北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートについて,他の区間と異なる動きが見られるのは,JRである.
九州新幹線でも北海道新幹線でも,JRが積極的にルート云々をおおっぴらに意見表明することは無かったのだが,今回は具体的なルートの賛否の意見表明をしているように見える.
事実上の営業用の資本についてのことなので,そういった行動に出ているのだろうと思うが,いろいろ意見を言うとうことは,当然,建設費負担の意思があるということだよね?
…と念押し確認してみたくなる今日この頃.
徳島駅前から大阪へとバスに乗ろうとした.ここの区間は明石海峡大橋が開業して以降,徳島-舞子-三宮とか,徳島-梅田-なんばとか,徳島-なんば-梅田とか高速バス路線がいくつかあって,バス会社も異なっていたりする.
バスのことはあんまり詳しくないので,「高速バス」と大きく書いている案内所に行って聞いてみる.
私:大阪に行きたいんですけど…
案:19時30分で舞子に行くか,19時45分のなんば経由梅田行きか,20時の梅田経由なんば行きかですね.うちのバスなら20時発ですけど,19時45分はあっちの乗り場で運転手に直接払って下さい.
どうやら,行き先によってバス会社が違うようである.ということで,「あっちの乗り場」に行ってみる.
私:大阪に行きたいんですけど.
別:大阪のどこですか.
私:梅田に行きたいんですけど.
別:乗車券は持っていますか?
私:いいえ.
別:じゃぁ,運転手に直接払って下さい.でも,梅田ならあっち(最初にたずねた乗り場)の方から出る20時発の方が早く着くかもしれませんよ.直接梅田に行きますから.
私:あっ,そうですか.じゃぁ,あっちに行ってみます.
どうやら経由地の違いによって着く時刻が違うようである.再び元の案内所へ.
私:大阪の梅田に行きたいなら,こっちの20時発の方が早いって聞いたんですけど.
案:そうですか.じゃぁ,3700円です.
そうして,ようやく手書き領収書のような乗車券を入手したのであった.
私:乗り場はどこですか?
案:あっち(梅田に行くなら20時発の方が早いと教えてくれた乗り場)の1番です.
別会社であってもちゃんと客の質問には答えられているという点では評価できるんだが,結果としてはあっちの乗り場に行ったりこっちの乗り場に来たりとタライ回し状態になってしまっていることは確かで,輸送サービス部分そのものはともかく,インフラ部分の弱さを感じた瞬間であった.
やっぱり,鉄道って楽だわ.
この話の補足である.
「(2)既設新幹線の譲渡収入の一部」は国鉄時代に建設した新幹線をJRが取得した際の対価であり,国鉄時代に建設した新幹線は運賃収入が原資だという話をした.
おそらく「国鉄時代に建設したのなら,28兆円の債務を残したまま国鉄は破綻し,結局は税金で埋めたことになっているから,やはり税金ではないか」との疑問が生じたかもしれない.今回はその部分の補足である.
国鉄の債務が膨らんだのは,鉄道路線を作り続けたことが原因であるとしばしば指摘されるが,それよりも,1)職員数が多すぎた,2)利率の高い資金調達をしてしまった,あたりの方が効いていたかと思う.職員数については,国鉄時代の40万人以上から,国鉄再建策を経てJR化までに概ね半減している.
利率の高い資金調達…て何だ,ということだが,確か資金源は財政投融資(財投)であったかと思う.財投の資金源は郵便貯金と厚生年金ではなかったか.つまり,国鉄は郵便貯金と厚生年金の焦げ付き案件であったわけだ.
通常の金融機関なら,融資案件がうまくいっていないのなら利率を下げるだとか,借り換えるであるとか,返済額を減じるとか,そういった再建策を出すのだろうと思うが,ここは違った.低成長時代に入っているのに利率は高いまま.借り換えも許さずに,貸し続けたわけだ.
郵便貯金の利率が民間銀行よりも高い時代が続いたことは比較的記憶に新しいところであるが,つまりのところ,郵貯や厚生年金を通じて国民に資金が流れたわけである.そういう観点からすると,貨物駅の広大な敷地を売却したり,新幹線をJRに譲渡したりしてもなおも残った借金を税金で穴埋めするというのは,さほど不合理な話でもないように思われる.
