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北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その2)

話が長くなりそうなので,その2である.

最初の話は,新幹線建設のB/C計算は社会的割引率の設定値がおかしいという話を書いたが,社会的割引率の値は道路でも同じ4%に設定されている.社会インフラ全般の「クセ」であり,社会投資を妨害する目的の陰謀論を唱える人までいる.少なくとも日本の社会的割引率の設定方法は国際標準ではない.

さて,今回は新幹線特有のクセである.クセ「ツヨツヨ」である.

B/Cを計算する際の「B」は社会的便益というものであり,社会の中で発生したメリットを積み上げることになっている.

    • 鉄道利用者のメリット(時間短縮+運賃変化)
    • 鉄道事業者のメリット(収入変化+経費変化)
    • 沿線が活性化するメリット(鉄道利用者の消費やビジネス活動起因)
    • 沿線活性化の波及として,沿線ではない地域が得るメリット(沿線産業の関連産業など)
    • 工事そのもののメリット(建設事業者の活性化とその波及効果)

…とまぁ,こんなところだろうか.大規模プロジェクトの「〇〇の効果△△億円」的なものはこういう積み上げである.

道路事業の場合は,こういう効果を丹念に積み上げるのだが,鉄道については「マニュアル」なるものが存在し,ほぼ上記の最初の2項目ぐらいしか計算に算入しない.なぜ入れないかというと,マスコミが「第二の国鉄を作るな(*)」「過大推計だ」と言いまくったからである.石橋を叩いて渡る方式になってしまった.

(*)現行の整備スキームでは,整備新幹線が開業するたびにJRの経営は改善されるので,新幹線が原因で第二の国鉄を作ることはできない.もし第二の国鉄が発生するならば別の原因である.マスゴミはそれを未だに知らない.

この点に関しても,国交省がB/Cの再計算する際に沿線への効果等を考慮して計算し直すという方針を示しているが,”形の上で” 的に叩こうとしている.だが,そもそもの新幹線のB/C計算が石橋叩いて壊す的計算方式になっているだけなのである.道路等と方法を合わせるだけに過ぎない,というのが正しい見方である.

騒げばいい,というものではない.

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その1)

…という話題が,マスコミを賑わしている.
ここぞとばかりに「米原ルート」などという話がぶり返しているが,さて…

建設費が2倍になると「費用対効果」が半分になり,そもそも北陸新幹線の「敦賀-大阪間」については,費用対効果(B/C)がほぼ1ギリギリだったので,マスコミが「ほら,ソラ見たことか」とここぞとばかりに叩いているわけだ.

ところが,新幹線建設のB/C計算にはいくつかクセがある.クセ「ツヨツヨ」である.

まず,B/Cを計算する際の社会的割引率という年間換算レートみたいな%数値がある.一応,授業や教科書では,「世の中,経済成長とかするので1年後の1万円は今年の1万円と価値が違うだろ? その変化率を社会的割引率といって例えば10%なら,来年の1万1千円と今年の1万円は同じ価値ということだ」みたいな説明をする.

この割引率という数値は現ナマの現金で持っているよりも公共投資をしたほうが社会的に有利だという指標の計算に使う率なので,経済成長率とか,公定歩合とか,そういう値を設定するというのがセオリーである.事実,諸外国での計算上の社会的割引率はそうなっている.

ところがニッポン.なぜか,長年「4%」のままである.経済成長が「目標2%」で実際にはマイナス成長している国が,である.公定歩合(現在は基準割引率および基準貸付利率)は,0.1%とか0.3%とかいう水準である.

オカシクねぇ?

じゃぁ,ザックリ,割引率4%で建設費2.1兆円,工期10年,プロジェクトライフ40年,B/C=1.1 (B/C計算の詳細の現物書類を見ていないので,概ねこのあたりという想定の数値) のプロジェクトの建設費と割引率をいじってみよう.

社会的割引率 名目建設費 C (現在換算) B (現在換算) B/C 備考
4% 2.1兆円 1.77兆円 1.95兆円 1.1 現行
4% 3.9兆円 3.29兆円 1.95兆円 0.59 建設費だけ上昇
2% 3.9兆円 3.57兆円 3.21兆円 0.90 政府の成長目標
1% 3.9兆円 3.73兆円 4.21兆円 1.13 目標と実績の間
0.3% 3.9兆円 3.85兆円 5.14兆円 1.33 実績ベース

ということで,社会的割引率の「%」をいじるといくらでも数値が変化するのが「B/C」である.ことことを理解せずに記事書くのはやめたほうがいいだろう.(現行の4%がいかにプロジェクトの効果を小さく見せるための数値かということにも注目)

なお,引用した新聞記事には国交省が社会的割引率の設定を見直して再計算するという方針について,”形の上で” 的な反応をしているが,そもそもの割引率設定がおかしいというのが正しい見方である.また,「金利の条件を…」という記述も正確ではない.政府は市中銀行から借金をするわけではないので,社会的割引率は借金の利率そのものではない.

