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北陸新幹線京都経由望ましい(試算結果の読み方編)

続きである.

北陸新幹線の敦賀−大阪間のルートに関する試算結果については,これが比較的有名であり,国土交通省の方はルートが複数あることを認めただけで具体的な検討をしていないというのが実状である.

http://www.kouiki-kansai.jp/contents.php?id=1019

http://www.kouiki-kansai.jp/data_upload/1362710126.pdf

この試算結果については,建設費概算の合計額部分,つまり小浜ルートが9500億円,湖西ルートが7700億円,米原ルートが5100億円という部分が注目を浴びがちである.よく見ると,湖西ルートと米原ルートについては6200億円とか3600億円という数字も見える.

これは車庫線・回送線1500億円を建設費に入れるか入れないかで数字が変わるということである.

ところで,この車庫線・回送線がいったい何なのかについて正しく理解している人が少なそうなのが残念なところである.

ちょっと別のように聞こえるが,ヒントは東海道新幹線の品川駅である.品川駅が無かった頃,東海道新幹線の増発のネックは東京駅と車両基地の間を走行する回送列車だと言われた.回送列車が東海道新幹線の本線の列車容量を食ってしまい,わずかな区間の列車容量不足のために全線にわたって列車を走らせることが出来ない,というものであった.

そこで,回送列車が走らない位置,つまり品川に駅を作れば品川−大阪間に列車を増発できるようになる,というロジックであった.実際には保安装置の性能向上により,ごく希な例を除いて品川発着の新幹線は設定されていないが,一応,品川駅は列車容量増加策であった.

ところで,大阪側はというと同じような話がある.新大阪駅と鳥飼にある車両基地の間に回送列車が走っており,ここの線路容量がけっこう厳しい.品川駅設置が議論されていた時期に新大阪と鳥飼基地の容量が問題にならなかったのは,新大阪近辺の線路容量と東京駅近辺の線路容量が微妙に異なっていたからであった.

東京駅の線路容量は東京駅の品川寄りの分岐器の制限速度がネックになっている.新幹線の分岐器の制限速度は70km/hが原則であるが,東京駅構内については用地が手狭なことなどが影響して60km/h制限になっている.一方,新大阪駅の構内の分岐器については規格通りの70km/h制限なので,東京駅南西側の線路容量<新大阪駅東側の線路容量であり,品川駅のような話にはならなかった.

さて,話を北陸新幹線に戻すと,ルートの建設費の部分に書かれている1500億円というのは,新大阪と鳥飼基地の間の線路容量を緩和するための回送線の建設費のことである.北陸新幹線の電車を米原や京都から東海道新幹線に乗り入れさせようとすると,鳥飼車両基地の東側までは何とか走れるのだが,そこから先の線路容量が厳しい.

そこで,鳥飼基地に出入りする回送列車の一部を専用の回送線に逃してやることが出来れば,本線の線路容量が空くことになり,乗り入れが可能になる,というものである.北陸新幹線の電車の分の容量を稼ぎ出しさえすればいいので,回送線は単線でも充分である.(もちろん,リニアの大阪開業で東海道新幹線の容量自体に余裕が出来るのならば,この1500億円は要らない.)

あんまり理解されずに数字が勝手に独り歩きしているようなので,ご注意を.(特にマスコミで理解している人が少なそう.ちゃんと説明しているのを見たことが無いけど,当の広域連合も理解してるのかしら?)

なお,「北陸新幹線と東海道新幹線では運行システムが…」という意見は良く聞くが,「運行管理システムの改修費用<建設費の差分」ならば,やはりルートの検討は重要である.システム改修費用って数千億円もするのか?

あと,「電源の周波数ガー」「ATCの種類ガー」とかいう話もある.だが,電気系統については,そういう仕様で発注してくれれば何とでも,というのが車両メーカーの感触である.(そうだよねぇ,その程度で車両設計できなくなるレベルだと,電源電圧や周波数が何種類もあって,信号システムが統一されてるようでされていないし,車両限界も微妙に違う欧州ではビジネス出来ないよね.)

つづく

北陸新幹線京都経由望ましい(米原ルート編)

こういう記事がある.

北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートに関して,関西の財界も新しい案に興味を示しているという記事である.
情報源: 北陸新幹線「京都経由望ましい」 敦賀以西ルートで関経連会長 : 京都新聞

全国的な視点では,敦賀-小浜-大阪を最短で結ぶいわゆる若狭ルートとか小浜ルートと呼ばれる原案よりも,敦賀-米原を短絡するいわゆる米原ルートの方が工事費が安くて建設期間が短く,完成が早い.

米原ルートは工費を安く出来る分,資金を他の新幹線建設に回せる可能性があり,(西日本の関係各府県にとっては必ずしも望ましくないこともあるが)全国的視点では望ましい.

しかし,数年前から注目されているこの米原ルート,ご存じのとおり(今でも線路容量的には不可能では無いと思われるが)JR東海が東海道新幹線への乗り入れに難色を示しており,実現が難しそうである.

東海道新幹線については,リニアが西まで延びた段階で,いずれ余裕の出来るインフラである.将来的には東海道新幹線沿線といえども人口は頭打ちから減少に転じ,その状況下で東京-大阪間にリニアと東海道新幹線という2つのインフラを抱え込むことになる.

民間会社としては,将来的な需要を自社路線に呼び込む装置作りもしておかなければならないはずであるが,そういった視点は持っていないようである.斯くして,JR東海は,いずれかき集めなくてはならないはずの将来の旅客を逃そうとしている.

リニアができることで,西日本各県からの航空旅客から客を奪うことをアテにしてませんか? 西日本の人口減少は東海道新幹線沿線の比じゃないんですけどね.

