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大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について「(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には

情報源: 沿線自治体負担「現行ルールで」 北陸新幹線巡り大阪知事

スポーツ新聞風タイトル付けてみました.大阪府知事の発言云々以前に,この日本経済新聞社の記者の分析は正しいんだろうかと疑っている.元記事については有料会員ではないので,無料部分だけしか見ていないが,その範囲を引用してみると…

 大阪府の松井一郎知事は21日の会見で、与党プロジェクトチーム(PT)が決めた北陸新幹線の敦賀(福井県)以西ルートの建設費について(沿線自治体の負担は)ルールに基づくべきだ」と述べた。自治体の中には関西広域連合などで再び議論するように望む意見も出ていたが、松井知事は再議論の必要性を認めなかった。

 整備新幹線はJRの貸付料などを除くと国が3分の2、自治体が3分の1を負担することにな…

…事実関係は太赤部分のみ.つまり,日経新聞が付けた記事タイトルの「現行ルールで」は記者の推測なワケだね.

もし本当に大阪府知事が「現行ルールで」と発言したとすると,下馬評では有力とされる京都駅から新大阪駅へと直接結んでしまう北ルートが採用された場合,京都府下にできる駅は京都駅のみ.京都駅は府県と同格を持つ政令指定都市の京都市内なので,京都府にとっては資金を出してもメリット少なし,という状態になる.

最悪のケースでは,京都府が京都市に大半の負担を求め,府は負担の意思ほとんど無しということになりかねない.こうなると,福井県境-京都駅-大阪府境の区間の建設が暗礁に乗り上げ,敦賀以西の整備自体が不能になる可能性が高くなる.つまり「大阪府知事,北陸新幹線延伸に反対か!?」という状態だ.

だが,どうも「現行」とは言っていないようなので,単に「ルール」と発言しただけならば,『 合理的な方法で決めるべきであり,声の大きさだけで決めるべきではない』という趣旨の発言をしただけじゃないのかなぁ? プロジェクト全体が暗礁に乗り上げかねない意見をわざわざ大阪府知事ともあろう人が軽率に言うかねぇ?

それからたとえ「現行」を付けたとしても,確か広域連合では米原ルートが採用になった場合に広域負担をするような話になっていたかと思うので,その際の手順を準用することを指して発言した可能性もある.

どっちにしろ記者の推測が多くて,伝達精度の低い記事っぽいなぁ.

ちなみに,百歩譲って,路線の通過延長に比例させて沿線自治体に建設費を負担させる現行の方法を採用するとした場合,府県と政令指定都市とは行政的には同格なので,福井県の通過距離,(京都市以外の)京都府の通過距離,京都市の通過距離,(大阪市以外の)大阪府の通過距離,大阪市の通過距離,以上の5者によって按分するのが「現行ルール」になるのではないかという識者の意見もある.そんなわけでこの百歩譲った場合であっても,無議論で自然と負担額が決まるわけでは無いかもしれないので,念のため.

#政令指定都市が整備新幹線の沿線になるのは,今回が実質的には初めてかも.熊本市は政令指定都市だが,着工時後に指定されたので,負担割合決定時には普通の県庁所在都市じゃなかったかと思う.

(追記)こっちの記事の方が正確かも.

添削してみた…朝日新聞の社説

情報源: (社説)北陸新幹線 あまりに前のめりだ:朝日新聞デジタル

2016/12/19の朝日新聞の社説である.相変わらず,情報の収集と分析および結論の導き方に難があるように思われるなぁ.北陸新幹線の話題を取り上げて社会的課題を提起するとしても,浅い文章だなぁ.

問題提起したいという意図の部分は尊重した上で,卒論シーズンということもあるので,ついでに添削してみた.

[赤い太字の括弧書きは “添”]
茶色の太字の消し線は “削”
(青い括弧書きはコメント)


北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市へ延伸するルート[のうち,敦賀ー京都間]が固まった。複数の案を検討してきた与党が、福井県小浜市と京都市を経由する案を採用した。

(コメント:ルートは半分しか決まっていないので,全部決まったかのように書いてはいけません.)

 北陸や関西の政財界からは早期着工を求める声が相次[いでいるので,世論を反映した動きだ]ぐが、あまりに前のめりだ

(コメント:文章の呼応関係や因果関係をよく見ましょう.)

