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公共事業増→民間投資減→不況なのか?

公共投資が増えたおかげで,資材も建設のための人員もそちらにとられて,マンション投資が減って,それが原因で景気の足を引っ張っているというロジックを組み立てるマスコミがある.
けど,これはロジックの組立が下手くそな文系的視点であって,理系の視点では「部分的には合っているが,全体としては間違っている」と結論できる.
まず,この部分は合っている可能性が高い.

  • 公共投資が増えたおかげで,資材も建設のための人員もそちらにとられて,マンション投資が減

人材や資材の供給が一定ならそうなる.だが,「供給が一定」と感してしまうほど供給力が弱くて能力いっぱいに供給してしまっていることが問題なのである.そして,ロジック後半の結論に至る部分は如実に間違いである.公共投資が少なければマンション投資は増えるかもしれないが,だからといって全体の土木建築分野の投資が増えるかというと,増えない.結果として,景気への影響は変わらない.つまり,このマスコミの公共投資悪玉論ロジックは誤りである.
門外漢が何言ってんだ,と言われかねないので,さらに説明すると,公共投資だろうが,マンション投資だろうが,現状の社会構造でネックになっているのは以下の点である.ここが律速段階.

  • 建設関係の人材不足

かつての小泉政権時代の公共事業たたきに始まり,その後の前政権の論拠レスの「コンクリートから人へ」スローガンの下に建設関係従事者が減ってしまい,今に至る.公共事業が多いのがここ数ヶ月の不況の原因ではなくて,建設事業悪玉論をぶち上げ続けたツケが今,顕在化しているのである.
公共投資云々以前に,最大の失敗は,増税なんだけどね.税率上げて税収下がってると,何のために税率上げたのかわからない.まず税収最大化を実現できる最適税率計算しようよ.多分既にこっそりやってると思うけど,10%じゃないだろ?

リニア新幹線整備の理由(名古屋以西編)

前にも書いたがと思うが,リニア新幹線建設の大きな理由は「南海トラフ大地震こわい」である.
災害復旧能力の高い日本といえども,大津波で新幹線の線路が流されたり,100キロ,200キロ単位で震度6−7地帯を通過すれば復旧に年単位を要する可能性がある.日本の国家運営に重大な影響を及ぼす可能性が非常に大きいほか,当の鉄道会社の経営も傾きかねない.
そこで,東京-名古屋間に別線で新幹線を建設する,それが中央新幹線である.バイパスである.
さて,「中央新幹線は東海道新幹線の災害対応のバイパス」のイメージが先行している関係で,全線にわたって新線を要していると思い込んでいる人が,専門家を含めて多いのだが,よく考えてみて欲しい.
南海トラフで年単位の不通区間を生じかねないのは「東京-名古屋間」である.名古屋から西は震度5−6弱の区間が続くので,被害皆無とは言わないが,バイパス新線をつくらないといけないほどの壊滅的被害を受ける可能性は低い.
名古屋以西のルートに関して,こっちを通ると断層が1本で,こっちだと2本,などと言う専門家もいるらしいが(そもそも,地震のリスクを断層の本数で云々と言っている時点で,真剣に考えているとは言い難いが),直下の地震で数ヶ月の不通があったとしても,数兆円掛けて新線を建設しなければならないほどの理由にはならない.今まで新幹線が地震で不通になった事例は数度あるが,いずれも復旧までの期間は3ヶ月程度以下である.
そういう観点からすると,リニア新幹線名古屋以西については名古屋以東とは異なる観点で建設の是非や方法について議論する必要がある.リスクヘッジだけの観点から言うと,鉄道会社にとっては名古屋以西の建設の意義はあまりなさそうである.その実,国や沿線,与党などから早期全線完成の働きかけがあっても反応が鈍い状況にある.資金計画などを見ても,本気で取りかかればもっと早期に完成しそうにも思えるが,「様子を見てから,名古屋から西側に取りかかろうかなぁ〜」という感じである.
※資金計画の分析については,また時間があるときにでも.
※災害対応を重視するのなら,主要ターミナルが海岸の近い低地の「品川駅」の地下,水害で水没しかねない「名古屋駅」の地下,河口に近い淀川付近で津波の指摘もある「新大阪駅」って,どうよ.災害の専門家なら,誰か突っ込んでも良さそうなもんだが,誰も突っ込まないのね.名古屋市営東山線て,こないだ名駅が水没しかかってたよね.

