月別アーカイブ: 2015年4月

ツッコミどころの多い地図(4)

今回も北海道である.下の写真の伊達市から洞爺湖の東側を経て倶知安に至る「胆振線」は比較的有名で,昭和新山の活動に伴って影響を受けたのは有名なお話.1986年に廃止されて30年近く経過するが,いい加減な地図上では切れ切れになりながらも,なぜか国鉄線?として存在している.

廃線せずに残しておけば観光路線になりそうな気がするが,国鉄末期ではそういう発想もなかっただろうな.

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倶知安の西側にもナゾの路線が描かれている.予定線としては,函館本線の黒松内から寿都付近を経て岩内までが描かれており,このうち,黒松内から寿都方面には寿都鉄道という鉄道が開業していたようだ.

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岩内で黒松内からの予定線は終わっているが,その右側の共和というところ付近に鉄道線を消した痕跡が残っている.実にいい加減な作図である.どうやらこれは岩内線という1985年に廃止になった路線のようであり,函館本線上の小沢から岩内を結ぶ15キロほどの路線で,上の予定線とあわせると函館本線のバイパス線のような経路が出来上がったようである.

まだこのいい加減な地図の探訪は続く.

ツッコミどころの多い地図(3)

古い地図はいろいろ面白い.

北海道の話は続く.名寄の西側にどこにもつながらないナゾの「予定線」が描かれている.朱鞠内湖付近から始まって,西は羽幌(のちょっと手前)までの路線である.これは何だ?

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調べてみると,名寄から朱鞠内湖を経て羽幌までの路線が鉄道敷設法で予定されており,このうち,東の方の名寄と朱鞠内湖の間は実際に建設されて深名線の一部になったようだ.深名線は朱鞠内湖付近から南下し,函館本線の深川まで達していた.

未開業区間は名羽線と名付けられ,沿線には炭鉱があったようなので石炭輸送目的の路線と重複する羽幌付近の10㌔あまりが炭鉱鉄道として開業していたようだ.

深名線は1995年に廃止されており,この地図からも消されている.ということは,元々描かれていた深名線だけを消して予定線はそのまま地図に残したので,このような変な場所に予定線だけが残されたということのようだ(まぁ,作図がいい加減だということ).

同じく西側についても炭鉱鉄道が廃止されるとともに,接続されていた海岸沿いの羽幌線も廃止されてしまい,残ったのが地図の予定線というワケのようである.

おかげで,何かと興味深い地図になったわけだが,まだまだツッコミどころは多い.

京都・四条通は「道路工事で渋滞」か?…社会実験時を振り返る

なぜか普段の10倍もアクセスがあり,どうやらこの話が気になっている人が多そうなので,続きである.
京都・四条通、道路工事で渋滞慢性化 観光客「歩いた方が早い」 : 京都新聞.
京都・四条通は「道路工事で渋滞」じゃないよ

現在進行形の四条通の歩道拡幅事業は7年半前の「トランジットモール社会実験」が原点である.原点ではあるが,7年半前の「トランジットモール社会実験」は本物の「トランジットモール」とは似て非なるものなので,あれがトランジットモールだと信じてはいけない.別物である.

まずは,7年半前(2007/10/14)の最初の写真.烏丸通り側から河原町通り方向に歩いて行く.すでにこの写真の段階で,重大なヒントがある.説明は後ほど.

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当時の交通規制内容がこれ.ここにもヒントが.

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当時も左折レーンが準備されていたことがわかる写真.ただし,ここは四条烏丸交差点の東側部分で,細街路への左折レーンではない.

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バス停部分.当時はバス停部分は「バスベイ」になっており,楽にバスが追い越せた.

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さて,何が現在と違うか,おわかりいただけただろうか.

  1. 現在は自家用車も進入できるが,当時は自家用車が進入禁止になっていた.
  2. (細街路が車両通行止めで)四条通は直進のみであった.
  3. 直進のみなので,左折レーンはなかった.
  4. 現在はバス停部分が半島状に突き出ているが,当時は「ベイ」になっており引っ込んでいた.

ということである.遠い北欧の都市街路も参考になるが,まずは原点がどうであったか再確認する価値はありそうである.

なお,当時はバスが「トランジットモール」には似つかわしくない高速度で四条通をびゅんびゅん突っ走っていた.

# 何度も言うが,本物の「トランジットモール」とは似て非なるものであり,別物である.

ツッコミどころの多い地図(2)

実家にあった古い地図.いろいろ面白い.

