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リニア新幹線整備の理由(昔の主張-経済圏形成編)

中央新幹線計画については,1973年に基本計画が立てられながらも長らく整備計画になることはなかったが,今から10年くらい前はまだ整備計画には格上げされておらず,プロジェクト実現に向けていくつかの必要性の論点が展開されていた.

  • 最初の必要論は,「巨大かつ効率的な経済圏の形成」である.

それぞれが世界でも有数の大都市圏である首都圏,中京圏,京阪神圏を端から端まででも1時間程度で結び,巨大都市圏をつくり出し,経済的な効果を引き出そう,という構想である.この機能こそがリニア最大の効果であるが,いくつかの課題が存在していた.
現時点では若干方向が修正されつつあるものの,10年前の時点では効果の話がリニア新幹線沿線ばかり主張され,まるで整備新幹線5線(北海道,東北,北陸,九州(鹿児島と長崎))と同じような視点が持たれていた.これでは議論が広がるはずも無かった.沿線で友好団体が結成されていたが,これではまるでローカル新幹線であった.
ちょっと計算してみればわかる話であるが,東京-名古屋-大阪間にリニア新幹線が整備されると,都市間の所要時間が短くなるのは三大都市圏沿線相互間だけではなく,接続される「遅い新幹線」沿線にもおよび,全体の効果は沿線相互間だけに比べて数倍はある.リニア新幹線は「男の中の男」「女の中の女」じゃなくて「幹線の中の幹線」である.全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論が必要であった.
残念ながら,リニア新幹線の全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論は整備計画のための審議の中でも十分に行われることはなく,整備計画が策定された後の最近になってようやく国土計画の中で位置づけられつつあるようである.議論の手順が全く逆で,これではリニア新幹線の整備意義も整備方法も整備内容も満足に検討されるわけがない.実際,現行のリニア新幹線計画には幹線鉄道ネットワーク計画としては不十分な点がいくつか見られる状態にある.

リニア新幹線整備の理由(全幹法読み直し編)

リニア新幹線は「主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」の条件に合致するので,新幹線である.この条件は,全国新幹線鉄道整備法という法律に書かれている.
この法律の冒頭には新幹線整備の目的が書かれているが,出だしがこうである.「高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ…」ふーん,そうなんだ,と思うかもしれないが,この法律が1970年に出来たものであり,時代背景が1969年制定の新全総だというと合点がゆくだろう.
「新全総」を含む一連の全国総合開発計画の基本思想は「国土の均衡ある発展」である.そしてそのバージョン2の新全総のインフラ整備の手法は「大規模プロジェクト構想」つまり高速交通の全国展開と大規模工業地の形成が主眼だった.田中角栄氏の「日本列島改造論」と言った方が分かりやすいだろうか.その頃の基本的な考え方が色濃く残っている法律である.
この法律の目的は,このように続く.「新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」と.要するに,最後の部分に書かれた以下の三項目が目的である.

  1. 国民経済の発展
  2. 国民生活領域の拡大
  3. 地域振興

そんで,どんな路線にすべきと述べているかというと,「全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるもの」と書かれている.

  1. 幹線鉄道網を形成
  2. 中核都市を連結

この二点のみ.上に書いた背景を理解すると,なるほど,と感じることだろう.しかし,制定後,40年以上にわたってこの法律はメジャーバージョンアップが無く,背景が代わってしまっているという状況が生じている.
さて,この法律に従って基本計画,つまり新幹線網の基本構想を立てる際には以下の各項目を考慮することが求められている.