話を整理すると,国鉄時代の新幹線についても,一見,国鉄債務の税金による処理を通じての税金による建設負担のように見えるが,実は国鉄債務の税金による処理は財投の失敗による資金の国民への散逸が主たる原因であり,新幹線が税金で建設されたわけでは無い(つまり利用者負担である)ということである.
昨日の朝日新聞の記事の件の関連である.あんまり他サイトの紹介はしないんだが,大事な話なので,以下のサイトも一読どうぞ.
今日は定期試験の採点で疲労困憊なので,こんだけ.
#脳内ソースを元にテキトーに記事を書くだけの簡単なお仕事です.
2016/2/7付けの朝日新聞の社説.相変わらず十分なリサーチせずに記事を書いている模様.(かなり以前に,お宅のネット記事,間違ってますよと指摘したら,こっそり記事削除してたという新聞社である.)
北陸新幹線 大阪延伸は必要か
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
記事は毎日更新されているようなので,要点をかいつまんでツッコんでおこう.
この国にいま、新たな新幹線がどれだけ必要なのか。まずそこから考えるべきだ。
東海道新幹線建設時から,折に触れて噛みついている案件で実に立派である.東海道新幹線は不要といってたと思うが,50年経って感想はどうだろうか.
北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市へ延ばす計画の早期着工論が、…(中略)… ちょっと待ってほしい。巨額の建設費はどう捻出するのか。国の財政難や人口減を考えたとき、大阪延伸は喫緊の課題といえるのか。疑問は尽きない。
いわゆる整備5線の中で最も客数が多い区間が北陸新幹線の西部区間だということを知らないんだろうな.さりげなく「巨額の建設費」と書いているが,例えば10年間で1兆円を支出して建設したとすると,その間の国家予算の累計は900兆円から1000兆円であり,0.1%程度しかないんだが.財政心配するのなら,クローズアップするところ間違ってますよ.(朝日新聞をはじめ,いくつかの新聞は数字に弱い傾向あり.)
地域の要望に応じ、新幹線をどんどん延ばせる時代ではないことを認識すべきだ。与党側には、夏の参院選で関西や北陸の有権者へのアピール材料になるとの思惑もあるようだが、「我田引鉄」などもってのほかだ。
高速道路や国道バイパスの話と混同してませんか? どんどんも伸びてないんですけど.件の区間は整備計画,つまり段取り済めば工事をしてもいいですよという状態で40年以上経過してしまっている区間なんですけどね.
ただ、新幹線建設費は原則として国民の税金でまかなわれる。国の借金が1千兆円を超す財政状況で、新規着工は努めて慎重に判断すべきだ。
新聞記事を何十年も書いていて,重要案件だと思うのなら,ちゃんと取材しましょう.少し前まで,この新聞社のwebサイトには,新幹線の建設費はJRが負担していると書いてありました(今は削除).現在は,公設民営ですので,一見,税金を大量に投入して建設………しているように見えますが,そんなことは財務省が許さないので,税金投入しているようなフリをして国庫への依存を最小限にするような工夫がされてましてね,知らないんでしょうね,取材してないから.
基本は,「国:地方=2:1」で建設して,完成後にJRがリース料を支払うというふうになっているんですが,負担者の項目を詳しく書くとこうなります.平成27年度事業費を例にしてみましょう.
(1)国(補助金):780億円
(2)既設新幹線の譲渡収入の一部:0億円
(3)借入金等(既設新幹線の譲渡収入の前倒し活用):0億円
(4)地方公共団体負担金:377億円
(5)貸付料等:468億円
このうち,「国:地方=2:1」の国扱い分にしているのが(1)〜(3)である.
さて,まずはわかりやすい部分から説明すると,「(5)貸付料等」とは,整備新幹線(東北新幹線の盛岡以北や九州新幹線など)の完成部分をJRに課すことで得られる収入であるので,税金ではなくて新幹線の利用者負担分である.なので「国民の税金」ではない.
