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初夢鉄道2017(自動化編)

夢を見た.

20xx年,交通機関の自動化はかなり進んでいた.2010年代半ば以降注目された自動車の自動運転技術は,技術自体は完成するのは早かったものの,関連する法体系整備に時間がかかり,完全自動運転であるレベル4の自家用車への導入には思いの外時間がかかった.

その間,すでにATOという自動運転技術が導入されていた鉄道分野へは比較的早期に導入された.地下鉄を含む都市圏の通勤輸送では自動車の自動運転技術を応用した「新型ATO」の導入が行われており,ホーム柵の導入が終わった区間では「新型ATO」が稼働している.ただし完全に無人運転かというとそうでも無く,非常時の習熟目的という名目で運転席には乗務員が座っている.ドアの開け閉めの監視をするだけなので,実は運転士ではなく車掌相当の仕事しかしていない.もちろん,ドアの開け閉めそのものは「新型ATO」の機能の一部なので,本当に監視しているだけである.

地方部の鉄道でも閑散区向けの「新型ATO」が導入されている.こちらも乗務員がいるが乗務員の主な仕事は検札である.といっても大半はドア入り口のカードリーダー(というか,わざわざかざさなくてもカバンの底に入れたカードのチップを自動的に読み取ってくれる)で運賃収受は済んでいるので,本当の仕事はこちらも乗客の「監視」だけであり,客からはアテンダントと呼ばれている.

リニア新幹線は開業当初より自動化されているが,既存の新幹線にも「新型ATO」が導入されている.とはいっても東海道新幹線開業時点から自動ブレーキ装置であるATCが導入されており,2000年代半ば以降には定速運転装置も装備され始めたため,新幹線用「新型ATO」はドアの取り扱い機能と,従来からある近郊鉄道用のATO(2015年現在で既につくばエクスプレスで導入されているようなもの)の加速機能を追加しただけのようなものであった.(新幹線の運転士の目視力とそれに基づく判断は,初期の新幹線の段階で既に必然性を失っていた)

バスももちろん自動化されている.最初に導入されたバス路線は,ローカル鉄道線の廃止転換路線であり,専用道路を走行するものであった.例のごとく国土交通省が「自動運転の新型BRT」と称して宣伝したため,結構バス転換の話に乗る地方路線は多かった.実態としてはやはりバスであり,単に運転手がいないだけであったため,高速運転されるわけではなく,運賃が安価になるわけでもなく,サービスの改善自体はほとんど無く,後述する「新型自家用車」に対抗できるような交通機関にはなり得ていない.

さて,自家用車の自動運転については法体系の整備によって普及が進んだが,同時にレンタカー会社,タクシー会社,バス会社などが共同事業として始めた無人運転タクシーが普及し,一部の金持ちのステータスをひけらかす目的の自動車以外は自動車を自家保有する必然性が低くなり,自動車保有率が下がってきている.ただし,そのまま「新型自家用車」や「無人運転タクシー」で目的地まで行ってしまう人が多いので,自動車保有率の低下が即公共交通の利用向上に繋がっているのかというと怪しい.新事業会社は無人運転タクシーをパーソナル公共交通と呼べと言っているが,公共交通って一体何なんだという,公共交通の定義についての議論が始まっている.

その他の産業面でも自動化が大幅に進み,雇用の問題が大きな問題になっている.自動化ロボットの導入が安いか,移民の導入の方が安いかといった議論を産業界でしているようだが,果たして人間社会はどうあるべきかという議論は置き去りにされている.20xx年の若者の多くがどういった仕事を通じて社会参加すべきかという深刻な悩みを抱え込むようになり,新たな社会不安を増大させている.

…というところで目が覚めた.

青函「第2トンネル」構想

 津軽海峡の海底下を通る「第2青函トンネル」の建設を将来実現させようと、大手建設会社や土木の専門家らが、動きだした。財源の確保など課題はあるものの、実現されれば北海道新幹線のさらなる高速化が可能になり、貨物列車の輸送力向上なども期待できる。

情報源: 青函に「第2トンネル」専門家ら構想 貨物線で新幹線高速化 | どうしんウェブ/電子版(経済)

貨物列車専用線を在来線規格の単線トンネルとして建設する案らしいが,どうせ掘るなら単線は単線でもフル規格新幹線サイズの電車が通せるように掘るべし.

