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ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(VOL.8編-その1)

今回も大阪の与党の政策広報誌に記載されている都市計画,交通計画がらみの話は妥当な方針かどうか考察してみることにする.まじめに考察するので,いちいち逆ギレしないでね.

Vol.5編はこっち,Vol.6編はこっち.まだ2つしか見ていないが,現時点の感想は「これって,いわゆる都構想とは直接の関係が無くて,単なる大阪市における長期施策構想,その構想のアイデア段階のものを並べただけでは?」と思い始めている.

今回対象とするのVol.8である.長くなりそうなので,その1.


1枚目である.

私の専門とは直接関係ないが,いきなり大幅なミスリードである.

速報! 総務大臣から,大阪都構想の設計図の無いようについて問題なしとの意見が出されました!

これについては,わざわざ総務大臣自身が自らのwebサイトで説明を行っている.単に書式がOKと言ってるだけやね.ということで,1行目からアウト.この段階で,以下の説明の信頼性の想像がつくのだが,一応検証してみる.

1枚目は,特別区の区割り案と人口や面積についての概要である.大阪市の廃止と特別区の設置が行われると,最小の湾岸区34万人から最大の南区69万人までの5区に再編され,それぞれ大阪府の下に置かれた基礎自治体になるということであるが,これって,全部堺市の84万人より小さいわけやね.しかも政令市の堺市に対して特別区は特別な権限はなさそうなので,将来の大阪における第1都市は堺市ということか.


2枚目は,主に(新しい)東区に関するプロジェクト構想に関する説明である.

いくつかプロジェクト構想が並べられているが,すぐに気付くのは,これらは単に現在の大阪市における懸案事項やプロジェクト構想であって,府と市をくっつけることの必然性に乏しい,ということである.

個別に見てみよう.まずは上の方のダイナミックなまち創り!

大阪城東部地区,森之宮再開発…

  • 成人病センター跡地に大学誘致するという案は,まぁアリではあるが大阪府市統合と関係あるのか?現在の大阪市のままでもできる話だよね.それから大阪府立大と大阪市立大の2つあるのはムダだと言っている割には,大学の誘致なのね.あんまり政策の整合とれてませんね.
  • 清掃工場跡地や操車場跡地にオフィスビル群や高層マンション等整備という案についても,まぁアリなんだが,これも府市統合と関係あるのか?これも現在の大阪市でもできるよね.それから阿倍野の再開発を批判しておいて,森之宮はOKという政策案は,全く整合とれてませんね.
  • ホテル…商業…医療関連施設の整備についても,同上.

旭地区の開発…

  • 稼働率の低い公共施設の集約化や売却という案については,府市統合しなくてもすぐできますよね.
  • 民間主導による開発についても,府市統合しなくてもできますよね.
  • BRT,LRT等を活用した地域交通の整備は,どこのことだろうか.具体的のどの辺のことかわからないとプロジェクトの内容に関するコメントはしづらいが,現大阪市内で完結しているのなら,これも府市統合しなくてもできますよね.

密集市街地対策…

  • 「道路の拡張など迅速な対応を強化」については,ツッコミどころが2箇所ある.まず,大阪市東部の密集市街地については何十年も前から課題として上がっているんだが,道路の拡張が「迅速な対応」なら,もう既に東部はきれいな町並みに再整備されているはず.見通しがアマアマですね.それから,基本的には現大阪市内で完結している話で,府市統合しなくてもできますよね.

防犯対策…

  • 府市統合する以前に,早くすれば?府市統合できていないから防犯対策できないと言うのであれば,単なる現大阪市役所の言い訳ですよね.

続いて,下の方の交通インフラの充実!

今里筋線の延伸(北へ)…

  • 延伸して他路線との接続を図るという案はアリである.盲腸のように行き止まりの路線は使いにくいので乗客が伸び悩みがちであり,2キロほどの延伸をするだけで実現できるのならアリである.だが,これは府市統合しなくてもできますよね.確かに正雀駅や岸辺駅は大阪市外なのだが,現時点でも江坂,八尾南,中百舌鳥,大日とかはいずれも大阪市外なので,府市統合が延伸の条件というわけではない.
  • 府市の折り合いがつかなかったから延伸できなかった,とのことだが,原因(建設費負担?)を取り除かない限り問題を隠して着工するだけであり,問題が別の形で顕在化する可能性がある(財源の市外持ち出し問題?).

