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「敦賀・新大阪間に関する説明」見っけ

あちこちから「説明しろ」と言われている件のYouTube.
(PDF版は,こちら:https://www.jrtt.go.jp/project/tsuruhaninformationsession-kyoto.pdf)

大半の疑問点に対してはこれで返答済みに思えるが,「説明しろ」と言ってる人は見てないのかなぁ.
(あーあーあー 見えない聞こえない・・・かな?)

テレビのインタビューで,かつての京都市内の私鉄の地下線工事(鴨川の横の京阪電車?)で地下水が止まったことを例に,新幹線工事に対する不安を述べている人がいたが,工事方法が違うんだけどなぁ.

「私鉄の地下線」は地表から深い溝を掘る方式(開削工法)なので,地下に万里の長城状態の止水壁を作ってるようなもんだが,新幹線のトンネルは豆腐にストローで穴開けるような方式なんだけど.

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それから,「米原ルート」を主張している人向けにはこちら.

北陸新幹線は入念な雪対策がされているが,「米原ルート」の接続先の東海道新幹線はここまでの対策はされておらず,乗り入れようが乗り換えようが,冬場は京都や大阪への到着は遅れまくり・・・ということは忘れてるんだろうなぁ.(石川県民あたりだと,東海道新幹線の関ヶ原区間を使う機会は少ないので,東海道新幹線が雪に激弱なのをそもそも知らない可能性すらアリ.)

京都では参議院選挙の争点らしいが,そもそも各候補者には「専門的知識と判断能力」はあるんだろうか? 衆議院と違って,「みんなが言ってるから」じゃぁマズイと思うぞ参議院.

北陸新幹線の敦賀-大阪間はなぜ「舞鶴経由」がマズイのか

北陸新幹線の敦賀‐小浜‐京都‐新大阪のルート整備が手こずってるのなら,舞鶴経由にせよという意見がある.舞鶴経由を主張する人は京都府(∉京都市)の人が多い.

「敦賀から西進して,舞鶴を経由して,福知山を経由して,京都駅経由して大阪に至れ」というかなりひどい主張もある.舞鶴の位置はこの辺(東舞鶴駅).ほぼ敦賀の西方&大阪の北方である.福知山は舞鶴よりもさらに西側である.

京都府には昔から(最近の資料ではあまり見かけなくなったが)「京都縦貫幹線鉄道構想」というのがあり,折に触れてこの構想が頭をもたげてくる.

舞鶴経由ルートは,かつての敦賀‐大阪間のルートの議論の際に出てきたものだが,北陸の人が京都や大阪に行くのに舞鶴や福知山を経由させられるという点で極めて筋の悪い議論である.

敦賀‐新大阪間は直線距離で114kmほど,現行の小浜京都駅経由案が約140kmであるのに対し,敦賀‐舞鶴‐福知山‐京都‐新大阪だと217kmほどにもなり,時間的には新幹線化を全く無効にしかねない案である.加えて,北近畿引き回しの刑としての運賃増までオマケで付いてくる.

しかも京都駅を経由する時点で京都市内の工事に関する諸問題を回避できない.流石にこれはダメである.新幹線版のドラゴンラインだ.

最近の「舞鶴経由」は京都駅を経由しないことを想定しての発言だと思うが,それでも遠回りだ.舞鶴に寄って,後は新大阪へ直行でも約153km.途中には京丹波駅が作れるかどうか.新大阪駅は南北方向になり,もはや山陽新幹線との直通という将来ビジョンはナシで.完成すれば京都府下における南北の分断は確定的か?

京都駅を無視してもいいと思っている人は,サンダーバードに乗ったことがないのだろう.大阪駅をスカスカの状態で出発した特急は新大阪,京都と順に客を積んでゆき,京都駅を出発した時点でようやく席が埋まる.京都駅は北陸特急利用者の主要な旅の発着地である.京都駅を経由しない時点で利用価値ほぼ半減する.