次に「(4)地方公共団体負担金」については,ここの部分は税金である.地方負担分は交付財措置という国からの資金充当もあるが,いずれにせよ税金であることは確かである.
以下,段々とわかりにくくなってゆくが,次は「(2)既設新幹線の譲渡収入の一部」はこうである.国鉄時代に建設した新幹線(東海道.山陽,,東北,上越)は,JR発足後も国有資産のままであったため,これをJRが長期ローンで買い取った.ローン払いは2種に分けられて,そのうちの金額の大部分を占める部分は25年あまりのローンになっており,毎年JRが数千億円ずつ支払った.その支払いの大部分は旧国鉄債務の穴埋めに使われたが,毎年約700億円ほどが整備新幹線の建設費として使用された.つまり,国鉄時代の新幹線資産が形を変えたものだ.じゃぁ,国鉄時代の新幹線がどうやって建設されたかというと,これは税金ではなくて鉄道債券の発行とそれの償還つまり運賃収入が原資なので,つまりのところ,国鉄時代の利用者負担→初期の新幹線→JR買い取り→整備新幹線の資金という金の流れなので,実は利用者負担である.長期ローンは最近になって終了したので,今は0億円になっている.
「(3)借入金等(既設新幹線の譲渡収入の前倒し活用)」は,上の(2)を前借りするシステムのことなので,(2)そのものである.つまり,国鉄時代の利用者負担→…→整備新幹線の資金,つまり利用者負担である.
「(1)国(補助金)」は,一見,純粋な国費(税金)に見えるが,これにもカラクリがある.上の(2)の長期ローンであるが,25年あまりの分の他に,60年払いの分もあり,これが毎年約724億円になっている.つまり,780億円のうちの724億円は実は利用者負担である.色を付けてもらった56億円が純然たる国費であり,税金分である.国民1人あたり税金としての新幹線の建設費負担は50円くらい.
ちょっと前の道路投資が10年で50兆円とかいうのと比べると,文字通り桁違い(3桁くらい違う)なので,これを理解せずに記事を書いているとすると,朝日新聞は数字に弱いという結論に至る.少なくとも,ドヤ顔で書いてそうな「新幹線建設費は原則として国民の税金でまかなわれる」は正確ではないですね.
敦賀―新大阪間は特急で1時間15分ほどだ。新幹線にすれば30~40分短縮できそうだが、巨費に見合う効果といえるか。
十分ですけど…東京-名古屋間の所要時間を60分短縮するために,5兆円以上投資しようというプロジェクトもありますが,そこは叩かないのかい(新聞広告の出稿が無くなるかもしれないけど).
与党と地元には、「早期着工ありき」ではない議論を望みたい。そうでなければ、多くの国民の理解は得られまい。
昨今の新幹線の整備で,国民に新幹線の重要性がますます浸透してきてますが…お宅もそれを拾って記事書いてますやん.
新聞各紙には,「反対ありき」ではない議論を望みたい。そうでなければ,多くの国民の理解は得られまい。
Google先生が大量の情報を教えてくれる時代だ.新聞記事は正確な情報収集と分析による記事のクオリティが命.反対論陣張るのも結構だが,まずは基礎情報の収集と理解を.
#こんだけ新幹線に反対しているんだから,当然朝日新聞の社員は新幹線なんてクソな乗り物には断じて乗らないんだよねw
よく北陸新幹線は東海道新幹線に乗り入れできない,という.
その理由は,東海道新幹線が過密だから,東海道新幹線と北陸新幹線のシステムをつなぐには費用がかかるから,だという.
でも,誰も当事者に聞かないのね.
東海道新幹線は片道いったい何本の列車を通す能力があって,今何本の列車がとっていて,どの区間に空きは何本分あるのですか?
とか,
東海道新幹線は何分ごとに列車が運転できて,今何本走っていて,何本分空いているのですか.
とか,
「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」のシステムを接続するには何億円かかるのですか?
とか,
「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」を米原で接続する場合のシステム改修費用と,京都駅で接続する場合のシステム改修費用と,新大阪駅でで接続する場合のシステム改修費用は,それぞれ何億円なんですか?
