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初夢鉄道2016答え合わせ(平成東京地震編)

初夢鉄道答え合わせ,今回は「平成東京地震編」である.

東京オリンピックに浮かれていた熱もさめやらぬ20xx年,悪夢の一つ目が起きてしまった.首都直下地震である.大量の帰宅難民が出たことはもちろん,地盤の軟弱な密集市街地で発生した火災が猛威をふるい,大災害になってしまった.

まだ東京オリンピック自体開かれていないので答え合わせの時期にはなっていない.だが,比較的大きな地震は2016年も数々起きており,東日本でも次々発生している.もはや首都直下で大きな地震が発生していないのが不思議なくらいな状態になりつつある.

比較的近年に建設したビルなどは持ちこたえたものの,首都東京には多数の古いビルや家屋があり,倒壊,火災等おびただしい.地震の規模は阪神淡路大震災程度あろうか.中心部の官庁街をはじめとするオフィス街そのものは助かったが,古くから更新されていなかったインフラ類——上下水道や初期の地下鉄・高架鉄道など——は倒壊したり致命的な破損が起きたりで使えなくなったものが多い.住宅を失った人も多く,仕事どころではない.住宅が残った人も通勤手段が限られていて,日々の生活が著しく非効率になってしまった.知人親類等が被災した人も多く,直接の被災を逃れた人々も仕事が手に着かない.

首都圏の建築物は少しずつ新しい耐震性に優れたものに建て変わってきている.だがインフラ類は橋脚類に鉄板が巻かれたりなどの対策が進行しているものの,全てのインフラ類が「直下地震READY」なわけではないので,はてさてどうなるものか.

あれほど首都機能の移転やバックアップについて検討してきたものの,ほとんど実行されていないので日本全体が機能不全になってしまおうとしている.オリンピックに浮かれている場合ではなかった.今さら言っても仕方がないが.怪しい国籍不明の艦船や航空機が近海をウロウロしている.

首都機能移転やバックアップについては,ほとんど全く話を聞かなくなってしまった.このままでは,「首都直下地震 ≒ 首都機能不全 ≒ 日本全体の機能不全」の構図が実際に生じてしまいそうである.東京オリンピックの施設が云々と騒いでいる間にも着々とXデーは近づいているはずである.

日本国内でちょっと大きな地震が発生するたびに近隣のあまり友好的ではない国の偵察機がウロウロしているのは,既に現実になっている.

東京駅へ達する在来線や地下鉄が機能しないので,東北上越北陸新幹線は大宮で折り返し運転である.東海道新幹線も小田原で本線を引き上げ線にしながら折り返している.リニアはかろうじて開通した直後で,インフラそのものは被害が少なかったが,電気系統や通信系統が不十分で満足に運転できない状態になっている.そもそも,アクセス交通が動いていない.

現在のところ首都直下地震は発生していないものの,発生した場合の緊急輸送体制をどうするのか,などは不明のまま.机上模擬訓練くらいはしていても良さそうなものだが,どうするのかな?

道路も首都高速の何カ所かで落橋があり—防止装置があったはずだが不良品があったようだ—ネットワークが十分機能していない.国道等の一般道は大渋滞だ.

これも特段対策が進んだという話はない.

結局,阪神淡路大震災の教訓はどれほど活かされただろうか.復旧復興作業に入り始めたその時,泣きっ面に蜂の事態が起きた.

専門家の大方の予想どおり,紀伊半島沖を…

「首都直下地震 + 南海トラフ巨大地震 + 富士山爆発」という三連コンボが発生することも不思議ではないが,それぞれの単体の対応も進んでいない状況では,三連コンボへの対応などさっぱり考えてないだろうな.

今回の答え合わせ対象はポストオリンピックを想定しているので,まだ答え合わせの時期ではないが,この1年,ほとんど対応が進まなかったことは事実であろう.

#2016年はあと1ヶ月ほどあるので,平穏に2016年が暮れを迎える保証はなく,まだ結論は早いという話もある.