現在の青函トンネルは,新幹線が通るトンネルにもかかわらず夜中も貨物列車が通るような線路になってしまっているので十分な保守時間がとれていないんじゃないのかな.

加えて,青函トンネルは掘削開始からもう50年.開業から間もなく30年.大規模な修繕も遠くない将来に必要だろうし,日々のメンテナンスも増えてくるだろう.

そうした場合に,日常的な利用法としては第2トンネルは在来線貨物列車用だとしても,「第1トンネル」のメンテナンススケジュールの必要に応じて新幹線電車も通せるようにしておいたほうがいいだろう.

北海道新幹線としては青函トンネルはまだ1才.だが,懐妊期間があまりにも長かったので,第2トンネルのことを考えるのなら,そろそろ「第1トンネル」の高齢化の心配もしながらインフラ計画を考えた方がいいかもしれない.

 

新幹線の旭川・新千歳乗り入れを

 11月に北海道商工会議所連合会の会頭に就任した岩田圭剛氏は日本経済新聞のインタビューで、北海道新幹線の札幌延伸前倒しと2026年冬季五輪の招致を重点課題にあげた。新幹線の旭川や新千歳空港までの乗り入

情報源: 新幹線、旭川・新千歳乗り入れを 道商連・岩田新会頭  :日本経済新聞

北海道新幹線を旭川や千歳空港へというのは,ごく当然出てくるアイデアかな.

北海道の場合,直流電化区間は無いので,電気設備は新幹線と共用できる可能性もある.そうすると三線軌の雪対策さえうまく行くのなら,例のトリビアが有効かもしれないよね.

#トンネルあると無理かも.高架橋も厳しい箇所あるかも.

JR西社長 — 財源の確保を求めた

 来島社長はルートの決定を受けて「あとは北陸と関西が早く結ばれることが重要だ」と指摘。京都までの先行開業ではなく「大阪までの一括開業が望ましい」とし、新たな財源の確保を求めた。

情報源: JR西社長、経営分離対象路線「地元の同意必要」 : 京都新聞

山陽新幹線のローン払いも
大半が今年度で終わることですし,
多少出していただけると,早くできるんですがね.

添削してみた…朝日新聞の社説

情報源: (社説)北陸新幹線 あまりに前のめりだ:朝日新聞デジタル

2016/12/19の朝日新聞の社説である.相変わらず,情報の収集と分析および結論の導き方に難があるように思われるなぁ.北陸新幹線の話題を取り上げて社会的課題を提起するとしても,浅い文章だなぁ.

問題提起したいという意図の部分は尊重した上で,卒論シーズンということもあるので,ついでに添削してみた.

[赤い太字の括弧書きは “添”]
茶色の太字の消し線は “削”
(青い括弧書きはコメント)


北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市へ延伸するルート[のうち,敦賀ー京都間]が固まった。複数の案を検討してきた与党が、福井県小浜市と京都市を経由する案を採用した。

(コメント:ルートは半分しか決まっていないので,全部決まったかのように書いてはいけません.)

 北陸や関西の政財界からは早期着工を求める声が相次[いでいるので,世論を反映した動きだ]ぐが、あまりに前のめりだ

(コメント:文章の呼応関係や因果関係をよく見ましょう.)

 小浜・京都ルートの建設には2兆円超かかりそうだ。建設を決めるのは政府だが、財源のあては[これから検討することになる]当分ない。国の財政状況は厳しく、社会保障をはじめ、多額の公費が求められる課題は多い。[だが,国家予算に占める新幹線整備費は約780ppmしかなく]北陸新幹線の延伸[が公共の福祉に大いに役立つのならば]を特に優先する必要性は[大きい]ない

(コメント:財源のアテがないかどうかは難しい証明を必要とします.「無い」ことを証明せざるを得ない(悪魔の証明)ので,なかなか言い切るのは難しいと思います.論拠を整えることが難しい場合は,別の表現にしましょう.それから,費用の多寡については,社会保障費関係が年額約32兆円,新幹線の支出は北陸新幹線以外の新幹線を含めて全部で年額約755億円です.よく考えてから文章を書きましょう.兆と億の単位を混同するとたいへんなことになりますので,注意しましょう.社会保障関係費は新幹線の424倍です.)