騒げばいい,というものではない.

#有名Youtuberが京都駅3案を比較とかしてるけど,合ってる部分が少なくて悲しくなった.
#有名Youtuber,駅位置案の詳細が公開されてさらに追加でuploadしているが,間違い多くて悲しくなった.

45秒に1本のシャトルバス

「45秒に1本のシャトルバス」に唖然…万博の人員輸送計画は「机上の空論」国費投入 “青天井” で1620億円

情報源: 「45秒に1本のシャトルバス」に唖然…万博の人員輸送計画は「机上の空論」国費投入 “青天井” で1620億円 – ライブドアニュース

・・・質問してる方も,答えてる方も,それを記事にしている方も,焦点ボケてる感が・・・

まず答えてる側.

45秒に1本で十分だという主旨の返答のようであるが,1時間に80本のバスで運べる人数はせいぜい5-6千人(70人✕80本=5600人)である.バスは電車と違って詰め込みがあまりきかないので,この数字.この5-6千人というのは,満員の地下鉄中央線4本分くらい(定員820人✕180%✕4本=5900人)にしかならないので,ドヤ顔できるほどの輸送能力ではない.

次に質問している側.

45秒に1本という頻度のバスをさばけるのかという懸念をしているようだが,1日に1000本のバス(ピーク1時間あたりだと100本以上)が通る街路というのは存在する(しかも,さほど珍しくない).45秒間隔は,ちゃんと対策すれば捌ける.論点はそこじゃない.

それから,それを記事にしている側.

都市交通の実態も知らずに45秒間隔は無理だとして机上の空論と切り捨てている…いや,そもそも実態知ってるの? 論点はそこじゃない.

論点は,このあたり.

1)その程度のバスの輸送能力で大丈夫か?
2)本当は,その2-3倍のバスが必要じゃないのか?
3)そのバスの運転手は確保できるのか?

全体の6割を地下鉄で,残りの4割はバスで運ぼうとしているようなので,バスは地下鉄の2/3程度の輸送能力が必要なはず.とすると,必要なバスの運転頻度は45秒間隔じゃなくて,10-15秒間隔程度になると思うが…

 

新幹線「肥前”岐阜羽島”駅」爆誕か?!

西九州新幹線、佐賀空港北ルート案が浮上 未着工区間を巡り与党内で

ルート図はこちら(↓)

情報源: 西九州新幹線、未着工区間 佐賀空港北側、新ルート案 政府・与党 | 毎日新聞

岐阜市に対する岐阜羽島駅と同じポジションになりそう.リニア山梨県駅にも似たロケーション.ええのか? これで? これでええのなら,長崎の人は喜ぶと思うけど.

駅はこの辺?

佐賀市街からは新幹線駅にゆくのが面倒で,広域利便性はあまり上がらない.佐賀空港駅としても中途半端.

建設費は正札で全額払ってね.

西九州新幹線フル規格佐賀県負担1400億円のカラクリ

このお話.

新幹線フル規格化“県負担1400億円程度か” 県立大学設置は「座談会」開催へ【佐賀県】

情報源: 新幹線フル規格化“県負担1400億円程度か” 県立大学設置は「座談会」開催へ【佐賀県】|佐賀のニュース|サガテレビ

 

これに関して,こういう話もある.

佐賀新聞:西九州新幹線(武雄温泉―長崎) 佐賀県負担額は約360億円 県が見通し

武雄温泉-長崎間のうち,佐賀県下での路線延長は17.2km程度であり,これの佐賀県負担が360億円(交付税措置前)なので,単純計算20.9億円/Km.建設期間が2007-2021年であるが,2015年の建設物価指数を100とすると,現在は125程度のようなので,20.9✕1.25=26.2億円/Km.

新鳥栖-武雄温泉間のJRの路線延長は50.4kmなので,これを使ってかけ合わせると1318億円になる.

つまり,「佐賀県の負担1400億円」というのは,交付税措置前の値と推定できる.

ところで,「交付税措置前」の件だが,新幹線の地元負担については,その額の9割を起債することが認められている.

福井県:財源等

起債の50-70%については交付税措置という国からの穴埋めをしてもらえるので,最大限穴埋めしてもらうとして,実質負担はこうなる.

