投稿者「hatoko」のアーカイブ

東北に行ってみた(女川編)

石巻から北東方向に進むと,女川がある.原子力発電所がある地区だが,こちらは安全に停止している模様.

IMG_4478石巻から女川に向かう途中のJR石巻線が復旧工事中であった.写真は浦宿駅付近.復旧工事と言っても,路盤はともかく軌道部分についてはほとんど新設工事である.



IMG_4487女川に入る前,半島の付け根の谷を通る部分では,まだ海は見えないのに沿道の集落が破壊されて空き地になってしまっている.海まで約1km.


IMG_4514女川湾に面する山の中腹にある病院からみた湾岸の市街地の様子.中央に見えているのは鉄筋コンクリート造りの建物で,そのまま横転している.緑色に見えているのは,3-4階建ての建物の屋上の床である.


 
IMG_4621女川漁港から見た病院.山の中腹にあるにもかかわらず,この病院の1階部分までが津波で水没し,水に浮いたベッドを医師らが泳いで引っぱってつなぎ止めたらしい.想像を絶する波高である.

(2012年12月現在)

浜名湖を渡る鉄道(鉄橋観察編)

せっかく現地まで行ったので,浜名湖の鉄橋を観察してみた.舞阪-弁天島-新居町間には南から順に国道1号,在来線,新幹線,県道の橋が架かっている.ここがやられると,非常にまずい場所.戦時中には艦砲射撃をおそれて二俣線(現在の天竜浜名湖鉄道)を内陸側につくったという箇所.
IMG_1395
県道から新幹線を見ると,こんな感じだが,土木系なので,橋脚も気になるところ.
IMG_1257
歩道が橋の下をくぐっている部分にゆくと,こんな感じ.地盤は基本的には砂のようであり,川というよりは砂浜に近い.新幹線の橋梁の銘板を見ると,1962年に作られたもののようであった.足の長さは4.4メートル.その下はケーソン基礎(要するに,筒ですね)で14メートルの深さまで埋められているようである.「細砂」というのは地盤の種類のことか? 支持層まで達しているんだろうか? 荷重にNとPが書かれているので,旅客列車とともに貨物列車の荷重も考慮した設計になっているということであろうか.
IMG_1338
一部の橋脚には目盛りがついており,けた座面から水面までの距離がわかるようになっている.(ここに限らず,ほとんどの橋梁はそうなっている.)1枚目は新幹線,2枚目は在来線.この目盛りを参考にすると,いろいろとわかってくることもある.
IMG_1363IMG_1544
弁天島にある津波時の避難所.この程度の施設で大丈夫なんだろうか.
IMG_1555(2013年8月現在)

浜名湖を渡る鉄道(村櫛伝説編)

浜松市の博物館に行ってみた.そこにある展示物には,かつての浜名湖の地形を示す地図がいくつかあった.下の2枚の写真はそれであるが,白い部分が昔の陸地,青い部分が昔の浜名湖,黒実線で縁取りされているのが現在の湖岸である.かつては浜名湖と太平洋は陸地で隔てられており,浜名湖南端からいったん西方向に伸び,太平洋(遠州灘)に注ぐ河川があったようである.東海道はこの陸地,つまり砂州上にあり,橋本という地区で河川を越えていたようである.
浜名湖の湖底にはいくつもの遺跡が沈んでいるようであり,地盤が沈下していることがわかる.現在は浜名湖と太平洋がつながっており,浜名湖の水面はさほど高くないが,かつては基本的に隔てられていたことを考えると,水面はおそらく現在よりも高かったと思われる.そうすると,地盤の沈下は水面の低下以上に進行したということであろう.
現在の新幹線等は,1枚目の図の浜名湖南部を通過しており,湖面の一部を埋め立てた飛び地状の陸地を橋で渡ってゆく形態になっている.
IMG_1717IMG_1719

今切れ口(1枚目の地図の「今切」)付近から北東方向を見た様子.古い地図では湖面は見えなかったはずだが,明らかに水没している.宮城県石巻市の長面浦と似たような状況であろうか.この水没した地域にあった集落が2枚目の地図の「村櫛」に移転したという伝説があるらしい.室町時代の話.