東京から長野、富山を経て大阪に至る北陸新幹線の整備計画は、1973年に決定した。現在、北海道と九州で建設中の新幹線2区間も同じだ。

新幹線と高速道路網の整備で、移動時間を縮め、東京の過密と地方の過疎を解決する。故田中角栄元首相が提唱した日本列島改造論のような考え方が背景にあった。40年余りを経て、全国の新幹線は延べ2765キロに達した。安倍政権は「地方創生回廊」と銘打ち、新幹線整備をさらに推し進める方針だ。

ただ、期待した効果がどれほどあったかは冷静に見極める必要がある。[新幹線ネットワークが中途半端に東京を中心に整備されてしまったおかげで]東京一極集中は加速し、地方では急速な高齢化と人口減が進む。新幹線が通る[政令指定都市や]中核都市の多くも例外では[なく,長年月のうちに新幹線の無い都市よりも人口が集積した]ない

(コメント:問題提起をしたら,具体的かつ正しくその問題提起に対する分析結果を示しましょう.読者は正しい情報と分析能力を持っているとは限りませんので,何も示さずに読者の想像に任せる方法は科学的ではありません.新幹線ネットワークの形成と国土の構造変化や,新幹線の有無が人口に与えた影響については正しく分析した上で言及しましょう.広域的に人口が減っている場合でも,新幹線沿線周辺では減少がマイルドだということにも気をつけましょう.)

北陸新幹線は23年春に東京―敦賀間が完成する。「ここまで造れば、大阪まで早く全通させた方がよい」という考え方[が常識的だろう]もあろう。だが、ルート案の検討過程や内容には[課題も存在する]疑問が尽きない

(コメント:「〜もあろう」と書くと,それが少数意見のように見えてしまいますが,東京から見た場合はそう見えても,反対側から見ればそういう風には見えていないかもしれません.政財界からの声が多いことを考慮すると,早期全通の声は常識的と判断するのが適切ではないでしょうか.それから,”疑問が尽きない” と書いた場合,単に情報収集不足と分析力不足を悟られてしまう可能性もあるので,課題を指摘したいのなら明確にそう書きましょう.ただし,適切な情報収集と分析は必要になります.)

滋賀県は同県米原市でJR東海の東海道新幹線と接続する案を推した。建設費が6千億円弱と他の案より圧倒的に安い。だがJR東海と、北陸新幹線の運行を担うJR西日本が難色を示したため、与党側が却下した。[また,これらを説得する者もいなかった。]

(コメント:今や完全に民間会社になったJRとしては,それぞれ単独の意見としては,ごく当然でしょう.問題は,それを説得して調整する者がいなかったことにあります.表面的な事象を追いかけるだけでなく,背景に隠された原因についても分析しましょう.)

京都府は舞鶴市を経由するルートを支持した。しかし選定にあたってはどの自治体も沿線地元への利益を強調[するのは当然であるものの]、日本全体にとってのメリットなど、幅広い視点[とのバランスが悪かった]が見えなかった

(コメント:地方が自地域の利益を最大化しようとすることは当然の行動ですので,それ自体は非難の対象にはなりません,各利害を調整するのが中央政府の役割です.)

JR西は京都―新大阪間について、東海道新幹線と別に北陸新幹線の線路を敷いて、と望む。人口密集地のためトンネルが大部分を占める可能性が高く、建設費はかさむ。そこまでして新たな線路[を建設するのならばもっと有効活用する必要があろう]は必要なのか

(コメント:もしも『東北・上越新幹線の大宮以南は人口密集地帯なので建設費はかさむ,そこまでして新たな線路は必要なのか.どうせ10分くらいしか変わらないんだから大宮終点でいいではないか.』と書かれると,きっと東日本の人は怒るでしょう.いろんな立場の視点から文章を書けるようになりましょう.東海道新幹線が活用できないなら新線建設せざるを得ません.コストパフォーマンスが悪いという指摘ならば,コストに注目するだけでなく,パフォーマンスに着目するという方法もあります.)

新幹線はあれば便利だ。[だが,議論から実際の開業までの期間が道路などに比べて長すぎて]政治家が「実績」とアピール[しにくい]しやすいこともあって、[議論そのものをする政治家が少ないため,深い議論が行われにくい]「建設ありき」の議論になりやすい

(コメント:「道路族」はいても「新幹線族」などという用語が存在しないように,質疑で ”一応しておきました” 的な新幹線関連質疑を行う人はいるが,突っ込んで議論する人はかなり数が少ないですね.イメージだけで書いてはいけません.国土交通委員会の議事録(or ストリーミング配信)などの一次情報をよく分析してみましょう.)

