月別アーカイブ: 2014年5月

トラム変幻自在(CAR-GO-TRAM編)

ドイツ東部のドレスデンという都市にゆくと,時々,出入り口のないトラムがやってくる.
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他のトラムは黄色だが,このトラムは青色で,「CarGoTram」と書いている.このトラムは貨物電車で,中央駅近くの貨物駅と中心市街を挟んだ向こう側にあるフォルクスワーゲンの工場とを結んで,自動車部品を運んでいるらしい.
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よく見ると,「VW」のマーク付き.こういう活用方法もあるが,日本には柔軟な頭はないんだろうか.
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(2011年3月現在)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(地震対策・復興編)

この意見の各項目を考えてみるシリーズの3つ目である.フルバージョンはこちら.

  • 3つ目;リニア建設でなく、東海道新幹線の地震・津波対策や東日本大震災からの鉄道網の復旧を行うべきである

これには論点が3つ含まれている.

  1. 東海道新幹線の地震対策をすべし
  2. 東海道新幹線の津波対策をすべし
  3. 震災復旧を優先すべし

まず,地震対策であるが,これはやっている.指摘主は調査不足.やっているのにやってないというのは,さすがに鉄道会社がかわいそうである.これ以上を望むのならば,線路を揺れが襲わない地域に付け替えるか,軌道をジェットコースターのような真っ逆さまになっても脱線しない構造(レールをパイプにして,三方向からがっちり抱え込む形式)に変更するかくらいしか無い.何でも言えばよい,とうわけではない.抜き書きすると,こういうを対策実施中のようだ.

  1. 構造物および軌道の強化
    • 高架橋の耐震補強
    • 橋脚・盛土の耐震補強
  2. 列車を早く止める対策
    • 沿線に地震計を配備
    • 地震動早期検知警報システムを導入(非常停止)
  3. 脱線・逸脱防止対策
    • 脱線防止ガード
    • 逸脱防止ストッパ
    • バラスト流出、盛土沈下、高架橋変位を抑制

次に津波対策であるが,これについて鉄道会社は「津波の影響はない」と言っているので,たぶん,公式には何もしていないだろう.『静岡文化芸術大の磯田道史准教授が浜名湖上を通過する東海道新幹線の津波に対する安全性に疑問を投げ掛けていることに関して「どういう根拠で言っているか分からない」と指摘』しているそうだが,公式公開資料と現地調査だけでもこういった分析ができてしまうので,やはり要注意箇所は存在する.歴史の忠告は無視すべきでない,というのは東北の震災の教訓ではなかったか?
津波対策と言っても,線路に沿って万里の長城のような防波堤を建設するわけにもいかない.危ない箇所は線路を付け替えるというのが通常の対策方法であり,例えば浜名湖を大きく迂回するか,あるいはリニア新幹線のように完全に別経路を準備するかということになる.ということなので,リニアを建設して東西間輸送を確実にするという判断は,有効な方法の一つである.
最後に東日本大震災の鉄道復旧の部分だが,そもそも鉄道会社が違うし,鉄道路線の目的も違うし,同じリソースを両者で奪い合っているわけでもない.復旧が遅いとすれば,それは(この震災に限らず),鉄道の災害復旧政策がイマイチだということであり,たたく相手を間違っている.
フルバージョンには,9兆円も金があるのなら国鉄の借金返済に充てて,それを原資に復旧すべしと書いてあるようだが,国鉄再建の枠組みを30年近くたってちゃぶ台返しする話である.事業再生の基本的な手法を知らないんだろうか.国家権力振り回して国庫に納めさせるのか?この国は独裁国家ではない.JR東海はリニア建設という形で「国家的事業」に儲けた金をつぎ込むことで,国民に利益還元しようとしていると思うが,まぁ,話が噛み合いそうにないので,この辺で.

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(失敗尻ぬぐい編)

この意見の各項目を考えてみるシリーズの2つ目である.フルバージョンはこちら.