(つづく)

 

機廻し線

構内配線シリーズである.KTR豊岡駅.ホームが1面しか無いが,線路は2線ある.ホームへの進入時に見ると,こんな感じ.

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2線ある線路は,ドン突きで再び合流している.ご存じ,機廻し線である.最近はなかなかこんなにきれいな形で残っていることも少ない.

その昔,機関車が引っ張ってきた列車はこの駅で終点.機関車だけ切り離してドン突きまで機関車が進み,ホームの無い線路を使って引っ張ってきた客車の反対側へ.

そして反対側に機関車を付け直して反対方向に出発.

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無粋な話をすると,どうせ機関車列車なんてもう走らせないんだから,このドン突きの合流部分の線路を引っぱがしてホームの無い側にもホームを作れば,頭端式のターミナル駅になり,やはりダイヤの作成が格段に楽になる.

機廻し線,無くなっちゃうけど.

ちょっと悔やまれる構内配線

KTR宮津駅の構内配線のお話.下の写真は宮津駅の西側を写したものである.

奥へと線路が2本延びているが,右は宮津線天橋立方面,左は宮福線福知山方面である.ホームは3面4線になっており,写真左側(奧)から右(手前)へと順に,[4番線]福知山方面からの折り返し用,[3番線]福知山方面←→天橋立方面直通用,[2番線]宮豊線天橋立方面,[1番線]宮舞線西舞鶴方面というのが標準的な使い方である.

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さて,何がちょっと悔やまれるかというと,2番線の天橋立方面の線路をそそのまま西に進むと,3番線からの合流,安全側線,1番線と合流し,天橋立方面に進む.この安全側線であるが,そのまま宮福線福知山方面への渡り線になっていれば2番線と3番線の両方を福知山方面←→天橋立方面直通用に使えて,ダイヤの組み方が断然楽になる.

元々,宮福線を電化して高速化する際には2番線と3番線の間の片渡り部分は両渡りで計画されていた.片渡りに比べると両渡り(シーサスクロッシング)は非常に高価なので,工費の節約のために片渡りに変更されてしまった.原案どおりなら,やはり2番線と3番線の両方を福知山方面←→天橋立方面直通用に使えた.

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今さらながら,ちょっと悔やまれる構内配線である.

(…という,ちょいと細かすぎるネタ)

南海電車の紀ノ川鉄橋

南海電鉄本線で難波から南へ約1時間.もうすぐ終点の和歌山市駅というところに,割と長い鉄橋がある.

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紀ノ川に架かる鉄橋で,中央がトラス橋,両岸付近がガーダー橋になっている.

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南海が開業した際に架設された鉄橋で,明治以降架け替えされていないので,結構古い.上流側の阪和線の紀ノ川鉄橋は一足先に架け替えされたんだが,これは河川改修事業の一環として架け替えられたそうである.

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南海の方の紀ノ川鉄橋の架け替えの予定は今のところ無いらしい.安全性はしばしばチェックしているそうで,まだまだ大丈夫とのこと.

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立派な鉄橋なので,架け替え費用が大変そうだな.

インドネシア高速鉄道:日本のコピー

ほーらね.予想通り.言わんこっちゃない.

昔から知的財産に関する意識の薄い自治体などが,コンサルタントにプロポーザルをつくらせるだけつくらせて,実際の発注を単なる価格の安いところにしてしまって,アイデアを盗まれるというケースは良くあったが,これはその国際版だな.

こういうことを防止したいのなら,肝心な部分の手の内は見せないようにしておいて,他国のシステムでは実現できないようなプロポーザルを書いておくこと,ですね.

日本の新幹線では実現できるが,中国の高速鉄道車両では実現できないこと,それを考えて計画に盛り込んでおくこと.でないと,こういうことはまだまだ続く.

中国でできなくて,日本でできそうなことは,ハードウェアではなくて,メンテナンスのノウハウとか,人材育成あたりかな.

開削工法のトンネルを外側から見ると…

かなりマニアックなお話.

地下鉄を掘るとき,深いところなら山のトンネルと同じような丸いトンネルになるが,地表から浅いトンネルの場合は,四角い箱形のトンネルになる.

なぜそうなるかというと,地上から電車が走れるだけの大きな溝を掘り,コンクリートで溝の底と側壁を作ったらフタをして表面を舗装して道路にしてしまって終わり,という工法になる.そんなわけで,四角い形になる.

この写真は,地下鉄ではなくて地下高速道路の建設現場だが,同じ方法なので,写真の上の方の地上は道路である.そして,その下で大きな溝が掘られている.

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さて,もしもその四角いトンネルを外側から見ると…四角いコンクリートの塊.実は,別の地下通路が露出したものがこの写真.

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下側に潜ると…つまり,開削工法で高速道路を作ろうとしたら,そこには別の開削工法で作った地下鉄状の線路があったので,仮支えしながらその下を掘っているところ,という状態である.

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この「地下鉄状の線路」は正確には地下鉄ではなくて,地下を走る工場間の物資運搬トロッコ線とのこと.大きな工場にはそんな秘密の貨物線があるということも驚きである.時々,ゴロゴロという何かが走っている音がする.

地下鉄の中にある橋

パリの地下鉄駅の構内.まだ電車が来ていないのに,大きな音でガタンガタン.どこに電車が走っているんだろうか.薄暗かったので,手ブレがひどいが,それでも原因がわかる写真がこれ.

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地下鉄のトンネル内なのに,天井部分に橋の一部のような構造が見えている.プレートガーダー橋?

この橋の上を別の地下鉄が走っているようである.地下鉄の立体交差.

日本の地下鉄でも「この真下10cmほどのところに別の線路が走っています」等というのがあるが,ここは地下鉄トンネル内に別の地下鉄の線路が食い込んでいる.