ただ、新幹線建設に多額の税金が充てられることを忘れてはならない[が,その額は社会保障関係費などと比べると雀の涙ほどだ][新幹線が開通した沿線からは “忌々しい新幹線なんて引き剥がしてしまえ” といった新幹線不要論を聞いたことはほとんど無いことなどから考えて]必要性や妥当性について国民が十分納得[できるように情報提供を行い]できない限り、着工に進む[ことをむやみに忌避する社会環境を醸しだす]べきではない。

(コメント:定量的情報の把握を間違えると,正反対の結果を導くこともありますので,まずは正しく数字の大きさを理解して分析しましょう.)


……うぅーん,書き直して再提出してね,というレベルかしら.

#この新聞社の社説や天声人語を題材にする国語の先生がよくいるけれど,因果関係や事実関係の把握など重視しなければならない現代文の題材としてはどうかなぁ…文章だけで雰囲気を作り出して,見えないものを現実のように見せる「文学」としては優れている面もあるかも.

“雑魚な客数のために面倒なことできるかよ!” と返答してJR東海が失ったかもしれないこと(その3)

JR東海がやっちまったかもしれないお話の(その3)である.これは既にJR自身が気付いている点,新大阪駅(と,その近辺)の件である.

新大阪駅に北陸新幹線を乗り入れる場合,可能なら地下よりも地上駅にして東海道山陽新幹線と同じレベルのホームにしたいところである.そうすれば北陸新幹線の線路と山陽新幹線の線路を繋ぎたくなった場合,数キロにもわたるであろう連絡線を建設しなくても現状の西方から20番線(あるいは27番線)への出入りを拡張すればいいだけである.

ところが新大阪駅周辺での地上での線路工事は少々厄介だ.事実上頓挫している路線がある.

新大阪の少し南側に阪急電鉄の京都線が走っている.阪急としては「南方」という駅が新大阪最寄りになるが,いかんせん地下鉄で1駅離れており,とうてい乗換駅にはなり得ない.そこで,梅田の北方にある十三駅から京都線よりも少し北側を通って新大阪に達し,そのまま東進して淡路駅で京都線に戻るという新線の建設を東海道新幹線開業の頃から計画していた.

ところが,地上を走る新線はまかり成らんと住民の反対があったため,計画頓挫.十三から新大阪駅までについてはまだ計画は放棄していないようだが,その先の淡路までについては計画が頓挫してしまった.

…という話はほぼ新幹線建設にもあてはまるであろう話であり,鉄輪新幹線だろうがリニア新幹線だろうが,新大阪に乗り入れる新線建設は地上ではなくて地下線を考えざるを得なくなった.

さて,リニア新幹線はまだ名古屋以西がどこを通るのか公表されていないが,新大阪駅終点だけははっきりしている.誰が見てもほぼ2択で,27番線北隣の阪急保有の土地の地下になるか,20番線南隣の駅前広場地下になるかであろう.現状の新幹線駅ホームの真下という選択肢も無きにしも非ずだが,高架の脚がたくさんあるので,それを受け換えさせながら工事をするのはかなり難工事だ.失敗すると新幹線が止まるというかなりチャレンジャーな工事計画になる.

一方,北陸新幹線についても京都-大阪間が「南ルート」になった場合は新大阪駅付近はリニアとほぼ同じライン取りになりそうであるので,駅そのものの他,路線を地下の浅い部分で通すことになるであろう新大阪駅付近の道路についても地下空間の取り合いになる.新大阪駅ではどちらも山陽新幹線への乗り継ぎ,JR近郊線への乗り継ぎ,地下鉄への乗り継ぎを便利にしたいという点でも目的は同じだ.

目的が同じなら地下空間内でリニアと北陸新幹線の上下2層にすればいいじゃないかと思うが,両者経営が異なるので,おそらく新大阪駅では客用コンコースは別に設けたい,という話になるだろう.かといって,平面上で並べると,近い方はともかく,遠くなる方は移動距離が長くなる.

じゃぁ,「北ルート」なら問題がないかというとそうでもない.線路を地下で平面交差させるわけにはいかないので,やはりどちらかが地下の浅い方,もう一方が地下の深い方になる.当然,深い方が移動には不利.