【祝】整備新幹線開業前倒し(だが・・・)

まだ決まったわけではないのだが・・・整備新幹線(北海道,北陸,長崎)の完成時期を早めるべく,資金計画の練り直しがされつつある.
その点だけを取り上げれば「【祝】整備新幹線開業前倒し」なのだが,そう手放しでも喜べない.
新しい資金計画のポイントは,各整備新幹線が開業することによって発生することになっている将来のリース料収入を担保にして,借金をして建設資金に充当して完成を早めるというものである.新たな国庫財源を探すことなく建設時期を早められるということであるのだが,ちょっと待てよ・・・その案は,タコが自分の足食ってるに近いぞ.
確かに開業は早まり,発生する便益を早期に享受できる.そういう点では社会的便益は大きい.ところが,各整備新幹線が完成するに至った場合,新たに完成した新線のリース料収入は借金の返済に充てられ,リース料収入を財源とした新たな路線の建設はできないことになる.
つまり,どういうことかというと,「今着手している路線の建設が終わったら,新幹線の建設は終わり,終了」ということである.
1970年の全幹法成立直後の基本計画が,2010年代半ばの段階の観点において建設すべきか,せざるべきか,しないとするならば他の都市間鉄道サービス改善の代替案は存在するのか,等々の一切の検討をすることなく,「今着手している路線の建設が終わったら,新幹線の建設は終わり,終了」である.
この国には,幹線鉄道網計画全体を俯瞰できるリーダーは,残念ながら存在しないようである.ちゃんと財源探そうよ・・・

国道は付け替え,じゃぁ線路は?

実家附近は津波で危ないという話をしたが,その際に国道は付け替えることになっているという話もした.じゃぁ線路は?
紀伊半島の道路や線路は海岸沿いにへばりついた箇所も多く,例えば下の写真は斜面に右上から国道,南行線路,北行線路の順である.
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こういう箇所であるので,津波どころか,大雨が降ると道路も線路も通行止めになることがある.津波を理由とした国道の付け替えはこの箇所もバイパスできるが,線路はそのままであり,津波危険箇所もそのままである.
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「民間会社」に任せている限り,自主的に改善される可能性はほぼゼロだが,一体誰の責任でこの線路を改善するのだろうか.
ちなみに,この写真の箇所はかつての通学経路で,数千回通過したことのある場所である.

新幹線用地?(札幌駅西側編)

札幌駅から西側に高架橋沿いに歩くと,ほぼ未利用の空き地がずっと続く.高架工事をする際には,側道が整備されることが多いのだが,側道というわけでは無いようである. 新幹線用地?
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沿線のマンションも,この空間を避けて建てられている.この部分は遊歩道化されている.
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用地は,鉄道会社の関連会社が管理しているようである.
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隣の駅のすぐ横の建物も,複線の高架線路程度開けて建てられている.
DSCN1286このへん

なかなかできないFGT

軌間可変電車のお話し.最初に見たのは神戸の車両工場だったっけな.10年ほど前のこと.1-2年前に台車だけ,山口県の車両工場で見たっけな.でも,まだ完成していない模様.完成すればかなり便利なはずだが,高速走行性能がやや足らない&在来線走行するときの軌道への負担が大きい等々でなかなか完成しない.
開発費は次年度28億だそうだが,開発に何年かかってる?
軌道強化にカネがかかるのならば,その程度,公費の改良スキームつくろうよ.高速新線つくるより安いだろ >MLIT殿

大鳴門橋

今さらながらのお話しであるが,本州と淡路島を結ぶ明石海峡は,コストダウンのために道路単独になってしまい,鉄道を通す部分はない.
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淡路島から四国への大鳴門橋については,瀬戸大橋と同じく,鉄道を通す空間が最初から作られており,若干の改良を施せば道路鉄道併用橋になる.
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これは,その鉄道用の空間.新幹線が複線で通せるようになっている(ただし,実際に走る際には信号制御で同時に橋の上ですれ違わないようにするらしい).瀬戸大橋の空間と同じく,もったいない話である.通常なら会計検査院から大目玉の案件である.
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これは横から見た様子.
DSCN0747四国新幹線用の空間であるが「四国新幹線をリニアで」という話があるのだが,もちろん,ここを通過することを想定していると思う・・・が,この鉄製の橋を磁石の塊であるリニアは果たして通れるんだろうか?
確か,リニア用の橋は普通の鉄製の橋ではなくて,いろいろと特殊だったと思うが.

宗谷海峡大橋,だと?

