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リニア新幹線整備の理由(華麗にスルー,パブコメ編)

いろいろと突っ込みどころが多い審議過程だったので,公式にパブコメとして募集時期にちゃんと指摘している…が,いろいろと都合の悪いことが書かれていたのだろうか,華麗にスルー.そんな指摘はなかったかのような扱いである.私の周りには他にも華麗にスルーされた人がいるようだ.気に入らないからって,スルーは良くないよね.これじゃぁ,パブコメの意味なかろう(厳しく言えば,行政手続法第43条に違反だよね).
以下,誤字脱字を含めて,送ったものそのまま.ただし,メールアドレスは,変なメールがいっぱい来ないように@を◎に置き換えてある.
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差出人:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
件名: 中央新幹線に関するパブリックコメント
日付: 2010/08/28 13:53
宛先: g_RWB_KTD◎mlit.go.jp
CC: hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp

国土交通省鉄道局幹線鉄道課 御中

お世話になります。
中央新幹線に関するパブリックコメントを提出いたします。
募集要領の「テキスト形式でお願い致します。」の意味が
不明瞭でしたので、本メール本文および添付ファイル(word
ファイル)をお送りします。内容は同一です。
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「中央新幹線に関するパブリックコメント」
(フリガナ):(ハトコ マサトシ)
1.氏  名:波床 正敏
2.住  所:大阪府大東市中垣内3丁目1−1
3.所  属:大阪産業大学工学部都市創造工学科
4.電 話 番 号:072-875-3001(内線3722)
5.電子メールアドレス:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
意  見
【1】全国新幹線鉄道整備法施行令第二条に基づく再計算
中央新幹線は昭和48年11月に運輸省告示第466号により基本計画線となっているが、昭和45年9月制定の全国新幹線鉄道整備法施行令第二条によると、基本計画を決定しようとする際には以下の事項を調査しなければならないことになっている。
(1)新幹線鉄道の輸送需要量の見通し
(2)新幹線鉄道の整備による所要輸送時間の短縮および輸送力の増加がもたらす経済的効果
(3)新幹線鉄道の収支の見通し及び新幹線鉄道が他の鉄道の収支に及ぼす影響
すなわち、すでに中央新幹線が基本計画となっているということは、上記調査が済んでいるということである。これら諸量は、新幹線鉄道の速度等が設定され、都市間の所要時間が決まらない限り求めることができないが、昭和48年当時は磁気浮上の実験がようやく成功したばかりであるため、上記諸量は従来型の新幹線鉄道を想定して計算されているはずである。時速500キロという運転は想定されていないため、再計算が必要と思われる。
このうち、(1)についてはすでに明らかにされていると思われるが、(2)については所要輸送時間の短縮については明らかになっているものの、経済的効果(特に地域経済に与える影響)については不明瞭であり、公表が必要である。また、(3)については収支の見通しは計算されているものの、他の鉄道への影響については既設の東海道新幹線への影響が示されているに過ぎない。
このような再計算を行う際、中央新幹線を超高速運転しようとしていることに十分注意しなければならない。従来型の新幹線整備の影響はせいぜい沿線に配慮して計算すれば、大きな誤差を生じる可能性は小さい。しかし、リニア新幹線は、在来線はもちろんのこと、従来型の新幹線鉄道網をも支線として機能させてしまうほど高速であるため、影響は極めて広範囲に及ぶ。リニア新幹線沿線相互間の影響は全体のごく一部である可能性が高い。したがって、沿線に限定した経済的効果や他の鉄道への影響の再計算では不十分であり、全国的な視点が必要である。
【2】整備目的の明確化が必要
中央新幹線をリニア新幹線として整備するその本来の目的は、わが国中央部に位置する三大都市圏を結ぶ東海道新幹線の機能を補完・向上させることであると理解しているが、現状のリニア新幹線計画には幾つかの不明瞭な点が存在する。
第一の点は、大都市を完全には結んでいない点である。東海道新幹線ののぞみ号の機能をリニア新幹線に移転させようとしているという基本的な方針については理解できる。しかし、のぞみ号が結んでいる大都市と中央新幹線の経路は一致していないため、三大都市圏を結ぶ東海道新幹線のバイパスとしてリニア新幹線を位置づけようとすると、その機能は万全ではないと思われる。大都市間の相対的位置関係を大きく崩さないために、どのような方策を考えているのか、明確にすべきではなかろうか。このままでは、中央新幹線沿線となる大都市と沿線外となる大都市との間で、利便性の大きな差を生むことになり、中長期的にはそれら大都市の盛衰を大きく左右する可能性が高い。
