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北陸新幹線の建設費が2倍!? – 北陸・中京新幹線- (その5)

その5である.ついでの話の北陸・中京新幹線の話である.

「北陸新幹線米原ルート」ではない場合の敦賀ー米原間の新幹線は北陸・中京新幹線になる.厳密には北陸・中京新幹線は米原をmustの経過地にはしていないが,敦賀ー名古屋間を直接結ぶ線路の建設が実施されるとは考えにくく,北陸・中京新幹線は敦賀ー米原間の建設になる.

「北陸新幹線米原ルート」のB/Cは建設費高騰前で2以上あったが,これは関西ー北陸間に加えて中京ー北陸間の旅客を加えた需要があることが前提である.北陸新幹線が米原ルートではないルートで建設される場合は,中京ー北陸間の旅客(+若干の対滋賀旅客)で計算することになる.

中京方面の客数は対関西より少なく,GW時の客数であるが,しらさぎ4.3万人に対してサンダーバード19.8万人なので,B/Cは建設費高騰前の「関西方面客込みの米原ルート」で2.2だったものが中京方面のみの北陸・中京新幹線だと約0.4程度になると思われる.”建設費高騰”を加味すれば0.2-0.3程度か?

社会的割引率が現行習慣では異常値であることを是正して,さらに利便の積み上げも道路並みにしても0.4-0.5程度かなぁ?

さほど列車本数が多くはないので,「単線新幹線」にすれば,建設費が70-80%程度になる可能性はあるので,0.6-0.7程度かなぁ.厳しいなぁ.

現実的なのは,複線の北陸本線を狭軌と標準軌の単線並列にして,ミニ新幹線(もしくはフルサイズ車両が走れるように線路設備改築した標準軌の在来線路)として新幹線電車を直通運転することかな.

幸いなことに,北陸本線の敦賀ー米原間のトンネル部分は複線トンネルではなく単線トンネルの並列になっており,片方のサイズの口径をアップすればフルサイズ電車用に改築できそうである.また敦賀付近のループ線部分も,ループ線(現南行の緩勾配)を狭軌線にして貨物列車対応させ,真っ直ぐな急勾配線(現北行)を新幹線電車専用にすればうまく収まりそうである.

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 米原ルートは早期開業か- (その4)

その4である.「米原ルート」の話の続きである.

小浜ルートは工期15年,米原ルートは工期10年,だから米原のほうが早期開業で切るという論があるようだ.

だが前者はすでに準備がほぼ終わっていて1-2年内に着工できる工期15年.

後者は,まだ何にも調査も設計もしてなくて,これから合意形成,現地調査,詳細なルート選定,設計,(ここは北陸・中京新幹線なので)整備計画格上げ等法的な準備をしなければならない工期10年.

つまり工事期間だけ見ると「米原」のほうが短そうだが,準備期間に数年から10年くらいかかるような状況なので,即着工できる前者のほうが早いと思う.

段取りを知らない人の論だな.

 

北陸新幹線の建設費が2倍!? -米原ルート- (その3)

その3である.最後は,米原のほうがいいのか,という話である.

北陸地方の一部の自治体が「米原」と言っているといった話があるが,やはり米原は長期的に見てデメリット多し.(ただし,北陸・中京新幹線を否定するものではない)

最大の理由は乗り換え解消の見込み薄なことである.乗り換え解消しなければ,(大阪市内の行先にもよるが)米原と新大阪の二度乗り換え状態の出現である.

一応,JR東海は「リニア開業後にダイヤに空きがあれば入れてもいい」的なことを匂わせた時期もあったが,現時点では公式にはそうは言っていない.理由も公言していないがおそらく次のとおり.

リニアは全線開業後に,各停型速達型あわせて毎時9本の運転を想定しているようだが,リニアの車両は定員1000名で立席なしである.つまり,毎時9000人が最大の輸送量である.

世間的にはリニアが開業すれば東海道新幹線はローカル新幹線化してガラガラになると信じて疑わない雰囲気であるが,さにあらず.東海道新幹線の輸送能力は現時点で絶大強大超強力である.

東海道新幹線は1列車あたり1319席,毎時のぞみ12本,ひかり2本,こだま2本の計16本である.このうち,リニアに移行するのはのぞみだが,東海道新幹線ののぞみの輸送力は1319✕12=15828席分もあるので,全部は無理である.(東海道新幹線の全列車が満席なら毎時2万1千席分にもなる)

リニアに移行するのはのぞみだけではない.東京-大阪間の航空便の大半,東京と大阪以遠とを結ぶ航空便の一部も移転する.航空利用者年間300万人程度の減少という試算もあるようなので,1日あたり8200人,片方向として4000席/日,毎時230席程度と見ると0.23本程度分を消費(ピークではなくて平均なので,座席効率75%としてリニア毎時0.3本相当?).

