北海道までもう間もなく新幹線が走ろうとしているが,皆様ご存じのとおり,困った問題がまだ解決されていない.青函トンネルでの運転速度の問題だ.

青函トンネルそのものは新幹線規格で設計されており,時速260キロ,いや昨今の強力なモーターなら,騒音のことを気にしなくても良いので,(誰も話題にしようとしないが)もっと高速で運転できる(はず).おそらく架線等の設備を対応させれば時速320キロ運転もできるんじゃないだろうか.

ところが実際の運転速度は時速140キロにまで抑えるという.反対側の線路を走る貨物列車が風圧で転倒しないようにするためらしい.本来の高速運転をするために,トンネルをもう一本掘ろうか,などという話さえある....がしかし,これは今になって判明した話ではなく,東海道新幹線の開業前からある程度わかっていた話である.

東海道新幹線の建設時には(建設の遂行のための方便という話もあるが)貨物列車の運転が検討されていた.そのために,実際に風圧の影響が検討され,実験もされ,時速150キロくらいまでなら何とかなりそうだが,それ以上になるとヤバそう,解決は先送りね...となって,実際に貨物列車の運転そのものが先送りになると,問題解決も先送りになり今に至る,という感じである.要するに,50年以上前からわかっていた話.

そんなわけで,(連続勾配もあるということもあり,)青函トンネルの新幹線の通過速度は青函トンネルを掘り始めた当初ですでに時速160キロ運転想定になっていたのではないかと思う(ちょっとうろ覚え).

さて,風圧で車両が転倒する可能性が高まる理由は,日本の新幹線の線路規格に起因している.上下線路の間隔が欧州の高速鉄道線路よりも小さく,車両と車両の壁面の間隔が小さい.ドイツの高速新線などでは,貨物列車の運転を考慮して複線の線路間隔をわざわざ広げている区間もある.

ということは,高速で運転したければ,すれ違う際の車両の間隔を広げればいいということになる.子どもの砂遊びではないので,今さらトンネルを大きくするわけにはいかないが…発想を変えると,トンネルを大きくするんじゃなくて,車体断面の小さな車両を走らせることは出来る.
フルサイズの5列の新幹線電車は幅3.35m,いっぽう秋田や山形に行くようなミニサイズの新幹線だと幅は2.95m,その差は0.4m.左右それぞれ0.2mずつ小さくなるので線路間隔を約0.2m拡げたのと同じ効果があるかもしれない.車両の断面積も15%ほど小さいので,押しのける空気の量もそれだけ少ない.
この差によるすれ違い時の影響の差は…残念ながら分野外で何とも…ではあるが,すれ違い速度向上には役立つ可能性はある.(まぁ下手の考え休むに似たり,の可能性もあり.この程度の検討はしていると思うが.)
#写真は,話の進行とは直接関係ありませんが,青函トンネルの写真です.上から順に,「木古内付近の在来線と新幹線の合流予定部分」「青函トンネル北海道側入り口」「青函トンネル内」「本州側出口」「本州側の在来線と新幹線の分離予定部分」「特急車内のトンネル説明」である.
「鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ
鉄道後進国ニッポン(既に独仏に抜かれている編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(番外編+まとめ)
この意見の各項目を考えてみるシリーズの番外編.フルバージョンだけに書いてある内容である.
- 番外編:リニアに「まちづくり」の将来をかけていいのか――“過大な期待による過大な投資”は地域経済を押しつぶす
旧タイプの新幹線でも,いろいろと期待するけど,リニアは超高性能新幹線なので,『「まちづくり」の将来をかける』のは普通の行動だろう.この千載一遇のチャンスを逃してなるものか,というのが普通の行動.もちろん,「過大な投資」というよりは「的外れな投資」は意味が無いが,千載一遇のチャンスを見す見す逃すなどあり得ない.
- 新幹線開通後の地方経済をみると、「効果」だけではなく、「ストロー現象」の影響も慎重な検討が必要である
新幹線の無い地方を見てから言った方がいいですよ.新幹線があった方がマシ.無いともっと悲惨な状況になってますよ. そういう場所には,新幹線も高速道路も無くて,なかなか遊説に訪れる機会そのものが少ないかもしれませんけど.
「ストロー」については,新幹線に限らず,交通機関で結ばれると,結ばれた地域が相互に変化してゆきます.とある機能に着目すると肥え太るものもあり,別の機能はやせ細るものもあり,全体としては適材適所に機能が再編されてゆき,「選択と集中」状態になって効率が上がります.新幹線で結ばれた都市群システムに組み込まれて,特定の機能に特化してしまうけどみんなで賑やかにやってゆくのか,それとも,どことも結ばれること無く従前のまま細々と(多くの場合,先細りで)独りでやってゆくのか.どちらかなんですよ.
「リニア頼みじゃ無い策」で,なおかつ「リニア頼みに匹敵する策」って何かありますか? 具体的に!と言われると,小規模なものを除いてあんまり思いつかないでしょ?あれば,もうやってますよ.
- まとめ:「多様な意見」は重要だが,多少調べてから意見を組み立てた方がいい項目が多そう.
東北に行ってみた(BRT編)
既にご存じの方も多いが,気仙沼線では被害が大きく,復旧の見込みが立たないことから,使用できる路盤を道路転用し,バス専用道化して「BRT」として運行されている.
拠点の停留所は「駅」として整備されており,それ以外についても屋根付きの停留所になるなど,バス路線の設備としては比較的行き届いているようだ.
下の写真は志津川.元の駅ではなく仮設商店街併設になっている.

