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ほらな…

今ごろになって言ってもねぇ.首相がこうつぶやいているらしい.

読売新聞:消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう

元記事はこちら:http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160227-OYT1T50029.html

だから言わんこっちゃ無い.だれか,消費税の最適税率計算しないのかねぇ.ちゃんとデータハンドリングしている経済の研究者なら,できると思うんだけど.首相の周りの人でも「止めとけ」って言ってた人はいたと思うぞぉ.

金融緩和ばかりしても,適切な投資先が無ければ金がダブつくだけで,実体経済は良くならない.見かけの数字が変化するだけ.

じゃぁ,何が適切な投資先かというと,生活上の,あるいは経済活動上の具体的な困りごとを改善する政策が適切なはず.

日本の困りごとというと,エネルギーや食料生産が海外頼みだとか,国土面積の割に細長い形が故に意外と移動に時間がかかるとか,田舎が疲弊しているとか,いろいろあるぞ.

何が良い投資先か,目利きはセンスの問題かも.

路面電車の地下線

タイトルが,それ自身,矛盾しているじゃぁ無いかという指摘は置いといて,海外のLRTについて調べているとしばしばお目にかかるのがこういう施設.

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路面電車の地下線である.日本ではまずあり得ない.

なぜ日本ではあり得ないかというと,日本では原則として鉄道整備は独立採算であるからだ.つまり,地下線をつくったならば,その建設費を運賃で払わなければならない.

例えば1kmの地下線を100億円でつくったとしよう.この100億円を運賃で支払うとする.地下線に乗り入れてくる電車の客は,平均5km乗車して200円支払ったとすると,1kmならば40円分である.

100億円÷40円/人=2億5000万人

電車には毎便100人ずつ乗っていたとすると…

2億5000万人÷100人/便=250万便

往復計で5分ごと,朝6時から24時までの18時間運転されていたとして…

18時間×(60分÷5分/便)=216便/日
250万便÷216便/日=11574日=31.6年

運賃を全額建設費の支払いにまわしても30年以上かかる.車両費や電気代,保守費,人件費,利払い等々の入っていない段階でこれであるので,事実上,運賃で地下線の建設費を払うなんてのは不可能である.

そもそも,朝から晩まで5分ごとにほとんど満員のLRVが走ってくるとの設定に無理がある.

つまり,こういった「路面電車の地下線」は独立採算の下ではできない施設,ということになるわけだ.インフラ整備の根源的な考え方が違う,というお話.

フェリーで和歌山→徳島

大阪から徳島へは,今や高速バスが当たり前だが,和歌山育ちの者の常識としては,やはりフェリーである.和歌山港行きの特急に乗って終点下車.専用の連絡割引切符も発売されている.

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確か昔はこんなに閑散とはしてなかったと思う.ほとんど1時間毎に出港していて,夜中も運行されていたと思うが,今は昔.

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トラックの輸送は今も健在なので,旅客はトラックのついでの輸送になっているのが実態かも.

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乗ってしまえば,あとはゆったり好きなように.

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しばらく行くと…ここが紀淡海峡.和歌山県民には友が島水道と言った方がわかりやすい.真ん中に写っている島が友が島.左が淡路島.右は和歌山の加太である.距離的には大して離れていない.ここに橋を架けるか,トンネルを掘るかが大問題.けっこう深いんだよね.

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さらに小一時間行くと,鳴門海峡.橋が見えるが,大鳴門橋をこのアングルから見る機会はなかなか無い.よく見ると,わずかに蜃気楼が出ているかも.(写真をクリックすると拡大)

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拡大して,ちょっとメリハリを付けると,こんな感じ.確か,16両編成の新幹線対応(すれ違わないことが条件)の道路鉄道併用橋である.

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そうか,やっぱりアカンか…

記事の冒頭と同じく,本当にそういう話が出ているのなら思わず頭を抱えたくなった.

思わず頭を抱えたくなった。9日に大阪市内で開かれた「副首都推進本部会議」の第2回会合。大阪の副首都化や二重行政解消を目指し、府と大阪市が昨年末に設置した新組織だ…情報源: 【from社会部】大阪城で10万人盆踊り、ゲーム大会…残念な「副首都会議」、思いつきの的外れ放談でいいのか(1/2ページ) – 産経WEST

大阪における「副首都」の議論は,国策としての側面というよりは単なる地方振興策としての議論の色が強いと思っていたが…

「大阪城で10万人による盆踊り大会を」(作家の堺屋太一氏)、「大阪で若者が集うゲーム大会を」(元東京都知事の猪瀬直樹氏)-。

…これってマジすか? 猪瀬さんの本,ちょうど読んでたところなんで,今度こそまともなブレーンが来たかと思ったんだが,そうか,やっぱりアカンか…

新聞記事の精度:朝日新聞編(補足)

この話の補足である.