 小浜・京都ルートの建設には2兆円超かかりそうだ。建設を決めるのは政府だが、財源のあては[これから検討することになる]当分ない。国の財政状況は厳しく、社会保障をはじめ、多額の公費が求められる課題は多い。[だが,国家予算に占める新幹線整備費は約780ppmしかなく]北陸新幹線の延伸[が公共の福祉に大いに役立つのならば]を特に優先する必要性は[大きい]ない

(コメント:財源のアテがないかどうかは難しい証明を必要とします.「無い」ことを証明せざるを得ない(悪魔の証明)ので,なかなか言い切るのは難しいと思います.論拠を整えることが難しい場合は,別の表現にしましょう.それから,費用の多寡については,社会保障費関係が年額約32兆円,新幹線の支出は北陸新幹線以外の新幹線を含めて全部で年額約755億円です.よく考えてから文章を書きましょう.兆と億の単位を混同するとたいへんなことになりますので,注意しましょう.社会保障関係費は新幹線の424倍です.)

東京から長野、富山を経て大阪に至る北陸新幹線の整備計画は、1973年に決定した。現在、北海道と九州で建設中の新幹線2区間も同じだ。

新幹線と高速道路網の整備で、移動時間を縮め、東京の過密と地方の過疎を解決する。故田中角栄元首相が提唱した日本列島改造論のような考え方が背景にあった。40年余りを経て、全国の新幹線は延べ2765キロに達した。安倍政権は「地方創生回廊」と銘打ち、新幹線整備をさらに推し進める方針だ。

ただ、期待した効果がどれほどあったかは冷静に見極める必要がある。[新幹線ネットワークが中途半端に東京を中心に整備されてしまったおかげで]東京一極集中は加速し、地方では急速な高齢化と人口減が進む。新幹線が通る[政令指定都市や]中核都市の多くも例外では[なく,長年月のうちに新幹線の無い都市よりも人口が集積した]ない

(コメント:問題提起をしたら,具体的かつ正しくその問題提起に対する分析結果を示しましょう.読者は正しい情報と分析能力を持っているとは限りませんので,何も示さずに読者の想像に任せる方法は科学的ではありません.新幹線ネットワークの形成と国土の構造変化や,新幹線の有無が人口に与えた影響については正しく分析した上で言及しましょう.広域的に人口が減っている場合でも,新幹線沿線周辺では減少がマイルドだということにも気をつけましょう.)

北陸新幹線は23年春に東京―敦賀間が完成する。「ここまで造れば、大阪まで早く全通させた方がよい」という考え方[が常識的だろう]もあろう。だが、ルート案の検討過程や内容には[課題も存在する]疑問が尽きない

(コメント:「〜もあろう」と書くと,それが少数意見のように見えてしまいますが,東京から見た場合はそう見えても,反対側から見ればそういう風には見えていないかもしれません.政財界からの声が多いことを考慮すると,早期全通の声は常識的と判断するのが適切ではないでしょうか.それから,”疑問が尽きない” と書いた場合,単に情報収集不足と分析力不足を悟られてしまう可能性もあるので,課題を指摘したいのなら明確にそう書きましょう.ただし,適切な情報収集と分析は必要になります.)

滋賀県は同県米原市でJR東海の東海道新幹線と接続する案を推した。建設費が6千億円弱と他の案より圧倒的に安い。だがJR東海と、北陸新幹線の運行を担うJR西日本が難色を示したため、与党側が却下した。[また,これらを説得する者もいなかった。]

(コメント:今や完全に民間会社になったJRとしては,それぞれ単独の意見としては,ごく当然でしょう.問題は,それを説得して調整する者がいなかったことにあります.表面的な事象を追いかけるだけでなく,背景に隠された原因についても分析しましょう.)

京都府は舞鶴市を経由するルートを支持した。しかし選定にあたってはどの自治体も沿線地元への利益を強調[するのは当然であるものの]、日本全体にとってのメリットなど、幅広い視点[とのバランスが悪かった]が見えなかった

(コメント:地方が自地域の利益を最大化しようとすることは当然の行動ですので,それ自体は非難の対象にはなりません,各利害を調整するのが中央政府の役割です.)

