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全幹法改正のポイント(定義編-その2)

定義編-その1につづいて,(その2)である.現行法の全文そのものはこちら

前回は,ミニ新幹線とスーパー特急方式を本則に組み込むとともに,160km/h運転の改良路線も取り扱うこととしたが,このほかにも利便性の向上方法はある.客は速い乗り物に乗りたいのではなくて,早く着きたいのである.

「速い」と「早い」.現行法は前者ばかり気にしていて,後者には気をつかっていない.スイスを始め,ドイツも「速い」から「早い」へと概念を切り替えつつある.

スイスの場合の整備目標は,乗換拠点間を運行間隔よりも少し短い時間で結ぶことなので,そのような観点を取り込んで…第二条2の続きである.

「2 この法律において「新幹線鉄道に準ずる利便性を備えた幹線鉄道」とは、以下の各号のいずれか1つ以上に該当する幹線鉄道をいう.」

の4つめの項目.同期運行対応ミッシングリンク線とでも名付けようか.

「四 同期運行対応拠点間連絡線 既設もしくは新設の幹線鉄道路線上の異なる乗換拠点駅間を相互に結ぶ路線であって,この連絡路線の新設もしくは既設路線の改良により乗り継ぎを伴う広域移動に要する時間を効果的に改善できる幹線鉄道」

あと数分早く着いてくれれば,1時間近くも待たなくていいのに…というのを防げるような路線の新設もしくは改良ということである.

日本の鉄道整備で大都市からの利便性ばかり検討されるが,総量の大きさよりも裾野の広さを狙った感じになると思う.商品販売でいうところのロングテール対応かな.

ミッシングリンクという点では,空港などの拠点と新幹線を結ぶという観点も考えられるので,五番目はこういう定義か?

「五 インターモーダル線 空港やバスターミナル等の鉄道以外の交通機関と幹線鉄道網とを接続することを目的とした幹線鉄道」

(四と五はまとめてもいいかも)

(つづく)

全幹法改正のポイント(定義編-その1)

対象編につづいて,「定義編」である.長くなりそうなので(その1).現行法の全文そのものはこちら

全幹法第二条では「この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。」と,新幹線の定義が書いてある.だが,この定義は今となっては古い.

国際鉄道連合(UIC)では,日本の新幹線のような高速で走行できる新線による高速鉄道の基準は,200km/hではなくて,250km/hだ.

ということで,第二条の改正ポイントは…

「この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百五十キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。」

ということで,これで世界基準に合致する.上越新幹線もまもなくこの基準に合致するようになるだろうから,+50km/h自体は単なる基準あわせで,実質的な影響はないと思う.

むしろ大事なのは対象編で追加した「新幹線鉄道に準ずる利便性を備えた幹線鉄道」の定義である.「見た目が新幹線」「構造物が新幹線」というだけでは意味が無いので,ある程度「到達時間が短い」ことを条件として加える必要はある.

まず考えられるのは,ミニ新幹線(新幹線鉄道直通線)とスーパー特急方式(新幹線鉄道規格新線)だが,現行法では,附則という付け足しの「おまけ」扱いである.これを,ちゃんとした幹線鉄道規格として追加することがまず考えられる.

ということで,第二条2として…

「2 この法律において「新幹線鉄道に準ずる利便性を備えた幹線鉄道」とは、以下の各号のいずれか1つ以上に該当する幹線鉄道をいう.

…としておいて,現行法の附則に書いてある項目を改善しながら追加する.まずは「準高速鉄道」あるいは「準新幹線」としてのスーパー特急方式の定義である.在来幹線鉄道以上,新幹線未満の鉄道であり,新線の場合と改良の場合の2種定義する.いずれも速度基準を導入しないと,何でもありになってしまう.

「一 新幹線鉄道規格新線 その鉄道施設のうち国土交通省令で定める主要な構造物が新幹線鉄道に係る鉄道営業法第一条の国土交通省令で定める規程に適合する鉄道であり,主たる区間を列車が百六十キロメートル毎時以上の速度で走行できるもの

二 準高速幹線鉄道 既設の鉄道線路を改良し,主たる区間を列車が百六十キロメートル毎時以上の速度で走行できるようにしたもの

つづいて,ミニ新幹線であるが,短区間の新設というのもアリだと思うので,その部分を追加.さらに,こだま号程度の利便性を要求.

「三 新幹線鉄道直通線 既設の鉄道の路線と同一の路線にその鉄道線路が敷設される鉄道もしくは新幹線鉄道ではない新設鉄道であつて、その鉄道線路が新幹線鉄道の用に供されている鉄道線路に接続し、かつ、新幹線鉄道の列車が国土交通省令で定める速度で走行できる構造を有するものであり,列車の運転区間全体としての表定速度が百三十キロメートル毎時以上の利便性を実現することが望ましい

これだけだと,全幹法の附則を本則に入れただけに近いので…(つづく)

全幹法改正のポイント(対象編)

このお話…

整備方式を定めている全国新幹線鉄道整備法の改正が今後の検討課題との認識を示したという

情報源: 全国新幹線網完成へ、整備方式抜本的見直し要求 自民PT、関空との接続も訴え | 京都新聞

全国新幹線鉄道整備法、略して全幹法.全文そのものはこちら.それの改正が今後の検討課題…らしい…が,リンク先を読んでも金の話しか書いてない.まぁ,表面的にはそこなんだけど,重要ポイントは他なんだよなぁ.金の話だけなら全幹法を改正しなくても,(方針が一貫しないのでオススメはしないが)これまでどおり「政府与党合意」で解決できてしまう.

