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北陸新幹線のルートの話(並行在来線の定義って何?)

新幹線を新たに建設しようとすると,しばしば問題になるのが「並行在来線」である.ところが,この並行在来線,定義がイマイチはっきりしないのでどの路線が該当するのか議論になりことが少なくない.
国土交通省のサイトには,こう書いてある.
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html

  •  並行在来線とは、整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道のことです。  整備新幹線に加えて並行在来線を経営することは営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合があるため、沿線全ての道府県及び市町村から同意を得た上で、整備新幹線の開業時に経営分離されることとなっています。

建設する新幹線が,在来線の真横にある場合で,しかも新幹線化されるであろう特急列車がそこをまさに走っている場合には特段異論は出にくい.ところが,在来線と新幹線が離れていたり,新幹線の横に在来線はあるのだが,新幹線化される特急列車がそこを走っていなかったりすると揉め事の原因になる.
上の文章をよく読むと,在来線の経営分離をする理由は「JRにとって過重な負担となる場合がある」である.島の三社はともかく,本州三社は株式を全て民間に放出しているので,今やこのような配慮は過保護じゃないかと個人的には思っているのだが,とにかく理由は「JRにとって過重な負担となる場合がある」である.加えて,公費建設するのに最初から特定の完全民間株式会社に対して経営権を保証しているのにも違和感があるし,新幹線開業後の新幹線の線路のリース料も「受益の範囲内」に設定されて,完全民営会社に利益を確約しているのも違和感がある.
さて,どんな場合に「JRにとって過重な負担となる場合がある」かというと,ほとんどの在来線では特急列車の収益で路線を維持し,その路線上を普通列車や貨物列車を通しているような資金構造になっているので,特急が走らなくなると収益源を失って「JRにとって過重な負担となる場合がある」というわけである.
とすると,並行在来線の定義は上に書いてある「整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道」というよりは, ”新幹線の開業によって特急列車が走らなくなる在来線” と書いた方がより正確である.
例えば北陸新幹線は,敦賀まで工事中,その先はルート案が複数あって確定していないが,どのルートになろうとも終点が大阪である限りかならず発生するのは「湖西線の並行在来線問題」であり,滋賀県は必ずその問題に巻き込まれる.ただし,並行在来線については「経営分離」と書いてあるだけで,在来線の直接の沿線が全てを負担しなければならないとは書いていないことに留意する必要がある.要は,正しく受益者負担を考えるべし,ということである.以外と”忘れている主体”も利益を得ていることがある(しかも確約されてたりして).
#もっともそれ以前にいつも感じるのだが,財政力の弱い地方部での新幹線整備は地元負担がいろいろあり,国土軸付近ではほとんど地元負担がないのは不公平じゃないの,と感じる.

北陸新幹線のルートの話(リニア新幹線との関係編)

北陸新幹線が金沢までできるのは,もうすぐ.その先,福井県下の敦賀までは公式には2025年完成予定で,現在もっと早くできないかといろいろ案が練られている.
ところで,公式開業予定の2025年というと,リニアの名古屋開業予定の2027年とほとんど同じである.北陸新幹線の敦賀開業が前倒しになっても,せいぜい数年なので北陸新幹線はリニアが少なくとも名古屋まで来ていることを前提に計画するのが適当である.(・・・が,そんな議論はあまり聞いたことがないのが残念なところ.)
ほぼ福井限定のお話しであるが,福井から金沢,富山をまわって東京までは約3時間弱ということになっている.
じゃぁ,リニアができるとどうなるだろう.もしも,北陸新幹線が米原に接続されて,北陸新幹線から名古屋まで直通列車が運転されたら,福井から名古屋まで1時間弱,そうすると,東京まではリニア経由で2時間を切る.
北陸新幹線の接続が米原でなくても(いや,敦賀から先が建設されていなくとも),フリーゲージトレイン(GCT)が米原まで運転されて,米原と名古屋の2回乗換を要したとしても2時間ちょっと.3時間近くになることはない.
わかるかな?
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北陸新幹線のルートの話(3案比較編)

