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北陸新幹線の建設費が2倍!? -米原ルート- (その3)

その3である.最後は,米原のほうがいいのか,という話である.

北陸地方の一部の自治体が「米原」と言っているといった話があるが,やはり米原は長期的に見てデメリット多し.(ただし,北陸・中京新幹線を否定するものではない)

最大の理由は乗り換え解消の見込み薄なことである.乗り換え解消しなければ,(大阪市内の行先にもよるが)米原と新大阪の二度乗り換え状態の出現である.

一応,JR東海は「リニア開業後にダイヤに空きがあれば入れてもいい」的なことを匂わせた時期もあったが,現時点では公式にはそうは言っていない.理由も公言していないがおそらく次のとおり.

リニアは全線開業後に,各停型速達型あわせて毎時9本の運転を想定しているようだが,リニアの車両は定員1000名で立席なしである.つまり,毎時9000人が最大の輸送量である.

世間的にはリニアが開業すれば東海道新幹線はローカル新幹線化してガラガラになると信じて疑わない雰囲気であるが,さにあらず.東海道新幹線の輸送能力は現時点で絶大強大超強力である.

東海道新幹線は1列車あたり1319席,毎時のぞみ12本,ひかり2本,こだま2本の計16本である.このうち,リニアに移行するのはのぞみだが,東海道新幹線ののぞみの輸送力は1319✕12=15828席分もあるので,全部は無理である.(東海道新幹線の全列車が満席なら毎時2万1千席分にもなる)

リニアに移行するのはのぞみだけではない.東京-大阪間の航空便の大半,東京と大阪以遠とを結ぶ航空便の一部も移転する.航空利用者年間300万人程度の減少という試算もあるようなので,1日あたり8200人,片方向として4000席/日,毎時230席程度と見ると0.23本程度分を消費(ピークではなくて平均なので,座席効率75%としてリニア毎時0.3本相当?).

ということで,のぞみ号からの移転はリニア毎時8.7本分程度か.そうすると,8700人がのぞみ号からリニアに移転するとして,8700/1319=6.6本/時がのぞみ号の減少分になる.つまり,開業後も毎時6本程度はのぞみ号が残存する.

ところで,例の静岡県にはリニア開業後には静岡県内停車列車の増加を約束している向きもあり,停車列車が1.5倍などという話もある.つまり,ひかり号とこだま号をそれぞれ2本→3本に増加させるということである.

リニア開業後は「のぞみ6-ひかり3-こだま3」の計12本ということであり,20年くらい前の状況とほぼ同じである.静岡県がネゴって(+インバンド需要増加に対応して)「のぞみ6-ひかり4-こだま4」の計14本という可能性もある.現行の最大16本を基準にすると若干の余裕(単純計算で毎時2-4本)があるといえばあるが,現状でもピーク時の東海道新幹線は座席が足りない状況なので,この貴重な全線の増発余力を新大阪ー米原間という短区間のために差し出すかというと…これが,JR東海は色よい返事をしない原因じゃないかな.

こう書くと「JRは社会のことをもっと広く見るべきだ」とかなんとか言う意見が出てくるだろうと思う.だが,リニア中央新幹線は現行の東海道新幹線よりちょっとだけ値段が高い程度の運賃しか徴収せず,輸送能力は東海道新幹線の半分未満である.その事業に(低利融資があるとはいえ),9兆円を自費で出すのは経済的には会社としてのメリットはあまり無く(マイナス?),どちらかというと大儲けしすぎた東海道新幹線の利益還元事業と見たほうがいいかもしれない.リニア開業効果が何兆円という話が時折出てくるが,JR東海の儲けが何兆円も増えるという話ではない.この会社自体はできる範囲で最大限の社会貢献事業をしているんだろうと思う.

乗り換え解消の見込み薄の他にも,東海道新幹線に乗り入れてしまうと降雪時に遅れを多発してしまい折角の北陸新幹線の降雪対応設備が無駄になるとか,乗車区間によってはJR東,JR西,JR海の3社の特急料金がほぼ単純加算されて割高になる可能性があるとか,乗り換え解消しても東海道新幹線のダイヤの隙間にしか入れないので自由なダイヤが組めないとか,課題山積だな.

結局,数年前の議論を蒸し返しているだけで,何ら条件は変わらないので同じ結論に達しそう.