第二の点は経路選定の理由が明確でない区間が存在することである。東京−名古屋間については、東海地震等の被害を最小限にするという観点から内陸部経由を採用することには一定の合理性がある。しかしながら、名古屋−大阪間についてはルート選定の明確な理由が見いだせない。東京−名古屋間を中央新幹線として整備するからといって、全幹法の中央新幹線の経路をそのまま大阪まで辿らなければならない、という積極的な理由は存在しない。基本計画線は全線一括で整備計画にしなければならない、ということもない。現に北海道新幹線は青森から旭川までが基本計画であるが、整備計画になったのは札幌までである。地質調査等が済んでいるからという理由についても、国土構造を変化させるかもしれない大事業に関する理由としては、積極的とは言い難い。
唯一考えられるのは、奈良経由により沿線を開発するという目的であるが、リニア新幹線の主たる目的は三大都市圏間の結節、特にのぞみ号が停車するような大都市間の結節機能であるので、沿線開発は副次的なはずである。もし沿線開発目的が最重要であるとするならば、それは他の整備新幹線と同じ整備目的であるということになり、費用負担や並行在来線(この場合は実態を考慮すると近畿日本鉄道になるであろうか)の問題など、一般的な整備新幹線の建設手順のルールに従うべきである。
【3】大阪延伸の遅延は国土構造に悪影響
大阪への延伸が、現時点の計画では2045年になっているようであるが、遅すぎる。名古屋開業から20年近くもかかってしまうと、大阪都市圏の衰退が明瞭になり国土構造が変化してしまう。これでは、東西間の円滑な交通を提供するという東海道新幹線およびそのバイパスの機能を十分に果たさないことになる。
歴史的に見て、明治期の鉄道網構築期において早期整備された地域(太平洋岸など)と遅れたところ(日本海側など)の整備時期の差は概ね20年程度であった。この時期にわが国の人口分布は大きく変化している。また、戦後の高速交通網の整備時期においても交通利便性の地域的格差を生じており、その後の地域発展の度合いに影響を与えている。リニア新幹線は既設新幹線に比べて速度が倍程度であり、運行頻度は航空機よりも格段に多い。このため、明治、戦後に続くわが国陸上交通に多大な影響を与える第三の波になる可能性が高く、遅延は看過できない。加えて、影響は三大都市圏に限らず、かなり広範囲に及ぶはずであるが、沿線の議論に終始してしまっているのも残念である。
大阪への延伸が大きく遅れる原因は資金調達である。巨額の建設資金を自己資金として調達するという決断は、わが国の交通史に刻まれる大英断である。しかしその一方で、民間企業の資金調達問題が国土構造をゆがめてしまうことは避けるべきではなかろうか。資金が民間により調達されるからといって、国は黙してして語らずという態度を続けるべきではない。
【4】防災の観点について
東海道新幹線のバイパスとして中央新幹線を建設する目的の一つは、大規模地震発生時にも東西間の交通を確保することにある。JR東海作成の資料(第3回プレゼン資料7頁)では東海地震発生時の震度分布に関する資料が示され、中央新幹線が概ね震度の大きい地帯を避けられることが示されている。一方、愛知県の示した資料(第5回愛知県作成プレゼン5頁)によると東海地震と東南海地震の同時発生時には、中央新幹線は名古屋付近においてかなり広範囲に震度6弱以上の地帯を通過しなければならないことが示されている。
歴史的に見て東海地震が単独発生したことは無いようであるので、大地震への備えという点では愛知県の示した震度分布の資料を重視して東西間交通確保の方策を考えるべきと考えられるが、それに対する考えが明確でない。名古屋が被災して使えなくなれば、東海道新幹線であれ、中央新幹線であれ東西間を結ぶことができない。大地震発生時の東西間交通の確保は、東海道新幹線と中央新幹線だけでなく、さらに北方の幹線鉄道網も含めて対応を考えておくべきではないか。
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s15510080203- hatoko.docx
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波床正敏(HATOKO Masatoshi)
大阪産業大学 工学部 都市創造工学科
http://www.osaka-sandai.ac.jp/ce/rt/

リニア新幹線整備の理由(整備計画のツッコミどころ編)

中央新幹線計画に関する手順がいろいろとツッコミどころが多い話の続きである.今回は,整備計画関係である.整備計画を定めるには,施行令第3条に従って以下の項目を定めることとなっているが,やはりツッコミどころがある.