こちらは歌津駅と一般道からバス専用道への出入り口.
[map] 歌津駅 [/map]



元々の歌津駅はこのような状態である.

いくつかのトンネルを抜けた後の専用区間北端.
[map lat=”38.736199″ lng=”141.530651″ zoom=”15″] [/map]

ここから先は橋梁等破壊されている.

(2012年12月現在)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(安全確保編)
この意見の各項目を考えてみるシリーズの5つ目である.フルバージョンはこちら.
- 5つ目:運転手が乗車せず遠隔操縦で運行するなど、安全確保への大きな不安を“置き去り”にする建設になっている
すいません,これ見たとき,思わず笑ってしまいました.これじゃぁ,この指摘主は今走っている普通の新幹線にも乗れないなぁ,って.失礼,すいませんwww.こういうご懸念,数十年前の東海道新幹線の建設時にも某新聞がネガキャンしてましたよね.
じゃぁ,ちゃんと説明します.全ての交通機関が目視運転で安全確保されているかというと,そうではなくて,適切な保安装置があってはじめて安全確保できます.逆に適切な保安装置が無ければ,いくら運転士が乗っていても安全ではありません(例えば尼崎の列車事故).完全に目視確認だけで運転している鉄道は路面電車くらいなものです.
リニアの前に,普通の新幹線について書いておくと,新幹線の運転士の目視で確認できるのはせいぜい数百メートルだそうで,運転士が「危ない」って感じて即座にブレーキをかけても,200−300キロで走っている場合には絶対にそこまでには止まれないそうです(新幹線の運転免許を持っている方に聞いた話).2kmくらい走ってしまいますから,全く役に立ちません.
特に夜間や雨天時は顕著で,夜間に前照灯が照らせるのはせいぜい100−200メートル程度で,前を見ることについて言えばほとんど役に立たないようです.あれは列車の前か後ろかを識別するという役割が大きいようです.(新幹線の前照灯の正規式名称には「照」の字が入って無かったと思う.)
雨天時は雨粒が窓に当たって前方はほとんど何も見えないそうで,どこを走っているのかは,運転席の横の窓を見ながら風景で判断するそうです.そういうわけで,新幹線の運転士には前方注意義務が無いそうです(在来線の運転士には前方注意義務があるらしい).
じゃぁ,どうやって安全を確保しているかというと,線路に特殊な電流を流しておいて列車の存在を感知しておき,列車間隔が詰まってしまったり駅が近づいたりした場合には,列車の車載装置が自動的にブレーキをかけます.この自動ブレーキは非常ブレーキでは無くて,毎日毎列車駅が近づく毎に使われています.運転士が手動操作するのは列車のドアと乗客の列をぴったり合わせる微調整操作くらいで,停車動作については現時点で既にほとんど自動運転になっています.
倒木や崖崩れ等を検知する装置がついている箇所もあります.このへんは検知装置が無いと目視で見つけても間に合いません.つまり,リニア以前に,現時点で既に高速鉄道の安全は機械に頼ったものになっています.
リニア新幹線にも類似の保安システムを入れることくらいは検討しているでしょう.「機械は信用できん!」と言われてしまえばそれまでですが,それじゃぁ,エレベータは怖くて乗れないよね.
#必ずしも「運転士がいない」=「乗務員がいない」では無いことに注意すべし.
#運転士に前方注意義務の無いような交通機関だが,天皇陛下もご乗車されている.
東北に行ってみた(原ノ町編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(環境編)
この意見の各項目を考えてみるシリーズの4つ目である.フルバージョンはこちら.
- 4つ目:リニアは使用電力が新幹線の3倍以上で、エネルギー浪費型の社会、交通体系を導入することには道理がない
そこだけ取り上げればその通りなのだが,やはり見落としがある.この部分は鉄道会社も見落としているんじゃないかと思われる.
単純に東京−大阪間の既存の新幹線客をリニア新幹線にシフトするだけだと,おっしゃるとおり,エネルギー効率が悪くなってしまう.ところが,そのエネルギー効率があまりよろしくないリニアよりもさらに効率の悪い交通機関がいくつか存在する.航空と道路輸送である.
東京側から見た大阪以遠,もしくは大阪側から見た東京以遠の区間で,現状において航空依存の区間というのが存在する.例えば東京−九州などだ.これがリニア開業によって競争力が上がり,新幹線+リニアに置き換えることができれば国土全体ではエネルギ効率が上がる.
それから,(こういう話は当の鉄道会社はあまりいい顔をしていないようだが)リニア完成後に比較的暇になった東海道新幹線を使って物流などを行ってトラック輸送の一部を置き換えることができれば,これもエネルギ効率が上がる.
木を見て森を見ていない批判的意見ですね.(鉄道会社もPRが下手)
「リニア新幹線じゃ無くて,時速350キロ運転,いや出来れば400キロ運転の鉄輪式新幹線にすべきだ.そうすればリニアに比べて10〜20分ほど遅いだけで,他の路線とも直通できるし,エネルギ消費も少ないし,部分開業しても乗り換えさせる必要が無いし,方式変更すべきだ」という批判建設的代案の提案ならわからないでもない.…が,とにかくリニアが憎いようである.批判するなら合理的に.
鉄道後進国ニッポン(英国快速も225キロ運転)
ずいぶん前に,ドイツの快速列車がめっちゃ速いという話を書いたが,英国の近郊電車もめっちゃ速い.
テレビのCMでみたことのある人も多いと思うが,日立製の電車であり,ロンドン郊外のアシュフォードというところから,ロンドン市内まで走っている.最高速度は公称225km/h. 乗車してみると,内部は特急列車風ではあるが,デッキとの間仕切りはなく,イスもビニール張りの簡素なものである.
英仏海峡を通過するユーロスターの走る高速新線を間借りして走行し,車内の内装さえ気にしなければ走りっぷりは日本の新幹線と寸分変わらない(日立製なので). ロンドンオリンピック期間中は選手村と競技場との間の輸送に使われ,その後は高速通勤鉄道線になっている.
日本にはこういう発想ないんだよなぁ.(昔は首都圏でそういう構想があったが,有耶無耶になった.つくばエクスプレスはその名残.160キロ運転はどうなった>TEX)

