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北陸新幹線の建設費が2倍!? – 米原ルートは早期開業か- (その4)

その4である.「米原ルート」の話の続きである.

小浜ルートは工期15年,米原ルートは工期10年,だから米原のほうが早期開業で切るという論があるようだ.

だが前者はすでに準備がほぼ終わっていて1-2年内に着工できる工期15年.

後者は,まだ何にも調査も設計もしてなくて,これから合意形成,現地調査,詳細なルート選定,設計,(ここは北陸・中京新幹線なので)整備計画格上げ等法的な準備をしなければならない工期10年.

つまり工事期間だけ見ると「米原」のほうが短そうだが,準備期間に数年から10年くらいかかるような状況なので,即着工できる前者のほうが早いと思う.

段取りを知らない人の論だな.

 

北陸新幹線の建設費が2倍!? -米原ルート- (その3)

その3である.最後は,米原のほうがいいのか,という話である.

北陸地方の一部の自治体が「米原」と言っているといった話があるが,やはり米原は長期的に見てデメリット多し.(ただし,北陸・中京新幹線を否定するものではない)

最大の理由は乗り換え解消の見込み薄なことである.乗り換え解消しなければ,(大阪市内の行先にもよるが)米原と新大阪の二度乗り換え状態の出現である.

一応,JR東海は「リニア開業後にダイヤに空きがあれば入れてもいい」的なことを匂わせた時期もあったが,現時点では公式にはそうは言っていない.理由も公言していないがおそらく次のとおり.

リニアは全線開業後に,各停型速達型あわせて毎時9本の運転を想定しているようだが,リニアの車両は定員1000名で立席なしである.つまり,毎時9000人が最大の輸送量である.

世間的にはリニアが開業すれば東海道新幹線はローカル新幹線化してガラガラになると信じて疑わない雰囲気であるが,さにあらず.東海道新幹線の輸送能力は現時点で絶大強大超強力である.

東海道新幹線は1列車あたり1319席,毎時のぞみ12本,ひかり2本,こだま2本の計16本である.このうち,リニアに移行するのはのぞみだが,東海道新幹線ののぞみの輸送力は1319✕12=15828席分もあるので,全部は無理である.(東海道新幹線の全列車が満席なら毎時2万1千席分にもなる)

リニアに移行するのはのぞみだけではない.東京-大阪間の航空便の大半,東京と大阪以遠とを結ぶ航空便の一部も移転する.航空利用者年間300万人程度の減少という試算もあるようなので,1日あたり8200人,片方向として4000席/日,毎時230席程度と見ると0.23本程度分を消費(ピークではなくて平均なので,座席効率75%としてリニア毎時0.3本相当?).

ということで,のぞみ号からの移転はリニア毎時8.7本分程度か.そうすると,8700人がのぞみ号からリニアに移転するとして,8700/1319=6.6本/時がのぞみ号の減少分になる.つまり,開業後も毎時6本程度はのぞみ号が残存する.

ところで,例の静岡県にはリニア開業後には静岡県内停車列車の増加を約束している向きもあり,停車列車が1.5倍などという話もある.つまり,ひかり号とこだま号をそれぞれ2本→3本に増加させるということである.

リニア開業後は「のぞみ6-ひかり3-こだま3」の計12本ということであり,20年くらい前の状況とほぼ同じである.静岡県がネゴって(+インバンド需要増加に対応して)「のぞみ6-ひかり4-こだま4」の計14本という可能性もある.現行の最大16本を基準にすると若干の余裕(単純計算で毎時2-4本)があるといえばあるが,現状でもピーク時の東海道新幹線は座席が足りない状況なので,この貴重な全線の増発余力を新大阪ー米原間という短区間のために差し出すかというと…これが,JR東海は色よい返事をしない原因じゃないかな.