  • A.走行方式
    B.最高設計速度
    この辺の項目は,整備計画の策定手順が改定された際に比較的最近になって追加された項目である.一見,ここで決め直しさえすれば基本計画の想定についてはオーバーライド(上書き)がOKなように思えてしまうが,さにあらず.整備計画は基本計画の上に成り立っているので,基本計画が有効である場合にのみ整備計画が有効なはずである.前回指摘したように基本計画の前提条件が時代の流れとともに大きく変化してしまっているにもかかわらず,何らまともな見直しがなされていない状況では,基本計画の正当性が失われている可能性が大きい.整備計画の実際の審議過程では,350km/h運転の鉄輪式の場合と500km/h運転の磁気浮上式が比較検討されているが,前者でも250km/hに比べると40%増,後者に至っては100%増で,特に後者は基本計画の想定とは大きくかけ離れた設定になっている.基本計画が単なる方便と化しており,正当性の合理的な証明がなされていない.
  • C.建設に要する費用の概算額
    この辺は,まぁスルー
  • D.その他必要な事項
    整備計画に関する審議では,整備計画の審議時に必須事項として法令では記されていない不思議な項目も議論されている(しかも,パブコメが終わってから).それは何かというと,経済効果等である.思い出して欲しいのだが,「輸送力の増加がもたらす経済的効果」の検討は基本計画の策定時におこなわなければならないのだが,なぜか整備計画の段階で審議している.これでは明確な政令違反である.いくら専門家2名のお墨付きを付けても,「計算があっている」だけで,手続きの合理性は得られない.

続けて,施行令第3条第2項に関しては…

  • I.整備計画は、工事を着手すべき時期に応じ、建設線の区間ごとに定めることができる
    整備計画の審議の結果,全線一括で整備計画に格上げになったが,2045年開業区間が「工事を着手すべき時期に応じ」たものかどうか,怪しい.整備5線は,整備計画策定時には速やかに着工しようとしていて,結果として整備時期が遅れてしまったが,こちらは最初から遅くなることがわかっているのに,なぜか一括である.30年も経過すると,社会構造自体が変化してしまう可能性がある.現計画のスケジュールは,全体計画の速やかな実施能力を欠いていることを証明してしまっていると判断するのが妥当ではないだろうか.

いろいろと本則から外れた審議過程に思われる.

リニア新幹線整備の理由(基本計画のツッコミどころ編)

前回は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)全国新幹線鉄道整備法施行令(施行令)に忠実に段取りをするとどうなるのかについて書いてみたが,実際の中央新幹線計画に関する手順はいろいろと妙である.今回は基本計画関係である.
まず,全幹法に従って1973年に中央新幹線の基本計画が立てられているので,全幹法により考慮された事項も施行令により実際に調査された項目も(ドラえもんもBack To The Futureのデロリアンもまだ出現していないので)当時の想定で調査され,決定されている.そうすると,それぞれ,以下のツッコミができる.まずは全幹法第4条関係.

  • 1.輸送需要の動向
    輸送需要を想定するには,所要時間がわかっている必要がある.速い交通機関には客が集まるが,遅い交通機関には客が来ない.速度がわからないと需要など想定のしようがない.当時の新幹線は250km/hを想定したインフラ上を210km/h運転していた.500km/hはまだまだなのに,当時の想定で作った計画を流用している.250km/hが260km/hになりました…なら大して違いはない.300km/hでも2割の違い程度だ.倍半分ではさすがに気がつく(はず,なんだがねぇ).
  • 2.国土開発の重点的な方向
    当時の国土計画は「新全総」,国土整備の方向性としては「大規模プロジェクト構想」,大規模インフラ整備で「国土の均衡ある発展」を目指すのが当時の方向性であった.今は「国土の均衡ある発展」の看板は下ろされ,「国家のリスクマネジメント」というのが最新のスローガンである.方針が違えば形成すべきネットワークが違うはずだが,そのまま流用.
  • 3.効果的な整備を図るため必要な事項
    当時は,日本国有鉄道.今は旅客鉄道会社.しかも株式を全部放出した完全民営会社.「効果的」の基準が異なる可能性がある.

次に施行令第二条関係.

