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高市政権が最初にすべきインフラ政策は「rの見直し」

積極財政の高市政権が発足したが,「鉄道政策の進展に期待する」「インフラ整備が進む」等々の期待の声が大きい.

ところが実は,1年ほど前に買って読んだ実質的な政策集と言われる本には,あんまりインフラのことは書かれていない.もう一冊買ってみたが,やはり同じで,セキュリティ関連やエネルギ政策は詳しいものの,インフラ関連は手薄に見える.

連立政権を組むうえで「大阪副首都構想」に賛意を示してはいるものの,これも日本国のBCPとしての首都機能のバックアップという観点の延長で,インフラ整備政策というよりはセキュリティ関連である.国土強靭化の観点にも触れられてはいるが,これもセキュリティの延長である.

内閣の布陣を見ると,手薄なところは詳しい人に任せる方針のようにも見えるので,特に心配はしていないが,インフラ関連で具体論に入る前に最初に手を付けるべき点は,「rの見直し」である.

「r」って何?…ということだが,社会的割引率(social discount rate)のrateの「r」である.

今のところ,日本で計画されるプロジェクトを事前評価する場合の社会的割引率は4%に設定されている.

年間換算レートみたいな数値であり,一応,授業や教科書では,「世の中,経済成長とかするので1年後の1万円は今年の1万円と価値が違うだろ? その変化率を社会的割引率といって例えば10%なら,来年の1万1千円と今年の1万円は同じ価値ということだ」みたいな説明をする.

この割引率という数値は,現金で持っているよりも公共投資をしたほうが社会的に有利だ,という指標計算に使う率なので,経済成長率とか,公定歩合(現在は基準割引率および基準貸付利率)とか,そういう値を設定するというのがセオリーである.事実,諸外国での計算上の社会的割引率はそうなっている.

ところが日本では平成初期の基準貸付利率に相当する「4%」のままである.30年以上前の社会に合わせた値のままである.今は「0.75%」であり,経済成長が「目標2%」で実際にはマイナス成長していることもあるかもしれない国が,である.

この「r」の値で,計算上の総費用は大きく変化するし,将来得られるメリット(便益)の総額も大きく変わるので,プロジェクトの事前評価結果も大きく変わる.例えば,ざっくりした計算ではこんな感じ.

交通インフラプロジェクトに限らず,すべてのインフラ整備にこの「r」が関係してくるので,具体的に何を作るのかという話を進めるのと合わせて,「rの見直し」が必須である.

# 実態に合わせるのなら,r=1%くらい.成長目標ベースとするにしてもr=2%くらいが妥当かな.

米原ルート「実現難しい感触」

この話.

米原ルート「実現難しい感触」 北陸新幹線で京都維新代表

https://www.47news.jp/13219902.html

https://www.sankei.com/article/20250929-SWQE3TCXZFP5FJZO5KDJI3LSDA/

前原誠司代表は29日、北陸新幹線敦賀(福井県)―新大阪延伸を巡り、滋賀県を通る「米原ルート」は、「実現が難しい感触だ」との見解を示した。


選挙の公約に掲げる前に,ちょっと考えればわかる話なんですけどね.公約,軽いよね.

「…第3の案をまとめ、提示する取り組みに移りたい」と話した。

第3の案ありますよぉ〜.

北陸新幹線「京都駅付近の地上ルート」まとめ&リンク集

岐阜羽島と岐阜駅を結ぶLRT構想

 

名鉄「あのぉ〜,僕のこと忘れてませんかぁ.
一応,頑張ったら直通運転できるんですけど.
つーか,毎日ちょびっとやってるんですけど.27分デス.

 



おまけ:2005年春までの様子.(こっちは学生が確実に乗ってくれる可能性アリ.)

MMT(現代貨幣理論)の要修正ポイント

経済学者ではないので,この話題に深く首突っ込むのはやめておくが,理系というか工学系の人ならすぐに気づく「要修正ポイント」があるので,それに関してのメモである.

もっとも,以下の「要修正ポイント」は,MMT(現代貨幣理論)に限った話ではなく,世の中の経済政策全般に共通する話でもある.