北海道の帯広の西側,狩勝峠付近.すでに新狩勝峠トンネル経由の新線になっているが,新得から足寄に向けて「国鉄の予定線」が描かれている.(よく見ると,今はなき士幌線と池北線も細い線で描かれている)

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どうやら新得から上士幌までは北海道拓殖鉄道という路線で,戦前に開業し,昭和40年代に廃止になった路線のようであり,その先の足寄まではやはり予定線があったようである.

狩勝峠のさらに西側にも「なんだこれ」という予定線が見える.根室本線と石勝線をショートカットしている「予定線」がある.日本国有鉄道紅葉山線という路線名だったようだが,当然未完成である.

DSCN1121この地図(書店のカレンダー),なかなか正確である.

ツッコミどころの多い地図(1)

以前,実家の台所の壁に貼ってあった地図.いろいろとツッコミどころが多い.

例えば,茨城県の水戸から鹿嶋にかけてであるが…

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鹿嶋と水戸の間の鹿島臨海鉄道線が「国鉄の予定線」になっている.

調べてみると,元々は国鉄の新線として建設されていたようであり,国鉄末期に国鉄ではなくて地方鉄道線として開業したということのようである.ということで,ツッコミどころが多いのだが,割と正確,ということでもある.

なお,よく見るとかしてつBRTになった路線も地方鉄道線として石岡駅から鉾田まで描かれていたりする.

ツッコミどころは,まだまだたくさんあるが,追々見てみることにしよう.

瀬戸大橋は急勾配

瀬戸大橋というと,当サイトでは折に触れて新幹線用の空間が既に準備されていることをお話ししており,例えば下の写真では線路の左側がやけに空いているのがそうであるが…

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今日はそういう話ではなく,どちらかというとどうでもいい話に近いかもしれない.例のごとく特急だろうが快速だろうが瀬戸大橋を通過するときには線路の見える位置をキープするのが基本であり,いろいろと観察している.

よく見ていると通過する橋の種類によって線路のうねり具合が違っている.橋と橋の間のコンクリート高架橋部分が真っ直ぐなのは当然として,斜張橋部分(金沢の兼六園の植木のように,ハープの弦のようなケーブルで吊っている橋,例えば横浜ベイブリッジ)も下のように割と平らである.

DSCN0600ところが,典型的な吊り橋部分(例えば明石海峡大橋とかレインボーブリッジ)は,こ〜んな感じでちょっとした丘陵のようになっている.

DSCN0614重い列車が吊り橋の真ん中に差し掛かると橋がその分沈むので,最初から真ん中あたりを少し上の方に持ち上げている.そんなわけで写真に撮るとまるで橋を渡るというよりは,これから丘を越えて行くような感じに見える.

なお,この吊り橋部分を含めて,瀬戸大橋は16両編成の新幹線がそのまま東京から走ってきても問題ないように基本設計されている.

モノレールはなぜ遅い?

再びモノレールの話である.

羽田空港に行くモノレールはそうでもないが,それ以外のモノレールはとっても遅い.鉄道の速度は主に曲線での遠心力による転倒とか,直線部分での蛇行動による脱線などが制約要因だったかと思う.だが,モノレールについては,この写真のように…

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…がっちり軌道をつかんでいるので,乗客の乗り心地の問題とか,高架のカーブで停止した際に傾いた状態でどうやって救出するかとかいった問題を解決しさえすれば,脱線するような事態は考えにくいのでもっと速度が出せても良さそうである.

少なくともカーブをゆるくしさえすれば,時速50km/hしか出せない,などということは避けられると思う.

ゴムタイヤによる制限,ということも考えられるが,中央新幹線用のリニアは時速160キロくらいまではタイヤ走行なので,タイヤの問題ではない.その程度の速度は出せそうである.

モノレールは,通称モノレール補助と呼ばれる道路財源を使った補助を得て作られることが多いが,このために原則として道路空間上であり,曲線は自動車道路の一般道レベルの曲線にならざるをえない.時速40キロ程度の低速交通機関を取り扱うのが基本である軌道法が適用されるので,あまり速い速度は想定しようとしていないかも.

そういうしがらみを解き放てば,交通システムとしては,もう少し対自動車競争力のある交通機関になると思うのだが,もうちっと何とかならんかな.