  •  2つ目:事業失敗の「穴埋め」で国民への多大な負担と犠牲の押し付けが起きる危険性がある

事業失敗のケースは,実は2種ある.1つは建設段階の失敗,もう一つは,開業後の失敗である.
建設段階の失敗については,実はあまり心配する必要がない.なぜなら,失敗しても何とかなるように,建設のスピードがキャッシュフローで制約されている.もっと簡単に言うと,間もなく概ね終了する東海道新幹線の買取分割ローン払いの分を新線建設にまわすようなものなので,それが失敗行動ならすでに現時点でJRは経営破綻している(でも,実際にはしていない).つまり,外部に影響を及ぼすような失敗の見込は基本的には無く,たとえ失敗しても東海道新幹線の経営が破綻するわけでもなければ,背負ったこともないような巨額の負債に喘いで苦しむわけでもない.負債の額は最大でも東海道新幹線買取時の額までに抑えるようになっている.一気に投資できれば,大阪まで同時開業できるはずだが,できないのは年々の投資額を過去の経験に基づいてセーブしているからである.指摘主は知らないんだろうか?
むしろ,企業経営面よりも国益面では,キャッシュフローによる制約が社会的失敗の原因になりかねない.整備に時間がかかることで沿線の人口分布が変化してしまい,衰退する都市が出てくると大都市なので影響が大きくて放置するわけにもいかず,別のお手当(活性化のてこ入れ策)が必要になる可能性すらある.基本的にはリニアは優良事業なので,促進した方が国益の点では有利なくらいである.リニアは民間活動を大きくサポートするインフラだ.
開業後の経営段階の失敗の可能性はありうる.リニアの失敗と言うよりは東海道新幹線の軟着陸策の失敗の可能性である.リニアは現行の新幹線よりも1時間から1時間半程度時間短縮され,運賃も大幅には上昇させない方針のため,開業すればみんなリニアに乗りたがる状態になることが予想される.そうすると,現行の東海道新幹線の客が減るわけだが,リニア+東海道新幹線の総客数が増えない限り,JRの収入もあまり増えないので,経費ばかりがかさんで利益が減る可能性はある.インフラ産業の悲しいところは,客が1人も居なくても,インフラがそこにあるだけで維持費がかかってしまうことである.
そうすると,リニア開業後の事業成否のカギは,実はリニアではなくてガラガラになった東海道新幹線における新規顧客開拓である.下手に薄利多売に打って出ると,せっかくのリニア客を食ってしまう可能性もあり,利益率も悪くなってしまう.比較的高い運賃を保ちながら,今までの東海道新幹線では提供できなかった新しい種類のサービスを提供すれば成功,できなければ苦しい状況に陥る可能性はある.今のところ,東海道新幹線での新しいサービス提供については,明確な表明はない.
(都市圏通勤輸送に乗り出すのでは,という話はあるが,既存通勤鉄道線とパイの奪い合いにある可能性もあり,さらには通勤輸送だと客単価を高くできない可能性もある.)
JRは日本国有鉄道ではなく株式会社なので,指摘するなら「国民への多大な負担と犠牲の押し付け」の前に「株主の責任が厳しく問われるとともに,株式出資の範囲内での経済的責任が明確化されること」や「貸し主の貸し倒れの可能性」を指摘するのが妥当.でも,それって余計なお世話だよね.株主にしろ出資者にしろ,各自の判断で行動してるんだから.
もし失敗しても,地方のローカル鉄道とは異なり,日本の中心部分の鉄道なので,東西間輸送事業そのものは再生できる可能性が高く,事業が再出発できれば再上場も可能と思われるため,最終的には一般国民の血税がダラダラ垂れ流しになる事態にはなりにくい.(出資者は除く)それとも,この指摘主は「資本家」の心配をしているのだろうか?
(リニアの需要を心配してあげるなら,経由地をなるべく人口密度が高い地帯にした方がいいですよ,という提案をしてみてはどうでしょう.…と言うか「リニアの需要が予測通りに伸びない」ことよりも,「リニアの切符が人気すぎて買えない」ことを心配した方がいいでしょう.それから「在来線の廃止」は何処のことを言っているのか,よくわからんが,閑散路線のことならリニア以前の国の鉄道政策の問題です.たたく相手を間違ってますよ.)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(輸送力編)