「(2)既設新幹線の譲渡収入の一部」は国鉄時代に建設した新幹線をJRが取得した際の対価であり,国鉄時代に建設した新幹線は運賃収入が原資だという話をした.

おそらく「国鉄時代に建設したのなら,28兆円の債務を残したまま国鉄は破綻し,結局は税金で埋めたことになっているから,やはり税金ではないか」との疑問が生じたかもしれない.今回はその部分の補足である.

国鉄の債務が膨らんだのは,鉄道路線を作り続けたことが原因であるとしばしば指摘されるが,それよりも,1)職員数が多すぎた,2)利率の高い資金調達をしてしまった,あたりの方が効いていたかと思う.職員数については,国鉄時代の40万人以上から,国鉄再建策を経てJR化までに概ね半減している.

利率の高い資金調達…て何だ,ということだが,確か資金源は財政投融資(財投)であったかと思う.財投の資金源は郵便貯金と厚生年金ではなかったか.つまり,国鉄は郵便貯金と厚生年金の焦げ付き案件であったわけだ.

通常の金融機関なら,融資案件がうまくいっていないのなら利率を下げるだとか,借り換えるであるとか,返済額を減じるとか,そういった再建策を出すのだろうと思うが,ここは違った.低成長時代に入っているのに利率は高いまま.借り換えも許さずに,貸し続けたわけだ.

郵便貯金の利率が民間銀行よりも高い時代が続いたことは比較的記憶に新しいところであるが,つまりのところ,郵貯や厚生年金を通じて国民に資金が流れたわけである.そういう観点からすると,貨物駅の広大な敷地を売却したり,新幹線をJRに譲渡したりしてもなおも残った借金を税金で穴埋めするというのは,さほど不合理な話でもないように思われる.

話を整理すると,国鉄時代の新幹線についても,一見,国鉄債務の税金による処理を通じての税金による建設負担のように見えるが,実は国鉄債務の税金による処理は財投の失敗による資金の国民への散逸が主たる原因であり,新幹線が税金で建設されたわけでは無い(つまり利用者負担である)ということである.

 

 

新聞記事の精度:朝日新聞編

2016/2/7付けの朝日新聞の社説.相変わらず十分なリサーチせずに記事を書いている模様.(かなり以前に,お宅のネット記事,間違ってますよと指摘したら,こっそり記事削除してたという新聞社である.)

北陸新幹線 大阪延伸は必要か
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

記事は毎日更新されているようなので,要点をかいつまんでツッコんでおこう.

この国にいま、新たな新幹線がどれだけ必要なのか。まずそこから考えるべきだ。

東海道新幹線建設時から,折に触れて噛みついている案件で実に立派である.東海道新幹線は不要といってたと思うが,50年経って感想はどうだろうか.

 北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市へ延ばす計画の早期着工論が、…(中略)… ちょっと待ってほしい。巨額の建設費はどう捻出するのか。国の財政難や人口減を考えたとき、大阪延伸は喫緊の課題といえるのか。疑問は尽きない。

いわゆる整備5線の中で最も客数が多い区間が北陸新幹線の西部区間だということを知らないんだろうな.さりげなく「巨額の建設費」と書いているが,例えば10年間で1兆円を支出して建設したとすると,その間の国家予算の累計は900兆円から1000兆円であり,0.1%程度しかないんだが.財政心配するのなら,クローズアップするところ間違ってますよ.(朝日新聞をはじめ,いくつかの新聞は数字に弱い傾向あり.)

地域の要望に応じ、新幹線をどんどん延ばせる時代ではないことを認識すべきだ。与党側には、夏の参院選で関西や北陸の有権者へのアピール材料になるとの思惑もあるようだが、「我田引鉄」などもってのほかだ。

高速道路や国道バイパスの話と混同してませんか? どんどんも伸びてないんですけど.件の区間は整備計画,つまり段取り済めば工事をしてもいいですよという状態で40年以上経過してしまっている区間なんですけどね.

ただ、新幹線建設費は原則として国民の税金でまかなわれる。国の借金が1千兆円を超す財政状況で、新規着工は努めて慎重に判断すべきだ。

新聞記事を何十年も書いていて,重要案件だと思うのなら,ちゃんと取材しましょう.少し前まで,この新聞社のwebサイトには,新幹線の建設費はJRが負担していると書いてありました(今は削除).現在は,公設民営ですので,一見,税金を大量に投入して建設………しているように見えますが,そんなことは財務省が許さないので,税金投入しているようなフリをして国庫への依存を最小限にするような工夫がされてましてね,知らないんでしょうね,取材してないから.

