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リニア新幹線整備の理由(昔の主張-南海トラフ編)

  • リニア新幹線の昔の必要論の4つ目は,「南海トラフの大地震-東海地震-により東海道新幹線が途絶するので,バイパス路線が必要」というものであった.

これには一定の説得力があり,整備計画審議の段階でも論拠として示されているが,やはりいくつかの指摘ポイントが存在する.

  1. 大地震で新幹線が途絶したケースは山陽新幹線,上越新幹線,東北新幹線でそれぞれ各1回ずつあったが,いずれも3ヶ月以内で復旧している.もしもこの程度であるのならば,わざわざ新線建設をするほどでもない
  2. 数ヶ月程度であるのなら,やや所要時間はかかるが北陸新幹線を全通させておけば,少々我慢している間に復旧できるレベルなのかもしれない
  3. 名古屋以西は南海トラフ地震が発生しても,壊滅的被害になることは無さそうなので,例え北陸新幹線が一部区間を共通使用して重複していても,東西間交通は確保できる
  4. そもそも,名古屋駅(および近傍区間)は大丈夫か?
  5. 名古屋から西側区間の整備論拠も”南海トラフ大地震”なの?

リニア新幹線については無いよりはあった方が冗長性確保の観点から望ましいが,単に一時的な輸送確保なら別策で十分,ということである.それとも,やはり壊滅的な途絶が発生するのか?

東北に行ってみた(石巻市街編)

大震災から2年弱経過した頃,いっぺん見に来ないかという声をかけていただいたので,行ってみた.2012年の暮れのお話し.

IMG_4400まずは,石巻の中心市街.石巻駅付近.もともとシャッター街化しつつあったと思われるが,津波で壊れた店舗の部分が歯抜けになり,アーケードも壊れたままで復旧していない.所々に仮面ライダーの等身大の人形が飾られている.



IMG_4425中心街から川を越えて東側の石巻漁港付近は,市街地に空き地が目立ち,いや目立つと言うよりはほとんど空き地であり,個々がかつて住宅地であったことを想像するのは難しいほど破壊され,そしてきれいさっぱり無くなっている.比較的強固だった建物も,1階部分が破壊され,骨組みだけになっているものも多い.



IMG_4747日和山公園から海沿いをみると,かつての市街地がほぼ消滅している.もともと石巻の旧市街地は,海岸から一段上がった段丘上の地形の上側にあったそうだが,市街地が拡大する際,それまであまり人が住んでいなかった海岸沿いの浜辺が市街地化されたそうだ.上の写真はその浜辺の市街地だった場所.市街地が消滅している.
(2012年12月現在)

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-新首都編)

  • リニア新幹線の必要論として,かつて主張されていた項目の2つ目は,「首都機能移転時における新首都機能のサポート」である.

首都機能移転に関しては何十年も前から議論があり,以下の三点が主な理由になっている.しかし,移転費用が概ね10兆円と見積もられた経緯もあり,国会で決議されたものの,実質立ち消えになろうとしていた.

  1. 国政全般の改革の促進
  2. 東京一極集中の是正
  3. 災害対応力の強化

間もなく国土交通省の担当部署も取り扱いをやめようかというまさにその時,東北〜関東の大震災が発生し,首都直下地震も近いのではという話になり,首の皮一枚で存続になっている.
さて,リニア新幹線との関係であるが,首都機能をリニアの沿線に配置し,機能を相互に結べば東京一極集中を緩和できるのではないか.既存の大都市圏とも短時間で結ばれれば新首都を成立させやすくなる.そのためにもリニアは必要である,という主張であった.現時点でもその議論の結果の一部を確認することができる.
この観点は2014年時点で存在してもいいはずなのであるが,上に書いたように費用の問題で立ち消えになった.再度議論しても良いはずである.いや,首都直下地震がいつ発生しても不思議ではない昨今,是非とも早急に議論すべきであるが,その割には議論は低調である.そんなに時間はないはずであるが,当事者として東京でお仕事されている政治家,官僚の皆様は茹で蛙状態に陥っているのであろうか.
現在の日本の国土構造は,東京におんぶにだっこ状態である.東京終われば日本も終わり.緊急地震速報が鳴るのは今日か,明日か,明後日か?

リニア新幹線整備の理由(昔の主張-経済圏形成編)

中央新幹線計画については,1973年に基本計画が立てられながらも長らく整備計画になることはなかったが,今から10年くらい前はまだ整備計画には格上げされておらず,プロジェクト実現に向けていくつかの必要性の論点が展開されていた.

  • 最初の必要論は,「巨大かつ効率的な経済圏の形成」である.

それぞれが世界でも有数の大都市圏である首都圏,中京圏,京阪神圏を端から端まででも1時間程度で結び,巨大都市圏をつくり出し,経済的な効果を引き出そう,という構想である.この機能こそがリニア最大の効果であるが,いくつかの課題が存在していた.
現時点では若干方向が修正されつつあるものの,10年前の時点では効果の話がリニア新幹線沿線ばかり主張され,まるで整備新幹線5線(北海道,東北,北陸,九州(鹿児島と長崎))と同じような視点が持たれていた.これでは議論が広がるはずも無かった.沿線で友好団体が結成されていたが,これではまるでローカル新幹線であった.
ちょっと計算してみればわかる話であるが,東京-名古屋-大阪間にリニア新幹線が整備されると,都市間の所要時間が短くなるのは三大都市圏沿線相互間だけではなく,接続される「遅い新幹線」沿線にもおよび,全体の効果は沿線相互間だけに比べて数倍はある.リニア新幹線は「男の中の男」「女の中の女」じゃなくて「幹線の中の幹線」である.全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論が必要であった.
残念ながら,リニア新幹線の全国ネットワークの中の位置づけに関しての議論は整備計画のための審議の中でも十分に行われることはなく,整備計画が策定された後の最近になってようやく国土計画の中で位置づけられつつあるようである.議論の手順が全く逆で,これではリニア新幹線の整備意義も整備方法も整備内容も満足に検討されるわけがない.実際,現行のリニア新幹線計画には幹線鉄道ネットワーク計画としては不十分な点がいくつか見られる状態にある.