田道史准教授が浜名湖上を通過する東海道新幹線の津波に対する安全性に疑問を投げ掛けていることに関して「どういう根拠で言っているか分からない」』などと少々小馬鹿にした発言をしていたかと思うが,この歴史学者先生,映画「武士の家計簿」の原作者だとか,NHK教育の歴史番組の司会者だと言った方が分かりやすかっただろうか.

さて,今回は浜名湖付近の東海道新幹線が安全かどうかという点の議論ではなく,南海トラフ系の大地震で津波が新幹線の線路を襲うことを前提としたお話である.

東海道新幹線が大地震で不通になることに対しては,東西間交通の確保の観点では中央新幹線が有効であろう.だが,たとえ中央新幹線が開通した後であっても,リニア新幹線の輸送能力が低いであるとか,静岡から愛知県にかけての地域が全国的に見て重要な産業地帯であるという点を考慮すると,東海道新幹線はなおも重要な新幹線である.中央新幹線が完成しさえすれば壊れて消滅してもよいというわけではない.

これに対して鉄道会社は古くなった新幹線インフラの更新を徐々に進めるとともに高架橋の橋脚に鉄板を巻いたりするなどの対策を進めているところである.

だが,浜名湖をわたる線路については流失の可能性があり,国鉄末期にはせめてこの部分だけ線路を付け替えることができないかということで,当時の国鉄総裁が調査を開始しようとした,という話を耳にはさんだことがある.

対津波という点では,橋脚がしっかりしており,橋梁部分が最大波高よりも上ならば東日本大震災においても流失を免れていることから,現線路の北方の湖面上を新橋梁で通過するという方法は有効ではなかろうか.この現線路の北方を通過するというルートは,東海道新幹線建設時に当初計画されたルートであるとともに,国鉄末期に線路付け替えのルートとしても候補になったルートのようである.

じゃぁ,どの程度の費用がかかるのか,勝手に試算してみよう.現線路の北方約1kmを通すとすると,こんなライン取りか?

工事延長約13.3kmなので,工費をちょっと高めの200億円/kmと仮定すると,約2700億円かな.

まさかとは思うが,「津波でこの線路が被災してから,国費で直してもらおう」なんて考えてないよね.もし現線路が津波で被災したら「浜名湖の入り口を新幹線が通るなんて危険きわまりない.線路を直す際には迂回させるべきだ」という議論になるんじゃないだろうか.そうすると常磐線の復旧工事のように内陸迂回路線になり,浜松市の動物園付近から東名高速の付近を経て三ヶ日湖南岸,二川駅付近に達する工事延長30km超の大工事になりかねない.工期は調査を含めて突貫工事で10年か?

いろいろ後手だね.

 

添削してみ……読売新聞社説

 与党の作業部会が、北陸新幹線で未着工の福井県・敦賀から大阪への延伸ルートを決めた。福井県・小浜と京都を経由する「小浜―京都案」だ。

情報源: 北陸新幹線延伸 熟慮を欠く決定に疑問が残る : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

今回は読売新聞社の社説である.朝日新聞の場合と同じく,これも,社会的問題提起をしたいという主旨を尊重しながら,事実関係の分析の浅い点などを考慮して添削してみよう………と一度は考えたが,ほとんど朝日と変わらないような感じなので時間の無駄のような気がして,やめた.

10年くらい前から,日本経済新聞の記事が朝日新聞の記事と変わらなくなっていると社会基盤整備分野の研究者の間でささやかれていたが,ついに読売新聞社もその範疇に入ってきたかな.

反対意見を書くことが問題なのではなく,事実関係の収集が不足するとともに,分析が表層的で浅く,目立つフレーズを使いたがる,というのが共通項かなと感じている.

#ちなみに,地方新聞や地方放送局からは割と取材を受けることは多いが,大手新聞社やキー局と呼ばれる放送局からはほとんど取材は来ない.(別に聞きに来いと言ってるわけじゃ無いが)その辺の手近な資料だけで記事書いてない??

大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について「(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には

情報源: 沿線自治体負担「現行ルールで」 北陸新幹線巡り大阪知事

スポーツ新聞風タイトル付けてみました.大阪府知事の発言云々以前に,この日本経済新聞社の記者の分析は正しいんだろうかと疑っている.元記事については有料会員ではないので,無料部分だけしか見ていないが,その範囲を引用してみると…

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には関西広域連合などで再び議論するように望む意見も出ていたが、松井知事は再議論の必要性を認めなかった。

 整備新幹線はJRの貸付料などを除くと国が3分の2、自治体が3分の1を負担することにな…

…事実関係は太赤部分のみ.つまり,日経新聞が付けた記事タイトルの「現行ルールで」は記者の推測なワケだね.

もし本当に大阪府知事が「現行ルールで」と発言したとすると,下馬評では有力とされる京都駅から新大阪駅へと直接結んでしまう北ルートが採用された場合,京都府下にできる駅は京都駅のみ.京都駅は府県と同格を持つ政令指定都市の京都市内なので,京都府にとっては資金を出してもメリット少なし,という状態になる.

最悪のケースでは,京都府が京都市に大半の負担を求め,府は負担の意思ほとんど無しということになりかねない.こうなると,福井県境-京都駅-大阪府境の区間の建設が暗礁に乗り上げ,敦賀以西の整備自体が不能になる可能性が高くなる.つまり「大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?」という状態だ.

だが,どうも「現行」とは言っていないようなので,単に「ルール」と発言しただけならば,『 合理的な方法で決めるべきであり,声の大きさだけで決めるべきではない』という趣旨の発言をしただけじゃないのかなぁ? プロジェクト全体が暗礁に乗り上げかねない意見をわざわざ大阪府知事ともあろう人が軽率に言うかねぇ?

それからたとえ「現行」を付けたとしても,確か広域連合では米原ルートが採用になった場合に広域負担をするような話になっていたかと思うので,その際の手順を準用することを指して発言した可能性もある.

どっちにしろ記者の推測が多くて,伝達精度の低い記事っぽいなぁ.

ちなみに,百歩譲って,路線の通過延長に比例させて沿線自治体に建設費を負担させる現行の方法を採用するとした場合,府県と政令指定都市とは行政的には同格なので,福井県の通過距離,(京都市以外の)京都府の通過距離,京都市の通過距離,(大阪市以外の)大阪府の通過距離,大阪市の通過距離,以上の5者によって按分するのが「現行ルール」になるのではないかという識者の意見もある.そんなわけでこの百歩譲った場合であっても,無議論で自然と負担額が決まるわけでは無いかもしれないので,念のため.

#政令指定都市が整備新幹線の沿線になるのは,今回が実質的には初めてかも.熊本市は政令指定都市だが,着工時後に指定されたので,負担割合決定時には普通の県庁所在都市じゃなかったかと思う.

(追記)こっちの記事の方が正確かも.