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異なる試算結果のなぜ?…北陸新幹線敦賀以西

このお話.

北陸新幹線で未着工となっている福井県・敦賀以西の3ルート案をめぐり、滋賀県は28日、県の独自試算と国土交通省が公表した試算との相違点についての分析をまとめた。利…

情報源: 異なる試算結果のなぜ? 滋賀「米原ルート」国「小浜京都ルート」…北陸新幹線敦賀以西ルート(1/2ページ) – 産経WEST

交通計画する人にはほとんど疑問に思わない話でも,一般の人には難解かも.


「(滋賀県は)米原ルートについて、米原駅での乗り換え時間を県が5分と計算したのに対し、国交省は15分としていた。」

5分というのはラッチ(中間改札)無しでホーム対面の乗換でダイヤが綿密に調整されている場合だとこの程度.確か,九州新幹線の暫定開業時の新八代がこの程度だったかと思う.実際の東海道新幹線のラッチ経由在来線乗り継ぎの駅は7-10分程度を最低限の時間に設定している例が多い.

15分というのは跨線橋を渡ったりする可能性あり,プラス,乗り継ぎのダイヤ調整が完全ではない可能性を考慮するとこの程度かと思う.現状の「しらさぎ」と東海道新幹線の乗り継ぎがこの程度であったかと思う.

どっちが良いかというと,どっちもあり得る.JR会社間の協力次第.現状の雰囲気だと後者になる可能性が高いかな.


「(滋賀)県はいずれのルートも敦賀駅に止まる想定だが、国交省は止まらないと想定」

これも,どっちもあり得る.現状のサンダーバードですら,敦賀停車のものとそうでないものとがある.


「(滋賀県は)列車の速度を県が時速約165キロとしたのに対し、国交省は時速約200キロで試算」

これも,どっちもあり得る.前者は最近建設された新幹線の全駅停車列車ではありそうな値.後者は速達便でよく使う値.


ということで,「じゃぁ,試算結果はどう使えば良いの?」ということになると思うが,今回は「整備計画線」という路線なので,大阪まで建設する(新幹線で結ぶ)こと自体は決まっているため,ルート間の優劣を見るのが試算の重要目的になる.試算結果の数値の絶対値自体は参考情報であり,おそらく現実に開業した場合はどちらの数字でもない.

じゃぁ,どの数字を見ながら優劣を考えるのが適切かというと,それは整備の目的による,ということになる.

お金がないのでとにかく効率重視で整備したいのなら「B/C」の順序.整備の効果の大きさ重視で整備したいのなら「B-C」の順序.特定の地域の開発をねらっているのなら,その特定地域に関する「B」の大きさの順序.とにかく早期開業したいのなら,BやCではなくて工期の数字.

さて,いろいろ議論はあっても良いのだが,北陸新幹線て何のために建設するんだったっけ? 実はそのことを忘れている人が多いので,議論が迷走しているように思える.目的がはっきりすれば,自ずと答えは見えてくる.

#交通計画の授業で学生にこういって説明する.目の前に渋滞している道路があって困っているとしよう.これをなんとかしたい.いろいろ検討した結果ベストな案だといって出てきたのが「これが最も大もうけできる案」だったらどうする? 思わず「いやいやいや,で,その案で渋滞解消するの?」と聞きたくなるだろ? っってね.

 

奈良盆地で工事をすると…

奈良つながりで思い出したお話.昨日の話題とは直接の関係は無い.

奈良盆地で土木工事をすると…

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いろいろ出てくることもある模様.これは土器かな.噂には聞いていたが,ほんとに移植ごてみたいなスコップとハケで掘ってる.基本は記録を取ってその後は工事続行らしいが,たまにとんでもないものが発見されたりすると,計画が大きく変更されることもあったかと思う.

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有名どころは国道24号.奈良の市街の西側にバイパスをつくろうとしたら,平城宮跡の一部が出てきてしまい,東へと大きく迂回.

奈良にリニアの駅をつくるのなら,個人的には近鉄大和西大寺駅併設が奈良県にとってもっとも便利だと思っているが,場所が場所だけにまず工事は無理.…で,どこにつくるのかなぁ.