  1. 輸送需要の動向
  2. 国土開発の重点的な方向
  3. 効果的な整備を図るため必要な事項

この部分については,40年を経た現在でも大きな問題は無い.つまり,この3項目が無ければ完全に時代遅れな法律になってしまっているのだが,「国土開発の重点的な方向」を考慮することで,時代時代の政策に合わせられるようになっており,「輸送需要の動向」を考慮することで,人口分布や社会経済状況に合わせられるようになっている.そして「効果的な整備を図るため必要な事項」を考慮することで,鉄道会社が民営化された昨今でも対応できるようになっているはずなのだが….法律の文面上では…
実際には,この法律が出来た1970年の直後である1973年に決められた基本計画,つまり新幹線網の全体構想はほとんど見直されること無く現在も残存している.国土計画が新全総から三全総、四全総,五全総(21cの国土のGD),国土形成計画と4回もバージョンアップしているにもかかわらず,具体策である新幹線は旧態依然なのである.国土計画のタイトルから「開発」の看板が下ろされたのは16年前.国土計画の根拠法が改正されたのが6年前,そして大震災,迫り来る大震災×2.
1970年代に基本計画を立て,直後に一部路線の整備計画を策定したところでオイルショック,低成長になり,ほとんど何も進まなかったため,実質手つかずのまま改定するのは忍びない,という関係者の心情は分からないでも無い.しかし,さすがにこれはまずくないか?

リニア新幹線の開業日(京都の主張は間に合うか編)

さて,リニアの名古屋-大阪間の経路に関しては,京都(府と市)が「ちょっと待った」と言っているが,けっこう時間的にタイトだというお話し.今回はその中味の是非ではなくて,単純にスケジュールのお話し.
大阪までの全線開業に関するスケジュールの話は,ちょっと前に書いたが,単純に大阪まで工事をするにも,全線同時開業を目指すとなると,そんなに余裕は無いように見える.さらにルート変更の話が入ると,中味はともかく,そもそも時間的に間に合うのか検討してみる.

  • まず,2027年に名古屋まで開通した後,2045年に大阪まで延伸すれば良いというスケジュールなら,8年くらいは余裕がありそうである.
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工 (8年の余裕)
2022 (工期13年) 基本計画見直し
2025 整備計画見直し
2027 開業
2028 環境影響評価
2031 着工
(工期13年以上)
2045 開業
  • ところが,同時開業を目指し始めると,急速に厳しくなる.まずは,名古屋開業の4年後に全線開業を目指す場合はこんな感じか?
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工
2015 (当初計画の差し止め)
2016 基本計画見直し
2017
2018 整備計画見直し
2019
2020 (工期13年) 環境影響評価
2021
2022 着工
2027 開業 (工期10年)
2031 開業
  •  さらに,ほんとに2027年同時開業を目指すと,こういう感じか?
年次 東京-名古屋 名古屋以西見直し
2010 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価
2013
2014 着工  (当初計画の差し止め)
2015 基本計画見直し
2016
2017 整備計画見直し
2018
2019 環境影響評価
2020 (工期13年)
2021 着工
2022
(突貫工事6年)
2026
2027 開業 開業
  •  もはや,通常の工期ではかなり厳しい状況かも.鈴鹿山系のトンネルを6年程度で貫通させて,その他の工事も速やかに実施できるなら実現可能.基本計画見直し,整備計画見直し,環境影響評価にそれぞれ2年程度かかるとすると(つまり,「揉めない」という前提),既に現時点でスケジュールがかなりタイトかも.

リニア新幹線の開業日(京都の主張の難易度編)

リニア新幹線の名古屋-大阪間のルートに関し,京都が「奈良経由でなくて京都経由で」と主張している件であるが,実はなかなか難易度が高い.
まず,昔のお話しとして東海道新幹線の京都駅の位置の話であるが,これについては最終的な現位置の他にも,現駅の約2km南方を通る案や五条通の地下に駅を設置する案などがあり,1959年の着工後の1960年になって現位置に決まったという経緯がある.この時代には全国新幹線鉄道整備法もリニア新幹線もなく,細かな位置はともかく,京都市に対して新幹線のサービスを提供しようという多かれ少なかれの意思はあったと思われる.そういう点では,駅の位置は(当の京都市には失礼ながら)細かなお話しといえば細かな話である.
さて,最近のルートの議論といえば,北陸新幹線の敦賀-大阪間の話や,リニア新幹線の長野県下のルートの議論があった.
北陸新幹線については,基本計画では長野と富山が経過地として指定され,その後,整備計画のための調査の段階で小浜が追加されているため,公式には小浜ルートである.このほか,湖西線に沿って京都に至るルートや米原までの短絡線を作って東海道新幹線を経由するルートなどが出てきて,決着はついていないが公式に議論されている.だが,よく考えてみると,小浜は都市や周辺地の規模が小さいので(小浜近辺の方には申し訳ない話だが)北陸新幹線全線に対する影響という点では枝葉の話であり,どのルートが採用されても北陸新幹線の大きな目的であるところの東京大阪間を北回りで結びながら北陸地域を東西の大都市圏に接続するという目的は達成できる.
リニア新幹線の長野県下のルートについても,諏訪に寄るか寄らないか,寄るならその西側のルートはどの谷を通るか,というAルート,Bルート,Cルートの議論があり,整備計画の審議の一部として公式に議論された.これについてもリニア新幹線が三大都市圏を高速で結ぶとともに,懸案事項である海溝型の大地震による東西間の連絡途絶を避けるという目的からすると,極めて枝葉の話である.
ところが,リニア新幹線の名古屋-大阪間については,奈良を経由することが基本計画レベルの段階で決められており,かなり根源的なところから見直す必要がある.つまり,枝葉の問題とは言えない部分を議論の対象にしなければならないため,結構な難問である.