ということで,今年の新春企画は全国新幹線鉄道を改正するなら,ポイントはどこにあるのか,というお話.まずは,「何を対象とするか」である.

現行法は,第一条で「…新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り…」と書いてあるように,基本的には新幹線を全国的に整備することしか扱っていない.

ということは,基本的には高速新線の建設以外の方法は対象外で,基本計画線ですら無いところは勝手にやってくれ,ということになる.

この法律ができた1970年頃には全国の新幹線網を30年くらいで概ね完成させようとしていたのかもしれないが,たとえ基本計画線であったとしても,数十年放置されているのが実態であり,2020年となった現在も即座に完成される見込みは薄い.

そもそも日本の鉄道整備は,これまでは都市圏内は地方交通審議会が答申をして路線網計画をたて,都市間交通は全幹法が担当して路線網計画を立て…という役割分担だったわけだ.だが最近は地交審の答申も無ければ全幹法も機能していないので,都市交通も都市間交通も鉄道整備は事実上無策状態にある.そして,誰もそれを改善しようとももしない.株式会社に任せておけば,最適な状態になるはず…と,今も思ってるんだろうなぁ.

都市内交通は別途考えるとして,都市間交通は新幹線による方法以外にも手立てを考えるべきなので,全幹法の最初の改正ポイントは…

法律名を「全国幹線鉄道整備法」にする.略称はそのままで「全幹法」.

そして,第一条を

「この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道および新幹線鉄道に準ずる利便性を備えた幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興,さらには地球環境の改善に資することを目的とする。」

として,必ずしも高速新線に拘らない方針を示すというのはどうだろうか.それから,今のご時世,環境対応は組み込むべきかも.

「準ずる利便性」については,別途定義しないと,お役人様が都合良く安いだけの劣化版をどしどし提案する事態になりかねないので,要注意かも.

(つづく)

「観光」vs「新大阪」

新規に新幹線を建設しよう!…というような地方部では,大抵どこに行っても「観光」「インバウンド」というような話をしている.整備新幹線沿線でも基本計画線沿線でもだ.

「MICE」もそれ自体は何かを生み出すわけではないので,「観光」の拡張版だな.

かたや北陸新幹線だ,リニアだという話が主体の「新大阪」周辺については,「観光」「インバウンド」「MICE」の話も出るが,新幹線を使って新規ビジネスを生み出すにはどうすればいいか,ベンチャーをどうやって育てるべきかといった話が出てくる.

手っ取り早く経済的利益を得るには「観光」系の事業を推進するのが王道なのかもしれないが,本当に観光業だけでいいの? 若者が学校を出たら,みんな観光業に就職したいの?

地方の特色を活かした云々,という話もよく出てくるが,地方には観光業しかないの? 他に無いの? 新幹線の開通を機に,日本の重要な,そして名誉ある地位を占めるようになりたくは無いの? 観光業は,それなの?

#観光だけなら,適切なスケジュールが組めさえすればいいので,必ずしも速い交通機関で無くてもいいんだよなぁ.新幹線が手に入ったら,何したいの?

 

ドイツから来た小包の切手(2)

ドイツから古本が届いた話の続き,この切手が貼られていた件である.

左の立派な機関車の牽引する列車がまだである.

Henschel-Wegmann-Zug」と書いてあり,ベルリン−ドレスデン間で走っていた列車の模様.戦前なので,まだ東西ドイツには分断されていない時期やね.

リンク先の情報によると,先頭の機関車は「61型」という175km/h運転対応で,実際には最高速度160km/hで運転された模様.1936年から1939年まで運転されていたらしい.

リンク先によると,途中無停車で100分だったらしい.現在は直通のICで最速1時間59分なので,昔の方が速かった模様.

1939年ならトーマスクックの時刻表(復刻版)を持っているので,調べてみた…が,すでにこの号の改正では姿を消していた模様.

(想像すると…無理して高速運転していたので,インフラや車両の保守に手間がかかって,維持しにくかったのかも)

 

【祝】「あずさ」と「かいじ」当面安泰

山梨県は18日、2027年開業予定のリニア中央新幹線の新駅位置について「甲府市大津町が優位」とする検証結果を発表した。県はJR身延線小井川駅周辺との比較検証を行った結果、1日当たりの乗降客数は同数だが、アクセス性や新駅と小井川駅間をシャトルバスで結んだ場合、乗降客が400人増え、身延線の利用客も増加することから甲府市大津町が妥当と判断した。

情報源: 山梨リニア新駅「甲府市大津町が優位」 県が小井川駅周辺と比較、検証 – 毎日新聞

例えば新宿駅から甲府駅まで,特急「あずさ」「かいじ」で,乗換なしで1時間40分ほど.毎時2本.