初夢鉄道2016答え合わせ(地方創生編−2)

「初夢鉄道答え合わせ」の続き.今回は「初夢鉄道2016(地方創生編)」の(その2)である.

一方,リニア新幹線については相変わらず各種の申し出—名古屋以西の区間について何らかの公的資金を投入して早期全線完成するための各種の案など—については,断り続けていた.東京大阪間の鉄道の影響は非常に大きいので,このような態度を受け,企業の大阪からの流出は大きくなり,東海道新幹線の客数の名古屋を境に多段落ちが激しくなってきており,東海道新幹線の客単価が下がり始めていることが幹部の気になり始めていた.

リニアへの公費投入については割合あっさり受け入れた.通常の有利子負債と低利融資では,長期的な影響の差は大きいので(金だけ出して口は一切出さないなどと言うことは通常考えにくいが)背に腹は代えられないと言うことか?

関西の地位低下については相変わらず続いており,大手家電会社が新興国の軍門に降ったのは記憶に新しいところ.

東海道新幹線の客数については,段落ちの傾向はともかく,景気が比較的好調にもかかわらず絶対数が頭打ちの様相を見せつつあり,幹部は気が気ではないだろう.リニア開業で東名阪間の客数の絶対数が大幅に増える算段をしているようだが,全通の20年後には交通行動の傾向自体が変化している可能性は十分ある.青函トンネルは着工から開通まで20年を要したが,開通時には交通行動が変わってしまっており,石油の備蓄タンクにするかどうかが検討されたくらいだ.

北陸新幹線の敦賀以西のルートについては,一時期大幅な遠回りの提案もなされたりしたが,いわゆる小浜ルートの変形である京都経由案が現実視され,実際にそのようなルートで実現した.東海道新幹線へ京都から乗り入れる件についても例のごとく運営会社から突っぱねられたため,京阪間は淀川の南側を経由して大阪に達するルートとなり,山陽新幹線との直通運転が実現した.あれほど北陸新幹線とのシステム統合の費用ガーと叫んでいた割には,あっさりと東海道山陽新幹線と北陸新幹線系統のシステム統合が行われた.これにより,東海道新幹線経由の客はさらに減少することになってしまい,悩ましさを増した.あまり急がない客や北関東の客は,大地震をおそれてなるべく北回りで移動しようとする人が増えている.山陽新幹線沿線と直通することで北陸新幹線沿線への移転を考える企業も増えている.

北陸新幹線の敦賀以西については小浜-京都経由案になりそうな気配である.京阪間についても淀川の南側,さらに踏み込んで京阪奈丘陵学研都市付近経由が検討され始めている.だいたい当たりかな.

山陽新幹線との直通については,まだ見通しは立っていないが,確かJR西の幹部がどうやるのか研究の余地あり的な発言はしていたかと思う.運行システムがぁー,などという話もあるとは思うが,米原とは異なり,新大阪駅を走りながら通過して直通運転することはないので,停車中にスイッチをパチンと切り替えるだけである.在来線と新幹線を直通している例も日本には2例あるし,在来線と線路を共有している例まであるので,まぁ,針小棒大に騒ぐほどのことはないわな.

JR東海がつれない発言を繰り返しているので,リニア開業後の東海道新幹線名古屋以西は名古屋-福井・金沢間,京都-名古屋間,京都-静岡県間,およびリニアのチケットが満席で取れなかった客を運ぶローカル新幹線化がほぼ確定した.たぶん2050年頃に後悔するかも.

リニアの工事は事前から言われていたように,南アルプスで難工事になったが,何とか当初予定通りの完成にはこぎ着けた.2027年秋には名古屋まで開業したが,東京側のターミナルが品川,西側が名古屋のため,北関東から関西に至るには東京駅と品川駅と名古屋駅で計3回もの乗換が必要になり,少なからぬ客が乗り換え無しの北陸新幹線に流れている.東海道新幹線での収益で名古屋開業時の借入金を返済し,大阪延伸工事をするつもりだったが,厳しい状況になりつつある.大阪の企業が中京圏に移転する例があるのが多少の救いであった.