  • a.輸送需要の見通し
    上にも書いたように,500km/h運転の交通機関はまだ存在せず,せいぜい250km/h運転が想定範囲なので,見通しもこれに基づくもの.さすがに倍半分では結果は大きく違う.基本計画策定時の議事録等の公文書が残ってれば書いてあるはずだが…
  • b.所要輸送時間の短縮
    「所要時間=距離÷速度」なので,速度が倍違えば所要時間も倍半分の関係.速度が決まらない限り,これは求まらない.速度が変われば,これも変わる.変われば計画策定時の前提条件が大きく変わったことになる.
  • c.輸送力の増加がもたらす経済的効果
    輸送力とは,量的な能力と速度的な能力の2面あるが,少なくとも速度面は大きく変更されている.経済効果は速度面が大きく影響するが,速度が変われば経済効果は大きく変わる.大きく変われば計画の前提条件も大きく変わったということになる.
  • d.収支の見通し
    収支見通しは建設費と運賃と客数と運営費が大きな要因だが,リニアと鉄輪では建設費も客数も運営費もだいぶ違うはずだが,基本計画時に『「鉄輪式の中央新幹線」と「リニア式の中央エクスプレス」とが比較された』などという話は聞いたことが無い.というか,当時は公式検討できるほども実験は進んでおらず,だいぶ後になって技術的な見通しが公式にお墨付きを得ている.
  • e.他の鉄道の収支に及ぼす影響
    速度が違えば影響が変わる.国土計画が変われば路線形態,経路,起終点すら変わる可能性がある.速度を計画時の倍にしておいて,計画時と同じことが言えるのか?

このように,基本計画策定時とは前提条件が大きく変わってしまっているにもかかわらず,基本計画は再検討されることも無く次の段階に進んでしまった.社会状況が大きく変わるような状況下では同じ計画では具合が悪いというのは,教科書レベルの話なんだけどなぁ.基本計画の合理性は?大義は有りや無しや?
事実上の法令違反ではないか?

リニア新幹線整備の理由(法律の想定する段取り編)

再び同じような話で恐縮だが,新幹線を計画史,整備の段取りをして工事に入るまでの行程を,全国新幹線鉄道整備法(全幹法)と関連する政令の全国新幹線鉄道整備法施行令(施行令)に従って解読すると,このようになる.(大事な話なので,繰り返しました.)
まず,全幹法に従って基本計画を立てる.全幹法第4条の1により以下の3項目を考慮し…

  1. 輸送需要の動向
  2. 国土開発の重点的な方向
  3. 効果的な整備を図るため必要な事項

施行令第2条に従って,以下の調査を行い…

  1. 輸送需要の見通し
  2. 所要輸送時間の短縮
  3. 輸送力の増加がもたらす経済的効果
  4. 収支の見通し
  5. 他の鉄道の収支に及ぼす影響

施行令第1条に示された事項を決めて…

  1. 建設線の路線名
  2. 起点
  3. 終点
  4. 主要な経過地

全幹法第3条に示された路線を計画する

  1. 幹線鉄道網を形成
  2. 中核都市を連結

ここまでで基本計画策定.//
さらに,整備計画策定を定めるには,施行令第3条に従って以下の項目を定め…

  1. 走行方式
  2. 最高設計速度
  3. 建設に要する費用の概算額
  4. その他必要な事項

施行令第3条第2項に従って…

  1. 整備計画は、工事を着手すべき時期に応じ、建設線の区間ごとに定めることができる

となっている.ここまでで整備計画策定.//
この後,環境影響評価を行った後,工事実施計画をつくって許可を得てようやく着工.この段取り手順,よーく覚えておいてね.

リニア新幹線整備の理由(東京-名古屋編)

ネタ提供したことのある話題なので,すでに本などで読んだことがある人も多いお話し.ただし,彼の本の記述よりはちょっと詳しい.
すでに整備計画が策定されたリニア新幹線であるが,その意義について法律に従って再検証してみよう.まずは,間もなく工事が開始されるであろう名古屋から東側区間である.
新幹線整備に必要な考慮事項は以下の三点であったが,1番目と3番目をまとめると経済合理性とも言えるので,結局主要な論拠は,1)経済合理性がある,2)国土整備の方向性と合致している,の2つになる.名古屋から東側区間については1)は株式会社がすることなのでともかく,2)はそれなりに理由がつく.