福知山や舞鶴への新幹線整備は「山陰新幹線」として議論すべきであり,「山陰本線」が京都駅を起点にしていることを考えると,山陰新幹線も工事の起点は京都駅起点が妥当だ.だが,北陸新幹線の京都市街での新幹線工事ができないなら,山陰新幹線の京都市街の工事もできない.

結局は北陸新幹線の新大阪-京都(-敦賀)間の一部は山陰新幹線との重複区間として捉えるのが適当であり,新大阪-京都(-敦賀)間の工事は,実質的に山陰新幹線の一部着工と捉えるべきだ.変な線路の取り回しを考えるよりも,どうすれば工事ができるのかについて,真面目に考えたほうが良い.

10年くらい前の「与党検討委員会・中間とりまとめ」には,(気にせず読み飛ばしている人も多いとは思うが)こういう記述がある.

「北陸新幹線が日本海側と太平洋側を連絡する重要路線であることも考慮し、将来的なものを含めて他の日本海側の幹線鉄道網との関係についても配慮されるべきである」

将来的な他の日本海側の幹線鉄道とは山陰新幹線にほかならない.わざわざこのように記述されているのは,敦賀-新大阪間は単なる北陸新幹線の一区間というだけでなく,京阪神圏と日本海側の山陰各地とを結ぶための重要な区間だという意味も込められている.インフラの計画というのは,B/Cだけでなく,このような条件も含めて考案されるものだ.

#綾部(3万人)は舞鶴(7万人)よりもさらに西になるので,舞鶴経由が実現しても綾部経由になるわけではない.そもそも,どちらの都市も,人口規模の観点ではわざわざ新幹線を経由させる都市規模ではなく,たまたま線路が通過する場合に,他に有力な設置地点がなければ駅ができる程度の規模である.

北陸新幹線の京都駅はなぜ「桂川」がイマイチなのか

「新幹線の大阪駅」が「新大阪」なら,「北陸新幹線の京都駅」が「桂川」だっていいじゃないか,という話がある.

京都駅と桂川駅の位置関係はこんな感じ.電車で6分.新大阪-大阪駅間も同程度だ.

じゃぁ,桂川駅でもいいじゃないかという話になるのだが,桂川と新大阪の決定的な違いは,市街地へのアクセスである.

新大阪駅は梅田地区へはJRで4-5分,都心の本町駅へは地下鉄で12分程度,なんば駅まで15分,天王寺へ22分,それぞれ「乗り換え無し」だ.大阪の主要地へ直接アクセスできる.地味に便利なおおさか東線も乗り入れており,そう遠くない将来,南海線とJR阪和線が乗り入れる「なにわ筋線(工事中)」経由で,いずれ南部からの電車もやってくる.

ところが,桂川駅の場合,JRで6分かけて到達できるのは京都駅なので,ここから地下鉄やバスに乗り換える必要がある.明らかに市内アクセスが劣る.

「いやいや,桂川なら阪急洛西口駅のすぐ近くじゃないか.洛西口なら阪急電車で都心へ行ける.」という人もいるだろう.けれども,JRTTの資料のp.27を見ると,明らかに阪急駅には隣接しない.桂川駅と洛西口駅の間にはイオンショッピングセンターがあって,歩くと約10分,700mある.

詳しい人なら,「桂川駅にはバスターミナルがあるので,ここを拠点にバス網を…」と言うかもしれないが,例えば金閣寺まで10km,銀閣寺まで13kmもあってバス網の拠点にはなり得ない.

さらに,京都市内各地に加えて,近鉄京都線沿線,JR奈良線沿線,JR山陰線沿線も京都駅なら直行できる範囲である.

北陸新幹線の京都駅は桂川でよいという論は,北陸新幹線でやってきた客が京都駅で降りた後,一体どこに向かうのか,という議論がすっぽり抜け落ちている.

「四国に新幹線って要りますぅ?」って人

「四国に新幹線って要りますぅ??」って言う人がいる.大都市部在住の人が多い.

四国4県で人口は約363万人.結構大成功の北陸新幹線沿線の北陸3県の人口は約284万人.

つまり「四国 > 北陸3県」.