【祝】サイトリニューアルだいたい1年

コラムサイトをリニューアルしてだいたい1年経った.
最近の人気の記事をピックアップしてみると,こんな感じである.(なお,最もアクセスが多いのはトップページ)

  1. 2014/05/29 青函トンネル対応の新幹線電車考
    • 北海道までもう間もなく新幹線が走ろうとしているが,皆様ご存じのとおり,困った問題がまだ解決されていない.青函トンネルでの運転速度の問題だ…302 point
  2. 2014/09/21 鉄道後進国ニッポン(気動車1両でも140KM/H)
    • もう,段々感覚が麻痺してきたが,フランスの超閑散線区向け気動車1両編成列車.通称マッコウクジラとかシロナガスクジラ,と言うらしい…248 point
  3. 2014/07/08 茨城県のBRT(かしてつBRT編)
    • 2007年に廃止になった鹿島鉄道の代替バスは「かしてつバス」と呼ばれる.運行はかしてつではなく,関鉄グリーンバス.その路線の一部が鹿島鉄道線の路盤を転用したバス専用道になっており,「かしてつBRT」と呼ばれているらしいので行ってみた…209 point
  4. 2014/07/11 茨城県のBRT(ひたちBRT編)
    • 日立にもBRTがあるようなので,立ち寄ってみた.日立駅ではなく,大甕(おおみか)駅発着.ここも日立電鉄線の廃止線路跡をバス専用道として活用している.廃止路線の代替バスというわけではないようである…184 point
  5. 2014/10/11 ロングレールの継ぎ目
    • ロングレールというと,レールを溶接して継ぎ目を無くしたレールであり,高速鉄道や住宅地等々,騒音や振動を嫌う箇所で使われる.それでも完全に継ぎ目無しというのは珍しく,信号用の回路の関係等が理由で所々に継ぎ目がある.標準的なものはこんな感じ…149 point
  6. 2014/10/16 近鉄瓢箪山駅の不思議な配線
    • どーでもいいお話しに近い話.下の写真は近鉄瓢箪山駅の構内配線であるが,よく考えると不思議な配線である.一見,安全側線だが…149 point
  7. 2014/10/10 弾丸列車計画の駅選定とリニア計画
    • 東海道新幹線計画の祖先こと弾丸列車計画.正式には「新幹線計画」と言ったらしいが,最近刊行された書籍を読んでいると,どの都市とどの都市を結ぶべきか,つまり駅選定の際に考慮した事項が載っている…139 point
  8. 2014/10/05 この踏切に引っかかると留年
    • ほんとかどうかは知らないが,この踏切に引っかかると留年したらしい…138 point
  9. 2014/10/02 予讃線のトンネル
    • 予讃線は県間を結ぶ幹線鉄道なのに,なぜか単線のままで特急列車が向かいから来る特急列車を待ち合わせ...などということもある.この日は向かいから来る列車がちょっと遅れているようだ.ちょっとクスッとくるような理由で(内緒)…137 point
  10. 2014/08/16 軌間可変電車(FGT)の台車のお話し
    • GCT (= Gauge Changeable Train)というか,FGT (Free Gauge Train) というか,新幹線の広めの軌道と在来線の狭めの軌道を直通運転できる電車の開発が始まって,かなり経過した…133 point
  11. 2014/10/18 あれ?何かいた!?
    • 大阪モノレールに乗っていると,大阪の鳥飼というところにある新幹線の車両基地のすぐ近くを通る…132 point
  12. 2014/10/09 PARK & RIDE (SKY TRAIN編)
    • バンクーバーのスカイトレインのお話し…128 point
  13. 2014/09/25 エアロトラン
    • エアロトレインとも言うが,リニアの宮崎実験線跡で研究しているあれではない…121 point
  14. 2014/04/16 鉄道後進国ニッポン(非電化急行は160KM/H)
    • 非電化,単線,4両編成のディーゼル急行というと,日本だと(もう絶滅したけど)山の中をゴトゴトとゆっくり走るイメージだけど,ドイツの非電化,単線,4両編成のディーゼル急行というと,こんな感じ…120 point
  15. 2014/07/16 東海道新幹線の能力
    • 日本で最も輸送能力が高い幹線鉄道は,言うまでも無いが東海道新幹線である.1編成16両で,1300人以上の座席定員がある…117 point
  16. 2014/10/07 ミニ地下鉄
    • ミニ地下鉄という地下鉄がある.交通システムの教科書では,中量輸送機関に分類されている小型地下鉄である…116 point
  17. 2014/12/27 【祝】片町線減便決定!
    • もちろん【祝】な訳ないだろ.今度の3月改正で,昼間の運転状況がこうなるらしい…115 point
  18. 2014/10/03 AMTRAK(振り子式列車編)
    • カナダのVIA鉄道だけでなく,米国のAmtrakにも振り子式列車がある.シアトルとカナダのバンクーバーを結ぶ列車である…105 point
  19. 2014/11/17 姫路駅前の「トランジットモール」
    • 姫路駅前が「トランジットモール」になるらしいと言うので,立ち寄ってみた.夏以来なので,2度目.若干工事が進んでいる…104 point
  20. 2014/05/26 東北に行ってみた(BRT編)
    • 既にご存じの方も多いが,気仙沼線では被害が大きく,復旧の見込みが立たないことから,使用できる路盤を道路転用し,バス専用道化して「BRT」として運行されている…99 point