1318億円✕90%✕(100-70%)+1318億円✕10%=488億円

ということなので,「新幹線負担1400億円」というのは,政治的メッセージの強い数値のようである.実負担は500億円程度以下のようである.

まぁ,県知事はこう発言しているけど,県職員は知ってるよね.

ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)

まもなく(…といっても,まだ半年くらいあるが)北陸新幹線の金沢ー敦賀間が開業する.

敦賀駅の西の端はこうなっている.奥に続く高架橋は敦賀駅に併設される車両基地への入出庫線.手前の高架橋は途切れており,「ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)」である.

財源やルートで揉めてるみたいだが,どうする?

 

大阪万博の観客輸送,大丈夫かぁ,怪しいぞぉ

このお話.

関経連での説明会での質問で,「大阪メトロ中央線だけでなくほかの路線でも混雑の対策が必要ではないかといった意見もあり、担当者はシャトルバスへの誘導を検討していると説明していました。」だそうな.

情報源: 大阪・関西万博 交通混雑緩和へ期間中の時差出勤など呼びかけ|NHK 関西のニュース

いやいやいや…担当者,大丈夫かぁ

他の地下鉄路線の混雑対策の代替案として,シャトルバスへの誘導って…根源的な都市交通機関の輸送能力を理解してなさそう.

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その12 – 答え合わせと課題)

地下鉄1本で,書類上の定員で820人,1.8倍まで詰め込んで1476人.

この地下鉄1本分の客をバスで運ぶと,1476÷70=21.1本.

わずか地下鉄1本分で,バスが21便も必要なんですよ.地下鉄中央線でこの差.他の接続路線のことを考えると,毎時1本ずつ増便するだけで,シャトルバス分程度以上の能力が準備されてしまう.

バスの能力を買いかぶり過ぎ.地下鉄の輸送力を甘く見すぎ.

担当者,大丈夫か? 気は確かか?

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(追記)

中央線と接続する他路線の増便を検討するだけじゃぁ不十分で,乗換駅で乗り換え客が中央線に乗り切れない場合の「溜まり場」の検討が必要.特に御堂筋線の本町駅と環状線の弁天町駅および森ノ宮駅.特に特に本町駅はラッチ内での乗り換えになるので,中央線に乗れない客があふれると御堂筋線も麻痺しかねないぞ.

 

日本の鉄道150年≒30×5

日本に鉄道ができたのが150年前.1872年.

  1. 最初の30年くらいは,とにかくつなげる30年.
    全国各地を遠回りでもいいから,何とかつなげて,各都道府県がほぼ鉄道で行けるようになった.20世紀に入った.
  2. 次の30年は,充実させた30年.
    全国津々浦々まで鉄道を敷いて,幹線も速く走れるようにした.大戦前になった.
  3. その次の30年は,成長の30年.
    戦災復興,高度成長.とにかくたくさん運んだ.
  4. さらなる30年は,鉄道再発明の30年.
    新幹線を走らせた.でも,全国に張り巡らせられなかった.
  5. 最近の30年は,効率の30年.
    民営にして効率化した.
    新幹線も少しは増やせた.でも,末端部が消えかかってきた.

これからの30年は…どんな30年?

そろそろ大きく日本の鉄道の形態が変わる時期かも.

 

明石海峡大橋は鉄道非対応

左端の巨大なコンクリートの塊から最初の塔まで1km.地下鉄1駅分.

次の塔までさらに2km,地下鉄2駅分.向こう岸までさらに1km,地下鉄1駅分.

でけぇ〜

 

一見,瀬戸大橋と同じく橋の下側の網カゴみたいな中を電車が走れそうである.

 

…が,しかし.斜めに部材が取り付けられているので,単線の路面電車線路程度なら通せるかもしれないが,複線の新幹線は無理.友ヶ島水道か明石海峡にトンネルでも通すしかなさそう.

 

とにかくデケェ.中途半端な高さだと恐怖を感じるが,もはや山の上から景色を見ているに近い.

よく見ると,主塔の下のケーソンの右側に,速い潮流がカルマン渦を作っているのが見える.

¥5,000払うつもりがあるのなら,登れます

JR陸羽西線、国道トンネル工事で2年運休

陸羽西線(10駅、43キロ)が14日、並行する国道トンネル工事のため約2年の全線運休に入った

情報源: JR陸羽西線、廃線に危機感 国道トンネル工事で2年運休 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS

2年も運休するなら,標準軌に改軌しちゃえよ…と思うのは私だけ?

新庄から庄内平野方面に向けて,「山形新幹線延伸を!」っていう構想あるよね.

#工事中に改軌すればいいということに気づいてなかった模様@山形.(2023/9追記)