JR西は京都―新大阪間について、東海道新幹線と別に北陸新幹線の線路を敷いて、と望む。人口密集地のためトンネルが大部分を占める可能性が高く、建設費はかさむ。そこまでして新たな線路[を建設するのならばもっと有効活用する必要があろう]は必要なのか

(コメント:もしも『東北・上越新幹線の大宮以南は人口密集地帯なので建設費はかさむ,そこまでして新たな線路は必要なのか.どうせ10分くらいしか変わらないんだから大宮終点でいいではないか.』と書かれると,きっと東日本の人は怒るでしょう.いろんな立場の視点から文章を書けるようになりましょう.東海道新幹線が活用できないなら新線建設せざるを得ません.コストパフォーマンスが悪いという指摘ならば,コストに注目するだけでなく,パフォーマンスに着目するという方法もあります.)

新幹線はあれば便利だ。[だが,議論から実際の開業までの期間が道路などに比べて長すぎて]政治家が「実績」とアピール[しにくい]しやすいこともあって、[議論そのものをする政治家が少ないため,深い議論が行われにくい]「建設ありき」の議論になりやすい

(コメント:「道路族」はいても「新幹線族」などという用語が存在しないように,質疑で ”一応しておきました” 的な新幹線関連質疑を行う人はいるが,突っ込んで議論する人はかなり数が少ないですね.イメージだけで書いてはいけません.国土交通委員会の議事録(or ストリーミング配信)などの一次情報をよく分析してみましょう.)

ただ、新幹線建設に多額の税金が充てられることを忘れてはならない[が,その額は社会保障関係費などと比べると雀の涙ほどだ][新幹線が開通した沿線からは “忌々しい新幹線なんて引き剥がしてしまえ” といった新幹線不要論を聞いたことはほとんど無いことなどから考えて]必要性や妥当性について国民が十分納得[できるように情報提供を行い]できない限り、着工に進む[ことをむやみに忌避する社会環境を醸しだす]べきではない。

(コメント:定量的情報の把握を間違えると,正反対の結果を導くこともありますので,まずは正しく数字の大きさを理解して分析しましょう.)


……うぅーん,書き直して再提出してね,というレベルかしら.

#この新聞社の社説や天声人語を題材にする国語の先生がよくいるけれど,因果関係や事実関係の把握など重視しなければならない現代文の題材としてはどうかなぁ…文章だけで雰囲気を作り出して,見えないものを現実のように見せる「文学」としては優れている面もあるかも.

初夢鉄道2016答え合わせ(西日本大震災編−1)

しばらく開いたが「初夢鉄道答え合わせ」の続き.今回は「初夢鉄道2016(西日本大震災編)」の(その1)である.

やはり起きてしまった.大中小の順番でやってくると言われている南海トラフ系の地震,今回は300年ぶりの「大」の番のようである.紀伊半島沖を震源として大規模な震源域がまず東に広がり,次いで東海地震が間髪を置かずして発生,M8クラス後半のようだ.そして数分後,揺れが収まりかけたその瞬間,今度は紀伊半島から西側へと震源域が広がり,さらに日向灘,沖縄方面へと岩盤破壊が進んだ.全部あわせてM9クラスか?紀伊半島の各市町村とは連絡が取れない.四国方面の太平洋岸も同じようだ.

幸い,まだ南海トラフ系の巨大地震は起こっていない.だが内陸地震は2016年も数多く発生し,着々と包囲網は形成されている.ここ何十年も大きな地震が起こっていない地域は徐々に少なくなってきており,「残った地域」についても過去に大きな地震が無い地域かというとそうでもなく,京都や奈良,若狭湾,紀伊半島の内陸,琵琶湖周辺,首都圏や相模湾付近など心配な箇所は多い.

何とか,リニアの東京-名古屋間は開業していたので,迂回ルートの確保はできた.だが,太平洋岸の発電所が停まっているところが多く,所定の本数が走らせられない.捌けない旅客は北陸新幹線経由で移動しているようだ.東海道新幹線は,やはり浜名湖付近の被害が大きい.砂地盤なので,津波と大振動のために地形そのものが変化してしまっている.こうなる可能性は1964年の新幹線開業時からだいたいわかっていたので,国鉄時代に無理をしてでも対策をしておけばという後悔があるが,今さら言っても仕方がない.

大地震は発生してはいないものの,発電所事情については相変わらずである.電力事情の逼迫は何とかしのいでいる感じだが,パリ協定への対応に頭が痛くなりつつある状況だ.日本を名指しで非難する声も出始めている.北陸新幹線はルート選定の話は進んだものの,全線開業が2046年では来たるべき大震災に間に合わない可能性が高い.東海道新幹線の浜名湖付近の件はまた別途考察することにしよう.