基本は,「国:地方=2:1」で建設して,完成後にJRがリース料を支払うというふうになっているんですが,負担者の項目を詳しく書くとこうなります.平成27年度事業費を例にしてみましょう.

(1)国(補助金):780億円
(2)既設新幹線の譲渡収入の一部:0億円
(3)借入金等(既設新幹線の譲渡収入の前倒し活用):0億円
(4)地方公共団体負担金:377億円
(5)貸付料等:468億円

このうち,「国:地方=2:1」の国扱い分にしているのが(1)〜(3)である.

さて,まずはわかりやすい部分から説明すると,「(5)貸付料等」とは,整備新幹線(東北新幹線の盛岡以北や九州新幹線など)の完成部分をJRに課すことで得られる収入であるので,税金ではなくて新幹線の利用者負担分である.なので「国民の税金」ではない.

次に「(4)地方公共団体負担金」については,ここの部分は税金である.地方負担分は交付財措置という国からの資金充当もあるが,いずれにせよ税金であることは確かである.

以下,段々とわかりにくくなってゆくが,次は「(2)既設新幹線の譲渡収入の一部」はこうである.国鉄時代に建設した新幹線(東海道.山陽,,東北,上越)は,JR発足後も国有資産のままであったため,これをJRが長期ローンで買い取った.ローン払いは2種に分けられて,そのうちの金額の大部分を占める部分は25年あまりのローンになっており,毎年JRが数千億円ずつ支払った.その支払いの大部分は旧国鉄債務の穴埋めに使われたが,毎年約700億円ほどが整備新幹線の建設費として使用された.つまり,国鉄時代の新幹線資産が形を変えたものだ.じゃぁ,国鉄時代の新幹線がどうやって建設されたかというと,これは税金ではなくて鉄道債券の発行とそれの償還つまり運賃収入が原資なので,つまりのところ,国鉄時代の利用者負担→初期の新幹線→JR買い取り→整備新幹線の資金という金の流れなので,実は利用者負担である.長期ローンは最近になって終了したので,今は0億円になっている.

「(3)借入金等(既設新幹線の譲渡収入の前倒し活用)」は,上の(2)を前借りするシステムのことなので,(2)そのものである.つまり,国鉄時代の利用者負担→…→整備新幹線の資金,つまり利用者負担である.

「(1)国(補助金)」は,一見,純粋な国費(税金)に見えるが,これにもカラクリがある.上の(2)の長期ローンであるが,25年あまりの分の他に,60年払いの分もあり,これが毎年約724億円になっている.つまり,780億円のうちの724億円は実は利用者負担である.色を付けてもらった56億円が純然たる国費であり,税金分である.国民1人あたり税金としての新幹線の建設費負担は50円くらい.

ちょっと前の道路投資が10年で50兆円とかいうのと比べると,文字通り桁違い(3桁くらい違う)なので,これを理解せずに記事を書いているとすると,朝日新聞は数字に弱いという結論に至る.少なくとも,ドヤ顔で書いてそうな「新幹線建設費は原則として国民の税金でまかなわれる」は正確ではないですね.

敦賀―新大阪間は特急で1時間15分ほどだ。新幹線にすれば30~40分短縮できそうだが、巨費に見合う効果といえるか。

十分ですけど…東京-名古屋間の所要時間を60分短縮するために,5兆円以上投資しようというプロジェクトもありますが,そこは叩かないのかい(新聞広告の出稿が無くなるかもしれないけど).

与党と地元には、「早期着工ありき」ではない議論を望みたい。そうでなければ、多くの国民の理解は得られまい。

昨今の新幹線の整備で,国民に新幹線の重要性がますます浸透してきてますが…お宅もそれを拾って記事書いてますやん.

新聞各紙には,「反対ありき」ではない議論を望みたい。そうでなければ,多くの国民の理解は得られまい。

Google先生が大量の情報を教えてくれる時代だ.新聞記事は正確な情報収集と分析による記事のクオリティが命.反対論陣張るのも結構だが,まずは基礎情報の収集と理解を.

#こんだけ新幹線に反対しているんだから,当然朝日新聞の社員は新幹線なんてクソな乗り物には断じて乗らないんだよねw

誰も聞かないのね

よく北陸新幹線は東海道新幹線に乗り入れできない,という.

その理由は,東海道新幹線が過密だから,東海道新幹線と北陸新幹線のシステムをつなぐには費用がかかるから,だという.

でも,誰も当事者に聞かないのね.

