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青函トンネル内高速化検討

青函トンネル内の運転速度を140km/hから160km/hへと向上させる話があるようだ.

情報源: 東京―新函館北斗3時間台へ青函高速化検討 トンネル内限定 | どうしんウェブ/電子版(経済)

元々,青函トンネルの新幹線の設計速度は確か160km/h(旧型新幹線車両使用時の勾配における登坂能力やブレーキ能力の関係で)だったと思うので,ようやく当初計画レベルになる模様.

青函トンネル自体は新幹線規格のサイズで設計されているが,三線軌のためにカント(左右のレールの高さの差.自動車のテストコースの曲線部分を思いだしてね)が十分に取れないようで,同じマクラギを共通で使用している限りは狭軌のカントの1.34倍程度である.しかも狭軌の方は事実上の貨物列車専用線なので,在来線特急が目一杯の速度で走るような最大カントの105ミリにはせずに標準的な70ミリなのかもしれない.(→調べたがよくわからない)

そうすると標準軌の方は1.34分の一のせいぜい95ミリということで,新幹線のカントの最大値(200ミリ)の半分くらい.青函トンネル内の曲線は,東北新幹線レベルの半径4000メートルよりもさらに緩い6500メートルだったかと思うが,もしカント95ミリしか無いとすると,せいぜい230キロ運転が限界か?

そもそも新幹線の160km/h運転を想定して青函トンネルが設計されているので,曲線部における建築限界も160km/h運転を想定して設定されており,高速運転用にカントが設定できても建築限界の問題が解決しないのではという話もある模様.

青函トンネルにおける新幹線化前の在来線特急の速度は140km/hであったが,これに合わせてカント量が設定されているとすると,曲線部でのカント量はわずか25ミリ.新幹線がその1.34倍とすると34ミリ.これだと新幹線でも140km/h運転になりそう.現状はもしかして,これか?(→調べたがよくわからない)

なお,風圧で貨物列車が荷崩れを起こす可能性については,50年以上前の東海道新幹線建設時において既に指摘がされており,東海道新幹線の工事誌には新幹線における貨物列車のすれ違い速度は150km/h程度が限度と書かれている.そして,東海道新幹線を使用した新幹線貨物列車の速度も150km/hを想定して構想されていたようだ.

 

新幹線整備スキーム

現在の新幹線整備スキームは,

国:地方=2:1

…の建設費負担割合が原則で,最近はここに借入金などが付加される形だ.だが,まぁ,原則,公設民営である.

ところで,最近は北陸新幹線のルート問題に対して経営予定の会社がいろいろと注文を付けているようだが,注文を付けて確実にそうさせたいのなら,自ら出資する方法もあると思う.

なお,もうすっかり忘却の彼方だが,北陸新幹線の高崎-長野間の建設費負担スキームは上に書いた割合によるものではなく,運営予定のJRの出資も行われている.スキームは未来永劫,固定化する必要は無いと思う.

鉄道事業の地域独占(需給調整)は既に原則廃止されて15年以上経過しており,明確に残存しているのは新幹線だけである,しかも,それについては法律に明文化されているわけではない.新幹線整備関連の法令には事業者を決めろと書いてあるだけで,既存の事業者が引き継げとは書いていない.公費により整備された公共施設を民間が利用する場合はオープンアクセスが原則であり,一事業者に絞る場合でも,公募が本来必要なのだが,形式的なものですらナゼかいまだに行われたことが無い.厳しい見方をすれば,習慣的に特定の幹線鉄道事業を行う事業者への便宜が図られ続けている(巨額の補助金が支出され続けている)状態と見ることもできる.

…と,我が社の主張が当然というような顔をして大きな声でいろいろ発言しているのを見ると,ちょっとひとこと言いたくなる,今日この頃.

マスコミは広告収入減らしたくないから何も言わないよね.

フリーゲージ長崎実験線?

再び,このお話.

九州新幹線長崎ルート(博多-長崎)に導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を巡り、国土交通省の水嶋智鉄道局次長は21日、佐賀県庁で副島良彦副知事…

情報源: フリーゲージ延期を報告 佐賀、長崎県に国交省

国土交通省は,あくまで平成34年(2022年)の時点で九州新幹線の長崎ルート開業時にフリーゲージトレインを入れたい意向だが,ちょっと待て.新技術の使用は机上のスケジュールで決めるのは危ないぞ.

