鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

グリーン車と一等車

ヨーロッパに調査に出かけると,陸路移動はほとんど鉄道だ.ほとんど毎日乗るので,レールパスを使うが,長期間有効のパスは1等車しか設定がなかったりするので,移動はいつも1等車だ.(日本国内では余程のことが無い限りグリーン車には乗らないが)

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ドイツの列車はけっこう田舎のインターシティーでも必ず食堂車が付いていたりする.もちろんICEは食堂車付き.このへんが日本とサービス提供の根本的な思想の違いを感じる.日本は客を運びさえすりゃぁいいんだろ,みたいな感じが年々強くなって行くのが残念なところ.

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そして,標題のお話し.下の写真はフライブルク駅3番線を出発する列車の編成表であり,黄色が一等車,赤が食堂車,緑が二等車である.

DSCN0907概ね3種類の編成が使われていて,客車12両+機関車2両の初代ICE編成,8両×2のICE3編成,それから制御室客車付の8両+機関車1量のIC編成.あとは写真にはないが,夜行列車.

まず,さっき書いたように,必ず赤い食堂車が入っている.1等車に陣取れば席でオーダーすれば軽食は持ってきてくれる.

それから,気付くだろうか,1等車の比率が日本に比べてちょっと多い.列車によって微妙に違うが,初代ICE編成だと比率は1等車が4/12=33%,2等車が7/12=58%,食堂車が1/12=8%.ICE3編成でも,1等車が4/16=25%,2等車が11/16=69%,食堂車が1/16=6%.IC編成だと,1等車が1.5/8=19%,2等車が6/8=75%,食堂車が0.5/8=6%.

日本の新幹線だと,東海道新幹線16両は,グリーン車3/16=19%,普通車が13/16=81%,食堂車なし.東北新幹線だと,グランクラスとグリーン車で2/10=20%,普通車が8/10=80%,食堂車なし.

日本のグリーン車の方が希少性が高い感じ.実際にICEやICの1等車に乗ると,日本のグリーン車ほどの高級感はない.もちろん,2等車の座席が布張りに対して1等車は革張りだったり,差別化は図られている.だが,日本のグリーン車が「お金持ち」がターゲットな感じであるのに対して,ICEやICの1等車のターゲットは,ビジネスマン,長距離旅行者,どうしても静かな雰囲気で乗りたい人等々.カジュアルな服装で若い人が乗ってくることもしばしば.これはフランスのTGVにも共通している.

日本の新幹線は大都市間連絡列車なので,基本的にはビジネスマンが主ターゲットなのに,なぜか本当の意味でのビジネスマン向けの座席の設定がなく,高級席かエコノミークラスしかないというナゾ.

時計仕掛けの幹線鉄道

スイスに行くと,スイス連邦鉄道の列車にこういうのが走っている.

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機関車の番号が「2000」になっているが,製造番号が2000番なわけではないし,型式番号が「2000」なわけでもない.「Bahn-2000計画(Rail 2000計画)」事業に合わせて導入された新規車両なので,プロジェクト名として「2000」が書かれている.後ろに繋がれている車両も同じ計画に合わせて導入されたものである.

Bahn-2000は,(1)主要都市間を30分の整数倍よりもちょっと短い時間で結ぶ,(2)主要都市の駅の出発時刻は原則として毎0分もしくは30分,ということを目指して幹線鉄道の改良をする計画で1987年に計画が開始され,2007年頃に概ね完了.

そういうわけで,スイスの大きな駅に行くと,毎0分もしくは30分のちょっと前になると続々と各方面から列車が集まってきて,毎0分もしくは30分を過ぎると三々五々各方面に列車が散って行く.つまり,毎0分もしくは30分には,駅のホーム上には各方面からの列車が勢揃いしており,全方向相互間の乗換が出来る,というシステムだ.

日本は新幹線を作って走らせて,それに合わせて他を考えるというシステムだが,スイスは発想が逆で乗換がうまくいくようにするには最低限,どの程度の改良をすればいいかという視点で整備がされている.

なので,スイスには日本の新幹線相当の高速新線がほとんど無い.Oltenの南側に少しと,あとはアルプスの長大トンネルの中くらいなものである.