こう書くと「JRは社会のことをもっと広く見るべきだ」とかなんとか言う意見が出てくるだろうと思う.だが,リニア中央新幹線は現行の東海道新幹線よりちょっとだけ値段が高い程度の運賃しか徴収せず,輸送能力は東海道新幹線の半分未満である.その事業に(低利融資があるとはいえ),9兆円を自費で出すのは経済的には会社としてのメリットはあまり無く(マイナス?),どちらかというと大儲けしすぎた東海道新幹線の利益還元事業と見たほうがいいかもしれない.リニア開業効果が何兆円という話が時折出てくるが,JR東海の儲けが何兆円も増えるという話ではない.この会社自体はできる範囲で最大限の社会貢献事業をしているんだろうと思う.

乗り換え解消の見込み薄の他にも,東海道新幹線に乗り入れてしまうと降雪時に遅れを多発してしまい折角の北陸新幹線の降雪対応設備が無駄になるとか,乗車区間によってはJR東,JR西,JR海の3社の特急料金がほぼ単純加算されて割高になる可能性があるとか,乗り換え解消しても東海道新幹線のダイヤの隙間にしか入れないので自由なダイヤが組めないとか,課題山積だな.

結局,数年前の議論を蒸し返しているだけで,何ら条件は変わらないので同じ結論に達しそう.

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その2)

話が長くなりそうなので,その2である.

最初の話は,新幹線建設のB/C計算は社会的割引率の設定値がおかしいという話を書いたが,社会的割引率の値は道路でも同じ4%に設定されている.社会インフラ全般の「クセ」であり,社会投資を妨害する目的の陰謀論を唱える人までいる.少なくとも日本の社会的割引率の設定方法は国際標準ではない.

さて,今回は新幹線特有のクセである.クセ「ツヨツヨ」である.

B/Cを計算する際の「B」は社会的便益というものであり,社会の中で発生したメリットを積み上げることになっている.

    • 鉄道利用者のメリット(時間短縮+運賃変化)
    • 鉄道事業者のメリット(収入変化+経費変化)
    • 沿線が活性化するメリット(鉄道利用者の消費やビジネス活動起因)
    • 沿線活性化の波及として,沿線ではない地域が得るメリット(沿線産業の関連産業など)
    • 工事そのもののメリット(建設事業者の活性化とその波及効果)

…とまぁ,こんなところだろうか.大規模プロジェクトの「〇〇の効果△△億円」的なものはこういう積み上げである.

道路事業の場合は,こういう効果を丹念に積み上げるのだが,鉄道については「マニュアル」なるものが存在し,ほぼ上記の最初の2項目ぐらいしか計算に算入しない.なぜ入れないかというと,マスコミが「第二の国鉄を作るな(*)」「過大推計だ」と言いまくったからである.石橋を叩いて渡る方式になってしまった.

(*)現行の整備スキームでは,整備新幹線が開業するたびにJRの経営は改善されるので,新幹線が原因で第二の国鉄を作ることはできない.もし第二の国鉄が発生するならば別の原因である.マスゴミはそれを未だに知らない.

この点に関しても,国交省がB/Cの再計算する際に沿線への効果等を考慮して計算し直すという方針を示しているが,”形の上で” 的に叩こうとしている.だが,そもそもの新幹線のB/C計算が石橋叩いて壊す的計算方式になっているだけなのである.道路等と方法を合わせるだけに過ぎない,というのが正しい見方である.

騒げばいい,というものではない.

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その1)

…という話題が,マスコミを賑わしている.
ここぞとばかりに「米原ルート」などという話がぶり返しているが,さて…

建設費が2倍になると「費用対効果」が半分になり,そもそも北陸新幹線の「敦賀-大阪間」については,費用対効果(B/C)がほぼ1ギリギリだったので,マスコミが「ほら,ソラ見たことか」とここぞとばかりに叩いているわけだ.

ところが,新幹線建設のB/C計算にはいくつかクセがある.クセ「ツヨツヨ」である.

