リニア新幹線整備の理由(整備計画のツッコミどころ編)

中央新幹線計画に関する手順がいろいろとツッコミどころが多い話の続きである.今回は,整備計画関係である.整備計画を定めるには,施行令第3条に従って以下の項目を定めることとなっているが,やはりツッコミどころがある.

  • A.走行方式
    B.最高設計速度
    この辺の項目は,整備計画の策定手順が改定された際に比較的最近になって追加された項目である.一見,ここで決め直しさえすれば基本計画の想定についてはオーバーライド(上書き)がOKなように思えてしまうが,さにあらず.整備計画は基本計画の上に成り立っているので,基本計画が有効である場合にのみ整備計画が有効なはずである.前回指摘したように基本計画の前提条件が時代の流れとともに大きく変化してしまっているにもかかわらず,何らまともな見直しがなされていない状況では,基本計画の正当性が失われている可能性が大きい.整備計画の実際の審議過程では,350km/h運転の鉄輪式の場合と500km/h運転の磁気浮上式が比較検討されているが,前者でも250km/hに比べると40%増,後者に至っては100%増で,特に後者は基本計画の想定とは大きくかけ離れた設定になっている.基本計画が単なる方便と化しており,正当性の合理的な証明がなされていない.
  • C.建設に要する費用の概算額
    この辺は,まぁスルー
  • D.その他必要な事項
    整備計画に関する審議では,整備計画の審議時に必須事項として法令では記されていない不思議な項目も議論されている(しかも,パブコメが終わってから).それは何かというと,経済効果等である.思い出して欲しいのだが,「輸送力の増加がもたらす経済的効果」の検討は基本計画の策定時におこなわなければならないのだが,なぜか整備計画の段階で審議している.これでは明確な政令違反である.いくら専門家2名のお墨付きを付けても,「計算があっている」だけで,手続きの合理性は得られない.

続けて,施行令第3条第2項に関しては…

  • I.整備計画は、工事を着手すべき時期に応じ、建設線の区間ごとに定めることができる
    整備計画の審議の結果,全線一括で整備計画に格上げになったが,2045年開業区間が「工事を着手すべき時期に応じ」たものかどうか,怪しい.整備5線は,整備計画策定時には速やかに着工しようとしていて,結果として整備時期が遅れてしまったが,こちらは最初から遅くなることがわかっているのに,なぜか一括である.30年も経過すると,社会構造自体が変化してしまう可能性がある.現計画のスケジュールは,全体計画の速やかな実施能力を欠いていることを証明してしまっていると判断するのが妥当ではないだろうか.

いろいろと本則から外れた審議過程に思われる.