ということで,のぞみ号からの移転はリニア毎時8.7本分程度か.そうすると,8700人がのぞみ号からリニアに移転するとして,8700/1319=6.6本/時がのぞみ号の減少分になる.つまり,開業後も毎時6本程度はのぞみ号が残存する.

ところで,例の静岡県にはリニア開業後には静岡県内停車列車の増加を約束している向きもあり,停車列車が1.5倍などという話もある.つまり,ひかり号とこだま号をそれぞれ2本→3本に増加させるということである.

リニア開業後は「のぞみ6-ひかり3-こだま3」の計12本ということであり,20年くらい前の状況とほぼ同じである.静岡県がネゴって(+インバンド需要増加に対応して)「のぞみ6-ひかり4-こだま4」の計14本という可能性もある.現行の最大16本を基準にすると若干の余裕(単純計算で毎時2-4本)があるといえばあるが,現状でもピーク時の東海道新幹線は座席が足りない状況なので,この貴重な全線の増発余力を新大阪ー米原間という短区間のために差し出すかというと…これが,JR東海は色よい返事をしない原因じゃないかな.

こう書くと「JRは社会のことをもっと広く見るべきだ」とかなんとか言う意見が出てくるだろうと思う.だが,リニア中央新幹線は現行の東海道新幹線よりちょっとだけ値段が高い程度の運賃しか徴収せず,輸送能力は東海道新幹線の半分未満である.その事業に(低利融資があるとはいえ),9兆円を自費で出すのは経済的には会社としてのメリットはあまり無く(マイナス?),どちらかというと大儲けしすぎた東海道新幹線の利益還元事業と見たほうがいいかもしれない.リニア開業効果が何兆円という話が時折出てくるが,JR東海の儲けが何兆円も増えるという話ではない.この会社自体はできる範囲で最大限の社会貢献事業をしているんだろうと思う.

乗り換え解消の見込み薄の他にも,東海道新幹線に乗り入れてしまうと降雪時に遅れを多発してしまい折角の北陸新幹線の降雪対応設備が無駄になるとか,乗車区間によってはJR東,JR西,JR海の3社の特急料金がほぼ単純加算されて割高になる可能性があるとか,乗り換え解消しても東海道新幹線のダイヤの隙間にしか入れないので自由なダイヤが組めないとか,課題山積だな.

結局,数年前の議論を蒸し返しているだけで,何ら条件は変わらないので同じ結論に達しそう.

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その2)

話が長くなりそうなので,その2である.

最初の話は,新幹線建設のB/C計算は社会的割引率の設定値がおかしいという話を書いたが,社会的割引率の値は道路でも同じ4%に設定されている.社会インフラ全般の「クセ」であり,社会投資を妨害する目的の陰謀論を唱える人までいる.少なくとも日本の社会的割引率の設定方法は国際標準ではない.

さて,今回は新幹線特有のクセである.クセ「ツヨツヨ」である.

B/Cを計算する際の「B」は社会的便益というものであり,社会の中で発生したメリットを積み上げることになっている.

    • 鉄道利用者のメリット(時間短縮+運賃変化)
    • 鉄道事業者のメリット(収入変化+経費変化)
    • 沿線が活性化するメリット(鉄道利用者の消費やビジネス活動起因)
    • 沿線活性化の波及として,沿線ではない地域が得るメリット(沿線産業の関連産業など)
    • 工事そのもののメリット(建設事業者の活性化とその波及効果)

…とまぁ,こんなところだろうか.大規模プロジェクトの「〇〇の効果△△億円」的なものはこういう積み上げである.

道路事業の場合は,こういう効果を丹念に積み上げるのだが,鉄道については「マニュアル」なるものが存在し,ほぼ上記の最初の2項目ぐらいしか計算に算入しない.なぜ入れないかというと,マスコミが「第二の国鉄を作るな(*)」「過大推計だ」と言いまくったからである.石橋を叩いて渡る方式になってしまった.

(*)現行の整備スキームでは,整備新幹線が開業するたびにJRの経営は改善されるので,新幹線が原因で第二の国鉄を作ることはできない.もし第二の国鉄が発生するならば別の原因である.マスゴミはそれを未だに知らない.

この点に関しても,国交省がB/Cの再計算する際に沿線への効果等を考慮して計算し直すという方針を示しているが,”形の上で” 的に叩こうとしている.だが,そもそもの新幹線のB/C計算が石橋叩いて壊す的計算方式になっているだけなのである.道路等と方法を合わせるだけに過ぎない,というのが正しい見方である.