リニア新幹線の開業日(早期開業策編)

リニア新幹線の全線開業が2045年という話は,大阪方面では「そんなもん,もう死んどるわ」という言葉を以て受け止められているが,早期開業に向けていろいろと策が無いではない.
鉄道会社は,リニアを含めて新幹線鉄道の技術とノウハウを海外に売ることによって利益を得て,それを原資に早期開業を目指すという方針のような気配であるが,海外への技術の売り方によっては,軒先を貸して何とやらという先例が無いこともないので,例え同盟国であっても要注意である.(そんなもん,わかっとるわ,という声が聞こえてきそうではある…)
さて,リニア新幹線がなかなか全線開業しない理由はこれまでに何度も書いたが,最大の理由は資金である.金さえ有れば2027年に全線同時開業できる件については,当の鉄道会社トップも認めており,利子のかからない資金があるなら出来る(ただし,段取りしていないので4-5年遅れ見込み)という表明はなされている.
じゃぁ,どうやったら早期開業できるか,放談してみよう.あくまで,放談である.いちいちピリピリしないでね.
まず頭に入れておく基礎条件は以下のとおり.基本的には鉄道会社の利益が出やすくなる条件.

  • 工期が短く,工事費支出から完成後利益を生み出すまでの期間が短いこと
  • 借金するなら利子率が低いこと,ゼロならなおよろし
  • 工事延長が短いこと.つまり,工費が安く,所要時間が短いので競争力があり,運行経費が安い
  • 沿線人口が多く他路線との接続がよいこと.つまり,安定して集客できる
  • 乗換が少ないネットワークで,実質的な利便性が高いこと.つまり,集客力が大きい
  • リニア完成後の東海道新幹線がお荷物になる可能性があるので,出来れば東海道新幹線を上下分離するなどして,経営の主導権を握りながらも負荷を軽くできること

これに基づいて,放談すると数案あり…

  1. リニア名古屋−大阪間については,鉄道会社とは別の主体(国や沿線,民間資金が出資する特殊株式会社?)が借金して作って,全線開業後にこの会社の株式を鉄道会社が徐々に買い取り,2045年には買い取り完了.資金繰りが厳しければ,買取のペースを遅らせればよろし.
  2.  名古屋−大阪間を国が3兆円ほどで建設して2027年完成,東京−名古屋間は予定通り鉄道会社が建設して2027年に完成,全線一括開業.一方,リニア全線開業と同時に,東海道新幹線約500kmを上下分離して,整備新幹線と同じような枠組みにして,下部分については国が3兆円(整備新幹線の建設費はkmあたり60億くらいなので,整備新幹線なみ…500km×60億/km=3兆円)で買い取り,鉄道会社がこの3兆円をつかって即座に名古屋−大阪間のリニアを買い取る.東海道新幹線は運営する鉄道会社の利益が出る範囲で(つまり整備新幹線的な)リース料を支払い,営業を続ける.もしも大規模災害を受けた場合は,国の設備なので,国費で復旧.
  3. 東海道新幹線の名古屋-大阪間を国に有償譲渡(約180km×60億/km=約1兆円)して東海道新幹線はリース払いで運行.入手した1兆円でリニア名古屋以西建設促進.工期が18年(=2045-2027)から,単純計算12年になる.国は名古屋-大阪間を北陸新幹線や北陸中京新幹線の一部としてネットワークに組み入れる.
  4. 1案と3案の合わせ技.1案の枠組みの下で,3案を実行し,入手した1兆円の資金で特殊会社の株式を最初から1/3握っておく.全線開業は2027年.