フォルダにあった,どこかで写したパネルの写真.どこで写したのか忘れたが,北海道だと思う.その内容は・・・宗谷海峡大橋,だと?
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トンネルの案もあるようだ.
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日ロ間については国境線が確定していない,ロシアの政治的問題,ロシアの鉄道が広軌で軌間が異なるなど数々の課題がある.だが,工事のしやすさを考えると対馬海峡にトンネルを掘るよりは距離が短く,サハリンと大陸間の間宮海峡も浅い海であるなど工事そのものはしやすそうであり,その気になれば意外と日韓トンネルよりは可能性が高いかも.

弾丸列車計画の駅選定とリニア計画

東海道新幹線計画の祖先こと弾丸列車計画.正式には「新幹線計画」と言ったらしいが,最近刊行された書籍を読んでいると,どの都市とどの都市を結ぶべきか,つまり駅選定の際に考慮した事項が載っている.
大きく,3つの事項が考慮されていることがわかる.

  1. 輸送的観点…発着旅客数や貨物量
  2. 社会事情的観点…下記参照
  3. 現在線急行列車の停車駅…まぁ,つまり当時の実績ですね

2つ目の社会事情的観点については以下の項目が列んでいる.

  1. 人口
  2. 経済事情…生産力,海運移出入
  3. 政治事情…選挙区,議員数,官庁の分布状況
  4. 文化事情…大学や専門学校の設置状況
  5. 観光…観光地の状況
  6. 軍事…師団や旅団の司令部等の配置
  7. 交通事情…接続路線や後背勢力圏など

軍事はともかく,他は幹線鉄道計画としては至極当然の項目が列んでおり,これらをもとに東京〜下関間で20駅が選定されている.当時の列車の想定速度は150km/hであった.戦後,この計画は200km/h運転の東海道新幹線プロジェクトに引き継がれ,原案が鈴鹿山脈越えであったものを米原経由に変更した上で建設されている.元の検討の前提条件は150km/h運転,実際には200km/h運転なので,概ね+30%である.
さて,リニア中央新幹線計画については,1973年に決められた250km/h運転を想定した中央新幹線計画のルートを踏襲している.引き継ぐにあたって速度が250→500km/hと+100%になっており,ほとんど別物の交通機関になっているのだが,基本的なルート選定については「1973年の基本計画に書いてあるから」で済ませてしまっている.ホントにそれでいいのか?
ちなみに,東海道新幹線開業直前のビジネス特急こだま号は110km/hなので,200km/h運転になることでほぼ倍.つまりリニア新幹線プロジェクトは東海道新幹線登場時と同程度の速度引き上げ比率なのだが,500km/hという超超高速運転の乗り物は日本国のどことどこをどこ経由で結ぶべきなのか,まともな議論はされていない.
250km/h運転想定の計画を,+30%程度の320km/h程度のプロジェクトとして引き継ぐのであれば,さほど問題はなかったんだけどね.倍半分だとさすがに誰でも気づくほど差があるよね.

予讃線のトンネル

予讃線は県間を結ぶ幹線鉄道なのに,なぜか単線のままで特急列車が向かいから来る特急列車を待ち合わせ...などということもある.この日は向かいから来る列車がちょっと遅れているようだ.ちょっとクスッとくるような理由で(内緒).
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割と似たような沿線状況の紀伊半島の紀勢線沿線で育った身なので,複線化していない点についてはもうちょっと何とかならんかったものかと思う一方で,振り子式電車が走っている点については,似たようなものかなとも感じた.
紀勢線は国鉄時代の1978年に電化され,同時に紀伊田辺までの複線化が完成している.時期がもう少し遅かったらこの予讃線と同じ状況になっていただろう.予讃線の電化は観音寺より東側が国鉄の最末期の1987年3月,松山まで電化が完成したのが1990年代である.
そういうわけで,インフラについても厳しい状況の箇所があり,このトンネル,何か・・・小さい.
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よく見ると,架線が三重になっており,狭小トンネル対策がされている.電化に合わせて,盤下げ(下側の地面を掘って削って高さを稼ぐ)もされているらしい.
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トンネル自体もレンが巻きでかなり古そうだ.昔なら電化という設備投資に合わせて,トンネルを掘り直したり曲がりくねったSカーブを改善したりといった手直しがされることが多かったと思うが,最小限の投資しかされていないように見える.
新幹線の予算も充分には確保しなければ,その他の改良の予算も確保しない.どうなってんのかな.株式会社にしさえすれば,事態は好転して改善されると思ってたんだろうな.そういえば,この路線の運行している鉄道の株主って,誰だったっけ? 株主の責任が問われているかも.