北陸新幹線の敦賀から先のルートについて,このルートはどうとかこうとか,関連する鉄道会社の協力が得られるかどうかとか,いろいろな意見がある.建設費と通過するのに必要な時間とかが表になって示されていることもある(・・・その表の「元祖」を探ってゆくと自分のところに戻ってきたりすることもあるのだが・・・).
ところで,意外と忘れているのが沿線人口分布である.沿線人口が多ければ交流人口が多く,北陸新幹線の利用客が多くなって,このプロジェクトが成功しやすい.航空機と違って,終点だけ気にしていればよいというわけではないのが新幹線である.
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簡単に言うと,原案である小浜ルートは敦賀から先にあるのは大阪のみ,湖西線沿いに建設すると言われる湖西ルートは京都と大阪,実質的には北陸・中京新幹線になる米原ルートは京都と大阪と名古屋であり,名古屋の先には40分で東京がある.
北陸新幹線の線路が欲しいのか,それとも,その線路を使って多くの客に使って欲しいのか,どっちが大事か,よーく考えてみよう.
なお,高度経済成長の頃と違って,沿線に人口や産業が純増として張り付くご時世ではないことにも気をつけよう.

国土強靱化-副首都機能候補地を勝手にリストアップ

来たるべき大災害に備えて首都機能を何とかしないといけないという議論があるのだが,東京オリンピックが決まって以降,議論が低調でドキドキする.日本人はとにかく忘れっぽい.
何を首都機能の範疇とするのかは議論の余地があり,それをどこに移したりバックアップを取ったりするのかも議論のあるところだが,もしも日本の頭脳である霞ヶ関(を中心とする官庁街等)と同程度のまとまった面積を関西に確保しようとすると,公有地ではこんな場所がある.いずれも,面積的には同程度の規模である.
これら以外だと海岸の埋め立て地になるが「国土強靱化」の観点では役立たずであろう.
こういった国土整備の重要な案件は,全幹法の規程により幹線鉄道整備に大きな影響を及ぼす.(・・・はずである.法令を正確に遵守すれば.)
まずは,霞ヶ関(および周辺官庁街等)


伊丹空港(大阪国際空港)
航空ネットワークの関空への完全集約が必要だが,・・・実際には結構難しいかも.通勤鉄道線が近隣に複数あるほか,山陽新幹線も近い.高速道路も至近.ただし,ここを転用してしまうと空港は関空になり,遠くなる.ここをつぶしてしまうと,京阪神圏の空港は全て海岸地帯になり,ちょっと問題かも.


万博公園
結構便利な位置だが,公園をつぶすことにはいろいろ意見が出そう.高速道路至近.モノレールあり.通勤鉄道もあり.万博期間中には地下鉄が臨時で延伸されていたこともあるので,その気になれば地下鉄もOK.高速鉄道はやや遠いので,東海道新幹線をひん曲げるか,これからつくるリニアの経路をひん曲げるかする必要があるかも.空港は大阪空港まで割と近い.


陸上自衛隊祝園分屯地
自衛隊の移転先が必要.近隣の丘陵地帯も手つかずに近く,大面積の確保はしやすい.通勤鉄道は周辺に複数あるが,支線等の延伸必要.いずれの線も高速運転向きではないので,大阪市内までは時間がかかる.高速鉄道の駅は遠いので,これからつくるリニアなどの駅が必要.空港は遠いので,アクセスが課題.


陸上自衛隊長池演習場
他よりやや狭い.演習場の移転先が必要.上の祝園とよく似た状況だが,通勤鉄道がJR奈良線くらいしかない.

国土強靱化における幹線鉄道網最大のネック

最近の国土整備の方向性として「国土強靱化」とか「国家のリスクマネジメント」などといったキーワードが聞かれるようになってきているが,日本の幹線鉄道網については,40年前の計画から基本構想が更新されておらず,この図の路線を建設費の目処が付いた順に着工しているに過ぎない.
時々,”建設の新しいスキーム”などと称しているが,単なる資金計画である.民間が出資する場合も同じ.この図が金科玉条になってしまっている(40年前の国土整備方針なのに).nfig235-1
どこがネックかというと,実は「大阪」である.東海道山陽新幹線も,リニア新幹線も,北陸新幹線も山新幹線も四国新幹線も「大阪」が結節点になっており,ここが機能不全になると幹線鉄道網を使っての東西往来が出来なくなる.それ以外にも「東京」「名古屋」は要注意箇所であるが,それでも一応迂回ルートは存在している.
困ったことに,「大阪」は(事実上新大阪駅になるのだが)大津波時には新大阪駅は浸水被害の可能性が指摘されている.高架なら大丈夫かって? 浸水するような状況だと,鉄道を支える各種機器類や電源供給等に支障が出て,線路が無事でも機能不全に陥る可能性がある.「名駅」も津波はともかく(水害のイメージがあり)地元民は眉をひそめて大丈夫かと必ず言うし,「品川」はそもそも海岸地帯で埋め立て地である.
もちろん,この図は(いつ出来るかわからないレベルの)完成予想図であるが,在来線特急であっても事情はほとんど同じである.山陰本線は京都から分岐していると思ったあなた,あなたの頭の中の路線図は古い.京都から鳥取に向かう特急は,大阪経由の「はくと」であり,「特急あさしお」は今や昔である.
新幹線を敦賀発着に,などという意見もあるかもしれないが,それがいいのかどうかはともかく,昔の「列島改造論」ベースの全体構想は,早急に見直す必要がある.
ちなみに,国土強靱化政策大綱には,「PDCA サイクルの徹底 」という項目が基本的な考え方として登場する.新幹線をはじめとする幹線鉄道もこの国土強靱化の取り扱い範疇であるが,例のごとく何もしないのかなぁ.