#上の写真は郡山市と天理市の境界付近.奈良市内を外せば大丈夫というわけでもない模様.京奈和自動車道や国道24号バイパスの建設が妙に遅い原因は,こういった背景もあるかな.

 

明治のホームは新幹線の姿を見ることができるか?

新幹線工事の始まっている長崎の諫早駅のホーム.旧島原鉄道&JRの1番線ホームである.このホーム,よく見ると「地層」が見られる.一番下の地層はレンガ積みである.その後の列車の床面上昇に合わせてかさ上げされている.

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長崎の鉄道開業は他県に比べるとやや遅かったが,それでも1898年(明治31年)には九州鉄道の駅として諫早駅が開業している.島原鉄道は1908年(明治41年)の開業だ.とすると,このレンガホームはその当時のホームかな?

かさ上げ前はこんなイメージ.(これは明治村)

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約125年後,そのホームのすぐ近くに260km/h運転の新幹線ホームが増設される模様.完成後は,東側から順に島原鉄道,在来線島式ホームx2,新幹線相対式ホームになり,このホームは新1番線&2番線になるようなので,このホームはそのまま生き残る可能性がある.

FGTがどうのこうのと揉めてるが,レンガホームからは「長生きしてみるもんだ」という声が聞こえてきそう.

#もっとも,そのまま流用はされるものの,外側からの見た目はきれいに化粧される可能性も高い.果たして明治のホームは新幹線の姿を見られるのか…?

和歌山市内のマンション

11/19の昼前,大阪府下の自宅にいると,ゆらゆらゆら.長い.段々揺れが大きくなってくる.ヤバイ.ついに来たか!

即座にネットで確認すると和歌山南部が震源でM5.4で震度は4程度.「それ」ではなかった.

ところで,以下の写真は和歌山市内のとあるマンションであるが,ピロティ形式の1階の柱にゴム製の免震装置が入るとともに,巨大なダンパーがくっついていることが分かる.

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そう言えば,新幹線だとかの橋脚には鉄板が巻かれるようになり,耐震性は向上してきているのかもしれない.…が,まだ免震橋脚とか制震橋脚とかそういうのは無いんだなぁ,とふと思った.

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#道路用はある模様.

トンネルの中の待避線

長崎本線は肥前山口から西は単線になる.諫早と長崎の間は複線化されているが,かなり変則的で,実態は北側をまわる旧線と真っ直ぐトンネルで抜ける新線の組合せになっており,単線x2と言った方が良い.

さて,この新しい方の線路は単線でほとんどトンネルであるが,長いトンネルの途中には珍しいトンネルの中の待避線がある.

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こういったトンネルの中の待避線は,仙山線の面白山トンネルとか,ほくほく線のトンネル内にもある.

大昔の人力で列車の到着を確認して分岐器を切り替えるシステムではあり得ない方式だが,センサーが発達してCTCで遠隔制御できる昨今ならではの施設ともいえる.

 

九州新幹線(長崎)ただいま建設中(長崎駅編)

九州新幹線の長崎ルート,ただいま建設中のはずである.続いて長崎駅付近を見てみた.

まず目に付くのは,この工事.

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浦上駅手前から長崎駅あたりにかけて,長崎本線に沿って細長い更地が続く.だが,これは新幹線工事ではなくて新幹線の工事に合わせて在来線の立体交差事業をしようとしている工事であって,直接的には新幹線とは関係がない.

 

新幹線そのものは長崎の中心市街を横切る距離は短く,この写真を左から右に横切ってそのまま新しい長崎駅に到達して終点のはず.

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左方はすぐに山になっておりトンネル,右はというと…

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何やら工事をしている.さらに近づくと「新幹線」の文字がある.新幹線工事だ.

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まだ橋脚を作り始めたばかりの模様.

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さて,この工事をしているのは何の敷地かというと,…バスの営業所のようだ.

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そして,その向こうは現在の長崎駅の北側にある広大な未利用地であり,ここに新しい駅ができて新幹線と高架化された長崎本線が乗り入れる.

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ここが長崎駅予定地.開業は2022年の予定である.