今里筋線の延伸(南へ)…

  • 今里筋線が現時点で南に延伸していない原因は,建設費の割には客数が見込め無いからだったかと思う.今里筋の1kmほど東には千日前線が,1kmほど西には環状線があり,すでに鉄道の駅勢圏に入ってしまっているからであるが,そこを敢えて建設するのでかなり強力な必要論がいるんだが.府市統合するとこれができるようになるというのであれば,それは資金の工面ができるようになるということであり,この政策を打ち出している当の政党が最も嫌うムダな事業になりかねないのだが.府市統合で客が増えるというロジックは何?

千日前線の延伸…

  • 中途半端な南巽で終わっているのを平野(JR?,地下鉄谷町線?)まで延ばすというのは,アリと言えばアリだが,そもそも千日前線自体の役割を大きく見直さない限り,大幅な同線の改善は無いだろう.それから,この延伸は府市統合しなくてもできますよね.

その他,地域交通も充実…

  • 区民の移動手段としてバス路線充実については,大阪市の中心部における赤バスの廃止騒動を見れば類推可能.府市統合とは無関係.むしろ自治体が縮小化されることで先行き暗し.
  • 福祉バス,福祉タクシーについては,赤バス騒動に加えて福祉パス騒動を見れば類推可能.これも自治体が縮小化されることで先行き暗し.
  • 自転車レーン整備についても,府市統合できていないからレーン整備できないと言うのであれば,市役所の言い訳.

ということで,今回のチラシ(1枚目,2枚目)についても,府市統合を経ないとできないことは書かれてなさそう.加えて,一部の項目については,チラシ発行元の政党の政策との整合性にも課題がありそうだ.

つづく

ドーナツの認識方法について

低迷する大阪を何とかしたい,その問題意識は正しい.

だが,大阪の長期衰退の原因は,西日本における中心性の低下,国土の双眼構造の崩壊に他ならない.

府と市をくっつけて都を名乗ればそれで解決できるようなレベルではない構造的な問題が既に発生しており,数十年単位でこの先,大阪(および近畿一円)が苦しみ続けるのではないかと心配している.だが,残念ながら現時点では内向きの議論ばかりなのが悲しいところ.

首都圏と関西圏では新幹線をはじめとする広域交通インフラの差が歴然としており,これが西日本における中心性を失っている主因である.

ドーナツは周辺があるからドーナツだ.周りがなければ,どこが中心かわからない.


詳しくは,以下のリンクを参照.
「都構想の陰で進行する大阪長期衰退の始まり」

第1話-新幹線偉大なり編第2話-産業振興vs交流編第3話-他の交通機関編
第4話-東海道vs中山道編第5話-新幹線駅が都市圏形成編第6話-駅アリ>駅ナシ編
第7話-20年差が命取り編第8話-後手必敗編第9話-東密西粗編編
第10話-リニア編

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(VOL.6編)

今回も大阪の与党の政策広報誌に記載されている都市計画,交通計画がらみの話は妥当な方針かどうか考察してみることにする.まじめに考察するので,いちいち逆ギレしないでね.前回分はこっち.

今回対象とするのVol.6である.

1枚目の漫画には…

何で同じようなもの2つもいるねん?

…と,施設が2つあることを批判している.だが,問題なのは供給者がだれであるか以前に「供給過剰なのか,それとも適正か」の議論であるはずなのだが,供給者が単一ではないことを問題にしているように見える.


2枚目は,供給過剰な計画を立てすぎだという点を批判しているように見えるが,市と府で供給の調整をすれば済む問題だといえばそれまでであるようにも思える.

さらに2枚目下方に広域戦略の実績例として御堂筋の高さ制限緩和の話が載っているが,阿倍野の再開発を批判しておいて御堂筋の規制緩和を推進するというのも変な話である.阿倍野の再開発を成功させるには他の地区の開発速度を抑えるような政策を推進すべきだろう.そもそも,この政策は府市統合や広域行政と関係あるのか???

※1 御堂筋における良好な都市景観を目指し,スカイラインをそろえるために60M規制を長年してきたんだが,あんまり理解していないみたいだね.