TRANSPORT IN CANADA(長大橋編)

赤毛のアンで有名なカナダのプリンスエドワード島(P.E.I.)に行くには,通常は航空機だが,陸路で向かうと大陸とP.E.I.の間には延長14kmほどもある長大橋が架かっている.

 あまり有名ではないが,瀬戸大橋が10kmほどなので,結構な長さである.PEI側から見ると,こんな感じ.

PEI_09-377
橋を通ると,こんな感じ.
PEI_09-501
厳寒の期間が長いので,工事は大変そう.
PEI_09-233
橋梁部分の構造はこんな感じ.単純な道路橋.
PEI_09-3241997年完成なので,写真は完成3年目ということのようである.どうりで,Monctonまでの夜行列車の食堂車で同席したおばあさんが「P.E.I.へは船に乗ったの?」と聞いてきたわけだ.その船というのは,鉄道連絡船だったようである.

どうしてできない新幹線(国道指定できへんかなぁ編)

都市内交通では,Light Rail TransitことLRTが注目され,これを日本にも導入しようとあの手この手である.(が,なかなか本格的なものは実現していない)
ところで,このLRTであるが,市街の土地を買収して軌道を敷設して,新しい電車を買ってきて走らせて200円くらいの料金を取る,というのでは企業会計的には絶対にペイしない.あくまで企業会計的に,である.都市全体としては投じた資金に見合うだけのメリットがあるとされている.
そこで,公設民営という方法がとられており,街路整備の一環として軌道整備までやってしまい,その上のを走る電車の部分だけ企業会計的な観点でペイするように事業を設計しようとしている.つまり,こういうことだ.

  • (市街の通路+専用軌道)+LRT用車両=LRTシステム

バスベースのシステムだと,こういうことになる.

  • (市街の通路+舗装されたレーン)+バス=BRTシステム

じゃぁ,都市間交通だとどうなるかというと,こういうことにならないかな.

  • (都市間の通路+専用軌道)+高速鉄道車両=新幹線

通路概念を導入した段階で,都市内交通も都市間交通も基本は同じじゃ無いかと思うんだが.”都市間の通路”を国道として整備できないのかな.よく受益者負担というが,これだけ自動車が普及してしまえば,ほぼ自動車保有者と国民は同じ集合になるので,明確な区別は不要じゃ無いかなと思うんだが.みんな迅速な移動したいのであって,自動車を運転したいわけじゃ無いので,利便が向上するのなら納得を得やすいんじゃないかと思うが.都市内の新交通システムやモノレールへの建設費補助は,それらを整備することで結果として道路を本当に必要とする利用者の利便が上がるという発想が根底にあるが,この考え方の延長で新幹線整備が出来ないかな.

  • (市街の街路+専用のガイドウェイ)+専用車両=新交通システム
    (市街の街路+専用の走行桁)+専用車両=モノレール

同じようなもんじゃ無いのかな.