IMG_1497
 

浜名湖を渡る鉄道(今切れ口編)

新幹線や在来線,国道1号は,静岡県下の浜名湖付近で橋を渡っている.多くの人は川を渡っていると思っているが,この部分は川ではなくて,浜名湖の一部である.下の写真は新幹線が浜名湖にかけられた橋を通過しているところであるが,このサイトのバナーの元写真でもある.
IMG_1395
新幹線が渡っている箇所の北側は「浜名湖」.では南側は?こっちも下の写真のように別の湖に見えるが,浜名湖の一部である.つまり列車は浜名湖の上を鉄橋で渡っているということである.橋の途中の陸地は埋め立て地である.
下の写真の赤い鳥居は観光用.ずっと奥には浜名バイパスの大きな橋が見えている.この南側の湖であるが,かつては陸地であり,今から約500年前の大地震(明応地震[1498年])で沈下してできた場所のようである.
IMG_1285
上の写真左側から浜名大橋付近まで行ってみる.海岸が近づくと,まだ海が見えないにもかかわらず,防潮堤があらわれる.高潮対策であろう.陸地の海抜は4メートルほど.防潮堤は1.5メートルほどなので,せいぜい6メートル程度の波高を想定した設備のようである.
IMG_1479
そして,浜名大橋.橋の下は川ではなくて,太平洋と浜名湖をつなぐ水路である.干満にあわせて潮が激しく出入りする.
IMG_1534
今度はぐるっとまわって,浜名大橋の西側に来てみる.
IMG_1589
こちらにも防潮堤があり,その高さは…
IMG_1587
やはり6メートル程度の波高を想定している.下の写真は先ほどの「水路」の反対側からの写真である.太平洋と浜名湖を隔てていた陸地が地盤沈下や津波などで水没して繋がったことから,「今切れ口」というらしい.今まさに切れてつながった入口,という意味か.
IMG_1606
橋の下はこんな感じなので,このバイパス道路が防潮堤として機能する…ということはあまり期待しない方が良さそうである.
IMG_1636
今切れ口付近から,新幹線などが浜名湖を渡っている箇所を見ると,こんな感じ.特に遮るものは何も無い.外洋から大きな津波が来ると…
IMG_1623
(2013年8月現在)

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-施設老朽化&まとめ編)

  • リニア新幹線整備に関する昔の主張の最後は,「東海道新幹線の施設が老朽化しているので,新線が必要」というものである.

この点に関しては,現行計画の審議の段階でも論拠として示されている.東海道新幹線が開業して(当時)40年(そして今年は50年),施設が老朽化しているので改修が必要であり,そのためにも新線が必要というものである.
しかし,これについても改修のための資金積立の制度も創設され,現行線の改修が進められつつある.大規模な改修も東海道新幹線の運行を止めること無く進める方針が出されており,じゃぁ,どうして新線が必要なの?という素朴な疑問は解消されていない.


ということで,10年以上前には様々な必要論が展開されていたものの,実際に残った論としては以下の項目だけではなかろうかと思われる.

  1. 巨大かつ効率的な経済圏の形成
  2. 冗長性確保(南海トラフ巨大地震)

付け加えるならば,いったん引っ込めた理由ではあるものの,その後の情勢変化により復活させた方が良いもの,あるいは修正した上で主張した方が良いものとしては以下の3つ.

  1. 首都機能移転時における新首都機能のサポート
  2. 全国の皆様の移動時間短縮のためには東西大都市間の輸送能力の大幅な向上が必要
  3. 東京-大阪間に限らず,全国的鉄道ネットワーク全体の強化による都市間移動のCO2削減(モード転換の促進)

このような整備の必要論の再定義をした上で,路線整備の是非を議論した方が良かったはずだが,なんだかまるでローカル新幹線のような議論をして整備計画をつくってしまった感がある(まぁ,基本計画自体がローカル新幹線なんだけど).