リニアの南アルプストンネルは着工したばかりなので,何ともという状況だ.リニアの他路線との接続の悪さは,いずれ問題になるだろうが,現時点では顕在化していない.

東阪間の客が北陸新幹線に流れることは現時点ではないが,団体客を試行的に東北新幹線と北陸新幹線を直通運転させた列車で運ぶことが行われはじめており,直接の東阪間ではない東阪間利用客が将来的に北回りになる可能性は出始めた.

まだリニアも北陸新幹線も全通していないので何とも言いがたい部分はあるが,前にも述べたように景気の割には客数の伸びが少くなっており,悩ましいだろう.

「新」整備新幹線の検討がなされた際,その他にも多数の新幹線建設の要望があったが,現実的な期間内に建設可能な路線だけが選ばれたために幹線鉄道改良をどうするのかが課題になっている.フリーゲージトレインを当て込んでいたが,なかなか使い勝手の良い設計にすることができなかったため,FGT特急が走っている区間はかなり限定的であり,結局在来線改良もしなければFGT特急を走らせることも出来ないという話になった.このような背景もあり,全幹法の暫定整備手法の規程を台車の重いFGTをも考慮した枠組みに改正されることとなり,暫定整備手法の適用条件もかなり緩和されることになった.

基本計画線から整備新幹線への格上げはまだ行われていない.かといって在来線の改良についても何の方針もない.国の鉄道施策部門の能力の限界であろうか.

フリーゲージトレインについては相変わらず見通しが立っていない.暫定整備計画の中味も相変わらずである.長崎以外にFGTを使うという話も聞かなくなった.

初夢鉄道2016答え合わせ(地方創生編−1)

さて,気がつくともう12月である.マスコミでは恒例の2016年重大ニュース系の記事や番組が出始めている.

当サイトでも年末恒例になりつつある「初夢鉄道答え合わせ」をしてみよう.さてさて,テキトーに思いつきで書いた年初の記事はどの程度当たっただろうか.

今回は「初夢鉄道2016(地方創生編)」の(その1)である.

2015年春に北陸新幹線が出来た後,ずいぶん金沢が注目されてにぎわったせいもあり,地方創生に新幹線は有効だという社会的認識が形成されるきっかけとなった.翌年,北海道新幹線が函館市の北方まで出来た際も,函館まで新幹線で行って道南観光をした後,千歳空港アウトという観光ルートが一般的になり,こちらもそこそこにぎわった.

これはほぼ当たったかな.中央政府の省庁はともかく,地方では新幹線が地方創生の切り札として認識されるようになった.

北海道新幹線についても,マスコミでは当初は北海道新幹線はガラガラだと喧伝していたが,(元々の母数が小さいので絶対数はまだまだ伸びしろがあるけれど)新幹線を使った北海道観光は活性化している.航空が新幹線に置き換わるかと思いきや,流動量そのものが増えているようだ.

妙なプロジェクトに金を出すよりはこっちに出した方が確実だという話になり,財務省の査定は新幹線とそれがらみの案件は通りやすくなった.いわゆる整備新幹線も残工事の完成は時間の問題と言うことがわかってきたため,「新」整備新幹線の策定,つまり基本計画線のうち,有望な路線や区間を新たに整備計画にしようかという話になってきていた.

財務省の財布のヒモは相変わらず固いが,別の方法でリニア新幹線の早期開業や整備新幹線の建設促進のために資金が準備されるようになった.ただし,純然たる新幹線建設費の増額ではなく,低利融資という方法であり,返済は必要である.

基本計画線の整備計画への格上げについてはまだ実現していないが,この一年,基本計画線の建設実現の熱は上がることはあっても冷めることは無かった.