ということで,地下空間の取り合いだ.

JR東海にとって厄介なのは,おそらくそれだけではない.一般人から見れば単なるJR会社間の調整事項だが,事業としてみると北陸新幹線は(営業予定はJR西日本だが)建設は国の実施する公共事業,もう一方のリニア新幹線はがっつり国策(JR東海はなぜかこの表現を嫌う雰囲気がある)に載っかった全幹法に基づく整備計画路線とはいえ,民間の事業(JR東海はこっちを強調したがる)だ.

公共事業 vs 民間事業.新大阪平成の陣

地下空間の調整の必要性はJR東海は認識しているようであり,最近は地下空間の調整について発言するようになってきた.「コンペティター」に勝つには圧倒的優位に立つのが理想的だろうが,そうでない場合には最初からうまいこと抱き込んでおくという方法もあった.ちょっと前まで,まさかそんな雑魚な話が天下のリニア事業に影響するとは思ってなかったよね.

 

 

線路際に住んでいる人だけが知っている

いくらマニア君がネットで検索しまくっても知らない,線路際に住んでいるだけ人が知っている情報がある.

沿線住民は線路工事を夜中にされて「ゴラァ」と怒らないのかというと,(まぁ怒っている人がいるのかもしれないが)事前にこういうチラシがポストに投函されて事前に知っているので,「あぁ,あの工事か」と感じる程度である.

まぁ,全部の工事で事前告知があるわけじゃないけど,一種の事前コンセンサス形成.

チキチキチキ2

線路際に住んでいると,たまに変わった列車に出会う.原則として銀色の7両編成の電車しか走ってこないが,珍しく機関車が走ってきた.

貨物列車だ.積み荷は…レールだ.

何かの作業している.

運んできて置いていったのは,このレールだね.交換準備の模様.

“雑魚な客数のために面倒なことできるかよ!” と返答してJR東海が失ったかもしれないこと(その2)

奈良がやっちまったかもしれない話に続いて,JR東海がやっちまったかもしれないお話の(その2)である.今回は山陽直通客について考えてみよう.

リニア開業後の山陽新幹線からの東海道新幹線への直通客の見通しについては詳細は公表されていないが,基本想定としては概ねこんな感じか?

【山陽→京都】短距離なので基本想定としては,そのまま新大阪から東海道新幹線に直通.

【山陽→米原】この区間もそのまま新大阪から東海道新幹線に直通.ただし,従来なら「しらさぎ」に乗り継ぐ客が多少いたが,そういう客は北陸新幹線に移行するので米原駅近辺の客だけに減少

【山陽→岐阜羽島】そのまま新大阪から東海道新幹線に直通.そもそも,少ない客.

【山陽→名古屋】新大阪-名古屋間は東海道新幹線で約50分,リニアだと約25分.ただし,山陽新幹線からリニアへは乗換が必要で,乗り換え1回30分弱相当の心理的抵抗という調査結果もあるので,急がない客はそのまま東海道新幹線,急ぐ客はリニア乗換ということか.
だが,北陸方面から米原駅経由で名古屋駅まで行く場合,直通のしらさぎだと95〜100分,新幹線との乗り継ぎだと約75分であるが,実際に乗ってみると名古屋まで直通で乗り通す客は少ない.東海道山陽新幹線のようにビジネス客の多い路線だと,急ぐ客の方が多いかも.つまり,思ったよりも直通客が少ないかも,ということ.まぁ,自社路線間の移行なので,営業的にはあまり大きな問題ではないだろう.

【山陽→愛知・静岡県下】新大阪-名古屋間だけリニアをはさむこともできるが,乗換が2回になってしまうので,これは山陽新幹線からの乗り通しが標準になるだろう.

【山陽→新横浜】新横浜駅に用事のある人は少ないので,横浜駅で考えてみる.新大阪-横浜間が新横浜乗換で計150分くらい,リニアを使うと新大阪-品川間が67分,10分乗換で18分程度乗車で横浜駅まで計105分.山陽新幹線からだと片道4時間を越えてくることも多いので,ここも思ったよりも乗り通しの直通客は少ないかも,リニア優勢.