リニア新幹線についてはいろいろと段取りがおかしいことを指摘しているが,しかしながら基本的には,リニア整備については「さっさとつくるべし」という立場である.だが,世の中にはそうでは無い意見も存在しており,気になるところである.
そういう「反対意見」にあれこれ言うと,後々面倒なことになる可能性が高いことは,堺のLRT関係の経験で重々承知なのだが,やはり気になるのでちょっと考えてみよう.(中には見落としていた視点が指摘されていることもあるので,多様な意見は重要である.)
さて,反対意見の代表的なものとして選んだ,というか,ネット検索でわかりやすい形で引っかかったと言った方が正確だが,この意見の各項目を考えてみる.主に5項目あげられており,話が長くなりそうなので,1項目ずつ考えてみる.

  • 1つ目:「輸送需要」「時間短縮」などに国民的な要望も経済的社会的な要請もなく、建設には“大義”がない

実は2つ指摘事項が書かれており,量としての輸送需要の問題と時間短縮という質の問題ともに大義がないという指摘である.
まず,量の面での「輸送需要」については,webmasterも同様の指摘はしたことはある.別線がなくても,信号システム(ATC)の更新,品川駅の設置,人口減少局面突入,北陸新幹線計画の存在などにより,「既存の」輸送需要に対する逼迫のピークは過ぎつつある可能性はある.
だが一方で,リニアの時間短縮量は他の交通機関に比べて半端ではない.東京-大阪間1時間では航空便と変わらないという指摘もあろうが,航空と鉄道では使い勝手が雲泥の差であることは明々白々.もし使い勝手が同じなら,現時点で航空の圧勝のはずだが,そうはなっていない.便利な鉄道の大幅な時間短縮により,新規需要が喚起されることは確実で,特に山陽新幹線などリニアと乗り継いで移動するような区間において航空からリニア(+新幹線等)へとシフトする量が多いことが予想される.料金も現行ののぞみ号に比べて大きくは上げない方針のようだ.なので,リニアは開業早々に輸送力不足に悩まされるほど大人気になると信じている.
「時間短縮」については,東海道新幹線のぞみ号に乗車してみればすぐわかるだろう.東海道新幹線は観光客も乗るが基本的には太平洋ベルトの主軸を走るビジネス列車である.時間給の高い有能なビジネスマン達が,2時間以上も列車に箱詰めされている様子を見れば,これは経済的に見ても大変な損失だと感じることだろう.(ただし,観光客は別である.彼らは箱の中に居ることを楽しんでいることが往々にしてある.)それとも,彼らビジネスマンの姿を見ても何も感じないのだろうか?
基本的には2項目とも強い要望があるのが東海道新幹線である.(白浜温泉や城崎温泉に行く列車とはニーズが違う)
新幹線に対する「国民的な要望」については,料金や時間が同じような条件なら航空よりは新幹線を選ぶことが多い,という国民性で証明されている.プラカード持ってデモをしたり,ハチマキ巻いて陳情したりするだけが国民の要望ではない.時間短縮すれば,それに応じて客が増える事例があることから見ても,サイレントマジョリティの要望は明白だろう.あれだけボコボコに言われていた整備新幹線も,開業すると従前の特急列車よりも客数を伸ばしている.
経済的な要望については,産業界が「さっさとつくれ」といっている状態なので,要請は明確に存在している.東海道新幹線についても輸送能力がネックで輸送需要サービスの多様化に対応できていない状況にすらなりつつある.海外じゃぁ,荷物輸送に高速鉄道を使ったり,超高級快速列車を高速鉄道に走らせたり,いろんな使い方が始まっているんですけど.
社会的な要望についても,のぞみ号が浜名湖を通過する度に何かを感じませんか? それとも,このへん通過中は,いつも寝ていて気づかない,というなら仕方ないですが.
(あと,「巨額の資金を30年以上にわたって投入」と噛みついてらっしゃいますが,JR東海は日本国有鉄道ではないので,基本的には何にどれだけ投資するかは経営者のさじ加減の範疇です.むしろ,株主にばらまかずに,本来なら国が金を出して実施しても不思議ではない事業に投資するという話ですから,「巨額の複数年にわたる設備投資ありがとう」と言うべきでしょう.)
(それから,「東京―大阪間で、1時間半程度」は誤りで,70分弱ですよ.「東海道新幹線は東京-大阪間4時間あまり[ただし,こだま]」とは言わないよね.)