確かに営業列車を使って新しい技術を確かめるという方法は存在する.ただし,それは新技術が「フェールセーフ」の時だけだ.つまり,予定通りの機能を発揮しなくても,安全な挙動を示すだけで致命的な結果には至らないような場合は営業車を使って試験してもかまわないだろう.

例えば,乗り心地を改善する装置なら乗り心地が低下するだけで走行そのものには問題が無いとか,エネルギー効率を改善する装置なら効率が低下したり機器が停止したりするだけで走行そのものは続けられるとかである.

ところが,フリーゲージトレインの新しい技術は走る装置そのものである台車である.走行中に台車が壊れれば,停まるだけ…なわけなく,脱線転覆レベルだ.フリーゲージトレインの開発において,走行中に台車が破損しても大丈夫なように多重系にしたとか,安全に停止できる装置を併設したという話は聞いたことが無い.とすれば,信頼性が一般の新幹線レベルの信頼性に達して初めて営業車に使うべき技術である.

このままだと,十分な走り込みもせずに九州新幹線長崎ルートに投入ということになりかねない.そうなったら,「フリーゲージ長崎実験線」だ.新幹線の安全性は「枯れた技術の投入」が原則ではなかったのか?

現実的な九州新幹線長崎ルートの解は,佐賀県下のフル規格新線建設か,もしくは新鳥栖-佐賀-武雄温泉間のミニ新幹線化(一部は三線軌化)であろう.フリーゲージ導入は,技術が確立されて以降に建設される新幹線からだ.

技術者倫理の観点から,決して「人柱」はしてはいけません.

 

どうする北海道の鉄道

ようやく議論が本格化しつつある今日この頃.

情報源: 北海道の鉄道網 もはやJRに任せられぬ | どうしんウェブ/電子版(社説)

「JRの経営努力が不可欠なのは当然だが、鉄道の維持を北海道の地域政策としてとらえるべきだ。そのためにも、国や道には主体的な関与を求めたい。」

…だそうだが,JR旅客各社のうち本州以外の3社については(九州は人口密度が高かったので何とかうまくやったが,)基本は「基金」の運用益頼みの経営構造である.

この「基金頼み」の鉄道経営は,JR発足時にJRになれなかった地方ローカル線各線の経営構造とほぼ同じであり,低金利のために基金の運用益が確保できずにバタバタと倒れた三セク地方ローカル線とJR北海道とは基本的には同じ状況である.

ようやく問題が顕在化したのは,今まで「JRだから何とかなるだろう」という世間の読みの甘さと,これまでに経営の行き詰まった三セク地方ローカル線に比べれば規模が大きく,札幌都市圏というある程度の収益源もあったからである.

ようやくこれで三セク地方ローカル線と同様の議論を開始できるようになったわけで,問題が最近発生したわけでは無く,放置してきただけなのである.

リンク先の記事の最後にもあるように,道路政策と鉄道政策をリンクさせるというのは有効な解決策の一つである.しばしば受益者負担の議論を持ち出して,道路利用者に公共交通の維持費を出させるのかという反対論が出るが,鉄道が倒れかかっているような地域では「道路利用者≒国民」であるので,明確に分離して議論することにはさほどの意味は無く,要は地域インフラとして鉄道を認めるのか否かという議論だけが重要である.

交通基本法あるんだから,鉄道に国道番号とか道道番号(あるいはこれらを含めた「通路番号」)割り振っちゃえよ,という話はよく聞く.

なお,リニアや整備新幹線とこの問題をからめて議論しようとする人もいるようだが,かなりお門違いである.リニアや整備新幹線が千億兆単位で「支援」を受けていると思い込んでいるようだが,返済の見込みのある事業だけが借金できたという話であり,返済を要しない無償資金援助を受けたわけではない.資金構造をよく知らない人の的外れな議論に要注意.

#四国はどうするの?

和歌山市内のマンション

11/19の昼前,大阪府下の自宅にいると,ゆらゆらゆら.長い.段々揺れが大きくなってくる.ヤバイ.ついに来たか!

即座にネットで確認すると和歌山南部が震源でM5.4で震度は4程度.「それ」ではなかった.