さて,MMT(現代貨幣理論)については,wikipediaにはこう書かれているし,詳しく知りたい人はGoogleで検索するなりAIに問ってみるなりしてください.自国通貨建ての国債を政府が発行できるのなら,国債発行を通じて市中に資金供給すればよく,必ずしも国債の償還は不要だという論であり,市中に資金供給する具体的方法として公共事業等をすればよいという話である.

そんで,これに対する反論として,資金供給過多になってインフレを起こすとか言われてたりするわけだ.そんで,そんで,その反論の反論としてインフレ率を監視して資金供給量をコントロールすればいいとか,増税してコントロールすればいいとかいう議論になってたりするようだ.

まぁ,どの話も一応,わかる.

だが,残念ながらこの辺に議論の限界があったりするのかなぁとも思ってしまう.

上の話を簡単に書くと,「理想とする状態に比べて,実際の状況が大きすぎる場合,小さくするような方向のコントロールをする」という話(逆に,実際が小さすぎる場合は,大きくなるようにコントロール)であるが,これは制御工学の範疇である.ネガフィードバック(NFB).

工学系の人ならすぐに気づくと思うが,NFBをかけると理想状態に制御できるんだけれども,要注意点としては「時間的な遅れがあるとうまく制御できない」だ.電子回路の発振の話みたいなもんだね.

NFBとか理由のわからん話をされてもなぁ,という人向けには,バネに吊るした重りの挙動の説明がいいかも.

バネに重りを吊るして,ゆっくりと手を離す.バネが伸びて一定の長さのところで重りは止まる.経済学的に言うと均衡点だ.理想状態.

ところが,何らかの理由で「理想状態」からズレるとどうなるか.下方向にズレるとバネの力が強くなって「理想状態」に戻そうとする.ところが位置的な「理想状態」に達した段階ではバネの力は釣り合い状態に戻るものの,重りには上方向の勢いがあって「理想状態」では止まらずに今度は上方向にズレる.そうするとバネの力が弱まり…以下,延々とこの繰り返し.いわゆる単振動である.

経済学系の論文でも時刻tで微分された速度相当の変数や加速度相当の変数といったものが登場するものもないことはないが,実践的政策ではあまり気にされている気配がない.(むしろ逆に,ちょっと遅れてコントロールするほうがbetter的な話があったりする.)

まとめると,「要修正ポイント」としては,「逆方向のコントロールをする」だけじゃなく,「制震ダンパーみたいなシステムも組み込む必要アリ」だな.

新幹線整備の地方定額負担案

現行の新幹線建設スキームでは,建設される路線の沿線で地方負担が発生し,(実態はかなり色々ややこしい財源構成になっているが,一応は)国:地方=2:1になっている.

ところが,山岳地帯ばかりで駅の設置もできないのに高額な請求書が来ることを警戒する動きが無きにしもあらず.

例えば,北陸新幹線の高崎-敦賀間は延長470.6kmに対し,新設された駅数が18駅(高崎駅除く)なので,平均駅間距離は26.1kmである.つまり26km分の建設費負担をすると1駅付いてくるということが期待されるわけだ.

ところが,今もめている北陸新幹線の敦賀ー新大阪間については,(小浜京都ルートの南北案だと)駅間距離は次のような感じ.

敦賀-小浜:35km,小浜-京都:63km
京都-松井山手:20km,松井山手-新大阪:27km

1区間以外は,概ね平均的な駅間だが,小浜-京都間が平均26kmの倍以上ある.しかも,(どういう割り振りするのか不明だが)都市部の地下線工事で異様に建設単価が高い.そりゃぁ「請求書」に警戒するのも頷ける.

整備新幹線で駅間距離が長い区間は実は他にもある.それは,北海道新幹線の奥津軽いまべつ−木古内間の74.8kmで,青函トンネルを含む区間だ.

じゃぁ,青函トンネルの建設費を青森県と北海道が折半したかというと…してない.建設時期が異なるし,整備新幹線計画が正式に動き出す前に建設開始されたので,地元負担の考え方がないので,全額国持ちということになる.もしも現行の「2:1」のスキームができた後でのトンネル建設だったなら,おそらく地元負担で揉めたであろう区間でもある.

ということで,青函トンネルを参考に,地形が険しくて駅が設置できないような区間については,国の負担を原則とするという方法は考えられる.