この西日本の震災発生から2ヶ月ほどして,何年か前から活発化していた富士山がついに噴火しそうである.大方の予想に反して山頂や宝永火口や南東の側火山ではなくて北東側の側火山が怪しい.リニアが通っている都留市付近まではやや距離はあるので火砕流は大丈夫だが,降灰がどの程度あるか楽観できるような状況ではない.多量の場合は火山灰除去のためにリニア求めなくてはならないかもしれない.

富士山についてもまだ噴火はしていないが,富士山付近の諸観測結果が怪しいのではないかという話は出ては消え,出ては消えしている.世界的スケールで見るとM9クラス地震が発生して数年内に大規模な火山噴火が起こることは常のようなので,今だに大きな噴火が起こっていない日本というのは例外なのか?

(つづく)

 

 

麻生財務相北陸新幹線改善に「新宿から引くとか」

麻生太郎財務相は13日の閣議後会見で、北陸新幹線の延伸ルートの方針が固まったことについて「良い話だと思う」と評価する一方、「あまり詳しくない人がやっているのかと…

情報源: 麻生太郎財務相、北陸新幹線のダイヤ改善に「新宿から引くとか」

いやぁ,よく観察してらっしゃる.そこ,線路用地はあるんですよねぇ,既に.

わざわざ「鉄道用地」って書いてありますし.

北陸新幹線長野―新大阪2h25m

 北陸新幹線(長野経由)で未着工となっている福井県・敦賀以西のルートを巡り、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の検討委員会は7日、福井県・小浜から南下して京都を経由する「小浜京都ルート」を選定する方向で大筋合意した。与党PTが20日にも最終決定する。工期は15年で着工時期は未定。また同ルートで全通した場合、長野―新大阪は最短2時間25分程度で結ばれることが、国土交通省の試算から判明した。現行より1時間20分ほど短縮され、県内と関西方面の距離感が一層縮まる見込みだ。

情報源: 北陸新幹線「小浜京都」合意 長野―新大阪、最短2時間25分 | 信濃毎日新聞[信毎web]

大阪発着の「しなの」無くなってもうすぐ1年.大阪から長野は遠く,現状では以下の3ルートがある.いずれも時間的にはどっこいどっこいで決定打は無い.朝早く出発する場合だと…

大阪-新大阪-名古屋-長野:4時間15分,1万2000円,乗換2回
大阪-金沢-長野:4時間18分,1万4290円,乗換1回
大阪-新大阪-東京-長野:4時間14分,2万700円,乗換2回

費用的な面で名古屋から「しなの」が標準的だが,左右に揺れる列車を嫌う人は金沢まわり,在来線特急なんて乗ってられるか(実際,そういう客はいる)と言う人は東京まわりということだろう.

これが北陸新幹線全通で2時間25分なら,まさしく決定打だ.料金が上がる可能性はあるが,遠かった長野が再び心理的にかなり近くなる.

…ただし,いつできるかという問題は残っており,2031年着工だってか? 工期15年の2046年開業? 大阪人はこう言うだろう「死んどるわ!」

北陸新幹線延伸問題、京都商工所は苦渋…

北陸新幹線の大阪延伸問題で、京都商工会議所の立石義雄会頭(オムロン名誉会長)は29日の定例会見で、与党が年内にも決定する延伸ルート案について、「政治的に決定した…

情報源: 「小浜舞鶴ルート案は採算性が最も悪い?」北陸新幹線延伸問題、京都商工所は苦渋…

この記事の最後の部分にこうある.

「北陸新幹線をめぐっては、京都と大阪をつなぐ南北新ルート2案も検討されているが、立石会頭は、府南部のけいはんな地区を経由する「南ルート」案に対し、「リニア中央新幹線(の新駅)との結節点でないと、あまり意味合いがなくなってくる」と述べた。」

えーと,ちょっと補足しておくと,リニアの”奈良市付近”の駅には毎時1本程度の停車,品川まで1時間半ほどかかるので,北陸新幹線の「南ルート」の駅がリニアの接続駅になっても,京都市の人が北陸新幹線の10分ほど乗ってわざわざその駅に行くことは少ないと思います.

京都駅からは東海道新幹線で名古屋まで約35分,リニアが開業しても毎時数本は東海道新幹線の列車は運転されるでしょう.名古屋で乗り換えてリニアで品川まで40分ほど,こちらも毎時数本というのが最速ルート.ということで,京都市の人はこの経路がメインルートになるはず.