それぞれのページがなぜよくアクセスされているのかは不明.

都構想の陰で進行する大阪長期衰退の始まり(第10話-リニア編)

一応第9話までで完結しているので,番外編である.第9話までは以下のリンク先をどうぞ.

第1話-新幹線偉大なり編第2話-産業振興vs交流編第3話-他の交通機関編
第4話-東海道vs中山道編第5話-新幹線駅が都市圏形成編第6話-駅アリ>駅ナシ編
第7話-20年差が命取り編第8話-後手必敗編第9話-東密西粗編編


2ヶ月ほど前に,こういう記事があった.

リニア延伸遅れに焦り 関西財界セミナー、京都誘致も影響 : 京都新聞.

この記事の中で,京大の藤井先生が「東京一極集中を是正するためにも同時開業が必要だ。実現できなければ大阪は18年間にわたって名古屋圏の地方都市になる」と説明したらしいが,私の感想としては…藤井さん優しいなぁ,である.

どういうことかというと,第7話-20年差が命取り編を思い出して欲しい.それまでに無かった新たな交通機関が出現するときには,20年ほどの整備時期の差がその後の盛衰に大きく影響して,後から追い付こうとしても差が縮まらなかった.

ということは,こういうことではないだろうかと思っている.

×:(同時開業が)実現できなければ大阪は18年間にわたって名古屋圏の地方都市になる
○:(同時開業が)実現できなければ大阪はたとえ18年後に開業しても半永久的に名古屋圏の地方都市になる

名古屋を再び追い越してぶっちぎるには,リニアだけでは足らなくて,新大阪駅を中心にして四方八方に高速鉄道が整備されるくらいの勢いでないといけない.単に追いつくだけでは,18年の差を埋めることはできない.


この記事の後半もなかなか興味深い.

京都がリニア誘致をあきらめない話が書かれている.リニア整備の時期が約20年差でも致命的な影響が生じる可能性があるわけなので,リニアの駅そのものの有無は未来永劫の盛衰を左右するレベルである.そりゃぁ,あきらめないだろう.

大阪の経済団体は「法律で奈良市付近を通るルートに決定しているという認識で統一されている」とのことだが,これもなかなか興味深い.

大阪は京阪神の中心,近畿一円の中心,関西の要である.(どうなるかどうかわからないが)道州制というような構想もあり,もしかしたら将来的には大阪が経ヶ岬から潮岬までについて我が事のように気を配らなければならない日がやってくるかもしれないのだが,現時点では隣の京都の盛衰は気にならないようである.かといって奈良がどうでもいいということでもない.

リニアの効果を最大限に近畿一円で受け止めながら,その全体に恩恵を巡らすような,全体合意可能な案が必要なのだが,そういったところには意識はいっていないようである.

自ら前へ前へと出る事には長けているが,他地域とうまくやってゆくのはあまり得意ではない地域性が出てしまっているのかも知れない.大阪が真の地域圏のリーダーになるには,もうちょっと修行が必要かもしれない.(逆ギレしないでね.)


こんどこそ終わり.

線路切替えなので振替えられてみた(ナゴヤンの思考回路編)

3/28の線路切替えの夜,家に着くと我が家のナゴヤンから電話あった.「今,京橋」らしい.

振替え輸送で何度も乗り換えて片町線で帰路につくのが面倒なので,京阪電車で帰るから,京阪の駅までクルマで迎えに来いという.

さすがナゴヤンの思考回路である.京阪電車なら交野線で河内森-河内磐船経由でJRに乗り換えれば良いと勧めてみたが,「疲れた」らしい.

………が,まぁ,JRの混雑具合(結構ガラガラ)から考えて,電車での外出を取りやめたか,ナゴヤンのような思考回路に基づいて行動したか,そういう人は多かっただろう.