東海道新幹線は片道いったい何本の列車を通す能力があって,今何本の列車がとっていて,どの区間に空きは何本分あるのですか?

とか,

東海道新幹線は何分ごとに列車が運転できて,今何本走っていて,何本分空いているのですか.

とか,

「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」のシステムを接続するには何億円かかるのですか?

とか,

「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」を米原で接続する場合のシステム改修費用と,京都駅で接続する場合のシステム改修費用と,新大阪駅でで接続する場合のシステム改修費用は,それぞれ何億円なんですか?

とか,

米原で接続するのが高くて東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転できないのなら,新大阪で東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転するのも費用が高くてできないんですよね.

とか.w

福井-新大阪かがやき55分

この試算によると福井-新大阪間が…

オリジナル小浜ルート173km,かがやき50分,はくたか61分
小浜京都経由ルート193km,かがやき55分,はくたか68分

…と書いてあるが,想像するに,概ねこういう計算かな?

のぞみ号の表定速度=515.4km÷150分=206.2km/h
ひかり号の表定速度=515.4km÷180分=171.8km/h

■オリジナル小浜ルート
173km÷206.2km/h=50.3分
173km÷171.8km/h=60.4分

■小浜京都経由ルート
193km÷206.2km/h=56.1分(+6分)
193km÷171.8km/h=67.4分(+7分)

当たらずとも遠からず,か?
(よくやる方式)

■舞鶴をまわったとすると,小浜-京都が概ね55km,小浜-舞鶴-京都が概ね125kmなので+70km.つまり福井-舞鶴-京都-新大阪は約263km.

263km÷206.2km/h=76.5分(+26分)
263km÷171.8km/h=91.8分(+31分)

現行のサンダーバードが106分なので,舞鶴まわると1.5兆円〜2.5兆円かけて15〜30分しか短縮できないことになる.やっぱり寄り道しすぎだな.

#西側の速達便は「きらめき」,各停便は「らいちょう」じゃないのか?

大阪北部ばかりに集めて大丈夫か?

近年,大阪では梅田貨物駅跡地がまとまった土地として注目され,その開発の動向が注目されている.いわゆるウメキタ.

物販オフィスホテルインキュベータ等々いろんな整備がなされつつあり,大阪市の重心は梅田地区に移動しつつある.

梅田貨物線を走っていたのは「はるか」や「くろしお」などであったが,晴れてウメキタにも駅ができて,大阪外環状線(おおさか東線)の電車がそこまでやってくるかもしれない.

新幹線も新大阪じゃなくて,ウメキタに引き込めという意見もある.まぁ,平時ならなんの問題もない.

ところが,平時ではない事態を考えると,あまりこういった北部集中は手放しでは喜べない.

以前指摘したように,もしも全国的な新幹線ネットワークが原案どおり完成し,地図のとおりになった暁には,「新大阪駅」が一番のネックになる.ここが災害テロその他理由で使えなくなると,完全に東西間広域交通が分断される.

北部集中の弊害はそれだけではない.梅田地区は以前から大規模な津波に襲われた場合,浸水の可能性が指摘されている.新大阪も浸水が迫る.リンク先の図は大阪府の試算結果であるが,左上が新大阪駅,左中〜下が梅田地区である.いずれも安心とは言えない.その南も四つ橋筋よりも西は安全ではない.

えっ! 高層ビルに逃げ込めば大丈夫だって?

甘い甘い.大阪のような大都市は地下利用が広がっており,止水するとは思うが,一滴漏らさずに止水するのは難しいだろう.京都の京阪電車も大阪のJR東西線も(開業までだが)大雨で水没したことがある.

それから,大都市は「電気なければ,タダのハコ」(…歳がバレる)状態である.電気の変電所がどこにあるか考えたことがあるだろうか.Googlemapで大阪市の中心部を表示させて置いて「関西電力 変電所」で検索してストリートビューや航空写真を見てみると面白い.変電所の場所として指し示されるのは,たいていビルである.つまりビルの地下.地上の変電所建屋が示されることもあるが,引き込まれているはずの超高圧電線も見えなければ鉄塔も見えない.電線はどこ?

大阪市内のメインストリートでは,街路に電柱がないところもある.ここも電線はどこか? 地下である.

地下変電所や地下埋設電力線に津波の塩水が流れ込んだらどうなるだろうか.ちなみに塩水は良導体である.

通信線も地下埋設されているよね.

とかく開発は平時に注目が行きがちであるが,異常時にも気を配ることができるかどうかで本当に良い開発計画が定まるのではないかと思う.

大阪の都市計画プランナーのセンスは,秀吉や徳川を超えられるか?

#なお,京橋周辺も危ない.