とか,
米原で接続するのが高くて東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転できないのなら,新大阪で東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転するのも費用が高くてできないんですよね.
とか.w
この試算によると福井-新大阪間が…
オリジナル小浜ルート173km,かがやき50分,はくたか61分
小浜京都経由ルート193km,かがやき55分,はくたか68分
…と書いてあるが,想像するに,概ねこういう計算かな?
のぞみ号の表定速度=515.4km÷150分=206.2km/h
ひかり号の表定速度=515.4km÷180分=171.8km/h
■オリジナル小浜ルート
173km÷206.2km/h=50.3分
173km÷171.8km/h=60.4分
■小浜京都経由ルート
193km÷206.2km/h=56.1分(+6分)
193km÷171.8km/h=67.4分(+7分)
当たらずとも遠からず,か?
(よくやる方式)
■舞鶴をまわったとすると,小浜-京都が概ね55km,小浜-舞鶴-京都が概ね125kmなので+70km.つまり福井-舞鶴-京都-新大阪は約263km.
263km÷206.2km/h=76.5分(+26分)
263km÷171.8km/h=91.8分(+31分)
現行のサンダーバードが106分なので,舞鶴まわると1.5兆円〜2.5兆円かけて15〜30分しか短縮できないことになる.やっぱり寄り道しすぎだな.
#西側の速達便は「きらめき」,各停便は「らいちょう」じゃないのか?
近年,大阪では梅田貨物駅跡地がまとまった土地として注目され,その開発の動向が注目されている.いわゆるウメキタ.
物販オフィスホテルインキュベータ等々いろんな整備がなされつつあり,大阪市の重心は梅田地区に移動しつつある.
梅田貨物線を走っていたのは「はるか」や「くろしお」などであったが,晴れてウメキタにも駅ができて,大阪外環状線(おおさか東線)の電車がそこまでやってくるかもしれない.
新幹線も新大阪じゃなくて,ウメキタに引き込めという意見もある.まぁ,平時ならなんの問題もない.
ところが,平時ではない事態を考えると,あまりこういった北部集中は手放しでは喜べない.
以前指摘したように,もしも全国的な新幹線ネットワークが原案どおり完成し,地図のとおりになった暁には,「新大阪駅」が一番のネックになる.ここが災害テロその他理由で使えなくなると,完全に東西間広域交通が分断される.

北部集中の弊害はそれだけではない.梅田地区は以前から大規模な津波に襲われた場合,浸水の可能性が指摘されている.新大阪も浸水が迫る.リンク先の図は大阪府の試算結果であるが,左上が新大阪駅,左中〜下が梅田地区である.いずれも安心とは言えない.その南も四つ橋筋よりも西は安全ではない.
えっ! 高層ビルに逃げ込めば大丈夫だって?
甘い甘い.大阪のような大都市は地下利用が広がっており,止水するとは思うが,一滴漏らさずに止水するのは難しいだろう.京都の京阪電車も大阪のJR東西線も(開業までだが)大雨で水没したことがある.
それから,大都市は「電気なければ,タダのハコ」(…歳がバレる)状態である.電気の変電所がどこにあるか考えたことがあるだろうか.Googlemapで大阪市の中心部を表示させて置いて「関西電力 変電所」で検索してストリートビューや航空写真を見てみると面白い.変電所の場所として指し示されるのは,たいていビルである.つまりビルの地下.地上の変電所建屋が示されることもあるが,引き込まれているはずの超高圧電線も見えなければ鉄塔も見えない.電線はどこ?
大阪市内のメインストリートでは,街路に電柱がないところもある.ここも電線はどこか? 地下である.
地下変電所や地下埋設電力線に津波の塩水が流れ込んだらどうなるだろうか.ちなみに塩水は良導体である.
通信線も地下埋設されているよね.
とかく開発は平時に注目が行きがちであるが,異常時にも気を配ることができるかどうかで本当に良い開発計画が定まるのではないかと思う.
大阪の都市計画プランナーのセンスは,秀吉や徳川を超えられるか?
#なお,京橋周辺も危ない.