  1. 輸送需要の動向
  2. 国土開発の重点的な方向
  3. 効果的な整備を図るため必要な事項

1962年に始まった一連の全総計画は,1987年の四全総まで形を変えながら「開発」を掲げ,国土の均衡ある発展を目指してきた.その後,五全総相当の21世紀の国土のグランドデザインでは「開発」の看板を下ろし,2008年には根拠法そのものを改正して法律名からも開発が消えた.震災後は,正式な国土計画ではないが具体的な国土整備の方向性として「国家のリスクマネジメント」を掲げた「…国土強靱化基本法」に基づいて各種整備が進められつつある.
こういった国土整備の方向性から考えると,内陸に幹線を整備するという方向性は一定の合理性はある.
東海道新幹線の脆弱な箇所は明確にはされていないが,数ヶ月単位では収まらない決定的な被害を受ける可能性のある区間としては浜名湖を渡る部分が考えられる.いちおう,国土交通省鉄道局は大丈夫といっているらしいが,外洋から15-20m近い津波がやってきたらどうなる? 今切れ口付近に6m程度の防潮堤があるとはいえ,無傷で安全,とは考えにくい.
そもそも,500年ほど前の明応地震(1498年)に地盤沈下して集落が海中に没しているような地区である.
さて,下の写真は昨年夏に撮った写真であるが,ちょうど干満の中間,平均的な海面の写真を撮ったようである.最近は便利なことに場所と日時を指定すれば,海面の高さの計算値を表示してくれるサイトがある.
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さらに便利なことに鉄橋には目盛りがついているので,写真から,平均海面から在来線の橋梁の下部までの距離が約3.5mだということも簡単にわかる.
加えて便利なことに,現地に行くとあちこちに地面の海抜高度が表示されており,この橋の付近の海抜高度は約4.8mだということもわかる.
もっともっと便利なことに,静岡県のサイトには内閣府が試算した満潮時に津波が襲った場合に,地面が何メートル浸水するかの計算結果も出ている.どうやらこの橋の付近は「2〜5m」の浸水予想である.
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そうすると,地盤の高さに浸水予想を加えると,満潮時に津波が来た場合にどの辺まで水面が来るのか計算できてしまう.結果は,少なく見積もって6.8m,最大9.8mになる.この数字は,平均海面からの高さであるので,写真にどの程度か描いてみると,こういう結果になった.ベースの岩盤の沈下は考慮してあるそうだが,砂地盤が液状化して長面浦や500年前の村櫛伝説のようになることは想定していない結果である.低めの計算でも橋桁すれすれくらいまでは水面が上がるようである.(安全率1,もしくは1未満ということ)
なお,津波のことに詳しい先生に「津波が来ても浜名湖のところは安全だと国交省が言ってるんですけど…」と振ってみたら「安全なわけないでしょ」と笑われてしまいましたとさ.(続けて,この手の予測計算法の概略と精度の限界についても解説していただきました.さらに浜名湖よりももっと衝撃的な話についてもお伺いしたが,刺激が強いのでさすがに書けない…)
追記:津波の押し波,引き波の際,こういった水路はかなりの激流になるそうで,河床や橋脚の足下が洗掘されるそうです.ここ,細砂地盤で,新居町付近は建設時に軟弱地盤地帯としてリストアップされてましたよね.静岡県下の新幹線富士川橋梁で,1982年の水害時に河床が7m,橋脚の足下が4m近く,合計10m以上洗掘されたこともありますよね(ただし震度ゼロ).
もし,この区間が500年前の集落水没時のように地面そのものが海中に没し,橋も使えなくなって,浜名湖ではなくて「浜名湾」になってしまったら,東海道新幹線の復旧には湾を迂回するような新線工事が必要になる可能性があり,昭和の東京オリンピック前の突貫工事のように急いでも数年は不通になる.
(まぁ,浜名湖は浅いので,「浜名湾」も浅いと思う.東海道新幹線のルート選定時には現在線の1kmほど北方の浜名湖の湖面上を橋で通す計画も検討された経緯もあるくらいなので,大きく迂回しなくても橋を作り直せばOKという話もある.とはいえ,数ヶ月で開通というのはやはり難しく,作り直すなら津波の影響を受けない足の長い橋を数年かけて,ということになるだろう.)
そういう点では,内陸を通るリニアには一定の合理性はあると思う.少々の被災なら,数ヶ月我慢すればいいだけなので,新線の必要は薄く,北陸新幹線を大阪まで開通させておけば十分であるから,わざわざ新線を整備する合理性が崩れかねない.
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聞くところによると,静岡県下では海岸部から内陸に人が移住しはじめているらしく,海岸部の人口が減少しはじめているらしい.