騒げばいい,というものではない.

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その1)

…という話題が,マスコミを賑わしている.
ここぞとばかりに「米原ルート」などという話がぶり返しているが,さて…

建設費が2倍になると「費用対効果」が半分になり,そもそも北陸新幹線の「敦賀-大阪間」については,費用対効果(B/C)がほぼ1ギリギリだったので,マスコミが「ほら,ソラ見たことか」とここぞとばかりに叩いているわけだ.

ところが,新幹線建設のB/C計算にはいくつかクセがある.クセ「ツヨツヨ」である.

まず,B/Cを計算する際の社会的割引率という年間換算レートみたいな%数値がある.一応,授業や教科書では,「世の中,経済成長とかするので1年後の1万円は今年の1万円と価値が違うだろ? その変化率を社会的割引率といって例えば10%なら,来年の1万1千円と今年の1万円は同じ価値ということだ」みたいな説明をする.

この割引率という数値は現ナマの現金で持っているよりも公共投資をしたほうが社会的に有利だという指標の計算に使う率なので,経済成長率とか,公定歩合とか,そういう値を設定するというのがセオリーである.事実,諸外国での計算上の社会的割引率はそうなっている.

ところがニッポン.なぜか,長年「4%」のままである.経済成長が「目標2%」で実際にはマイナス成長している国が,である.公定歩合(現在は基準割引率および基準貸付利率)は,0.1%とか0.3%とかいう水準である.

オカシクねぇ?

じゃぁ,ザックリ,割引率4%で建設費2.1兆円,工期10年,プロジェクトライフ40年,B/C=1.1 (B/C計算の詳細の現物書類を見ていないので,概ねこのあたりという想定の数値) のプロジェクトの建設費と割引率をいじってみよう.

社会的割引率 名目建設費 C (現在換算) B (現在換算) B/C 備考
4% 2.1兆円 1.77兆円 1.95兆円 1.1 現行
4% 3.9兆円 3.29兆円 1.95兆円 0.59 建設費だけ上昇
2% 3.9兆円 3.57兆円 3.21兆円 0.90 政府の成長目標
1% 3.9兆円 3.73兆円 4.21兆円 1.13 目標と実績の間
0.3% 3.9兆円 3.85兆円 5.14兆円 1.33 実績ベース

ということで,社会的割引率の「%」をいじるといくらでも数値が変化するのが「B/C」である.ことことを理解せずに記事書くのはやめたほうがいいだろう.(現行の4%がいかにプロジェクトの効果を小さく見せるための数値かということにも注目)

なお,引用した新聞記事には国交省が社会的割引率の設定を見直して再計算するという方針について,”形の上で” 的な反応をしているが,そもそもの割引率設定がおかしいというのが正しい見方である.また,「金利の条件を…」という記述も正確ではない.政府は市中銀行から借金をするわけではないので,社会的割引率は借金の利率そのものではない.

騒げばいい,というものではない.

#有名Youtuberが京都駅3案を比較とかしてるけど,合ってる部分が少なくて悲しくなった.

45秒に1本のシャトルバス

「45秒に1本のシャトルバス」に唖然…万博の人員輸送計画は「机上の空論」国費投入 “青天井” で1620億円

情報源: 「45秒に1本のシャトルバス」に唖然…万博の人員輸送計画は「机上の空論」国費投入 “青天井” で1620億円 – ライブドアニュース

・・・質問してる方も,答えてる方も,それを記事にしている方も,焦点ボケてる感が・・・

まず答えてる側.

45秒に1本で十分だという主旨の返答のようであるが,1時間に80本のバスで運べる人数はせいぜい5-6千人(70人✕80本=5600人)である.バスは電車と違って詰め込みがあまりきかないので,この数字.この5-6千人というのは,満員の地下鉄中央線4本分くらい(定員820人✕180%✕4本=5900人)にしかならないので,ドヤ顔できるほどの輸送能力ではない.

次に質問している側.

45秒に1本という頻度のバスをさばけるのかという懸念をしているようだが,1日に1000本のバス(ピーク1時間あたりだと100本以上)が通る街路というのは存在する(しかも,さほど珍しくない).45秒間隔は,ちゃんと対策すれば捌ける.論点はそこじゃない.

それから,それを記事にしている側.

都市交通の実態も知らずに45秒間隔は無理だとして机上の空論と切り捨てている…いや,そもそも実態知ってるの? 論点はそこじゃない.

論点は,このあたり.

1)その程度のバスの輸送能力で大丈夫か?
2)本当は,その2-3倍のバスが必要じゃないのか?
3)そのバスの運転手は確保できるのか?