※2 御堂筋での容積率の増加は,そのまま地下鉄御堂線の輸送力の逼迫につながるのだが,そこまで考えてるのかな.

※3 大阪市の開発事業の破綻時期を見ると,着工時期がバブル期,破綻時期がバブル崩壊時期なので,これって二重行政というよりは単にリスク管理できてなかったからだけだよね.府市くっつけてもリスク管理や総量管理できてなければ同じ結果になりそう.

「大阪市が巨大すぎるゆえに,莫大な税金の無駄遣いがなされてきた!」

これって,大阪市を縮小すべし,という意見だよね.昨今の府市統合しても大阪市は変わらない的な説明と相反するんだが,どう理解すれば良いのかな?

以上より,今回のチラシについては,過剰投資に関する重要な問題意識の提示はされているが,府市統合とは関係の無いことが関係があるように書かれていたり,論点のずれた解決策の提示がされていたり,今後の大阪市に関する矛盾を含んでいたりと,整合性が乏しいようだ.

たぶん,つづく

六郷川鉄橋

明治時代の鉄道を建設し始めたころには,まだ日本には鉄橋を架ける技術が無かった.汽車の走る橋でも木製の橋が当たり前だったが,重要な路線の橋梁には輸入の鋼材を組み立てた「鉄製の鉄橋」が架設された.

東海道本線の六郷川に架かる鉄橋がそれでイギリス製であった.その後,架け替えられて,元の橋はもったいないので別の路線に移設.そこで第二の人生を終えて,博物館行き.

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1経間のみだが,保存されている.IMG_8565

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明治村@愛知県にて.

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(VOL.5編)

以前,某政党の機関誌のリニア関連記事批評したところ,(その影響かどうかは定かではないが)敵認定のレッテルを貼っていただき,大変光栄であった.(まじめにいい指摘部分は評価し,いい加減な考察部分には批判をしたんだけどなぁ.聞く耳持たないって困ったもんだね.)

ところで今回は大阪の与党の政策広報誌に記載されている都市計画,交通計画がらみの話は妥当な方針かどうか考察してみることにする.まじめに考察するので,いちいち逆ギレしないでね.

今回対象とするのVol.5(主に港区向け?)には地下鉄の話が登場する.

1枚目の漫画には…

  • 都知事:全体のでっかいことはワシの仕事や
    M:地下鉄のことは,ボクに任せなさい!

という会話風のコマが登場する.Mは東京メトロをイメージしているようで,要は民営化した方が良いということのようである.

市営地下鉄を東京メトロのような事業体にすること自体は,将来の選択肢としてはあり得る.この先,追加的なインフラ整備をしないのなら民営化した方が効率化されるだろう.

ただし,民営化した場合は地下鉄会社は運営に徹するので,自ら新規の路線整備はしないであろうから,大阪市([新]大阪府?)には地下鉄インフラの整備という仕事は残る.これはJRを見ればわかる.近年のJRの新線で,完全に自己資金で建設や改良が成されたものがあるだろうか(大阪近辺では皆無です).

まさか,民営地下鉄会社に新規路線整備をしろと命令するわけじゃぁないよね.

ということで,その辺に気がついているなら民営化はありである.なお,民営化自体は府市統合とは関係の無いお話であるので,「one osaka」の政策の一部であるとの印象を与える形で広報するのが適切かどうかは議論の余地がありそうである.


2枚目の左側真ん中あたりには…

  • 「特別区にすると,仕事が重複しない!ムダがない!」と書かれ,さらに小さな字で「地下鉄・高速道路の管理」と橙色の文字で書かれ,橙色の文字は「東京都の仕事」(青い文字は特別区の仕事)ということで説明されている.

東京都の役割分担的にはその説明は正しいが,大阪の場合,地下鉄は交通局という交通事業体が組織されており,そもそも重複しているわけではない.府市統合されれば市の組織から府の組織へと組織の位置づけが変わるだけなので,特別区の設置によって地下鉄行政の中味が変化する可能性はあんまりなさそうである.