トラム変幻自在(ディーゼルトラム編)

路面電車というと「道路に線路を敷き,その上を電車が走る」というのが標準スタイルであるが,中にはちょっと変わった路面電車も存在する.
「ディーゼルトラム」というが,要するに電車ではなくてディーゼルエンジンで走る気動車である.路面軌道ならぬ路面気動車である.
比較的有名なのは旧東独のZwickauという都市であるが,実はここの路面電車は「電車」が基本である.郊外から来る鉄道線から路面に直通する系統があり,それだけが路面気動車で,あとは電車になっている.市内の電車は狭軌,乗り入れる「路面気動車」は標準軌なので,一部区間に路面の三線軌があり,そこをゴトゴトと「路面気動車」が走ってくる.

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実はZwickau以外にも「路面気動車」は存在する.厳密には「シリーズハイブリッド車」と言った方が正確かもしれないが,路面電車区間は電車として走り,郊外鉄道線で非電化区間を走る場合だけエンジンを吹かして発電して走るものがある.それが,これ.ドイツのカッセルの電車で,郊外線から乗り入れる系統である.カッセル大の先生に教えていただくまで,全く気付かなかったが,駅で観察すると確かにエンジンの音がしているものもある.
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屋根の上をよく見ると,電車らしからぬ「排気口」があり,周辺がススで汚れている.
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日本でも似たような形式の電車の試作車があるんだったっけ?

東北に行ってみた(亘理→相馬編)

常磐線で行けるのは南側は広野までなので,いったんいわきまで戻り,磐越東線,新幹線を乗り継いで仙台へ.今度は北側からいけるところまで行ってみる.
まずは,仙台→亘理.本数は少ないながら特に問題なく到着.直接電車だけで行けるのはここまでで,ここからはいろいろ乗り継がなければならない.
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次は,亘理→相馬.この区間は不通区間なので,バス代行になっている.切符は仙台→原ノ町のものを持っているので,そのまま通しの切符を見せるだけで乗車.乗り継ぐ客は少なく,地元の人の多くはこの駅から先は自家用車で送迎というのが主流のようである.
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この区間が不通になっているのは,常磐線の線路が津波で破壊され,流されてしまったからであり,復旧にあたっては線路の位置そのものを内陸側に移設させることになっているようだ.下の写真は代行バスの坂元駅だが,「駅前」の空き地は新駅予定地のようだ.
元の駅位置はここ.

新駅はこの辺.

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新地駅の代行バス停駅の海側は,急に市街地が途切れて荒れ地が広がる.元の駅とともに市街地も消滅してしまったのだろうか.
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相馬駅着.自家用車に比べてかなり時間がかかり,亘理駅まで送迎が多いのはそういうことのようである.
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相馬→原ノ町は電車が運行中.線路の右側は原ノ町方面.左側の錆びているのは不通区間.2両編成が行ったり来たり.
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(2013年11月現在)

東北に行ってみた(広野駅周辺編)

常磐線がどうなってるのか,気になったのでいけるところまで行ってみた.まずは南側から.上野から列車を乗り継ぎ,途中で一泊していわきまで.そこから先は「広野行き」という珍しい行き先の電車に乗って終点へ.火力発電所があるところ,とか言うよりはサッカー好きの人には「Jヴィレッジ」の最寄りと言えばわかりやすいか.今やJヴィレッジは彼の発電所対応の拠点になっている.サッカー少年達はどこに行ったんだろうか.
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広野駅から先はただいま復旧工事中である. 津波で落橋したのであろうか,橋梁部分(カルバート?)も工事中であった.
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駅を降りて周辺をぐるっと歩いてみるが,海岸沿いの林は木の下半分だけが枝葉が無くなっており,津波がこの高さまで達したのであろう.駅よりも海側のうち,低地部分は建物も破壊されている.
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駅海側のやや標高が高い部分には新たに住宅地が造成中であった.海沿いで被災した方などの移転先であろうか.
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整備新幹線前倒し「やった方がいい」 : そのとーり