北陸新幹線沿線には,新潟県の南西の端っこや長野県の北東部も含まれているので,足してみる.新潟県の南西部の人口は約24万人.長野県の北東部の人口は約75万人.ついでに安中市も入れて,合計約389万人.

ようやく「四国 < 北陸新幹線沿線」になった.

ところが,北陸新幹線の敦賀-高崎間は約471kmであるのに対し,瀬戸大橋を渡って四国各県に伸ばす構想の「四国の新幹線」の延長は302km.

つまり,「四国の新幹線」の沿線人口は,1kmあたり1.20万人であるのに対し,建設済みの北陸新幹線の沿線人口は1kmあたり0.83万人にすぎない.

1kmあたり沿線人口は「四国の新幹線 > 北陸新幹線」

つまり「四国に新幹線って要りますぅ?」って言う人は固定観念に毒されている.

#四国の新幹線は,高知県南部とか徳島県の吉野川沿いとかカバーしてないぞ,という人は,自分で詳しく計算してみよう.

まぁ結局費用負担の話かなぁ…

北陸新幹線の敦賀ー大阪間の建設の話が行き詰まってる感があるが,京都府市議会市民団体仏教会等々から出されている疑問点については,技術面では,ほぼこの(↓)公式見解で回答されているように見える.(耳をふさいで「あーあーあー 聞きたくない聞こえない」?!)

 京都府内自治体説明会 (資料)

・地下水の件 → 地下水の流れの上流側ふさいでません,酒造用井戸避けてます,地下水がトンネル内に流れ込むの防ぎます,京都には既にいっぱい地下トンネルあります,これまでの地下工事でも大きな影響出てません

#そもそも,山岳トンネル(例えばリニアのトンネル)は地平より上なので,山の地下水がトンネル経由で自然流下する可能性があるが,地面より下の地下線だと地下水はポンプで汲み上げでもしない限りトンネルから自然流出しないけど・・・

・国定公園の件 → 一番コアな場所は避けてます,似たような事例は他にも既にあります,河川への影響ほとんどありません,地上の工事気を付けます

・残土の件 → 重金属気を付けます,すでに重金属の処理やったことあります,ダンプの渋滞気を付けます,残土は車両基地の盛土に使います

・文化財の件 → 主要な文化財は回避します,地下水位の影響はなさそう,かなり深いところを掘るので地表に影響ありません

#少なくとも寺院の多い左京と東山は工事と全く関係ないけど・・・

・巨椋池の治水の件 → 調節池設けます,詳細解析します

「あーあーあー 聞きたくない聞こえない」

ということなので,基本的には同じ話を100回繰り返すしかないでしょうなぁ > 工事担当機関殿

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さて,説明を求められても「工事担当の関係機関」が答えられない点はある.費用負担の問題だ.

既設の北陸新幹線の駅間距離は平均20kmくらいなのだが,小浜-京都間は60kmくらいになりそうである.平均駅間の3倍くらいだが,ほぼトンネルだけで駅設置予定はない.無理やり駅を設置しても山間部で誰も使わない.「そんな区間に金出せるか!」という主張は一理ある.

これまでの費用負担は「20-30kmほどの建設費負担に対して1駅ゲット」が暗黙の了解だったわけだ.高崎-軽井沢間約45kmの途中に半ば無理やり安中榛名駅が建設されたのも,この暗黙の了解に基づくわけだ.

ところが,小浜ー京都駅間60kmは半ば無理矢理にも駅が・・・設置できそうもない.あるのは山地のみ.

実は別の整備新幹線でも「無理矢理にも駅が・・・設置できそうもない」区間は存在している.それは「奥津軽いまべつ-木古内間」つまり津軽海峡区間(トンネル約54kmを含む約88kmの海峡線)である.北海道新幹線は国と地方の負担で建設されており,地方とは北海道と青森県であるが,青函トンネルの建設費を北海道と青森が出したかというと・・・出していない.

青函トンネルの建設は新幹線建設とは別メニューで建設されており,地方負担分は無く,(国鉄の清算によって結果的に)国費によって建設されている.