ある程度地域バランスをとりながら,数路線区が取り上げられ,整備計画になるとともに具体的な工事の段取りについても着手された.これまでの整備5線は昭和40年代策定で半世紀以上かかって完成していたため,時間のかかりすぎだと言うことを反省し,現実的な時期に完成できるように資金計画が練られた.新たな整備計画線は,そこそこ客数が多い区間や大都市部における区間など,沿線開発も重視しながらも実際の利用客数がある程度見込める区間が選定されている.

整備計画への格上げはさすがに無かったが,現実的な時期に完成させることは重要との認識はできてきているのでは無いかと思う.これまで整備新幹線の着工等では沿線開発について言及されることはほぼ皆無であったが,北陸新幹線の敦賀以西区間のルート選定にあたって,数値に表れない項目の報告が求められるようになり,その報告として沿線開発について言及されるようになってきた.ただし,まだ開発効果を数値として示して新幹線建設と結びつけることまでは行われていない.

(づづく)

”新幹線なら間に合ってます” と返答して奈良が失ったかもしれないこと

このお話.

北陸新幹線の大阪延伸をめぐり、京都-新大阪間で検討されている南北の新ルート2案のうち、関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)を通る「南側ルート」について与党…

情報源: 北陸新幹線「京都―新大阪」間に“第3のルート” 知事の意向受け奈良回避、与党が国土交通省へ検討要請

これまでの整備新幹線沿線各地と比べて負担額そのものは大したことが無いが,(今さら言っても遅いけど)リニアに気を取られて奈良が失ったかもしれない将来のポジションのお話.逃した魚は超デカい.

記事では北陸新幹線の南側ルートを打診して『けいはんな学研都市経由では多くの利用者が期待できず「財政負担に見合うメリットがない」と述べた。』とある.どこに駅をつくる想定で打診したのかは定かではないが,//奈良市やその周辺にとって便利な位置に駅をつくってくれ//…と,近隣のどこかの駅に併設させるような交渉をする価値はあったかもしれない.

ご存じのように,中央新幹線が奈良市付近を通過することが決まっている.これは東海道新幹線の代替バージョンアップ路線.北陸新幹線が奈良市付近にきた場合は,これは北陸本線(&湖西線)の代替バージョンアップ路線.構想レベルだが北陸新幹線は山陰新幹線と京阪間の線路を共用する可能性がある.これは山陰本線の代替バージョンアップ路線.

さらに,北陸新幹線が新大阪に達すると,現状の新幹線電車そのものでは難しいが山陽新幹線が京都あたりまで乗り入れてくる可能性は十分ある.というかJR西はずいぶん前からそれを希望していたと思う.つまり山陽新幹線も手に入れる.さらにさらに,北陸新幹線を新大阪経由で関空方面へと直通させるという構想もある.これは特急はるかの代替バージョンアップ.

つまり,上に書いた交渉をしていれば,ほぼ現状の京都市のポジションを手に入れることができた.東海道山陽新幹線だけでなく,国際空港アクセスや日本海側への高速アクセスが可能なポジションである.リニアの分だけ優位なので,100年くらいすると京都市と奈良市の全国的な地位が入れ替わったかもしれないのだ.だが,どうやらそこまでは考えが及ばなかったようである.

千載一遇のチャンスを逃したお話.

この結果,奈良がどうなったかについては,概ね100年後の2100年頃の歴史家がまとめてくれると思う.先見の明って大事だね.

#なお,リニアだけの状態だと「東京まで1時間半,名古屋まで30分ほど,所属する大都市圏の中心部まで1時間ほど,それ以外は特筆すべきもの無し」なので,全国的には豊橋市程度のポジションかな.都市規模的にも同程度だ.

この街にリニアの駅ができるのか?

なかなか訪れにくいのが「飯田市」.豊橋から飯田線でゴトゴトごと.飯田駅ではないらしいが,この街にリニアの駅ができるらしい.

飯田駅からてくてく.

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横町の飲み屋街?

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10分ほど歩くと有名な並木通りに出る.

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中央に広い植栽のある小ぎれいな通り.