まず,B/Cを計算する際の社会的割引率という年間換算レートみたいな%数値がある.一応,授業や教科書では,「世の中,経済成長とかするので1年後の1万円は今年の1万円と価値が違うだろ? その変化率を社会的割引率といって例えば10%なら,来年の1万1千円と今年の1万円は同じ価値ということだ」みたいな説明をする.

この割引率という数値は現ナマの現金で持っているよりも公共投資をしたほうが社会的に有利だという指標の計算に使う率なので,経済成長率とか,公定歩合とか,そういう値を設定するというのがセオリーである.事実,諸外国での計算上の社会的割引率はそうなっている.

ところがニッポン.なぜか,長年「4%」のままである.経済成長が「目標2%」で実際にはマイナス成長している国が,である.公定歩合(現在は基準割引率および基準貸付利率)は,0.1%とか0.3%とかいう水準である.

オカシクねぇ?

じゃぁ,ザックリ,割引率4%で建設費2.1兆円,工期10年,プロジェクトライフ40年,B/C=1.1 (B/C計算の詳細の現物書類を見ていないので,概ねこのあたりという想定の数値) のプロジェクトの建設費と割引率をいじってみよう.

社会的割引率 名目建設費 C (現在換算) B (現在換算) B/C 備考
4% 2.1兆円 1.77兆円 1.95兆円 1.1 現行
4% 3.9兆円 3.29兆円 1.95兆円 0.59 建設費だけ上昇
2% 3.9兆円 3.57兆円 3.21兆円 0.90 政府の成長目標
1% 3.9兆円 3.73兆円 4.21兆円 1.13 目標と実績の間
0.3% 3.9兆円 3.85兆円 5.14兆円 1.33 実績ベース

ということで,社会的割引率の「%」をいじるといくらでも数値が変化するのが「B/C」である.ことことを理解せずに記事書くのはやめたほうがいいだろう.(現行の4%がいかにプロジェクトの効果を小さく見せるための数値かということにも注目)

なお,引用した新聞記事には国交省が社会的割引率の設定を見直して再計算するという方針について,”形の上で” 的な反応をしているが,そもそもの割引率設定がおかしいというのが正しい見方である.また,「金利の条件を…」という記述も正確ではない.政府は市中銀行から借金をするわけではないので,社会的割引率は借金の利率そのものではない.

騒げばいい,というものではない.

#有名Youtuberが京都駅3案を比較とかしてるけど,合ってる部分が少なくて悲しくなった.

北陸新幹線(敦賀乗り換え)

さて,京都から福井まで往復した際の話(3/18)である.御存知の通り,北陸新幹線は敦賀駅で乗り換えである.

往路はあいにく,春の嵐でサンダーバード号が湖西線の途上で足止めになった.高島のあたりだろうか.30分ほど動かない.どうやら後続のサンダバは米原まわりに変更になったようである.

敦賀駅には定時よりも1時間は遅れてはいないが40分程度は遅れて到着.到着前には「予定の新幹線は接続しません」「特急券は払い戻しになります」とのこと.

敦賀着.

北陸新幹線のホームに急がされるが,案の定,中間改札で詰まる.外国人観光客がどうしていいのか戸惑っている模様.

本来の接続相手ではない新幹線がホームで待っている.案内放送では「空いている席か自由席に座れ」とのこと.

とりあえず席について,出発.車内放送でも「特急券は払い戻しになります」「詳しくは駅の出口改札で」とのこと.はて? 特急券の払い戻しって2時間以上遅れないとならないんだったと思うけど,1時間未満でも払い戻しなの??

10分ちょいで福井駅に到着.出口の改札で駅員に特急券を見せて,これは払い戻し対象になるのか聞いたら,特急券に「急?乗承(福井)」なる判子を押されて,みどりの窓口に並べとのこと.

うーん.

退散.
確か降りた駅でなくても払い戻しはできるはず…

聞いた話では,この件とは別に事故でサンダーバードの特急券払い戻しになった際には,1列車分で200万円ほどの払い戻しになったとのこと.うーん,儲からないねぇ.