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-施設老朽化&まとめ編)

  • リニア新幹線整備に関する昔の主張の最後は,「東海道新幹線の施設が老朽化しているので,新線が必要」というものである.

この点に関しては,現行計画の審議の段階でも論拠として示されている.東海道新幹線が開業して(当時)40年(そして今年は50年),施設が老朽化しているので改修が必要であり,そのためにも新線が必要というものである.
しかし,これについても改修のための資金積立の制度も創設され,現行線の改修が進められつつある.大規模な改修も東海道新幹線の運行を止めること無く進める方針が出されており,じゃぁ,どうして新線が必要なの?という素朴な疑問は解消されていない.


ということで,10年以上前には様々な必要論が展開されていたものの,実際に残った論としては以下の項目だけではなかろうかと思われる.

  1. 巨大かつ効率的な経済圏の形成
  2. 冗長性確保(南海トラフ巨大地震)

付け加えるならば,いったん引っ込めた理由ではあるものの,その後の情勢変化により復活させた方が良いもの,あるいは修正した上で主張した方が良いものとしては以下の3つ.

  1. 首都機能移転時における新首都機能のサポート
  2. 全国の皆様の移動時間短縮のためには東西大都市間の輸送能力の大幅な向上が必要
  3. 東京-大阪間に限らず,全国的鉄道ネットワーク全体の強化による都市間移動のCO2削減(モード転換の促進)

このような整備の必要論の再定義をした上で,路線整備の是非を議論した方が良かったはずだが,なんだかまるでローカル新幹線のような議論をして整備計画をつくってしまった感がある(まぁ,基本計画自体がローカル新幹線なんだけど).

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-環境編)

  • リニア新幹線整備の昔の主張の5つ目は,「エネルギー環境問題への対応」である.つまり,乗用車や航空機に頼るよりは鉄道の方が良い,という主張であった.

しかし,リニアは乗用車や航空機よりはマシだが,鉄輪式の新幹線よりもエネルギー効率が劣るのが実情であり,リニア新幹線計画が実際に建設されようかという昨今でも,環境保護団体等から突っ込みを入れられている.
ということで,あまり積極的な理由では無かったが,これについても,「確かにリニア単体ではエネルギー効率はさほど良くないが,鉄道ネットワーク全体を強化するものであり,自家用車や航空から鉄道ネットワークへのシフトが起こりやすくなることで,全体としてはエコ」などと主張しても良かった.だが,そういった視点で調査が行われた形跡も無ければ主張が行われたという話も聞いたことが無い.多分に自線沿線にしか目が行っていないことの表れであろうか.「幹線の中の幹線」ならば,もっと広い視野があっても良いのだが,実際はそうでも無いようである.
リニアに関するエネルギー効率に関する批判についても,東京-大阪間のエネルギー効率に関するものばかりで,リニア導入による対航空機の競争力強化によって,モードがシフトすることで都市間交通全体としてのエネルギー効率向上,という点についてはほとんど考えが及んでいない.

東北に行ってみた(水没した地区編)

石巻市内だが中心街の北東,北上川河口付近に行った.

IMG_4817多数の小学生が亡くなった大川小学校は北上川の堤防付近にあり,小学校からは北上川の様子は見えない.河口からも距離があり,海も見えない.まさか津波が堤防から溢れてくるとは想像できなかったのだろう.学校の裏山に登ったこどもだけが助かったようだが,筆者がこどもの頃から祖母に良く言われた言葉を思い出す.「大きな地震が起こったら,まっすぐ山に登れ.捜し物などしててはいけない.廊下や階段に物は置くな.足に引っかかって転べば,逃げ遅れて死ぬ.山に登るときは,山道を登っていては間に合わない.斜面の急な方向に,まっすぐ登れ.」



IMG_4821小学校の周囲には何も無かった.小学校は原則として小学生が徒歩で通う学校である.ということは,かつてはこの学校の周囲には学校1つ分の児童が通うに相応の集落があった.今は平らな荒れ地である.