東北に行ってみた(南三陸町編)

南三陸町の様子.
写真は気仙沼線陸前戸倉駅があった箇所であるが,路盤も駅施設も破壊され,そこが駅であるといわれなければわからない状態になっていた.
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当面の路線復旧は難しいようで,赤いバスが「BRT」と称して運行されている.
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北隣の志津川駅は南三陸町の中心街にあった駅であるが,周辺の市街地もろとも破壊されている.
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下の1枚目は志津川駅ホームからの市街地の様子.ほとんど何も残っていない.2枚目は同じくホームから見た南三陸町の防災対策庁舎.
IMG_5012IMG_5004(2012年12月現在)

東北に行ってみた(病院の上を越えた津波編)

石巻市雄勝に行った.
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写真の左側に小さく写っている観光バスは,震災後,中央の建物の屋根の上に乗っかっていたそうである.そのまま保存するかという話もあったようだが,それもどうだか,という話になり,バスを降ろしたらしい.グーグルマップのストリートビューでは,未だにバスが建物の上に乗っかっているようである.
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湾に面して病院があったが,今は廃墟になっている.津波は,この三階建ての病院の屋上を越えていったそうである.場所はここ.

(2012年12月現在)

東北に行ってみた(お寺は山の中腹編)

写真は大川小学校や長面とは北上川をはさんで北側対岸の地区である.こちら側も集落が消滅しており,破壊された小学校の校舎が残されている.現在は取り壊されているようである.
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校舎の三階部分も窓が破壊されており,津波がこの高さまで達したのではないかと思われる.時計が2時46分頃で停まっている.
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この校舎の左隣には体育館があり,その外壁も破壊されている(下の写真の右端)が,上部が一部残っている.この部分まで津波が上がってきたのであろう.写真のほぼ右端には長観寺というお寺が写っているが,よく見ると石段を上がったところにわざわざ建てられている.その高さが,ほぼ体育館の外壁が破壊されている高さと同じである.概ねこのあたりの高さまで確保して建築すれば大丈夫,という知恵であろうか.
IMG_4924(2012年12月現在)

東北に行ってみた(女川編)

石巻から北東方向に進むと,女川がある.原子力発電所がある地区だが,こちらは安全に停止している模様.

IMG_4478石巻から女川に向かう途中のJR石巻線が復旧工事中であった.写真は浦宿駅付近.復旧工事と言っても,路盤はともかく軌道部分についてはほとんど新設工事である.



IMG_4487女川に入る前,半島の付け根の谷を通る部分では,まだ海は見えないのに沿道の集落が破壊されて空き地になってしまっている.海まで約1km.


IMG_4514女川湾に面する山の中腹にある病院からみた湾岸の市街地の様子.中央に見えているのは鉄筋コンクリート造りの建物で,そのまま横転している.緑色に見えているのは,3-4階建ての建物の屋上の床である.


 
IMG_4621女川漁港から見た病院.山の中腹にあるにもかかわらず,この病院の1階部分までが津波で水没し,水に浮いたベッドを医師らが泳いで引っぱってつなぎ止めたらしい.想像を絶する波高である.

(2012年12月現在)

浜名湖を渡る鉄道(鉄橋観察編)

せっかく現地まで行ったので,浜名湖の鉄橋を観察してみた.舞阪-弁天島-新居町間には南から順に国道1号,在来線,新幹線,県道の橋が架かっている.ここがやられると,非常にまずい場所.戦時中には艦砲射撃をおそれて二俣線(現在の天竜浜名湖鉄道)を内陸側につくったという箇所.
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県道から新幹線を見ると,こんな感じだが,土木系なので,橋脚も気になるところ.
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歩道が橋の下をくぐっている部分にゆくと,こんな感じ.地盤は基本的には砂のようであり,川というよりは砂浜に近い.新幹線の橋梁の銘板を見ると,1962年に作られたもののようであった.足の長さは4.4メートル.その下はケーソン基礎(要するに,筒ですね)で14メートルの深さまで埋められているようである.「細砂」というのは地盤の種類のことか? 支持層まで達しているんだろうか? 荷重にNとPが書かれているので,旅客列車とともに貨物列車の荷重も考慮した設計になっているということであろうか.
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一部の橋脚には目盛りがついており,けた座面から水面までの距離がわかるようになっている.(ここに限らず,ほとんどの橋梁はそうなっている.)1枚目は新幹線,2枚目は在来線.この目盛りを参考にすると,いろいろとわかってくることもある.
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弁天島にある津波時の避難所.この程度の施設で大丈夫なんだろうか.
IMG_1555(2013年8月現在)