さて,山陽新幹線はJR西なので,北陸新幹線が新大阪まで到達するのなら山陽新幹線との直通運転を考える可能性は高い(実際,既にそれっぽい発言はある).現在の新幹線新大阪駅がJR東海の駅であり,山陽新幹線が自由に使えるのは南端の20番線程度で,かなり窮屈であることを考えても自社の新大阪駅を何とか持ちたいと考えるのは自然なことだろう.京都が観光の拠点であることや山陽客が北陸本線特急へ乗り継ぐ場合は京都駅が便利なことを考えると,現時点でも山陽新幹線の電車は京都発着にできないか考えているだろう(「レールスター」の時代からそうしたいらしい,という話は聞いたことあり).

北陸新幹線のルートが新大阪駅の北方から直角に進入してきた場合は山陽新幹線方面に直通させるのはかなり難しそうだが,東側から入ってきた場合には,「JR西日本の新大阪駅」がたとえ地下にあっても山陽新幹線と直通させることは不可能というわけではない.

仮に地下の「JR西日本の新大阪駅」が-40mの位置にあり,ここから西に向かって地下線で進んで徐々に登り,阪神高速11号池田線のあたりまで達するには約4kmある.九州新幹線ではない東海道山陽新幹線だけの電車でも走れるような1.5%勾配だとすると,この間に60m登ることができるので,-40+60=20mの高さまで登れる.ということで,何とか山陽新幹線の高架橋までたどり着けそう.

【山陽→京都】毎時何本か運転しなければならない山陽新幹線の「東京行き」は新大阪駅でそのまま地上駅を通って東海道新幹線に進み,京都駅に達するので乗り通し.九州方面からの山陽新幹線列車は新大阪地下駅を通って北陸新幹線経由で京都駅まで達するようになるかもしれないので,この区間の山陽新幹線から東海道新幹線への乗り通し客は大幅減になるかも.現在においては山陽→北陸線特急の乗り継ぎは新大阪駅よりも京都駅の方が便利なので,この区間の利用客である.だが,北陸新幹線が新大阪まで開通すると,この客は新大阪から北陸新幹線に移行してしまうので,その分の山陽→京都の客も減.

結局のところ,リニアと北陸新幹線開業後の東海道新幹線の名古屋以西の客層としては…

山陽→京都(大幅減),山陽→米原(大幅減),京都→名古屋(リニア乗継ぎ含む),山陽→愛知・静岡県,京都→愛知・静岡県,北陸方面→名古屋以東

つまり,東海道新幹線新大阪-名古屋間はマイナーOD客と京都-名古屋間客用支線状態ということだね.あとはリニアのチケットが満席で買えなかった消極的利用者かな.

JR東海はリニア開業後の東海道新幹線のために沿線に京都を残したのかもしれないが,その京都関係の客についても北陸新幹線の京都-新大阪間が建設されると客を持って行かれてしまう可能性が出てきた.京都は政令指定都市であるとともに,観光地なので,山陽→京都の旅客の量は,雑魚ではない結構な量になるかも.

米原からの乗入れを認めておけば,これは防げたかもしれないが,覆水盆に返らず状態. …さらに,つづく

 

 

“雑魚な客数のために面倒なことできるかよ!” と返答してJR東海が失ったかもしれないこと(その1)

先日は奈良がやっちまったかもしれない話を書いたが,今回はJR東海がやっちまったかもしれないお話.話が長くなりそうなので,今回は(その1)である.

JR東海については,自治体からは”こっちからだと話を聞いてすらもらえないくせに用のあるときには向こうから接触してくる”とか,広告出稿停止をおそれたマスコミについては,持ち上げこそすれども課題指摘してくれない状態なので,存外裸の王様状態なのかな,と思う今日この頃.実は大きな工事をしたことがないので,根回しが下手で,話が表沙汰になってから”聞いてねぇよ”状態だという話も.

さて既に誰もが知るように,北陸新幹線の米原ルート,すなわち敦賀から米原まで短区間の線路を建設し,米原駅で東海道新幹線に北陸新幹線電車を乗り入れ,新大阪まで到達するという案については,JR東海が色よい返事をしないので事実上リジェクト状態にある.今年行われた与党PTから国交省に対して行われた調査依頼についても,よく見ると米原ルートは直通運転ではなく米原駅で乗換という条件だ.