もっと簡単なルールにするなら,地元負担は「設置される駅1つにつき線路26km分」に設定するとういう方法もある.

(地下線など)難工事で工費が高くなる区間の沿線と,田畑に単純に線路を敷くだけの区間では同じkmの建設でも負担が異なる.だったら,工事単価にかかわらず,地元負担は駅1つと線路26km分の定額払いに設定するという方法もある.

稲田氏「ふざけているのか」

「ふざけているのか」予算増えず苛立ち

北陸新幹線の予算が増えていない現状に対し、会長の稲田朋美衆院議員(福井1区)が「ふざけているのか」と国土交通省側に不満をぶちまけた。

えっ,今頃気づいたんですか.

どうしてできない新幹線(「しない」シリーズ編)

整備新幹線地方負担分の出来高払い案

例えば佐賀県では整備新幹線なんぞ要らんと言っている.だが,開業すれば相応の利用増があり,利便も向上するはずで,メリットがあるなら受益者負担があってもいい.ゴネまくって払わずに着工してFree Ride出現はさすがにまずい.

ところが,おそらく,佐賀はそんな「メリットがあるはず」という不確実な話には応じたくないだろうと思う.

そこで,リスクヘッジ案.出来高払い案である.

九州新幹線(鹿児島ルート)沿線の熊本では,在来線時代比137%(博多‐熊本間)のようなので,(ちょっと丸めて) +40%なら満額負担.+20%なら半額負担,+10%なら1/4負担,+0%以下なら負担なし,(逆に,+60%なら1.5倍負担)でどうだろう.

もちろん,開業前には実績はわからないので,満額30年間の分割払いを基本(+40%の場合)として年々の負担額を決め,これを基準に毎年の支払額を増減させるってのはどうだろうか.

Pey per Ride方式.

「おっ,新幹線運賃に上乗せすればいいのか」と思ったあなた,それは違います.
地元負担の話です.

# 合意したものを守れと言っても,技術的に困難なものはできないよねぇ.

北陸新幹線延伸なぜ高額か(地下線550億円/km over編)

北陸新幹線の敦賀-大阪間の建設費が高めになっている原因を考えてみようということで,前回は敦賀-新大阪間を大深度地下じゃなくて「普通に建設したらいくら掛かるか」を計算してみた.

今回は京都と大阪の地下線区間をどの程度に見積もっているかを探る話である.

方法としては,都市部の地下線区間とそれ以外について,まずは「普通につくったら」いくら掛かるかを計算してみる.

まずは,地下線以外の区間部分.

費目 単価 単位 単位数量 数量 小計(億円) 備考
用地費 5.24 億円/km 軌道延長 191.9 1,005.5
路盤費(複線) 55.10 億円/km 区間長 0 0.0
橋梁費(複線) 41.37 億円/km 区間長 21.44 886.9
隧道費(複線) 32.22 億円/km 区間長 74.5 2,400.5
軌道費 1.86 億円/km 軌道延長 191.9 356.1
停車場費 122.8 億円/箇所 施設数 1 122.8
車庫・検査修繕施設費 782.4 億円/箇所 施設数 1 782.4 久御山基地
諸建物費 0.11 億円/km 工事延長 95.29 10.4
電灯・電力線費 0.95 億円/km 工事延長 95.29 90.6
通信線路費 1.03 億円/km 工事延長 95.29 98.1
運転保安設備費 1.57 億円/km 工事延長 95.29 149.6
防護施設費 0.39 億円/km 工事延長 95.29 37.4
電車線路費 0.40 億円/km 軌道延長 191.9 77.3
変電所費 2.24 億円/km 工事延長 95.29 213.5
工事関係 15.1 % 対上記合計   940.9

地下線以外の延長は95.3kmで単純合計7,172億円(2010年価格)になる.
建設費を「建設工事デフレータ」で調整してみると…

7,172億円×(122.5/93.4)=9,407億円 (2023年)

さらに,金沢-敦賀間が+28.8%の上振れをしていたことを織り込むと…

9,407億円×1.288=1兆2,116億円

ちなみに,キロあたり単価はこうなる.

1兆2,116億円÷95.3km=127.1億円/km (2023年)

ところで,前回の「敦賀-新大阪間を普通につくってみる」見積もりは1兆7,487億円だったので,京都や大阪の地下線区間部分を「普通につくってみる」場合の見積もりは,延長48.7kmに対して差し引き5,371億円ということになる.