じゃぁ,北陸新幹線の「南ルート」とリニアとがこの”奈良市付近”で接続されるとどこが恩恵を受けるのかというと,まぁ京都府南部の人はもちろん恩恵を受けて,奈良市および奈良県北部も恩恵を受けるのだが,北陸新幹線沿線で恩恵を受けるのは小浜〜敦賀あたり.福井市あたりになると乗り換え無しの北回りで東京まで行くのと”奈良市付近”経由が時間的には同程度になり始め,さらに東ではリニア開業後でも北回り有利.

それからまだ見込は立っていないが,山陰新幹線が京都市北方で分岐し,北陸新幹線の「南ルート」経由で大阪まで乗り入れるようになると山陰の各地から東京までの最速ルートは山陰新幹線+リニアを”奈良市付近”で乗り継ぐのが最速ルートになるはず.

例えば鳥取から東京までは,現状では姫路乗換で5時間弱かかっているが,山陰新幹線とリニアを”奈良市付近”で乗り継ぐと約3時間ほどになるはず.(新大阪乗り継ぎと時間変わらず,料金はこちらの方が安いはず)

「北陸新幹線が日本海側と太平洋側を連絡する重要路線であることも考慮し」の意味は実はこの辺にあったりするんだが,国土交通省やJR各社を含めて理解している人は少なそう.国土のグランドデザイン,とはいうものの,鉄道のグランドデザインできる人は日本(東京)にいるのかねぇ?

 

初夢鉄道2016答え合わせ(平成東京地震編)

初夢鉄道答え合わせ,今回は「平成東京地震編」である.

東京オリンピックに浮かれていた熱もさめやらぬ20xx年,悪夢の一つ目が起きてしまった.首都直下地震である.大量の帰宅難民が出たことはもちろん,地盤の軟弱な密集市街地で発生した火災が猛威をふるい,大災害になってしまった.

まだ東京オリンピック自体開かれていないので答え合わせの時期にはなっていない.だが,比較的大きな地震は2016年も数々起きており,東日本でも次々発生している.もはや首都直下で大きな地震が発生していないのが不思議なくらいな状態になりつつある.

比較的近年に建設したビルなどは持ちこたえたものの,首都東京には多数の古いビルや家屋があり,倒壊,火災等おびただしい.地震の規模は阪神淡路大震災程度あろうか.中心部の官庁街をはじめとするオフィス街そのものは助かったが,古くから更新されていなかったインフラ類——上下水道や初期の地下鉄・高架鉄道など——は倒壊したり致命的な破損が起きたりで使えなくなったものが多い.住宅を失った人も多く,仕事どころではない.住宅が残った人も通勤手段が限られていて,日々の生活が著しく非効率になってしまった.知人親類等が被災した人も多く,直接の被災を逃れた人々も仕事が手に着かない.

首都圏の建築物は少しずつ新しい耐震性に優れたものに建て変わってきている.だがインフラ類は橋脚類に鉄板が巻かれたりなどの対策が進行しているものの,全てのインフラ類が「直下地震READY」なわけではないので,はてさてどうなるものか.

あれほど首都機能の移転やバックアップについて検討してきたものの,ほとんど実行されていないので日本全体が機能不全になってしまおうとしている.オリンピックに浮かれている場合ではなかった.今さら言っても仕方がないが.怪しい国籍不明の艦船や航空機が近海をウロウロしている.

首都機能移転やバックアップについては,ほとんど全く話を聞かなくなってしまった.このままでは,「首都直下地震 ≒ 首都機能不全 ≒ 日本全体の機能不全」の構図が実際に生じてしまいそうである.東京オリンピックの施設が云々と騒いでいる間にも着々とXデーは近づいているはずである.

日本国内でちょっと大きな地震が発生するたびに近隣のあまり友好的ではない国の偵察機がウロウロしているのは,既に現実になっている.

東京駅へ達する在来線や地下鉄が機能しないので,東北上越北陸新幹線は大宮で折り返し運転である.東海道新幹線も小田原で本線を引き上げ線にしながら折り返している.リニアはかろうじて開通した直後で,インフラそのものは被害が少なかったが,電気系統や通信系統が不十分で満足に運転できない状態になっている.そもそも,アクセス交通が動いていない.