上に書いた民営化だとしても,特別区の設置は地下鉄民営化と関係が無い話のように思われる.ミスリードだね.(しかも,東京の地下鉄はメトロと都営の「二重」が今も続いているので,あんまり説得力ナシ)

高速道路についても,大阪については京阪神圏の都市高速は阪神高速道路公団で運営されており,元々府や市が直接運営しているわけではなかった.今は既に民営化されて阪神高速道路株式会社になっている.この部分についても府市統合とは関係なさそうである.図をにぎやかにするための「上げ底」状態かも.

もっとも,このチラシも自ら地下鉄の話も高速道路の話も,府市統合とは関係無いことを暗に認めていて,この東京都の説明の右側にある大阪市バージョンの図には地下鉄も高速道路も登場しない.そもそも,地下鉄も高速道路も「二重行政」とは関係ないことをこのチラシは認めている.

ということで,地下鉄の話も高速道路の話も,府市統合とは関係なさそうなのに記載されている,というのが今回のチラシに関する分析結果である.


チラシは何種類かあるようなので,別の機会に別のチラシも読んでみることにしよう.(たぶん,つづく)

削れっちゃってますねぇ

レールをよく見ると(…って,あんまりしないと思うけど),レールが削れてへこんでしまっているときがある.

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○→で場所がわかるようにしてある模様.電車が急ブレーキをかけると,電車の車輪がロックしてしまい,電車の車輪の一部が平らに削れてしまう.止まっている電車が急加速しようとすると,空回りして今度はレールが削れてしまう.雨の日が鬼門やね.

そのまま放置すると,バタンバタンと大きな音がしたり,傷に水が入り込んである日突然レールが折れたりする.信号機が変わらなくなって列車が発車できなくなるという事故の多くは,信号機械の故障だけでなくレールの破断のようである.

そんなわけで,予防的にレールが折れかねない箇所に横っ腹に板をあてがって急場をしのぐこともあるようだ.

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レールの継ぎ目でもないのに,継ぎ目板があてがわれている箇所にはレールの傷があることが多い.

京都も大阪も見えます

どうでもいいお話.

だいぶ前に,我が家から明石海峡大橋が見える話をしたが,明石が見えるのなら…

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この右側奧のって,京都タワーだよね.それから…

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これって,OBPだよね.大阪城は確認できず.あと…

DSCN2142これって,新梅田シティだよね.

京都も大阪も見えているのに,どっちへ行くのにも1時間くらいはかかる.リニアが建設されようかという時代なのに,都市交通って遅いね.

不要な線路は撤去

最近,ホームはあるのに線路がないという光景をいくつかの駅で見かける.

DSCN1615聞くところによると,線路設備は使用不使用にかかわらず,保有しているだけで固定資産税がかかるそうである.ということで,使わない設備は即撤去するそうな.

しかし,使用頻度が低いからといって片っ端から撤去すると,異常発生時に全く融通が利かなくなってしまい,ダイヤが乱れたら乱れっぱなし,という事態になってしまう.

昨今の鉄道における輸送信頼性はこういったところが原因のことがあるが,使用頻度の低い非常用設備への固定資産税課税を軽減する方法は無いものかと考えてしまう.

最近の高架橋(の角っこ)

皆さん,お気づきだろうか.最近の高架橋のコンクリートの柱…の角っこ.そう,今日は角っこのお話である.

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丸い.

景観に配慮して,最近の高架構造物は角を丸めるようにしてあるそうな.ただし,工事する側は,これが大変だそうで,それまでは板で型枠つくれば終わりだったものが,この角っこのために丸い型枠をつくらないといけないそうで,面倒&コストアップだそうな.

#しかも型枠の再利用がしにくいらしい.

立派な駅のホームを貨物列車が通過

日本の駅のホームで待っていると,ホームを貨物列車が通過して行くことがある.例えばこんな感じ.

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この風景に慣れているとあんまり違和感ないのだが,フランスとかドイツの駅で待っていて,貨物列車が旅客ホームを通過して行く光景にあんまりお目にかかったことがない.もちろん,皆無ではないのだが,あまり旅客ホームを通過することは無いように思う.

旅客駅とは別線で貨物線があったり,駅の奥側に貨物用の留置線兼通過線があったりで,旅客の目の前を通過することはあまり無いような気がする.安全上の配慮だろうな.

#コンテナの台車だらけの回送列車なんかがホームに停まっていると,乗ってみたくなるよね.(でも,時々ほんとに乗って捕まってる人いるけど.)