帰路もなんだか遅れている.10分ほどの遅れだったので,接続先のサンダーバードを待たせておいてから出発.

まぁ,遅れても着けたから良かったんだけどね.十数年前には風雨で福井で足止めされて帰りが翌日になったこともある.


さて,後日談である.

特急券払い戻しを通勤途上の四条畷駅で試みた.そもそも特急の走っていない学研都市線なので,特急券の払い戻し経験が少なかった模様.窓口駅員がどうしていいのか右往左往.奥に行ってしまって誰かと相談.戻ってきて「半額払い戻しになります」と言って電卓叩いて半額現金でくれた.

さらに半月後,JR提携のカード会社から要領を得ないお手紙.四条畷駅より京都‐福井の乗車券の精算方法について相談したいとのこと,らしい.

とにかく駅の窓口に行くと,「半額払い戻しじゃなくて全額払い戻しでした」とのことで,残額さらに返金.(なぜ全額返金なのか聞かなかったので,1時間未満でも払い戻しの理由は未だ不明.)

乗り継ぎ,面倒だね.

 

【祝】北陸新幹線(金沢ー敦賀間開業)

話題が遅いってか?

福井駅の構内に,見たことのないほどの人の数.かつてはがらんとした構内に,地元TV局のカメラがネタ探しにウロウロしているだけだったのに.

何ということでしょう.電車に乗る前に小腹を満たすために食べていた改札横の蕎麦屋に行列ができている.

これが…

こうなって…

こうなった.

祝,開業.
(開業3日目の写真)

ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)

まもなく(…といっても,まだ半年くらいあるが)北陸新幹線の金沢ー敦賀間が開業する.

敦賀駅の西の端はこうなっている.奥に続く高架橋は敦賀駅に併設される車両基地への入出庫線.手前の高架橋は途切れており,「ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)」である.

財源やルートで揉めてるみたいだが,どうする?

 

京都民報webの精度(京都の大深度地下編)

京都市内を縦断する北陸新幹線延伸計画が京都市長選の争点に浮上しています。地下水を利用している、酒造会社からは同計画に不安の声が広がっています。

情報源: 「”掘ってみないと分からない”は無責任」「名水枯れたら世界の恥や」 北陸新幹線延伸計画で酒造関係者が地下水影響に不安/大深度地下通過を想定 | 京都民報Web

相変わらずスタンスが一定なのは評価するが…すでに京都の地下には地下鉄が東西南北に走ってたり,結構大きな下水道が埋まってたり,巨大な共同溝が埋まってたりしているのは知らないんだろうなぁ.(意図的に無視して煽ってるのかも)

トンネルを掘ると地下水が涸れることがあるのは山岳トンネルの場合で,地下水があると工事がしにくいので,山に含まれる地下水をトンネルから排出してしまうことが主な原因.その量が琵琶湖に匹敵するといわれる京都水盆の水を抜くには,一体何万台のポンプで地上に水をくみ上げる必要があるのやら.水は自然と地上には流れないので.

#ところで,伏見の酒蔵の水源地帯を通過する部分は,大深度地下じゃなくて高架じゃないの? 水源地帯の水は稲荷山付近から流れてきているという研究があったと思うので,井戸の西側は基本的に関係ないと思うが.稲荷山には高速道路のトンネルもあるけど,水が涸れたという話も無いし.

なお,地下工事の場合は水を抜いてから工事をするという方法は使えないので,別の方法を使います.

明治時代の「琵琶湖疎水をつくったら琵琶湖の水で京都市内が大洪水になる〜」と大騒ぎしたのと同じ発想かも.

それから,最後の方に「なんぼかかるかも分からへん北陸新幹線や環状線をつくるという人に財政再建ができるわけがない」みたいなこと書いてますが,新幹線の財源の大半が税金だと思ってるのなら不勉強.ちゃんと財源構成知ってるのならミスリード.

相変わらず市販の週刊誌レベルやね.(……あ,週刊誌だった)