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何の並木かというと…

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リンゴだ.

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植栽の両側はそれぞれ一方通行になっている車道だ.

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正式な規制の標識が立っているわけではないが,「歩行者優先」の看板がある.ドライバーの良識に任せる方式か?

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滅多に車が来ないので,事実上の歩行者道路状態.

観光客がわんさか来る前に,静かな雰囲気を楽しんでおくのは今のうちかも.

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北陸新幹線延伸ルート大もめ、過熱する自治体間の綱引き

また揉めてます.

北陸新幹線の福井県・敦賀-大阪の延伸ルートをめぐり、滋賀県が公表した独自の試算結果が波紋を広げている。試算では候補としてあがっている3ルートのうち、滋賀県が推す…

情報源: 【関西の議論】「一方的な主張だ!」滋賀県の独自試算に京都府抗議メール…北陸新幹線延伸ルート大もめ、過熱する自治体間の綱引き

どこかが何かの試算をすると,誰かが噛みついたりするということが繰り返されているが,どの試算を見ても「変だな」と思う結果自体はほとんど無くて,概ね妥当な結果に見える.数字はね.

じゃぁ,その試算結果のうち,数字のもっとも良いものが最適実行可能解かというとそうじゃないのが悩ましいところ.

プレイヤーが多数いる場合,全員がベストの結果を享受できるような解はまず無い.誰かが「親(胴元)」になって,ベストではない結果を甘受しなければならないプレイヤーに対して「補填」や「補償」をすることを前提に調整すれば,とりあえず一定の結論に帰着はできる.

だが,だれも親や胴元になる気も無く,我こそはベストの果実を頬張るべきだと言っている限りは,自然ととある結論にたどり着く,というのは難しそう.

まぁ,本来なら調整役は国なんだけど,機能してないよね.日本の鉄道政策.

鉄道ルート問題は北陸新幹線だけに限らず,高速鉄道一般ですね.プレイヤーは府県だけではなくて,国や鉄道会社も含みます.鉄道会社も自らがガリバーだということの自覚が無いケースが多そう.

#噛みつかずに傍観するだけ,という選択肢もある模様.

国の不介入「文書に」JR東海社長要望

国から低利融資を受け、リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しするJR東海の柘 – Yahoo!ニュース(朝日新聞デジタル)

情報源: 国の不介入「文書に」 JR東海社長、リニアで要望(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

何遍も言うが,リニア新幹線は全国新幹線鉄道整備法に基づく中央新幹線という計画に乗っかってしまったので,資金を誰が出そうが国策以外の何モノでもありません.

全国新幹線鉄道整備法の冒頭には…

この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。

…と書かれており,目的に合致するように整備するのが適当です.金を出しさえすれば,自由に何でもできるわけではありません.そろそろ理解しましょう.

ましてや公的資金を借りてしまえば,その資金投入の目的をも考慮する必要が加わることは当然です.

フラット35で金を借りて家を建てようとすると,技術基準適合住宅でなければ融資の対象とならなかったり,特定優良賃貸住宅供給促進制度で金を借りて賃貸マンション建てようとすると,床面積、構造、広さ、戸数などの条件が定められていたり,それなりに条件は加わるものです.

ちゃんと国策を理解して事業を進めましょう.

………

ところで,3兆円も借りてしまうと,東海道新幹線のリース払いが終わって毎年3千億円以上払っていた分が浮いてきたのと合わせて,2027年頃までには借金しなくても6兆円あまりの資金が確保できて,リニア代払っても資金余るはずなんだけど,その辺はあんまり表で語らないのね.

「借金は5兆円以内」の条件と合わせると,名古屋以西のリニア建設資金問題は既に完全に解決しているはずなんだけど(※),どうして「8年だけ前倒し=名古屋の10年後」なのかな? 税務署が手ぐすね引いて待ってますよ!