IMG_4851さらに河口方向に向かうと湿地帯のような風景が広がる.野鳥が羽を休め,どう見ても湿地帯である.

IMG_4848ここはかつては陸であり農地が広がっていたが,大地震に伴う地形の変化で,土地が水面下に没してしまった.今は地図上でも海扱いになってしまっている.(→その後,「干拓」は進んでいる模様)

元々は海とは砂州のような地形で隔てられ,その内側の堆積平野のようなところが農地や集落になっていたようだ.津波で砂州のような部分が破壊されるとともに地盤が沈下して地形が変わり,海の一部のようになってしまっている.巨大地震ではこのような通常では考えられないようなことも発生することがあるという例である.

(2012年12月現在)

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-南海トラフ編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の4つ目は,「南海トラフの大地震-東海地震-により東海道新幹線が途絶するので,バイパス路線が必要」というものであった.

これには一定の説得力があり,整備計画審議の段階でも論拠として示されているが,やはりいくつかの指摘ポイントが存在する.

  1. 大地震で新幹線が途絶したケースは山陽新幹線,上越新幹線,東北新幹線でそれぞれ各1回ずつあったが,いずれも3ヶ月以内で復旧している.もしもこの程度であるのならば,わざわざ新線建設をするほどでもない
  2. 数ヶ月程度であるのなら,やや所要時間はかかるが北陸新幹線を全通させておけば,少々我慢している間に復旧できるレベルなのかもしれない
  3. 名古屋以西は南海トラフ地震が発生しても,壊滅的被害になることは無さそうなので,例え北陸新幹線が一部区間を共通使用して重複していても,東西間交通は確保できる
  4. そもそも,名古屋駅(および近傍区間)は大丈夫か?
  5. 名古屋から西側区間の整備論拠も”南海トラフ大地震”なの?

リニア新幹線については無いよりはあった方が冗長性確保の観点から望ましいが,単に一時的な輸送確保なら別策で十分,ということである.それとも,やはり壊滅的な途絶が発生するのか?

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-輸送力限界編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の3つ目は,「東海道新幹線の輸送力が限界に達するので,バイパス路線が必要」というものであった.

当時の東海道新幹線は,信号システムと東京駅での列車折返し能力の問題から,最小運転間隔が約4分であり,計算上の片道あたり運転本数が,毎時15本であった.東京駅と新横浜駅の間には新幹線の車庫への分岐線があり,毎時15本の能力のうち,毎時4本程度は東京駅と車庫との間の回送列車のために空けておかなくてはならなかった.
これでは輸送需要に応えきれなくなるので,バイパス路線としてリニア新幹線が必要,という主張であった.しかし実際には,以下のような状況変化があり,東海道新幹線の輸送能力は足りてしまっているのが現実である.

  1. 信号システムが更新され,運転できる本数が増えた
  2. 東京-新横浜間の車庫分岐線よりも新横浜寄りに品川駅が開業し,回送列車の影響を回避可能になった(→さらに実際には,回送列車の影響をわざわざ回避しなければならない事態は,ほとんど発生していない)
  3. 日本の人口が減少局面に入り,輸送需要そのものが頭打ちになりつつある
  4. 北陸新幹線を整備すれば,首都圏から北陸方面や,北関東から関西方面への需要を分散させることができる

ということで,2014年時点ではこの主張は引っ込められてしまっているようである.しかし,よくよく考えてみると,「男の中の男」「女の中の女」ならぬ「幹線の中の幹線」であるリニア新幹線は,ひとたび開業すればその切符はプラチナチケットと化すのではないかと思うほど全国的効果絶大であり,「東海道新幹線の輸送力が限界なので必要」ではなくて「全国の皆様の移動時間短縮のためには東西間の輸送能力の大幅な向上が必要」という主張に修正されてもいいと思われる.が,しかし,ローカル新幹線として基本計画が立てられているので,考え方もそこから脱皮できていないようである.