「リニア開業後の東海道新幹線がお荷物」という部分については,北陸方面からの新幹線を積極的に東海道新幹線に誘致して線路使用料を稼ぐ策も有効なので,実は北陸新幹線のルート問題も無関係では無かったりする.北陸新幹線の建設費を節約した分,何らかの形で国の関与分として投入してもらうという考え方もあるだろう.
さて,これら案の最大の難点は,めんどくさい段取りを誰(あるいはどの部門)が主導してするか,だろうな.何せ,ほとんどアイデアの無い部門が担当セクションだったりするからなぁ…
まぁ現実には,利子補給とか,借金の際の政府の裏書きとか,その辺かなぁ…
他にも案あるけど.

リニア新幹線の開業日(全線開業編)

  • リニア新幹線は,品川-名古屋間が2027年目標,その先の名古屋-大阪間が2045年ということになっている.東京-名古屋間の大まかなスケジュールは,こんな感じ.
年次 東京-名古屋 名古屋-大阪
2010 整備計画審議 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価 waiting
2013
2014 着工 waiting
2015
| (工期13年) waiting
2026
2027 開業 waiting
  • さて,名古屋-大阪間の段取りを東京-名古屋開業後におもむろに開始して,同じようなスケジュールで準備すると,こんな感じだろうか.
年次 東京-名古屋 名古屋-大阪
2027 開業  waiting
2028 環境影響評価?
2029
2030
2031 着工?
2032
| (工期13年以上)
2044
2045 開業?
  • しかし,これでは大阪開業が18年も遅くて,国土構造が変わってしまう.中央新幹線計画は経済合理性と国土計画に従って整備されるが,現行の国土計画には国土構造の改造(2眼構造の西側の眼を大阪→名古屋に)などという目標は無く,これはまずい.そもそも,人口集積地の距離間隔が短くなってしまうと,旅客営業収入が下がってしまい,鉄道会社の存続が危うくなってしまう.
  • 関西の政財界では,東京-大阪間の同時開業を主張しているが,2045年になってしまうのは鉄道会社の有利子負債の上限を5兆円で制限しているからである.もし,この制限が何らかの施策により取り除かれたとすると,早期開業が可能になるのだが,これに関して鉄道会社トップは,現段階では名古屋以西着工の準備がされていないので,資金制約が無くても4〜5年遅れになってしまう旨の発言をしている.そうすると,こんな感じか?
年次 東京-名古屋 名古屋-大阪
2010 整備計画審議 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価 waiting
2013
2014 着工 waiting
2015 環境影響評価?
2016 (工期13年)
2017
2018 着工?
2019
| (工期13年)
2027 開業
|
2031 開業
  • よく考えてみると,東京-名古屋間の工期が13年もかかるのは,南アルプスに長大山岳トンネルを掘削するからであり,名古屋-大阪間には鈴鹿山系のトンネルは必要であるものの,南アルプスほど険しくはない.環境影響評価も2年で済ませたとし,整備新幹線の工期が概ね10年であることを考えるとこうなるかな.
年次 東京-名古屋 名古屋-大阪
2010 整備計画審議 整備計画審議
2011
2012 環境影響評価 waiting
2013
2014 着工
2015 環境影響評価?
2016 (工期13年)
2017 着工?
| (工期10年)
2027 開業 開業
  • もしかして,段取り速やかに済ませば,一応同時開業は実現可能かも.ただし,今年2014年内に資金面での手当てが済んでいることが条件かも.