なお,上の写真の列車に関するWikipediaの説明項目には「「バーン2000計画」の要となる200km/h列車用として」と書かれているが,車両としては200km/hで走れると思うものの(実際,Olten付近の短い高速新線では走っている),Bhan-2000は200km/h運転導入が主目的の幹線鉄道計画ではないので,この記述はあまり正確ではない.(学生の皆さん,Wikipediaの使い方には注意しましょう.)

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駅の出発時刻の掲示,よく見ると,ほとんど同じ時間に続々と出発している.まるで歯車のように一定間隔で列車が都市間を行ったり来たり.時計の国スイスならではのシステム.このシステムが導入できるのは,列車を時間に正確に走らせることが出来る国だけ.

幹線鉄道計画のPDCAはまわっているか?

授業期間が終わると学生が部屋に訪ねてくる機会もめっきり減るので,この時期になると「BGM」をかけながら仕事をすることが多い.

音楽を聴くと…唄が頭の中をぐるぐる回って仕事にならない.ラジオもおしゃべりは同じようなもので,話に気をとられて仕事にならない.歌詞のない音楽は,まぁ許容範囲か.ピアノ曲あたりが無難.

そして最近発見した仕事に最適な「BGM」はこれだ.

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

名付けて,「Back Ground Meeting=BGM」

内容は下手なニュース番組よりもよっぽど中味がある(当たり前か).時々新幹線ネタや国土整備ネタも出てくるぞ.変な「マスコミフィルター」がかかってないので,お勧め.難点は長いこと.会期中は毎日7時間とか.並行して委員会が開かれていることも多いので,延べ時間はものすごいぞ.衆参でダブルだ.

さて,最近この国会中継でよく聞くようになったキーワードがある.それは「PDCA」.JABEEだけでなく,ついに国会でもPDCAを聞くことになったとは,時代も進んだものである.

Plan→Do→Check→Action→Plan→…

計画立ててみて,やってみて,うまくいったかどうだか検討して,内容修正して,またやってみて,の繰り返し.

ところで,標題の幹線鉄道計画だが,1970年代に法律つくって,73年に具体的な計画立てて,…いまだに73年に閣議決定されたから云々ということが論拠になって話が続くことが多いが,冷静になって考えてみよう.

おかしいだろ.

1872年に鉄道が初めて走って,最初の鉄道政策である鉄道敷設法までが20年.
1892年に鉄道敷設法ができて,建主改従,改主建従の議論があって改正されるまでが30年.
1922年に改正鉄道敷設法できて,太平洋戦争開戦から「もはや戦後ではない」までの15年を除いて,初の新幹線政策ができるまでが33年.
1970年の全国新幹線鉄道整備法ができて,今年で45年目

おかしいだろ.

日本の幹線鉄道計画のPDCAはまわっているか?その答えは…?

#サボってる?>担当部署殿

みどりの券売機プラス

住宅街にある自宅最寄り駅に告知とともにこんなチラシが置かれている.

GreenPlus

人件費削減目的だろうが,ついに有人券売窓口が廃止されて,機械化されるようである.割と単純な経路の切符は,新幹線などであっても普段から券売機で買うことが多いのだが,例えば,ではあるが,たまにこんなのも買うのでちょっと不安である.右側に付いている電話でオーダーすれば発券してくれるのか?

  • 【初級編】伊予西条→東京
    ただし,伊予西条→[しおかぜ]→岡山(宿泊)→[翌日のぞみ]→東京
    ※当日の乗り継ぎなら,よくあるパターンだが翌日はどうなの?
  • 【中級編】京都→東京
    ただし,京都→[新幹線]→名古屋→[しなの]→長野→[あさま]→東京
    ※名古屋乗換で長野までなら問題なく買えそうだが…
  • 【上級編】京都→京都
    ただし,京都→[のぞみ]→東京(宿泊)→[翌日たにかわ]→越後湯沢→[ほくほく線特急]→富山(宿泊)→[翌々日サンダバ]→京都
    ※有人窓口でも慣れてない係員だと,2-3回発券に失敗するんだが… 
  • 【番外編】大阪→徳島
    ただし,高速バス
    ※有人窓口で徳島に行きたいんですけど,バスの切符って買えますか,と聞いてみたことがあるけど,あっさり発券された.これも「プラス」で出てくるのかしら? 
  • 【大技編】伊丹→但馬
    ただし,ヒコーキ
    ※20年くらい前にチャレンジしたことあり.これもあっさり発券された. 