この「事実上リジェクト」の理由については,東海道新幹線の運行本数が多いので線路容量が足りないだとか,北陸新幹線の電車は遅いから邪魔だとか,保安装置が違うとか,電気系統が違うとか,運行管理システムが違うだとか,脱線防止のシステムが違うだとか,様々な「やりたくない理由(≠やれない理由)」である「方便」を持ち出して説明していたかと思う.リニア開業後については乗り入れを否定こそしていないものの,世間的には「リジェクト」と同等と見なされる口ぶりであり,極めて冷淡な状態だ.

その結果,ついに敦賀-大阪間は完全に別線で建設されそうな気配が濃厚になりつつある.ということで,JR東海は面倒なことはしなくても良くなりましたとさ,目出度し.メデタシ.お・わ・り……でもなさそう.米原からの乗入れを受け入れていれば回避できたいくつかの問題を新たに抱えることになったかも.

まずは,客の確保の問題.現時点ではJR東海の判断どおり,東海道新幹線の客数に比べれば北陸新幹線からの客数など取るに足らない数である.毎時片道15本の東海道新幹線に対し,北陸新幹線はせいぜい2-3本程度にしかならないので”雑魚”だ.

だが,リニア開業後はだいぶ様相が違うんじゃ無いかと思う.

中央新幹線の整備計画格上げ時の審議で使われた資料(交通政策審議会答申)によると,輸送需要量については次のような見積をしているようである.単位は(億人キロ/年)である.

交通政策審議会答申,2%成長時(上段は2005年,下段は2045年)

中央 東海道 合計
442 442
505 314 819

つまり,リニアが開業すると全体での輸送量は何と全体で+85% ! すごい! しかもリニア新幹線だけで東海道新幹線の115%も運んじゃうんだ!

でもちょっと待てよ,と言う数字が混じっている.リニア新幹線は片道毎時最大9本(*)で東海道新幹線比60%,編成定員は1000人で東海道新幹線比76%,営業時間帯はおそらくちょっと延びるので東海道新幹線比110%くらいかな.そうすると,単純計算で東海道新幹線比50%程度の能力になるので,東海道新幹線比115%も運ぶ,という想定は結構マユツバものかも.おそらく,航空からの客がたくさん乗ってくるようになるという想定であるとともに,容量制約の基準が甘い計算の気がする.

(*)ほんとに毎時9本かどうか疑っているんだが,一応そう発表されている.

一方,似たような計算を別の局面でもやっているようであり,中央新幹線小委員会第3回資料では,両者の合計の輸送量が示されており,同じく単位は(億人キロ/年)である.

中央新幹線小委員会第3回資料

中央 東海道 合計
? ? 675

各新幹線の輸送量は資料に示されていないが,仮に最初の表の比率で按分するとこうなる.

中央新幹線小委員会第3回資料の結果を按分

中央 東海道 合計
417 258 675

これでも中央新幹線の輸送量が東海道新幹線の90%であり,先ほど書いた50%程度の能力しか無いにしては多い.東海道新幹線の席には2-3割の空席があるのでそれを考えるとリニアの席が完売していればギリギリ実現できそうな数字になった.

さて,東海道新幹線の客数は減った.どの程度減ったかというと2005年の442から258へと減ったので,▲41%である.

毎時15本から41%減らすと毎時9本弱になった.6本分の線路容量が空いて,米原乗入れを断ってなければこの分をリセールできた.まぁ,こういう客数なら16両編成で運転する必要も無いかもしれないので,12両編成にするかもしれない.そうすると本数は1.33倍にする必要があり,15×(100%-41%)×1.3333=11.8本.これでも3本分余る.やっぱりリセールできたね.

幹部のこれまでの発言・失言によると,リニア運転開始後は東海道新幹線には大車輪で稼いでもらわないと帳尻合わないようなので,(東海道新幹線と同程度の利益率にはならないかもしれないが)この遺失利益はもったいなかったかも.

東京近辺なら通勤用駅を新設して短距離新幹線を運転するという使い方ができるが,関西ではそういった距離帯に相当する滋賀県と揉めてしまったので,今さら新駅設置…するのかしら? やっちまったものは仕方が無いが,今後は神奈川県や静岡県と揉めないようにするのが得策だねぇ…あぁぁ,静岡とは既に揉めてたか.じゃぁ,神奈川県とは意思疎通をちゃんとしておいた方が良いかも.

というとで,将来の線路容量の余裕分をリセール(あるいは活用)するという事業は,関西方面では閉ざされた模様.まぁ,それだけで済めばよかったかもしれないんだが… (つづく)