新聞に麻生氏、整備新幹線前倒し「やった方がいい」 という記事があったが,そのとーり.よくわかってらっしゃる.何がもったいないかというと,中途半端につくられた構造物が,何の利益も効果も発揮することなく,長期間野ざらしにされることほど,もったいないものはない.作り始めたら(もちろん借金の利率にも依るが)さっさと完成させて,使い始めるのが一番.
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それから,「北陸新幹線については、南海トラフ地震などで東海道新幹線が機能しなくなる可能性を指摘し、危機管理上も早期の整備が必要だとの考えを示した。」という件も,よくわかってらっしゃる.そのとーり.
残念なのは,北陸新幹線の大阪近辺をどうするのかという方針が決まってないこと.大阪近辺はいろいろと幹線鉄道計画の課題がゴチャゴチャと存在しているが,誰も整理できていないというのが,残念なところ.

リニア新幹線整備の理由(段取りまとめ編)

新幹線整備の計画プロセス,想定と実際の違いのまとめ.何がまずいか,わかるかなぁ?


【基本計画】


本来 実際
考慮事項(全幹法)
  1. 輸送需要
  2. 国土開発の方向性
  3. 効果的な整備
  • 1973年までに,250km/h運転を前提に検討したはず.
  • そうでないと,基本計画は成立していない.
  • 新全総に従って,「国土の均衡ある発展」を目指すような経路設定.

本来 実際
調査内容(施行令)
  1. 輸送需要の見通し
  2. 所要輸送時間の短縮
  3. 輸送力増加による経済的効果
  4. 収支の見通し
  5. 他の鉄道の収支への影響
  • 1973年までに,250km/h運転を前提に検討したはず.
  • そうでないと,基本計画は成立していない.

本来 実際
決定事項(施行令)
  1. 建設線の路線名
  2. 起点と終点
  3. 主要な経過地
  • 1973年に実際に決定されている.

★★★★そして,技術的に500km/h運転が現実的になり,最近になって…★★★


【整備計画】


本来 実際
決定事項(施行令)
  1. 走行方式
  2. 最高設計速度
  3. 建設に要する費用の概算額
  4. その他必要な事項
  • 基本計画と大きく速度が異なる
  • 国土計画も数度の変更がなされている
  • したがって,基本計画決定の前提条件が崩れている.
  • だが,基本計画の内容を見直すこと無くこれらを決定.

本来 実際
規定無し
  • 整備計画の段階では全幹法や施行令に規定が無い内容(本来は基本計画策定時の内容)
  • 整備計画決定の段階で基本計画策定時の調査内容相当の調査等を実施.
  • 基本計画の前提が崩れているからか?→ならば,基本計画の見直しが必要であったはず.
  • 整備計画の審議段階で何でも大幅変更できるのなら,基本計画は要らなかった,ということか?

本来 実際
補足的内容(施行令)
  1. 着工時期に応じ、区間ごと決定可能
  • 名古屋-大阪間は,資金が原因で開業が30年も先.
  • にもかかわらず,全区間一括で計画決定.

何だか,このテンプレート,表組みあんまりきれいに出ないなぁ…

リニア新幹線整備の理由(華麗にスルー,パブコメ編)

いろいろと突っ込みどころが多い審議過程だったので,公式にパブコメとして募集時期にちゃんと指摘している…が,いろいろと都合の悪いことが書かれていたのだろうか,華麗にスルー.そんな指摘はなかったかのような扱いである.私の周りには他にも華麗にスルーされた人がいるようだ.気に入らないからって,スルーは良くないよね.これじゃぁ,パブコメの意味なかろう(厳しく言えば,行政手続法第43条に違反だよね).
以下,誤字脱字を含めて,送ったものそのまま.ただし,メールアドレスは,変なメールがいっぱい来ないように@を◎に置き換えてある.
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差出人:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
件名: 中央新幹線に関するパブリックコメント
日付: 2010/08/28 13:53
宛先: g_RWB_KTD◎mlit.go.jp
CC: hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp

国土交通省鉄道局幹線鉄道課 御中

お世話になります。
中央新幹線に関するパブリックコメントを提出いたします。
募集要領の「テキスト形式でお願い致します。」の意味が
不明瞭でしたので、本メール本文および添付ファイル(word
ファイル)をお送りします。内容は同一です。
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「中央新幹線に関するパブリックコメント」
(フリガナ):(ハトコ マサトシ)
1.氏  名:波床 正敏
2.住  所:大阪府大東市中垣内3丁目1−1
3.所  属:大阪産業大学工学部都市創造工学科
4.電 話 番 号:072-875-3001(内線3722)
5.電子メールアドレス:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
意  見
【1】全国新幹線鉄道整備法施行令第二条に基づく再計算
中央新幹線は昭和48年11月に運輸省告示第466号により基本計画線となっているが、昭和45年9月制定の全国新幹線鉄道整備法施行令第二条によると、基本計画を決定しようとする際には以下の事項を調査しなければならないことになっている。
(1)新幹線鉄道の輸送需要量の見通し
(2)新幹線鉄道の整備による所要輸送時間の短縮および輸送力の増加がもたらす経済的効果
(3)新幹線鉄道の収支の見通し及び新幹線鉄道が他の鉄道の収支に及ぼす影響
すなわち、すでに中央新幹線が基本計画となっているということは、上記調査が済んでいるということである。これら諸量は、新幹線鉄道の速度等が設定され、都市間の所要時間が決まらない限り求めることができないが、昭和48年当時は磁気浮上の実験がようやく成功したばかりであるため、上記諸量は従来型の新幹線鉄道を想定して計算されているはずである。時速500キロという運転は想定されていないため、再計算が必要と思われる。
このうち、(1)についてはすでに明らかにされていると思われるが、(2)については所要輸送時間の短縮については明らかになっているものの、経済的効果(特に地域経済に与える影響)については不明瞭であり、公表が必要である。また、(3)については収支の見通しは計算されているものの、他の鉄道への影響については既設の東海道新幹線への影響が示されているに過ぎない。
このような再計算を行う際、中央新幹線を超高速運転しようとしていることに十分注意しなければならない。従来型の新幹線整備の影響はせいぜい沿線に配慮して計算すれば、大きな誤差を生じる可能性は小さい。しかし、リニア新幹線は、在来線はもちろんのこと、従来型の新幹線鉄道網をも支線として機能させてしまうほど高速であるため、影響は極めて広範囲に及ぶ。リニア新幹線沿線相互間の影響は全体のごく一部である可能性が高い。したがって、沿線に限定した経済的効果や他の鉄道への影響の再計算では不十分であり、全国的な視点が必要である。
【2】整備目的の明確化が必要
中央新幹線をリニア新幹線として整備するその本来の目的は、わが国中央部に位置する三大都市圏を結ぶ東海道新幹線の機能を補完・向上させることであると理解しているが、現状のリニア新幹線計画には幾つかの不明瞭な点が存在する。
第一の点は、大都市を完全には結んでいない点である。東海道新幹線ののぞみ号の機能をリニア新幹線に移転させようとしているという基本的な方針については理解できる。しかし、のぞみ号が結んでいる大都市と中央新幹線の経路は一致していないため、三大都市圏を結ぶ東海道新幹線のバイパスとしてリニア新幹線を位置づけようとすると、その機能は万全ではないと思われる。大都市間の相対的位置関係を大きく崩さないために、どのような方策を考えているのか、明確にすべきではなかろうか。このままでは、中央新幹線沿線となる大都市と沿線外となる大都市との間で、利便性の大きな差を生むことになり、中長期的にはそれら大都市の盛衰を大きく左右する可能性が高い。