機械操作がおっくうな人には「高速バスか自家用車をお勧めします」という暗黙のサインに見えると思う.

※ほくほく線は,この先通る機会はほとんど無いかな.

北陸新幹線開通で富山に行くのが面倒になりそうな件

時刻表2015年3月号を入手.【祝】北陸新幹線開業なのだが,富山に行くのが微妙にめんどくさそう.

金沢-富山間はサンダーバードで約35-40分.これが北陸新幹線開業で大阪方面からがどうなるかというと…

金沢着 乗換時間 金沢発 富山着 金沢着→富山着
946 10分 956 1019 33分
1023 8分 1031 1054 31分
1102 //
1113 9分 1132 1155 42分
1156 10分 1206 1229 33分
1217 17分 1234 1257 40分
1256 10分 1306 1329 33分
1317 16分 1333 1356 39分
1356 10分 1406 1429 33分
1420 //
1456 10分 1506 1529 33分
1556 10分 1606 1629 33分
1653 10分 1703 1726 33分
1756 11分 1807 1829 33分
1852 11分 1903 1925 33分
1913 10分 1923 1946 33分
1956 12分 2008 2031 35分
2015 //
2056 10分 2106 2129 33分
2121 14分 2135 2157 36分
2209 10分 2219 2242 33分
2256 10分 2306 2329 33分
2329 8分 2337 2359 30分

乗換が1回増で,時間短縮が5分くらい.

山形新幹線が乗り換え1回減で,その後の調査で客の動向が約30分短縮相当らしいので,北陸新幹線の開業で富山が心理的に25分くらい遠くなる感じか.まぁ,「金沢止め」が少なくなって実質本数若干増なので,その辺はちょっと改善か(青字).

大阪の人がボーッとしているうちに,北陸が首都圏方面へと離れて行く.

パリのLRTの踏切の処理

パリのLRT.といっても,この路線は専用軌道のみ(10年前).

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セーヌ川沿いの道路をつぶして軌道に敷き替えたことで有名なこの路線,基本的には60km/h制限で走る.写真は後ろ向き.

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元々道路なので,所々には元交差点の踏切がある.そして,この踏切部分だけ制限20km/h.

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さらに,この踏切には信号機も付いている.横断側道路でなくて,線路側.ここは赤色.

P1030800

こっちは青信号.これなら設備投資が少なくてもOKかも.

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地下鉄の出入口

この写真の中に,鉄道施設があります!

P1030704まぁ,有名なので知っている人も多いと思うが…

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これ,地下鉄の出入り口.パリ市内.ここを下りると,ちゃんと地下鉄が走っている.

P1030707

ルーブル美術館前駅.ここですね.日本の○○美術館前駅もこれくらいして欲しいところ.

地図データ ©2015 Google

100 m

 

LRT用電車の運転席の便利なボタン達

LRTという次世代型路面電車というと,こんな感じだが…

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そんなLRTの運転席にはいろんな便利そうなボタンが付いている.

下の写真の左上の赤いボタンは,おそらく非常ブレーキ.日本の電車と違って,電磁石をレールに吸い付けるようなタイプのブレーキが付いていて,急制動がかかる.筆者もこの都市ではないが非常制動に遭遇したことがあって,他の立ち客とともにひっくり返った.

右上は警笛(ベル)かな.

下側の2つは進路を決めるためのボタンのようだ.日本の場合は,架線に付けたスイッチ(トロリーコンダクタ)を電車のパンタグラフが押して,一定のタイミングを見計らうと希望する進路に切り替わるようになっているが,この押しボタンの方が分かりやすくて直接的で,何よりも進路転換の時間が短そう.

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別の位置に付いているスイッチが下の写真.左側の上下2つのボタンはパンタグラフ(集電装置)の上げ下げ用だろう.

右上は信号機のマークなので,優先信号機を作動させて,交差点で停止せずに進行するためのボタンかな.日本のPTPSより強力で,押せばほとんど間違いなく無停止で進行できる.