(※)そうなるように「3兆円」という額が決められたはずなんだけど.本当は2034年頃には全線開業できるよね.しかも「3兆円」以外の借金無しで.「借金は5兆円以内」の条件で良ければ,「3兆円」の分と合わせて「借金は5兆円以内」だったとしても,資金的には2029年頃には全線開業できても不思議じゃないよね.

リニア新幹線は「第2の国鉄」になる(の?)

この話.

政治家がカネを出すときは、必ず口も出す。政府が資金援助すると実質的にJRは再国有化され、「第2の国鉄」になるだろう。

情報源: リニア新幹線は「第2の国鉄」になる 安倍首相の「ヘリコプターマネー」は昭和型 | JBpress(日本ビジネスプレス)

…ならないですよ.

国鉄破綻時の借金の額は一桁違うし,国鉄破綻時の借金の金利も現在貸し出そうとしている資金とは比べものにならないくらい高金利だったし,状況が全然違うんですが.(街金で夜逃げした人がいることを理由に,住宅ローンを借りてはいけません,と言っているようなもの)

国はリニアの開業大幅前倒しを期待して金を貸し出そうとしていますが,実際にはカネを借りなくても出来る程度の前倒ししかしそうにないので,結局はJRの経営が楽な方向に動くでしょう(むしろ「第2の国鉄」とは逆の方向).

「第2の国鉄」云々のセンセーショナルな話を書きたいと考えているなら,高金利で借金を背負わされている案件を調べてそれを取り上げた方が社会的意義の高い記事が書けます.

(ヒント:地方自治体がどこからどの程度の金利で借金をしているかを調べてみましょう)

「目立つ記事=いい記事」とは限りませんので,念のため.

 

 

毎日新聞社説の精度(リニア新幹線公費の投入は話が違う…の件)

この話.

 JR東海が建設中のリニア中央新幹線に、国の資金が投入される方向だ。政府は近くまとめる大規模経済対策の柱にリニア支援を据える。  国が財投債と呼ばれる国債を発行して約3兆円調達し、それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。同社の負担が軽くなる結果、借金の残高が一定以下に減るまで待つ予定だった名古屋−大阪の着工を早められ、完成を現在の2045年から最大8年前倒しできるという。

情報源: 社説:リニア新幹線 公費の投入は話が違う

中央新幹線計画は国策の全幹法ベースの基本計画線であり,それに乗っかってリニア新幹線計画が国の審議を経たわけだ.JR東海自身も勘違いしているようだが,国策にがっつり載っかったプロジェクトなので,そもそも論として「手も口も出すな」は無理がある.

計画内容の審議は通常の鉄道計画(鉄道事業法ベースの私的事業)とは異なり,全国新幹線鉄道整備法という国策に従って審議されたわけであり,国益に資するかどうかが主要な視点なわけだ.今回の3兆円貸し付けは,このまま民間に任せているだけでは国益を損なうとの政策判断がされたわけだ.

「整備新幹線のような公的資金による国家プロジェクトの位置づけであったら、JR東海単独の事業として認められただろうか。」と書いてあるが(…この文章,国家プロジェクトならJR東海の事業じゃ無いだろ,新聞屋の文章として恥ずかしくないのかなという基本的な指摘はさておき),東京大阪間の鉄道なので,通常タイプの新幹線としても事業は有望なレベル(おそらく整備5線よりも有望なレベル)であり,もしも通常型新幹線なら,整備新幹線の建設費の相場のキロ70億円程度で計算すると,全線約500kmで3〜4兆円程度になる.つまり,この程度の公費負担は不思議な額ではない.

そういう点では3兆円というのは妥当な規模の資金投入だ.

なお,新聞社は勘違い(世論のミスリードを狙った表現?)しているようだが,この3兆円投入は「公費投入」ではなくて「公費の貸し付け」であり,(超低金利ではあるが)返済を要するものである.

それから,「南アルプスを貫く総延長約25キロのトンネル工事など、経験のない難航が予想される。」と書いてあるが,21世紀の現在では,想像を絶するレベルの長さのトンネルというわけではない.社説を書いた人の頭にはシンプロントンネルが浮かんだのかもしれないが,それは20世紀初頭の産物だ.