KIX-エクスプレスのラフ検討

関西国際空港へアクセス鉄道としてリニアを整備せよ,という構想がある.おそらく上海のトランスラピッドに感化されたものだと思うが,果たして芽があるかどうか,ラフなフィージビリティスタディをしてみよう.起点を新大阪にすると,関空までの最短の鉄道延長は約50kmであるので,この数字を使ってみる.
最高速度を500km/h,加速度および減速度を山陽新幹線なみの2.5km/h/sとすると,加減速に要する時間は各200秒である.このとき,加減速時の平均速度は250km/hであることから,加減速時に要する走行距離は各々13.9kmと計算できる.残りの22.2kmが500km/hでの巡航となり,これに要する時間は160秒である.結局,合計560秒(=9.3分)が全区間の所要時間となり,特急はるかの48分と比べて38.7分の短縮である.建設費は東京-大阪間が約9兆円なら,1/10程度の距離なので9000億円といったところか.
次に,加減速度を阪神電車なみの4km/h/sにしてみると,加減速に要する時間は各125秒,加減速時に要する走行距離は8.7km,500km/hでの巡航距離は32.6km,走行時間235秒となり,合計485秒(=8.1分)が全区間の所要時間である.特急はるか比39.9分の短縮.
じゃぁ,通常タイプの新幹線ならどうだろうか. 最高速度を250km/h,加減速度を2.5km/h/sとすると(実際には速度が上がると加速度が落ちるが),加減速に要する時間は各100秒,加減速時に要する走行距離は3.5km,250km/hでの巡航距離は43km,走行時間619秒となり,合計819秒(=13.7分)が全区間の所要時間である.特急はるか比34.3分の短縮.建設費は最近の整備新幹線の見積である100億円/kmをもとにすると,5000億円か.
ついでなので,最高速度160km/hの在来線タイプならどうだろうか.加減速度を2.5km/h/sとすると,加減速には各64秒,その間の走行距離は1.4km,160km/hでの巡航距離は47.2km,走行時間1061秒となり,合計1189秒(=19.8分)である.特急はるか比28.2分の短縮.建設費はあんまり安くはならないので,5000億円程度か.
まとめると,こうなる.さて,どれを選ぶ?

建設費 所要時間 短縮 △1分あたり
リニア新幹線500km/h 9000億円 8.1分 △39.9分 226億円/分
通常新幹線250km/h 5000億円 13.7分 △34.3分 146億円/分
在来線160km/h 5000億円 19.8分 △28.2分 177億円/分

CANADIAN RAIL(廃線跡編)

今やカナダ国内を鉄道で移動することはかなり難しくなってるが,かつては各所に鉄道が走っていたようであり,廃線跡を目にすることが多い.
例えば,赤毛のアンで有名なプリンスエドワード島(P.E.I.)にも鉄道がかつてあり,廃線跡と廃駅が観光地化されている.上の写真はかつて大陸との連絡船の発着場のあった駅の跡,下は内陸の駅跡である.
PEI_09-378PEI_09-078
P.E.I.以外でももちろん,廃線跡は多く,「オンタリオ州の幽霊鉄道」などという本まで出版されていたりする.
多くの廃線跡は遊歩道になっており,自転車で走ったり散歩したり出来るようになっている.下の写真は,オンタリオ州のストラトフォードの公園.いかにも鉄道橋であり,まくら木が残っている.
Stratford08-023Stratford08-027Stratford08-016[2000年夏現在]

新聞記事の精度(京都民報編-その3)

タブロイド紙の件の続きである.コメントまだ1面だが,この面以外は独自の内容は書かれていないので,1面だけコメントすれば充分なレベルの内容である.
駅建設関係部分についても,市が噛みつかれているようだ.ポイントは,駅建設に関する費用負担である.この紙に限らず,公共事業の費用が発生することは,これ即ち全て悪であるという前提で記事が書かれることが多い.この記事も例にもれていない.
公共事業が是か非かを判断するのは,費用に見合った効果が生じるか否かであって,支出が生じることが全て悪ではない.支出ばかりで何の効果も出なければ悪い事業,支出に見合った効果が出ればいい事業.非難する場合は,何の効果も出ないということを(悪魔の証明にならない範囲で)それなりに説得力のある理由を述べてから非難する必要がある.・・・で,この記事はというと,市がまだ説明していないことだけを以て「マイナス」と結論づけている.論が飛んでますが.現時点で非難できるのは,”説明を”までですね.「マイナス」かどうかは調べたり検討したりしてないので,言えないよね.
残りの8面,9面にも記事が続くらしいが,8面は主に以下の話のダイジェスト,9面はリニア計画に反対している学者のお話のダイジェストなので,以下省略.
詰まるところ,このタブロイド紙は,茶化した記述+浅い分析+他記事のダイジェストの構成のようで,的確な独自分析には至ることが出来なかったようである.(まぁ,週刊誌なら,そんなもんか.)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(輸送力編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(失敗尻ぬぐい編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(地震対策・復興編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(環境編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(安全確保編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(番外編+まとめ)