現在のところ首都直下地震は発生していないものの,発生した場合の緊急輸送体制をどうするのか,などは不明のまま.机上模擬訓練くらいはしていても良さそうなものだが,どうするのかな?

道路も首都高速の何カ所かで落橋があり—防止装置があったはずだが不良品があったようだ—ネットワークが十分機能していない.国道等の一般道は大渋滞だ.

これも特段対策が進んだという話はない.

結局,阪神淡路大震災の教訓はどれほど活かされただろうか.復旧復興作業に入り始めたその時,泣きっ面に蜂の事態が起きた.

専門家の大方の予想どおり,紀伊半島沖を…

「首都直下地震 + 南海トラフ巨大地震 + 富士山爆発」という三連コンボが発生することも不思議ではないが,それぞれの単体の対応も進んでいない状況では,三連コンボへの対応などさっぱり考えてないだろうな.

今回の答え合わせ対象はポストオリンピックを想定しているので,まだ答え合わせの時期ではないが,この1年,ほとんど対応が進まなかったことは事実であろう.

#2016年はあと1ヶ月ほどあるので,平穏に2016年が暮れを迎える保証はなく,まだ結論は早いという話もある.

初夢鉄道2016答え合わせ(地方創生編−2)

「初夢鉄道答え合わせ」の続き.今回は「初夢鉄道2016(地方創生編)」の(その2)である.

一方,リニア新幹線については相変わらず各種の申し出—名古屋以西の区間について何らかの公的資金を投入して早期全線完成するための各種の案など—については,断り続けていた.東京大阪間の鉄道の影響は非常に大きいので,このような態度を受け,企業の大阪からの流出は大きくなり,東海道新幹線の客数の名古屋を境に多段落ちが激しくなってきており,東海道新幹線の客単価が下がり始めていることが幹部の気になり始めていた.

リニアへの公費投入については割合あっさり受け入れた.通常の有利子負債と低利融資では,長期的な影響の差は大きいので(金だけ出して口は一切出さないなどと言うことは通常考えにくいが)背に腹は代えられないと言うことか?

関西の地位低下については相変わらず続いており,大手家電会社が新興国の軍門に降ったのは記憶に新しいところ.

東海道新幹線の客数については,段落ちの傾向はともかく,景気が比較的好調にもかかわらず絶対数が頭打ちの様相を見せつつあり,幹部は気が気ではないだろう.リニア開業で東名阪間の客数の絶対数が大幅に増える算段をしているようだが,全通の20年後には交通行動の傾向自体が変化している可能性は十分ある.青函トンネルは着工から開通まで20年を要したが,開通時には交通行動が変わってしまっており,石油の備蓄タンクにするかどうかが検討されたくらいだ.

北陸新幹線の敦賀以西のルートについては,一時期大幅な遠回りの提案もなされたりしたが,いわゆる小浜ルートの変形である京都経由案が現実視され,実際にそのようなルートで実現した.東海道新幹線へ京都から乗り入れる件についても例のごとく運営会社から突っぱねられたため,京阪間は淀川の南側を経由して大阪に達するルートとなり,山陽新幹線との直通運転が実現した.あれほど北陸新幹線とのシステム統合の費用ガーと叫んでいた割には,あっさりと東海道山陽新幹線と北陸新幹線系統のシステム統合が行われた.これにより,東海道新幹線経由の客はさらに減少することになってしまい,悩ましさを増した.あまり急がない客や北関東の客は,大地震をおそれてなるべく北回りで移動しようとする人が増えている.山陽新幹線沿線と直通することで北陸新幹線沿線への移転を考える企業も増えている.

北陸新幹線の敦賀以西については小浜-京都経由案になりそうな気配である.京阪間についても淀川の南側,さらに踏み込んで京阪奈丘陵学研都市付近経由が検討され始めている.だいたい当たりかな.

山陽新幹線との直通については,まだ見通しは立っていないが,確かJR西の幹部がどうやるのか研究の余地あり的な発言はしていたかと思う.運行システムがぁー,などという話もあるとは思うが,米原とは異なり,新大阪駅を走りながら通過して直通運転することはないので,停車中にスイッチをパチンと切り替えるだけである.在来線と新幹線を直通している例も日本には2例あるし,在来線と線路を共有している例まであるので,まぁ,針小棒大に騒ぐほどのことはないわな.