トラム変幻自在(CAR-GO-TRAM編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(地震対策・復興編)
この意見の各項目を考えてみるシリーズの3つ目である.フルバージョンはこちら.
- 3つ目;リニア建設でなく、東海道新幹線の地震・津波対策や東日本大震災からの鉄道網の復旧を行うべきである
これには論点が3つ含まれている.
- 東海道新幹線の地震対策をすべし
- 東海道新幹線の津波対策をすべし
- 震災復旧を優先すべし
まず,地震対策であるが,これはやっている.指摘主は調査不足.やっているのにやってないというのは,さすがに鉄道会社がかわいそうである.これ以上を望むのならば,線路を揺れが襲わない地域に付け替えるか,軌道をジェットコースターのような真っ逆さまになっても脱線しない構造(レールをパイプにして,三方向からがっちり抱え込む形式)に変更するかくらいしか無い.何でも言えばよい,とうわけではない.抜き書きすると,こういうを対策実施中のようだ.
- 構造物および軌道の強化
- 高架橋の耐震補強
- 橋脚・盛土の耐震補強
- 列車を早く止める対策
- 沿線に地震計を配備
- 地震動早期検知警報システムを導入(非常停止)
- 脱線・逸脱防止対策
- 脱線防止ガード
- 逸脱防止ストッパ
- バラスト流出、盛土沈下、高架橋変位を抑制
次に津波対策であるが,これについて鉄道会社は「津波の影響はない」と言っているので,たぶん,公式には何もしていないだろう.『静岡文化芸術大の磯田道史准教授が浜名湖上を通過する東海道新幹線の津波に対する安全性に疑問を投げ掛けていることに関して「どういう根拠で言っているか分からない」と指摘』しているそうだが,公式公開資料と現地調査だけでもこういった分析ができてしまうので,やはり要注意箇所は存在する.歴史の忠告は無視すべきでない,というのは東北の震災の教訓ではなかったか?
津波対策と言っても,線路に沿って万里の長城のような防波堤を建設するわけにもいかない.危ない箇所は線路を付け替えるというのが通常の対策方法であり,例えば浜名湖を大きく迂回するか,あるいはリニア新幹線のように完全に別経路を準備するかということになる.ということなので,リニアを建設して東西間輸送を確実にするという判断は,有効な方法の一つである.
最後に東日本大震災の鉄道復旧の部分だが,そもそも鉄道会社が違うし,鉄道路線の目的も違うし,同じリソースを両者で奪い合っているわけでもない.復旧が遅いとすれば,それは(この震災に限らず),鉄道の災害復旧政策がイマイチだということであり,たたく相手を間違っている.
フルバージョンには,9兆円も金があるのなら国鉄の借金返済に充てて,それを原資に復旧すべしと書いてあるようだが,国鉄再建の枠組みを30年近くたってちゃぶ台返しする話である.事業再生の基本的な手法を知らないんだろうか.国家権力振り回して国庫に納めさせるのか?この国は独裁国家ではない.JR東海はリニア建設という形で「国家的事業」に儲けた金をつぎ込むことで,国民に利益還元しようとしていると思うが,まぁ,話が噛み合いそうにないので,この辺で.



















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