リニア新幹線の開業日(オリンピック編)

リニア新幹線の目下の開業目標は2027年であるが,東海道新幹線が1959年着工で1964年開通,開通直後に東京オリンピックということを考えると,2020年の「平成の東京オリンピック」に間に合いそうな感じがしないでも無いが,そういう話にはなっていない.
そもそもリニア新幹線が2027年開業というのは,JRが東海道新幹線を国から買い取った額が概ね5兆円で,その長期ローンが2016-17年頃に終わるので,その気になれば再び5兆円の負債が出来ないわけでは無い.そうすると,2017年頃から本格的な工事をすれば,工期10年ほどでリニアが完成し,2027年頃開業…という話はずいぶん前にも書いた .国が金を出さないので,5兆円で出来る分というと名古屋まで,ということである.
基本的には資金計画の問題なので,じゃぁオリンピックがあるから資金を調達すれば2020年までにリニアが名古屋まででも完成するかというと,あちこち情報収集した結果,そう簡単では無いようだ.
東海道新幹線の場合,オリンピックに間に合わせるために突貫工事をするとともに,ルートの変更までしている.東海道新幹線は名古屋駅を出ると,乗客は西に向かっていると思っているが,新大阪行きの電車は実は北に進路を変え,鈴鹿山系を北に迂回して,米原経由,琵琶湖東岸に沿って京都に至っている.元々は名古屋を出るとそのまままっすぐ西進し,鈴鹿山系をトンネルで抜けて京都に至るルートが考えられており,地質調査も行われていたようである(ん? どこかで見たような経路だな).
当時は長いトンネルを短期で掘る技術が無く,オリンピックに間に合わせるためにはなるべく平地で建設するしかなかったようで,結果として今のようなルートになったようだ.大野伴睦氏が曲げたと言われているが,少なくとも公式にはこういう経緯のようである.この辺の話は,東海道新幹線の工事誌に公式に書かれている.
さて,リニア新幹線は長野県下を通過する部分で,諏訪方面を通るか,山岳を長大トンネルで抜けるか検討された結果,路線延長がなるべく短くなる長大トンネルが選択された.東海道新幹線では回避された「長大トンネル」が建設される方針になったわけであるが,ここがリニアの工期のネックになりそうである.
長大山岳トンネルといえば,スイスのLötschberg Base Tunnelは,延長34.6km,着工は1994年で共用開始は2007年,ということで工期13年.なんだか,リニアの工期と符合するといえば符合する.でも延長20kmのリニアのトンネルならば単純計算7〜8年の工期ということでもある.
海底トンネルでは抗口が原則2つになるので不可能なのだが,山岳トンネルでは工区の分割が可能であり,工期短縮が可能といえば可能.全長57キロあまりのゴッタルトベーストンネル(これもスイス)は,5工区に分けて,1998年に立坑掘削開始,1999年本工事開始,予定では2011年開業だが,実際にはまだ供用開始されていない感じ.
工区を分けるには,地表から地下に向けて立坑という穴を掘り,そこから左右にトンネルを掘ることで,縦坑1つあたり掘削面を2つ増やせるという仕組みだが,リニアの長大トンネルの場合,その立坑はあまりたくさん作れないということらしい.
立坑が作れない場合には,まず小断面の作業坑を先に掘削し(列車の通過する大断面のトンネルよりも作業速度が速いらしい),その作業坑を使ってはるか向こうの山の中から反対向きに掘って工期を短縮するという方法があるそうな.青函トンネルはこの方法.
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩
作業坑作業坑作業坑作業坑作岩岩岩岩岩
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩
====岩岩岩岩岩======岩岩岩
本本本岩岩岩岩岩本本本本本岩岩岩
坑坑坑岩岩岩岩岩坑坑坑坑坑岩岩岩
====岩岩岩岩岩=======岩岩岩
そんなことはトンネル掘削の検討している方々は百も承知だと思うので,結局の所,「結果として早く出来上がる可能性もあるし,運が悪いと2027年よりも遅くなるかもしれないし,地質がよくわからない部分が多いので,掘ってみないと何とも言えない.なので,オリンピックに間に合わせる約束は出来かねる.」というあたりが真実に近そうな感じではある.