整備新幹線の地方負担のルールは変更すべきではないという意見があることは承知しているが,メリットのない負担は不合理でもあるので,「駅の設置できない長大区間については全額国費」という新しい整備スキームが検討されてもいいのではないかと思う.(あと,やたらと工事費の高い区間の費用負担の平準化のスキームも)

#最近,この手の話をすると「コイツは間違っている!成敗せねば」的な人が出てくるんだが,そういう人の主張はほぼFAQに含まれており,話が平行線で時間の無駄なので,電話とかかけてこないでね.新聞記事の感想は新聞社へ.

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 有識者でも米原ルート推奨?- (その7)

その7である.その道の有識者でも,米原ルートを推奨する人が出てきている.

だが…

  1. プロジェクトの優劣はB/Cで決まるわけではない(教科書レベル)
    • 教科書レベルのプロジェクト評価の説明では,B/C(費用便益比)は評価項目の1つに過ぎないので,B/Cの大きさだけでプロジェクトの優劣を評価すべきではないと書かれている.最も重要なのは,所期の課題を解決できるかどうかであり,他の項目は制約条件に過ぎない.
  2. B/Cの計算は社会的割引率の設定次第でいくらでも変わる(教科書レベル)
    • じゃぁ,B/C<1だと,投資効率が悪すぎて制約条件に引っかかるんじゃないかという話になる.だが,現時点の日本のB/C計算における社会的割引率は4%になっており,経済状況に比べて異様に高い値が設定されている.民間投資の収益率にすべきだとか,利子率に設定すべきだとか,長期国債の利回りに設定すべきだとか,経済成長率に設定すべきだとか色々観点はある.だが,30年間ほとんど経済成長していない国の割引率が4%って,妥当か?
  3. 「建設期間が25年のプロジェクト」は,年間新幹線支出が貧弱な状況下でも他のプロジェクトを圧迫しない
    • それから,最大5兆円(年間2%ずつ建設費が増大した場合の額面の総額?)も投資するくらいなら他の基本計画新幹線に投資したほうがマシと言う論もある.だが,である.工期が25年もあると,年間の建設費は1500億円程度である(完成近くなった頃の25年後の建設費は3000億円近くになるかもしれないが,これは額面).少ない少ないと言われ続けている新幹線の年間建設費4000億円の半分程度なので,残り半分は他の路線の建設費に回せる(完成近くなった頃の年間新幹線建設費支出総額はさすがに増えていると思う).
  4. 今から米原ルートを検討し始めてそれが早い解決策なのか?
    • 小浜京都ルートは環境影響評価段階で,もうすぐ着工の段取りである.
    • 一方,米原ルートは,滋賀県の並行在来線問題,滋賀県の費用負担問題,東海道新幹線に乗り入れるのなら各種の問題(東海道新幹線の線路容量,運行管理システムの違い,信号システムの違い,地震対応の違い,車両の最高速度の違い,新大阪付近の車庫回送線建設,JR東海がGOサインを出す時期(早くて2037年?)の問題,線路貸しなのかJR東海の列車扱いなのか,など),乗り入れないのなら乗り換え問題(米原駅での乗り継ぎ時間調整,ホーム発着が対面の乗り換えか否か,新大阪と米原の2回の乗り換えで条件悪化,特急料金の2重払い3重払いの問題),JR西日本の説得(減収),などなど,問題山積である.工事と並行で問題解決しようとしても,乗り入れなのか乗り換えなのかで米原駅付近の線路の構造が変わってくるので,着工不能な区間が出てくるはず.

…という状況.

北陸新幹線の建設費が2倍!? – B/CのBをup- (その6)

その6である.北陸新幹線敦賀ー大阪間のB/Cが建設費用upでヤバいかも,という話に戻る.

B/Cの計算は社会的割引率の値をどう設定するか次第の面が大きく,現行の4%は国際標準ではないという話をしたが,計算上の話ではなくてB/CのBを実際にupさせる方策がないではない.

件の区間の駅は,敦賀の次が小浜,京都,松井山手,新大阪の順だが小浜京都間の距離が長い.ここに駅を設けて開発効果を狙うという方法がないではない.もちろんその駅のためだけにルートを捻じ曲げるわけにはいかないので,コース取り次第である.