第二の点は経路選定の理由が明確でない区間が存在することである。東京−名古屋間については、東海地震等の被害を最小限にするという観点から内陸部経由を採用することには一定の合理性がある。しかしながら、名古屋−大阪間についてはルート選定の明確な理由が見いだせない。東京−名古屋間を中央新幹線として整備するからといって、全幹法の中央新幹線の経路をそのまま大阪まで辿らなければならない、という積極的な理由は存在しない。基本計画線は全線一括で整備計画にしなければならない、ということもない。現に北海道新幹線は青森から旭川までが基本計画であるが、整備計画になったのは札幌までである。地質調査等が済んでいるからという理由についても、国土構造を変化させるかもしれない大事業に関する理由としては、積極的とは言い難い。
唯一考えられるのは、奈良経由により沿線を開発するという目的であるが、リニア新幹線の主たる目的は三大都市圏間の結節、特にのぞみ号が停車するような大都市間の結節機能であるので、沿線開発は副次的なはずである。もし沿線開発目的が最重要であるとするならば、それは他の整備新幹線と同じ整備目的であるということになり、費用負担や並行在来線(この場合は実態を考慮すると近畿日本鉄道になるであろうか)の問題など、一般的な整備新幹線の建設手順のルールに従うべきである。
【3】大阪延伸の遅延は国土構造に悪影響
大阪への延伸が、現時点の計画では2045年になっているようであるが、遅すぎる。名古屋開業から20年近くもかかってしまうと、大阪都市圏の衰退が明瞭になり国土構造が変化してしまう。これでは、東西間の円滑な交通を提供するという東海道新幹線およびそのバイパスの機能を十分に果たさないことになる。
歴史的に見て、明治期の鉄道網構築期において早期整備された地域(太平洋岸など)と遅れたところ(日本海側など)の整備時期の差は概ね20年程度であった。この時期にわが国の人口分布は大きく変化している。また、戦後の高速交通網の整備時期においても交通利便性の地域的格差を生じており、その後の地域発展の度合いに影響を与えている。リニア新幹線は既設新幹線に比べて速度が倍程度であり、運行頻度は航空機よりも格段に多い。このため、明治、戦後に続くわが国陸上交通に多大な影響を与える第三の波になる可能性が高く、遅延は看過できない。加えて、影響は三大都市圏に限らず、かなり広範囲に及ぶはずであるが、沿線の議論に終始してしまっているのも残念である。
大阪への延伸が大きく遅れる原因は資金調達である。巨額の建設資金を自己資金として調達するという決断は、わが国の交通史に刻まれる大英断である。しかしその一方で、民間企業の資金調達問題が国土構造をゆがめてしまうことは避けるべきではなかろうか。資金が民間により調達されるからといって、国は黙してして語らずという態度を続けるべきではない。
【4】防災の観点について
東海道新幹線のバイパスとして中央新幹線を建設する目的の一つは、大規模地震発生時にも東西間の交通を確保することにある。JR東海作成の資料(第3回プレゼン資料7頁)では東海地震発生時の震度分布に関する資料が示され、中央新幹線が概ね震度の大きい地帯を避けられることが示されている。一方、愛知県の示した資料(第5回愛知県作成プレゼン5頁)によると東海地震と東南海地震の同時発生時には、中央新幹線は名古屋付近においてかなり広範囲に震度6弱以上の地帯を通過しなければならないことが示されている。
歴史的に見て東海地震が単独発生したことは無いようであるので、大地震への備えという点では愛知県の示した震度分布の資料を重視して東西間交通確保の方策を考えるべきと考えられるが、それに対する考えが明確でない。名古屋が被災して使えなくなれば、東海道新幹線であれ、中央新幹線であれ東西間を結ぶことができない。大地震発生時の東西間交通の確保は、東海道新幹線と中央新幹線だけでなく、さらに北方の幹線鉄道網も含めて対応を考えておくべきではないか。
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s15510080203- hatoko.docx
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波床正敏(HATOKO Masatoshi)
大阪産業大学 工学部 都市創造工学科
http://www.osaka-sandai.ac.jp/ce/rt/