北陸新幹線の敦賀-大阪間の建設費が高めになっている原因を考えてみようということで,前回は既に開業している金沢-敦賀間の費用の上振れを計算してみた.
今回は敦賀-新大阪間を大深度地下じゃなくて「普通に建設したらいくら掛かるか」を計算してみる話である.京都市内のルートとしては南北案で計算してみる.
京都や大阪の大深度地下を普通の山岳トンネルだと仮定してつくったらという話になる.そうすると,例の長野-金沢間の明細をもとに計算すると概ねこんな感じかな.
費目 | 単価 | 単位 | 単位数量 | 数量 | 小計(億円) | 備考 |
用地費 | 5.24 | 億円/km | 軌道延長 | 240.2 | 1,258.7 | |
路盤費(複線) | 55.10 | 億円/km | 区間長 | 0 | 0.0 | |
橋梁費(複線) | 41.37 | 億円/km | 区間長 | 21.44 | 886.9 | |
隧道費(複線) | 32.22 | 億円/km | 区間長 | 124.51 | 4,011.9 | |
軌道費 | 1.86 | 億円/km | 軌道延長 | 290.6 | 539.3 | |
停車場費 | 122.8 | 億円/箇所 | 施設数 | 4 | 491.2 | 敦賀駅は除外 |
車庫・検査修繕施設費 | 782.4 | 億円/箇所 | 施設数 | 1 | 782.4 | 久御山基地 |
諸建物費 | 0.11 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 15.7 | |
電灯・電力線費 | 0.95 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 136.9 | |
通信線路費 | 1.03 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 148.2 | |
運転保安設備費 | 1.57 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 226.0 | |
防護施設費 | 0.39 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 56.5 | |
電車線路費 | 0.40 | 億円/km | 軌道延長 | 290.6 | 117.1 | |
変電所費 | 2.24 | 億円/km | 工事延長 | 144 | 322.6 | |
工事関係 | 15.1 | % | 対上記合計 | 1,358.0 |
トンネル場合は用地買収がいらないこともあるが,状況次第なので,前回と同じく全区間計上してある.ただし,松井山手以西は明らかに大深度なので用地買収対象外にしてある.
上記は2010年の物価を前提に計算したものだが,単純合計1兆351.5億円.延長が144.0kmなので,キロあたり単価は…
1兆351.5億円÷144km=71.89億円/km (2010年)
高架橋が少ないので,ちょっと安くなった.
建設費を「建設工事デフレータ」で調整してみると…
1兆351.5億円×(122.5/93.4)=1兆3,576.7億円 (2023年)
そうすると,キロあたり単価は…
1兆3,576.7億円÷144km=94.3億円/km (2023年)
ところで,金沢-敦賀間は建設費が+28.8%の上振れをしていたので,これも盛り込んでみる.
1兆3,576.7億円×1.288=1兆7,486.8億円
144kmの建設だと,まぁこんなもんであろう.キロあたり単価も…
1兆7,486.8億円÷144km=121.4億円/km (2023年)
となる.
ところが実際というか,公式にはこの区間の見積もりがオドロキの3.9兆円である.つまり京都や大阪の地下線区間が大幅に高額だという見積もりをしているのだ.
では,どの程度高額の見積もりをしているのだろうか.続きは次回以降へ.