1兆7,487億円-1兆2,116億円=5,371億円 (地下線区間を普通に計算した場合)

さて,公式見積もりの3.9兆円には地下線以外の区間も含まれているので,3.9兆円から地下線以外の区間の費用(上記の1兆2,116億円)を差っ引くと,地下線部分の見積もりということになる.

3兆9,000億円-1兆2,116億円=2兆6,885億円 (地下線部分の見積もり)

要するに,地下線部分は通常の見積もりに比べて,以下の倍率で計算していることになる.

2兆6,885億円÷5,371億円=5.01倍 (地下線部分の通常区間比)

5倍!
キロあたり単価はこう見積もっているようである.

2兆6,885億円÷48.7km=551.9億円/km (地下線部分のみ)

うーん,確かに地下線工事は高額かもしれないが,市街地ばかりを通る通勤通学用の地下鉄の工事費がキロあたり250-400億円なのに,駅が少なくて(*)郊外部分も多い新幹線がいくらなんでもキロあたり550億円overってちょっと見積もり高すぎでは?

(*)地下鉄工事は駅が高い.

北陸新幹線延伸なぜ高額か(普通につくったら編)

北陸新幹線の敦賀-大阪間の建設費が高めになっている原因を考えてみようということで,前回は既に開業している金沢-敦賀間の費用の上振れを計算してみた.

今回は敦賀-新大阪間を大深度地下じゃなくて「普通に建設したらいくら掛かるか」を計算してみる話である.京都市内のルートとしては南北案で計算してみる.

京都や大阪の大深度地下を普通の山岳トンネルだと仮定してつくったらという話になる.そうすると,例の長野-金沢間の明細をもとに計算すると概ねこんな感じかな.

費目 単価 単位 単位数量 数量 小計(億円) 備考
用地費 5.24 億円/km 軌道延長 240.2 1,258.7
路盤費(複線) 55.10 億円/km 区間長 0 0.0
橋梁費(複線) 41.37 億円/km 区間長 21.44 886.9
隧道費(複線) 32.22 億円/km 区間長 124.51 4,011.9
軌道費 1.86 億円/km 軌道延長 290.6 539.3
停車場費 122.8 億円/箇所 施設数 4 491.2 敦賀駅は除外
車庫・検査修繕施設費 782.4 億円/箇所 施設数 1 782.4 久御山基地
諸建物費 0.11 億円/km 工事延長 144 15.7
電灯・電力線費 0.95 億円/km 工事延長 144 136.9
通信線路費 1.03 億円/km 工事延長 144 148.2
運転保安設備費 1.57 億円/km 工事延長 144 226.0
防護施設費 0.39 億円/km 工事延長 144 56.5
電車線路費 0.40 億円/km 軌道延長 290.6 117.1
変電所費 2.24 億円/km 工事延長 144 322.6
工事関係 15.1 % 対上記合計   1,358.0

トンネル場合は用地買収がいらないこともあるが,状況次第なので,前回と同じく全区間計上してある.ただし,松井山手以西は明らかに大深度なので用地買収対象外にしてある.

上記は2010年の物価を前提に計算したものだが,単純合計1兆351.5億円.延長が144.0kmなので,キロあたり単価は…

1兆351.5億円÷144km=71.89億円/km (2010年)

高架橋が少ないので,ちょっと安くなった.
建設費を「建設工事デフレータ」で調整してみると…

1兆351.5億円×(122.5/93.4)=1兆3,576.7億円 (2023年)

そうすると,キロあたり単価は…

1兆3,576.7億円÷144km=94.3億円/km (2023年)

ところで,金沢-敦賀間は建設費が+28.8%の上振れをしていたので,これも盛り込んでみる.

1兆3,576.7億円×1.288=1兆7,486.8億円

144kmの建設だと,まぁこんなもんであろう.キロあたり単価も…

1兆7,486.8億円÷144km=121.4億円/km (2023年)

となる.

ところが実際というか,公式にはこの区間の見積もりがオドロキの3.9兆円である.つまり京都や大阪の地下線区間が大幅に高額だという見積もりをしているのだ.