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九州新幹線(長崎)ただいま建設中(諫早駅編)

長崎の諫早駅.九州新幹線ただいま工事中である.元の駅舎はもはやなく,仮駅で営業中.

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ただし,まだ新幹線本体の工事ではなくて,その準備工事の模様.島原鉄道を含め,在来線を順に配線を整理しながら東に移設している模様.

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移設して西側を空けて,高架駅を造るのかと思いきや,この駅は新幹線には珍しく,地平駅の模様.おまけにこの駅の長崎方には半径700mの急曲線が入る模様.

全列車停車前提の割り切った仕様か?

この右側に写っているホームのさらに向こうあたりが新幹線ホーム?

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駅北側の跨線橋から.左から順に島鉄,在来線4線,新幹線2線の順に並ぶはず.

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白いカモメと黒いカモメ

博多から長崎に行くときに乗るのが特急「かもめ」.白い電車なので「白いカモメ」と言う人もいるのかな.

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博多-長崎間,約1時間55分.長崎が近づくと曲線が多くなるので,曲線での速度が出せるよう,特殊な装置つきである.

さて,ホームの反対側には「黒いカモメ」が出発を待っている.

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んんん〜,君は「黒いカモメ」? 「黒いツバメ」じゃないの?

博多-長崎間,約2時間8分.長崎が近づくと曲線が多くなるが,直線が多い鹿児島本線用に当初投入された電車なので,曲線ではゆっくり走る.遅いわけだ.

普段なら「白いカモメ」と「黒いカモメ」なら前者に軍配が上がるところであるが,九州新幹線の長崎ルートの工事が本格化しつつあり,数年すると曲線の多い区間は新幹線がトンネルでズドンと抜けてしまうようになる.

つまり,こういう風景を見ながら長崎に向かうのも,あと数年.ゆっくりと「黒いカモメ」で今のうちに車窓を楽しんでおくというのも一興である.

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暫定整備計画の欠点

昨日の記事で取り上げた国会の質問中,「暫定整備で単線の新幹線を…」と言う旨の発言があったかと思うが,こういうことである.

現在,新幹線を整備する際に,フル規格高速新線を即座に整備しにくい場合には,ミニ新幹線やスーパー特急方式と言った「暫定整備計画」という手法が採用できることになっている.

ところが,この暫定整備計画は残念ながら欠陥だらけであり,はっきり言って役に立たない.

もちろん,フル規格新線の途中にごく短区間だけミニ新幹線区間がはさまるとか,フル規格新幹線から短い枝線を分岐させるとか,そういったものならば許せるのだが,距離が長くなるとその欠点が顕在化する.

ざっと整理すると,各手法には赤字で示した箇所のような欠点がある.

例え暫定であっても,なるべくフル規格新幹線に近いようなサービスレベルが確保できることが望まれるのだが,そういった手法が現時点では未開発なのだ.

この表の「本当のニーズ」を単線システムで実現できないだろうか,というのが国会での質問の背景であろう.

整備手法の課題と本当のニーズ

フル規格
新幹線

ミニ新幹線
(山形/秋田)

スーパー
特急方式

本当の
ニーズ

概要

複線の
高規格新線

軌間を
標準軌に

軌間以外は
新幹線準拠で
建設して,
後に新幹線化

???

速度

260km/h
以上

120km/h
程度

140〜
160km/h

260km/h
以上

片道
本数

15本/時
以上

1〜2本/時

複線区間は
多数運転

2本/時
くらい

費用

50〜100
億円/km

数億円/km
(激安)

50〜100
億円/km

なるべく安く

信頼

ほとんど
遅れない

普通列車・踏切
大雨・大雪

普通列車
貨物列車

ほとんど
遅れない

車両

新幹線(大型)
320km/h対応

新幹線(小型)
320km/h対応

在来線特急

「高速」新幹線
(サイズは不問)

直通

新幹線
直通

新幹線
直通

在来線
(乗換)

新幹線
直通

新規

既存

新規/既存

どちらでも

その他

費用の問題

建設期間短い
(改軌のみ)

新車開発して
200km/hまで

 未開発
手法

※ ”背景であろう” って書いてみたが,暫定整備計画の欠点を指摘してるのはどうやら私以外いなさそう.