JR東海がつれない発言を繰り返しているので,リニア開業後の東海道新幹線名古屋以西は名古屋-福井・金沢間,京都-名古屋間,京都-静岡県間,およびリニアのチケットが満席で取れなかった客を運ぶローカル新幹線化がほぼ確定した.たぶん2050年頃に後悔するかも.

リニアの工事は事前から言われていたように,南アルプスで難工事になったが,何とか当初予定通りの完成にはこぎ着けた.2027年秋には名古屋まで開業したが,東京側のターミナルが品川,西側が名古屋のため,北関東から関西に至るには東京駅と品川駅と名古屋駅で計3回もの乗換が必要になり,少なからぬ客が乗り換え無しの北陸新幹線に流れている.東海道新幹線での収益で名古屋開業時の借入金を返済し,大阪延伸工事をするつもりだったが,厳しい状況になりつつある.大阪の企業が中京圏に移転する例があるのが多少の救いであった.

リニアの南アルプストンネルは着工したばかりなので,何ともという状況だ.リニアの他路線との接続の悪さは,いずれ問題になるだろうが,現時点では顕在化していない.

東阪間の客が北陸新幹線に流れることは現時点ではないが,団体客を試行的に東北新幹線と北陸新幹線を直通運転させた列車で運ぶことが行われはじめており,直接の東阪間ではない東阪間利用客が将来的に北回りになる可能性は出始めた.

まだリニアも北陸新幹線も全通していないので何とも言いがたい部分はあるが,前にも述べたように景気の割には客数の伸びが少くなっており,悩ましいだろう.

「新」整備新幹線の検討がなされた際,その他にも多数の新幹線建設の要望があったが,現実的な期間内に建設可能な路線だけが選ばれたために幹線鉄道改良をどうするのかが課題になっている.フリーゲージトレインを当て込んでいたが,なかなか使い勝手の良い設計にすることができなかったため,FGT特急が走っている区間はかなり限定的であり,結局在来線改良もしなければFGT特急を走らせることも出来ないという話になった.このような背景もあり,全幹法の暫定整備手法の規程を台車の重いFGTをも考慮した枠組みに改正されることとなり,暫定整備手法の適用条件もかなり緩和されることになった.

基本計画線から整備新幹線への格上げはまだ行われていない.かといって在来線の改良についても何の方針もない.国の鉄道施策部門の能力の限界であろうか.

フリーゲージトレインについては相変わらず見通しが立っていない.暫定整備計画の中味も相変わらずである.長崎以外にFGTを使うという話も聞かなくなった.

初夢鉄道2016答え合わせ(地方創生編−1)

さて,気がつくともう12月である.マスコミでは恒例の2016年重大ニュース系の記事や番組が出始めている.

当サイトでも年末恒例になりつつある「初夢鉄道答え合わせ」をしてみよう.さてさて,テキトーに思いつきで書いた年初の記事はどの程度当たっただろうか.

今回は「初夢鉄道2016(地方創生編)」の(その1)である.

2015年春に北陸新幹線が出来た後,ずいぶん金沢が注目されてにぎわったせいもあり,地方創生に新幹線は有効だという社会的認識が形成されるきっかけとなった.翌年,北海道新幹線が函館市の北方まで出来た際も,函館まで新幹線で行って道南観光をした後,千歳空港アウトという観光ルートが一般的になり,こちらもそこそこにぎわった.

これはほぼ当たったかな.中央政府の省庁はともかく,地方では新幹線が地方創生の切り札として認識されるようになった.

北海道新幹線についても,マスコミでは当初は北海道新幹線はガラガラだと喧伝していたが,(元々の母数が小さいので絶対数はまだまだ伸びしろがあるけれど)新幹線を使った北海道観光は活性化している.航空が新幹線に置き換わるかと思いきや,流動量そのものが増えているようだ.

妙なプロジェクトに金を出すよりはこっちに出した方が確実だという話になり,財務省の査定は新幹線とそれがらみの案件は通りやすくなった.いわゆる整備新幹線も残工事の完成は時間の問題と言うことがわかってきたため,「新」整備新幹線の策定,つまり基本計画線のうち,有望な路線や区間を新たに整備計画にしようかという話になってきていた.

財務省の財布のヒモは相変わらず固いが,別の方法でリニア新幹線の早期開業や整備新幹線の建設促進のために資金が準備されるようになった.ただし,純然たる新幹線建設費の増額ではなく,低利融資という方法であり,返済は必要である.