リニアができると……

新宿-品川:20分
(乗換):10分
品川-山梨県駅:25分
(乗換):10分
連絡バス:10分
(乗換):10分
身延線:20分

……概ね,計1時間45分.(+乗換抵抗3回分,毎時1本)

やったね,当面特急「あずさ」と「かいじ」は安泰かも.

#クルマ社会の発想から抜け出せない模様.
整備新幹線沿線でもよくある発想のパターンだけどね.

ドイツから来た小包の切手(1)

ドイツから古本が届いた.

その小包にはこういう切手が貼られていた.
(クリックすると拡大できます)

立派な機関車の牽引する列車と,船と鉄道.

まずは右側の切手.「Sassnitz-Trelleborg」と書いてあって,どうやら鉄道連絡船の様子.

ここかな.
(ドイツ側)

(スウェーデン側)
鉄道連絡船のようだ.約100kmを連絡.青函航路も約100kmなので,それくらいの距離.概ね4−5時間といったところか.

ハンブルグから北上してデンマークのオーデンセ,コペンハーゲンを経由する直接鉄路でつながったルートがあるが,距離がかなり長くなるので,現在も使われている模様.フェールマン島経由のルートもあったかな.

切手には「鉄道フェリー100周年」と書いてあるようで,記念切手だ.

一方,機関車の方は……んん?……何だろうな.(つづく)

 

 

再び機を逃した幹線鉄道整備

東日本大震災の後,復興事業が大量に出てきて,その中には多数の道路整備事業なども含まれていた.

単に破壊された道路を再整備するプロジェクトだけではなく,事前防災と称して将来地震等が発生した際に破壊されそうな箇所を含む道路やバイパス的な役割を果たすであろう道路が新規プロジェクトとして提案され,結構多数の案件が実施に向けて動き出している.

だが,その中には鉄道整備に関するものは見当たらなかった.その際に道路系の官僚の方が語っていた言葉が気にかかった.

『あいつら信じられん,千載一遇のインフラ整備を進めるチャンスなのに,何も動こうとしない』

それどころか,発災後,新幹線関連の建設費が減額されていた.その他の鉄道整備予算も増えたという話は聞かない.

8年ほどが経過して,消費増税への対応として26兆円もの経済対策の話が出てきた.インフラ整備として水害対応の案件が多数見られ,それ以外にも空港整備や道路整備の案件も見られる.

ところが,再びその中には鉄道整備に関するものは見当たらないようだ.

『あいつら信じられん,千載一遇のインフラ整備を進めるチャンスなのに,何も動こうとしない』

…空耳が聞こえた気がした.

#もう,あの組織,いいんじゃないですかね.これなーんだ

計画運休前日(金沢駅の場合)

10/12(土)は新幹線や在来線が計画運休するということで,前日のうちに移動しておこうという人が多数.東京駅が大混乱だったらしい.

…で,たまたま前日に金沢駅にいたわけだが,ここも大混乱の模様.

手前のカウンターは,「特設各種ご案内コーナー」のようで,奥の「きっぷうりば」がみどりの窓口だ.窓口に並ぶ行列がガラス張りの部屋の左側出入り口からはみ出し,折り返して右に続き,大規模お土産売り場の入り口で再び折り返し,また窓口入り口近くまで…といった具合.

最後尾の人が窓口にたどり着くには,2-3時間かかりそう.もちろん,自動券売機にも結構な列ができあがっている.

座席の埋まり具合的には,大阪方面の特急列車は全便ほぼ満席.東京方面の北陸新幹線はというと結構空いている.提供座席数が多いのもあるが,窓口の処理能力がネックで,席があっても販売できずに出発してしまっている感じか?

飛ぶのは恥

ちょっと前に経済系の名の知れた先生から伺っていた件がネット記事になっている…

情報源: 欧州で伸びる鉄道利用、理由は「飛ぶのは恥」 | 東洋経済オンライン

政策と価値観が「昭和のまま」の行政や事業者ばかりの日本では即座に実行できる状況には無いが,当サイトでも時々取り上げてきたとおり.

ドイツでは,ドイツ鉄道とルフトハンザ航空が手を結んでおり,例えばシュツットガルト中央駅のホームの時刻表はこんな風にICEとルフトハンザ便が「コードシェア」している.駅には「ZWS」というIATAの3文字コードも割り当てられているようだ.

 

もちろん,フランクフルト空港駅の電光掲示板もこんな感じであり…

 

専用チェックインカウンタまである.(日本でほぼ失敗した「シティエアターミナルではない」)

実現するには,空港に幹線鉄道が乗り入れている必要があるが,新幹線でなくとも在来線特急でもいいわけで,「京都空港行きコードシェア便(=はるか)」ならすぐにでも実現できる.

なお,今なお「きょうと」を連想できるスリーレターコードは「KYO」「KTO」「KYT」いずれも空いているようだ.