全体の6割を地下鉄で,残りの4割はバスで運ぼうとしているようなので,バスは地下鉄の2/3程度の輸送能力が必要なはず.とすると,必要なバスの運転頻度は45秒間隔じゃなくて,10-15秒間隔程度になると思うが…

 

新幹線「肥前”岐阜羽島”駅」爆誕か?!

西九州新幹線、佐賀空港北ルート案が浮上 未着工区間を巡り与党内で

ルート図はこちら(↓)

情報源: 西九州新幹線、未着工区間 佐賀空港北側、新ルート案 政府・与党 | 毎日新聞

岐阜市に対する岐阜羽島駅と同じポジションになりそう.リニア山梨県駅にも似たロケーション.ええのか? これで? これでええのなら,長崎の人は喜ぶと思うけど.

駅はこの辺?

佐賀市街からは新幹線駅にゆくのが面倒で,広域利便性はあまり上がらない.佐賀空港駅としても中途半端.

建設費は正札で全額払ってね.

西九州新幹線フル規格佐賀県負担1400億円のカラクリ

このお話.

新幹線フル規格化“県負担1400億円程度か” 県立大学設置は「座談会」開催へ【佐賀県】

情報源: 新幹線フル規格化“県負担1400億円程度か” 県立大学設置は「座談会」開催へ【佐賀県】|佐賀のニュース|サガテレビ

 

これに関して,こういう話もある.

佐賀新聞:西九州新幹線(武雄温泉―長崎) 佐賀県負担額は約360億円 県が見通し

武雄温泉-長崎間のうち,佐賀県下での路線延長は17.2km程度であり,これの佐賀県負担が360億円(交付税措置前)なので,単純計算20.9億円/Km.建設期間が2007-2021年であるが,2015年の建設物価指数を100とすると,現在は125程度のようなので,20.9✕1.25=26.2億円/Km.

新鳥栖-武雄温泉間のJRの路線延長は50.4kmなので,これを使ってかけ合わせると1318億円になる.

つまり,「佐賀県の負担1400億円」というのは,交付税措置前の値と推定できる.

ところで,「交付税措置前」の件だが,新幹線の地元負担については,その額の9割を起債することが認められている.

福井県:財源等

起債の50-70%については交付税措置という国からの穴埋めをしてもらえるので,最大限穴埋めしてもらうとして,実質負担はこうなる.

1318億円✕90%✕(100-70%)+1318億円✕10%=488億円

ということなので,「新幹線負担1400億円」というのは,政治的メッセージの強い数値のようである.実負担は500億円程度以下のようである.

まぁ,県知事はこう発言しているけど,県職員は知ってるよね.

ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)

まもなく(…といっても,まだ半年くらいあるが)北陸新幹線の金沢ー敦賀間が開業する.

敦賀駅の西の端はこうなっている.奥に続く高架橋は敦賀駅に併設される車両基地への入出庫線.手前の高架橋は途切れており,「ここにつながる北陸新幹線(大阪方面)」である.

財源やルートで揉めてるみたいだが,どうする?

 

大阪万博の観客輸送,大丈夫かぁ,怪しいぞぉ

このお話.

関経連での説明会での質問で,「大阪メトロ中央線だけでなくほかの路線でも混雑の対策が必要ではないかといった意見もあり、担当者はシャトルバスへの誘導を検討していると説明していました。」だそうな.

情報源: 大阪・関西万博 交通混雑緩和へ期間中の時差出勤など呼びかけ|NHK 関西のニュース

いやいやいや…担当者,大丈夫かぁ

他の地下鉄路線の混雑対策の代替案として,シャトルバスへの誘導って…根源的な都市交通機関の輸送能力を理解してなさそう.

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その12 – 答え合わせと課題)

地下鉄1本で,書類上の定員で820人,1.8倍まで詰め込んで1476人.

この地下鉄1本分の客をバスで運ぶと,1476÷70=21.1本.

わずか地下鉄1本分で,バスが21便も必要なんですよ.地下鉄中央線でこの差.他の接続路線のことを考えると,毎時1本ずつ増便するだけで,シャトルバス分程度以上の能力が準備されてしまう.

バスの能力を買いかぶり過ぎ.地下鉄の輸送力を甘く見すぎ.

担当者,大丈夫か? 気は確かか?

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(追記)

中央線と接続する他路線の増便を検討するだけじゃぁ不十分で,乗換駅で乗り換え客が中央線に乗り切れない場合の「溜まり場」の検討が必要.特に御堂筋線の本町駅と環状線の弁天町駅および森ノ宮駅.特に特に本町駅はラッチ内での乗り換えになるので,中央線に乗れない客があふれると御堂筋線も麻痺しかねないぞ.