ところで,以下の写真は和歌山市内のとあるマンションであるが,ピロティ形式の1階の柱にゴム製の免震装置が入るとともに,巨大なダンパーがくっついていることが分かる.

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そう言えば,新幹線だとかの橋脚には鉄板が巻かれるようになり,耐震性は向上してきているのかもしれない.…が,まだ免震橋脚とか制震橋脚とかそういうのは無いんだなぁ,とふと思った.

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#道路用はある模様.

FGT前提計画は未開発技術採用

かつて東海道新幹線が建設されたとき,一応,未開発の技術ではなく当時使用実績のあった技術を集めて開業に至った.

その後の整備新幹線は言わずもがな.

スーパー特急方式は,狭軌200キロ運転は実績がないが,160キロ運転程度なら試験列車の実績があった.

ミニ新幹線は,車両だけ狭軌広軌両用で,(細々とした部分はともかく)特に新規の技術はなかった.

リニア新幹線も技術開発が一定水準に達したことを確認してから建設することになった.

ところがFGTはというと,技術開発が現在進行形である.にもかかわらず,まだ完成していない技術を九州新幹線長崎ルートで使うことが予定されている.まるで実験線だね.一時期,北陸新幹線の敦賀以西でも使用が想定されていた.

なんか違和感あるなぁ.まだ実用になるのかどうか分からないので,FGT採用を前提とした路線計画は,技術開発が要求水準に達したことを確認してからあらためて立案した方がいいかも.

つまり現時点で路線計画をたてるのなら,これまでの例に倣うと,FGTの使用を前提とせずに計画した方が適切かも.などと思う今日この頃.

新幹線なのに牛歩戦術?

北陸新幹線のルート案の試算結果をよく見ると,小さな字でこう書かれていることに気がつく.

「平成43年度着工を想定」

ん? 平成43年は今から15年後なので,2031年だよね.敦賀開業後速やかに着工するんじゃなくて,10年もそのまま何もしないの? 工期15年だと開業は2046年だよね.

たぶん,積極的な資金確保をしない前提で書いてあると思うが,リニアの時と同じく,「開業する頃には,もう死んどるわ!」という反応が返ってきそう.

それとも,開発再開した例の車両の完成を密かに待って,「もうこれでええやん」と言ってしまおうという「牛歩戦術」か?

トンネルの中の待避線

長崎本線は肥前山口から西は単線になる.諫早と長崎の間は複線化されているが,かなり変則的で,実態は北側をまわる旧線と真っ直ぐトンネルで抜ける新線の組合せになっており,単線x2と言った方が良い.

さて,この新しい方の線路は単線でほとんどトンネルであるが,長いトンネルの途中には珍しいトンネルの中の待避線がある.

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こういったトンネルの中の待避線は,仙山線の面白山トンネルとか,ほくほく線のトンネル内にもある.

大昔の人力で列車の到着を確認して分岐器を切り替えるシステムではあり得ない方式だが,センサーが発達してCTCで遠隔制御できる昨今ならではの施設ともいえる.

 

九州新幹線(長崎)ただいま建設中(長崎駅編)

九州新幹線の長崎ルート,ただいま建設中のはずである.続いて長崎駅付近を見てみた.

まず目に付くのは,この工事.

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浦上駅手前から長崎駅あたりにかけて,長崎本線に沿って細長い更地が続く.だが,これは新幹線工事ではなくて新幹線の工事に合わせて在来線の立体交差事業をしようとしている工事であって,直接的には新幹線とは関係がない.

 

新幹線そのものは長崎の中心市街を横切る距離は短く,この写真を左から右に横切ってそのまま新しい長崎駅に到達して終点のはず.

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左方はすぐに山になっておりトンネル,右はというと…

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何やら工事をしている.さらに近づくと「新幹線」の文字がある.新幹線工事だ.

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まだ橋脚を作り始めたばかりの模様.

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さて,この工事をしているのは何の敷地かというと,…バスの営業所のようだ.

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そして,その向こうは現在の長崎駅の北側にある広大な未利用地であり,ここに新しい駅ができて新幹線と高架化された長崎本線が乗り入れる.

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ここが長崎駅予定地.開業は2022年の予定である.

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