小浜京都駅間の途中の京都市右京区京北町の山間の僅かな平野に駅を設けて,ここを旧京北町や(1つ峠を超えるが)美山町の山間部を後背地とする拠点駅にするという方法が考えられないわけではない.このあたりの山間部は線路が通過するだけでメリットが無いと感じている地域でもある.


駅はたしかに費用がかかるが,標準的には200億円/駅程度であったかと思う.最低限のホームと改札だけならもっと安いかも.区間の全費用が2兆円だとか4兆円だとかいう額なら,全工費の0.5-1%程度にしかならないので,Bをupして新幹線のメリットを享受できる地域を広げるには良い策だと思う.少なくとも安中榛名よりは役に立つんじゃないだろうか.

まぁ,駅単体でB/Cを計算したりするとB/C<1かもしれないが…整備新幹線の主たる目的は沿線開発であるので.

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 北陸・中京新幹線- (その5)

その5である.ついでの話の北陸・中京新幹線の話である.

「北陸新幹線米原ルート」ではない場合の敦賀ー米原間の新幹線は北陸・中京新幹線になる.厳密には北陸・中京新幹線は米原をmustの経過地にはしていないが,敦賀ー名古屋間を直接結ぶ線路の建設が実施されるとは考えにくく,北陸・中京新幹線は敦賀ー米原間の建設になる.

「北陸新幹線米原ルート」のB/Cは建設費高騰前で2以上あったが,これは関西ー北陸間に加えて中京ー北陸間の旅客を加えた需要があることが前提である.北陸新幹線が米原ルートではないルートで建設される場合は,中京ー北陸間の旅客(+若干の対滋賀旅客)で計算することになる.

中京方面の客数は対関西より少なく,GW時の客数であるが,しらさぎ4.3万人に対してサンダーバード19.8万人なので,B/Cは建設費高騰前の「関西方面客込みの米原ルート」で2.2だったものが中京方面のみの北陸・中京新幹線だと約0.4程度になると思われる.”建設費高騰”を加味すれば0.2-0.3程度か?

社会的割引率が現行習慣では異常値であることを是正して,さらに利便の積み上げも道路並みにしても0.4-0.5程度かなぁ?

さほど列車本数が多くはないので,「単線新幹線」にすれば,建設費が70-80%程度になる可能性はあるので,0.6-0.7程度かなぁ.厳しいなぁ.

現実的なのは,複線の北陸本線を狭軌と標準軌の単線並列にして,ミニ新幹線(もしくはフルサイズ車両が走れるように線路設備改築した標準軌の在来線路)として新幹線電車を直通運転することかな.

幸いなことに,北陸本線の敦賀ー米原間のトンネル部分は複線トンネルではなく単線トンネルの並列になっており,片方のサイズの口径をアップすればフルサイズ電車用に改築できそうである.また敦賀付近のループ線部分も,ループ線(現南行の緩勾配)を狭軌線にして貨物列車対応させ,真っ直ぐな急勾配線(現北行)を新幹線電車専用にすればうまく収まりそうである.

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 米原ルートは早期開業か- (その4)

その4である.「米原ルート」の話の続きである.

小浜ルートは工期15年,米原ルートは工期10年,だから米原のほうが早期開業で切るという論があるようだ.

だが前者はすでに準備がほぼ終わっていて1-2年内に着工できる工期15年.

後者は,まだ何にも調査も設計もしてなくて,これから合意形成,現地調査,詳細なルート選定,設計,(ここは北陸・中京新幹線なので)整備計画格上げ等法的な準備をしなければならない工期10年.

つまり工事期間だけ見ると「米原」のほうが短そうだが,準備期間に数年から10年くらいかかるような状況なので,即着工できる前者のほうが早いと思う.

段取りを知らない人の論だな.

 

北陸新幹線の建設費が2倍!? -米原ルート- (その3)

その3である.最後は,米原のほうがいいのか,という話である.