では,どの程度高額の見積もりをしているのだろうか.続きは次回以降へ.

北陸新幹線延伸なぜ高額か(金沢-敦賀間の上振れ分析編)

北陸新幹線の敦賀-大阪間の建設費が4兆円近いとか,もしかしたら5兆円だとかいう話が物議を醸している.信頼性の超高い有識者によると,そんなに費用が掛かるわけ無いし,工期も30年近くかかるわけ無いらしい.

(5兆円というのは,情報の出し方としてはミスリードである.例えば現在の年間生活費が100万円の人がいたとして,年率2%の物価上昇率だとすると,30年後には年間180万円だ.さぁ大変,生活費180万円だぁ…って騒ぐのは意味がないのと同じような話.)

さて,その建設費が高めになっている原因は何だろうかということを考えてみようということだが,まずは既に開業している金沢-敦賀間の費用がどれだけ上振れしたかということを計算してみることから始めてみる.

新幹線の工事費の内訳はなかなか詳細が明らかにならないが,随分前に当時の新潟県知事(今の国会議員の米山さん)が国に「明細書もないのに請求書だけ回してくるな!ゴラァ」的なことで噛みついたことが原因で長野-金沢間については明細が明らかになっている.

それを分析すると,概ね金沢-敦賀間はこんな感じかな(その明細書そのものではない).

費目 単価 単位 単位数量 数量 小計(億円) 備考
用地費 5.24 億円/km 軌道延長 253.0 1,325.8
路盤費(複線) 55.10 億円/km 区間長 2.3 126.7
橋梁費(複線) 41.37 億円/km 区間長 74.6 3,086.0
隧道費(複線) 32.22 億円/km 区間長 37.7 1,214.7
軌道費 1.86 億円/km 軌道延長 253.0 469.5
停車場費 122.8 億円/箇所 施設数 6 736.8 金沢駅部は除外
車庫・検査修繕施設費 782.4 億円/箇所 施設数 1 782.4
諸建物費 0.11 億円/km 工事延長 125.2 13.6
電灯・電力線費 0.95 億円/km 工事延長 125.2 119.1
通信線路費 1.03 億円/km 工事延長 125.2 128.9
運転保安設備費 1.57 億円/km 工事延長 125.2 196.5
防護施設費 0.39 億円/km 工事延長 125.2 49.1
電車線路費 0.40 億円/km 軌道延長 253.0 102.0
変電所費 2.24 億円/km 工事延長 125.2 280.5
工事関係 15.1 % 対上記合計   1,303.4

トンネルの場合は用地買収がいらないこともあるが,状況次第でそこまでの詳細は明らかになっていないので全区間計上してある.

上記は2010年の物価を前提に計算したものだが,単純合計9925.1億円.延長が125.2kmなので,キロあたり単価は…

9925.1億円÷125.2km=79.4億円/km (2010年)

ということで,この区間もそのまま計算するとキロあたり単価は長野-金沢間とほぼ同じである(というか,長野-金沢間の単価を使っているので,ほぼ同じになるのは当たり前か).

昨今は物価が上がってきているので,建設費も上がっており「建設工事デフレータ」という物価指数のような値で調整してみる.開業した2015年の値を100とすると,2010年は93.4,2023年は122.5なので…

9935.1億円×(122.5/93.4)=1兆3,031億円 (2023年)

そうすると,キロあたり単価は…

1兆3,031億円÷125.2km=104.1億円/km (2023年)

そういえば,一時期のJRTTの新幹線建設単価は100億円/kmで計算していたと思うので,当たらずとも遠からずの予想単価だったわけだ.

ところで,実際の金沢-敦賀間の建設費は1兆6,779億円だったので,キロあたり単価は…

1兆6,779億円÷125.2km=134.0億円/km

ということになり,建設費の上振れについては…

1兆6,779億円÷1兆3,031億円=1.288倍

つまり,+28.8%だったわけだ.原因はJRTTから説明されている.Youtubeなどでは,山にトンネルを掘らずに高架橋を多用したからだ的な指摘をする人もいるが,トンネルばっかりだと駅を設置できないので,ルートのライン取りについては致し方なしなのかもしれない.

さて,敦賀-大阪間の話に移るが,長くなるので,続きは次回以降へ.