右下のは何かな?手書きで何か書いてある.何かのランプのスイッチのようだ.
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ICEの座席指定

日本の新幹線は,座席指定車と自由席車が車両単位で分かれている.じゃぁ,ドイツ版新幹線といわれるICEはどうかというと,座席単位になっている.

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写真は,1等車の内部.ブレブレだが,窓の上に黒い小さな横長の表示器が付いていて,なにやら表示されていることがわかるだろうか.

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拡大すると,こんな感じ.これは,マンハイム-ケルン間については座席の予約が入ってますよという意味である.

DSCN0901じゃぁ,表示されていない区間はどうなのかというと,自由席扱いである.予約の入っていない席もあるので,そこは始発から終着まで自由席扱い.

こうすることで座席の利用効率を上げているようだ.

毎年2200億円あったらできること

宝くじが7億円当たったら,あれして,これして,どれ買って,みたいな夢想をするのが常だが,(もっとあり得ないが)宝くじに毎年当たったらものすごいことが出来そう.

じゃぁ,毎年2200億円あったら何ができるだろうか.大阪府市統合(大阪都構想)による効率化で大阪市の財政から毎年2200億円捻出されるという皮算用があるらしい.その2200億円が現大阪市域に再び投じられるのか,それとも市域外に使われるのか,イマイチ良くわからん

わからんのだが,現大阪市域に投じられるのなら府市統合しなくても今と変わらないのかもしれないし,大阪市域外なら(大阪市民ではない)府民にはいい話(=大阪市民には気の毒な話)なのかもしれない.大阪市長の話を追ってみてもよくわからないし,府市統合関係の書類を見ても判然としない.資料編700ページを手には入れたが解読する時間も気力もないので,概要版でも作ってくれんかのう.

皮算用されている2200億円が全て公共投資にまわるワケでは無いと思うが,毎年2200億円というのがかなりの額であることはよくわかる.例えば仮に毎年2200億円あったらできることを考えてみよう(もちろん,指摘されるまでもなく机上の空論である).

  • リニア新幹線名古屋-大阪間延伸が懸案事項となっているが,もしこれに毎年2200億円ずつ投じるとすると,3兆6000億円÷2200億円=16.4年.今年が2015年なので,2027年全線同時開業には間に合わないが,2031年頃には全線開業できる!
  • リニアといえば関空リニア構想.中央リニア新幹線が約480kmで約9兆円なので,新大阪から関空までの約50kmなら概ね9400億円といったところか.そうすると,9400億円÷2200億円=4.3年.何と今から作れば東京オリンピックまでに関空リニアが完成するぞ!!
  • 北陸新幹線の敦賀-大阪間建設が懸案事項となっているが,もしこれに毎年2200億円ずつ投じるとすると,小浜ルートなら9500億円÷2200億円=4.3年.湖西ルートなら7700億円÷2200億円=3.5年.米原ルートなら5100億円÷2200億円=2.3年.めんどうなので全部作っても10.1年.今から取りかかれば金沢から敦賀まで新幹線が伸びてくるのに合わせて全部のルートを完成させられる!!!
  • 新幹線といえば,山陰新幹線という構想もある.550kmとしてkmあたり50億円で2兆7500億円.これなら2兆7500億円÷2200億円=12.5年.すごいぞ,10年あまりでリダンダンシー強化だ!!!!
  • いやいや,山陰じゃなくて四国新幹線だろ.大阪から関空経由で和歌山をかすめて淡路島徳島へ.瀬戸内西進して大分へ.岡山から南下して高知へ行く横断新幹線もあるぞ.あわせて4.75兆円だ.かなりの額だが4.75兆円÷2200億円=21.6年.生きている間に完成するかも!!!!!
  • 国が「カネがない」と渋っている首都機能移転.12兆円ほどらしいが,12兆円÷2200億円=54.5年.さすがにこれじゃぁ首都直下地震には間に合わないか.

毎年2200億円というのは,すさまじい破壊力(いや,投資力か?)である.これだけあると,かなりのことが出来ることは明らかである.この破壊力(いや,投資力)は誰のどういった意思決定でどういう使われ方がされるのだろうか.もしも使い方が限定されていないお金だとすると,まさか個所付けコントロールして(ry …おや,誰か来たようだ.