北陸地方の一部の自治体が「米原」と言っているといった話があるが,やはり米原は長期的に見てデメリット多し.(ただし,北陸・中京新幹線を否定するものではない)

最大の理由は乗り換え解消の見込み薄なことである.乗り換え解消しなければ,(大阪市内の行先にもよるが)米原と新大阪の二度乗り換え状態の出現である.

一応,JR東海は「リニア開業後にダイヤに空きがあれば入れてもいい」的なことを匂わせた時期もあったが,現時点では公式にはそうは言っていない.理由も公言していないがおそらく次のとおり.

リニアは全線開業後に,各停型速達型あわせて毎時9本の運転を想定しているようだが,リニアの車両は定員1000名で立席なしである.つまり,毎時9000人が最大の輸送量である.

世間的にはリニアが開業すれば東海道新幹線はローカル新幹線化してガラガラになると信じて疑わない雰囲気であるが,さにあらず.東海道新幹線の輸送能力は現時点で絶大強大超強力である.

東海道新幹線は1列車あたり1319席,毎時のぞみ12本,ひかり2本,こだま2本の計16本である.このうち,リニアに移行するのはのぞみだが,東海道新幹線ののぞみの輸送力は1319✕12=15828席分もあるので,全部は無理である.(東海道新幹線の全列車が満席なら毎時2万1千席分にもなる)

リニアに移行するのはのぞみだけではない.東京-大阪間の航空便の大半,東京と大阪以遠とを結ぶ航空便の一部も移転する.航空利用者年間300万人程度の減少という試算もあるようなので,1日あたり8200人,片方向として4000席/日,毎時230席程度と見ると0.23本程度分を消費(ピークではなくて平均なので,座席効率75%としてリニア毎時0.3本相当?).

ということで,のぞみ号からの移転はリニア毎時8.7本分程度か.そうすると,8700人がのぞみ号からリニアに移転するとして,8700/1319=6.6本/時がのぞみ号の減少分になる.つまり,開業後も毎時6本程度はのぞみ号が残存する.

ところで,例の静岡県にはリニア開業後には静岡県内停車列車の増加を約束している向きもあり,停車列車が1.5倍などという話もある.つまり,ひかり号とこだま号をそれぞれ2本→3本に増加させるということである.

リニア開業後は「のぞみ6-ひかり3-こだま3」の計12本ということであり,20年くらい前の状況とほぼ同じである.静岡県がネゴって(+インバンド需要増加に対応して)「のぞみ6-ひかり4-こだま4」の計14本という可能性もある.現行の最大16本を基準にすると若干の余裕(単純計算で毎時2-4本)があるといえばあるが,現状でもピーク時の東海道新幹線は座席が足りない状況なので,この貴重な全線の増発余力を新大阪ー米原間という短区間のために差し出すかというと…これが,JR東海は色よい返事をしない原因じゃないかな.

こう書くと「JRは社会のことをもっと広く見るべきだ」とかなんとか言う意見が出てくるだろうと思う.だが,リニア中央新幹線は現行の東海道新幹線よりちょっとだけ値段が高い程度の運賃しか徴収せず,輸送能力は東海道新幹線の半分未満である.その事業に(低利融資があるとはいえ),9兆円を自費で出すのは経済的には会社としてのメリットはあまり無く(マイナス?),どちらかというと大儲けしすぎた東海道新幹線の利益還元事業と見たほうがいいかもしれない.リニア開業効果が何兆円という話が時折出てくるが,JR東海の儲けが何兆円も増えるという話ではない.この会社自体はできる範囲で最大限の社会貢献事業をしているんだろうと思う.

乗り換え解消の見込み薄の他にも,東海道新幹線に乗り入れてしまうと降雪時に遅れを多発してしまい折角の北陸新幹線の降雪対応設備が無駄になるとか,乗車区間によってはJR東,JR西,JR海の3社の特急料金がほぼ単純加算されて割高になる可能性があるとか,乗り換え解消しても東海道新幹線のダイヤの隙間にしか入れないので自由なダイヤが組めないとか,課題山積だな.

結局,数年前の議論を蒸し返しているだけで,何ら条件は変わらないので同じ結論に達しそう.