この25kmトンネルの土被りは1400mらしいが,土被り2000m級のトンネルがスイスで先日開通してるので,この工事ができないなら日本のゼネコンは今後は海外で受注できなくなる可能性があり,必死で貫通させるだろう.

あと「過去の公共事業でみられたように工期が長引き費用が膨張する恐れもある。追加支援を求められ国の負担が増加したり、予定通りに返済されずに国民負担が発生したりする可能性はないのか。」だが,そうなったらJR東海は日本航空と同じ運命をたどることになる可能性があり,JR社は必死になって回避するだろう.その点が通常の公共事業の工事と大きく異なる点である.民間主導の公共事業については何通りか方法があるので,記事を書く前に勉強しましょうね.当然知ってるよね?

 

リニア「国家プロジェクト」化のテキトーな批判記事

この記事で気になる部分(元記事参照)が…

安倍晋三首相が打ち出した経済対策では、リニア新幹線に財政投融資資金を投入し、東京─大阪間の開業を8年前倒しする構想が盛り込まれた。未来投資の看板として「国家プロジェクト」化が鮮明になったが、採算性や経済効果などで先行きを危ぶむ声もある。大阪圏の政財界による活発なロビー活動が政府を動かしたとの指摘もあるリニア計画浮上の過

情報源: リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も

採算については,当の事業主が ”いまいち” 的な発言をポロッと言っていたかと思うので,あんまり良くないでしょう.「国家プロジェクト」化によらず,ですね.

それから,ターミナル駅がイマイチなので,列車の速さの割には経済効果についても, ”いまいち” かもしれませんね.東京—大阪1時間で爆発的経済効果があるなら,すでに航空機でその程度の時間で結ばれているので,既に爆発的な経済効果が発生しているはず…なんだがねぇ.これも「国家プロジェクト」化とは関係ない話ですね.記事書いていて,因果関係変だと思わないのかな?

さて,気になったのはその部分ではなくて,1ページ目のこの部分.

「政府の支援なんかいらない。金を出せば政治は必ず口も出してくる。もうこりごりだ。自己資金での計画ができているのだから、(JR東海の柘植康英社長は)財投活用にノーと言ってほしい」――。リニア中央新幹線のプロジェクトに関わったことのある東海旅客鉄道(JR東海)幹部の1人は、吐き捨てるように言った。

例え3兆円の融資を受けなくても,がっつり国策の「中央新幹線」に載っかってるのに,何を言ってるんだろう.鉄道事業法に基づいて,自由に路線を引いて,特認の書類を山ほど作れば国の新幹線の審議会を経由せずとも作れたんじゃないかな.国策に載っけるために,わざわざ全幹法まで書き換えてもらったのに,何言ってんだか.税金対策のために法律も作ってもらってなかったっけ?

そもそも,この会社,営業範囲が他社に比べて変わっているのは国家の意思が働いてのことなんだが,何を言ってるんだか.技術も「日本国有鉄道」由来だし,何言ってんだか.JR他社に比べて営業的に有利な部分だけで営業できるような会社になっているのに,何言ってんだか.

カネ出せるなら何してもいいと思っている時点で,自社の社会的役割を理解していないということでしょうな,この幹部の方は.

さらに同じく1ページ目.

大阪延伸の工事を8年も前倒し着工することは、人手や工期などに相当の負担が発生するリスクがあるという。

いやいや,全部社員でしなくてもいいんですよ.大規模工事したことのないJR東海よりももっと鉄道建設のノウハウをたくさん持った集団もありますから.それから,名古屋以西はアルプスのような難工事区間はありませんので,名古屋開業後10年で大阪開業というのは,工期がほとんど重ならないでしょうから,「相当な負担」は無いですよ.

2ページ目以降にもいくつかツッコミどころがある記事だね,これ.

テキトーに批判記事書いてますね.