基本計画線の整備計画への格上げについてはまだ実現していないが,この一年,基本計画線の建設実現の熱は上がることはあっても冷めることは無かった.

ある程度地域バランスをとりながら,数路線区が取り上げられ,整備計画になるとともに具体的な工事の段取りについても着手された.これまでの整備5線は昭和40年代策定で半世紀以上かかって完成していたため,時間のかかりすぎだと言うことを反省し,現実的な時期に完成できるように資金計画が練られた.新たな整備計画線は,そこそこ客数が多い区間や大都市部における区間など,沿線開発も重視しながらも実際の利用客数がある程度見込める区間が選定されている.

整備計画への格上げはさすがに無かったが,現実的な時期に完成させることは重要との認識はできてきているのでは無いかと思う.これまで整備新幹線の着工等では沿線開発について言及されることはほぼ皆無であったが,北陸新幹線の敦賀以西区間のルート選定にあたって,数値に表れない項目の報告が求められるようになり,その報告として沿線開発について言及されるようになってきた.ただし,まだ開発効果を数値として示して新幹線建設と結びつけることまでは行われていない.

(づづく)

異なる試算結果のなぜ?…北陸新幹線敦賀以西

このお話.

北陸新幹線で未着工となっている福井県・敦賀以西の3ルート案をめぐり、滋賀県は28日、県の独自試算と国土交通省が公表した試算との相違点についての分析をまとめた。利…

情報源: 異なる試算結果のなぜ? 滋賀「米原ルート」国「小浜京都ルート」…北陸新幹線敦賀以西ルート(1/2ページ) – 産経WEST

交通計画する人にはほとんど疑問に思わない話でも,一般の人には難解かも.


「(滋賀県は)米原ルートについて、米原駅での乗り換え時間を県が5分と計算したのに対し、国交省は15分としていた。」

5分というのはラッチ(中間改札)無しでホーム対面の乗換でダイヤが綿密に調整されている場合だとこの程度.確か,九州新幹線の暫定開業時の新八代がこの程度だったかと思う.実際の東海道新幹線のラッチ経由在来線乗り継ぎの駅は7-10分程度を最低限の時間に設定している例が多い.

15分というのは跨線橋を渡ったりする可能性あり,プラス,乗り継ぎのダイヤ調整が完全ではない可能性を考慮するとこの程度かと思う.現状の「しらさぎ」と東海道新幹線の乗り継ぎがこの程度であったかと思う.

どっちが良いかというと,どっちもあり得る.JR会社間の協力次第.現状の雰囲気だと後者になる可能性が高いかな.


「(滋賀)県はいずれのルートも敦賀駅に止まる想定だが、国交省は止まらないと想定」

これも,どっちもあり得る.現状のサンダーバードですら,敦賀停車のものとそうでないものとがある.


「(滋賀県は)列車の速度を県が時速約165キロとしたのに対し、国交省は時速約200キロで試算」

これも,どっちもあり得る.前者は最近建設された新幹線の全駅停車列車ではありそうな値.後者は速達便でよく使う値.


ということで,「じゃぁ,試算結果はどう使えば良いの?」ということになると思うが,今回は「整備計画線」という路線なので,大阪まで建設する(新幹線で結ぶ)こと自体は決まっているため,ルート間の優劣を見るのが試算の重要目的になる.試算結果の数値の絶対値自体は参考情報であり,おそらく現実に開業した場合はどちらの数字でもない.

じゃぁ,どの数字を見ながら優劣を考えるのが適切かというと,それは整備の目的による,ということになる.

お金がないのでとにかく効率重視で整備したいのなら「B/C」の順序.整備の効果の大きさ重視で整備したいのなら「B-C」の順序.特定の地域の開発をねらっているのなら,その特定地域に関する「B」の大きさの順序.とにかく早期開業したいのなら,BやCではなくて工期の数字.

さて,いろいろ議論はあっても良いのだが,北陸新幹線て何のために建設するんだったっけ? 実はそのことを忘れている人が多いので,議論が迷走しているように思える.目的がはっきりすれば,自ずと答えは見えてくる.

#交通計画の授業で学生にこういって説明する.目の前に渋滞している道路があって困っているとしよう.これをなんとかしたい.いろいろ検討した結果ベストな案だといって出てきたのが「これが最も大もうけできる案」だったらどうする? 思わず「いやいやいや,で,その案で渋滞解消するの?」と聞きたくなるだろ? っってね.