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初夢鉄道答え合せ(北海道新幹線編)

続いて北海道新幹線編の答え合わせである.

2014年度終わり頃になって北海道新幹線の開業前倒しが決まり,その当時は2030年頃に開業することになった.その当時は,と書いたのは実はさらに伏兵があったわけである.つまり,オリンピックである.2026年の冬季五輪に札幌が手を上げたわけであるが…

今のところ,札幌オリンピックの話もさらなる北海道新幹線開業前倒しの話も出てきていない.

札幌-東京間は1000km以上もあり,新幹線といえども航空からか客を奪うことが難しく,経済合理性の観点では函館延伸も札幌全線開業両方とも,航空と同程度のサービスレベルを提供するのがやっとで交通サービス水準を向上させたとは言えず,厳しい状況であった.

この辺の厳しい状況は白日の下にさらされつつある.青函トンネルの扱いが他の整備新幹線とは異なって特殊な扱いになっていることが大きな原因になっているんじゃ無いかと思う.

そこで…実際に実行された.

一つ目は速度の向上であった.新幹線電車そのものは350km/h運転できるようにブレーキ系統を中心に改良が行われ,同時に盛岡以北の整備新幹線区間の260km/h運転の縛りを緩めることが検討された.結局,盛岡以南と同レベルの騒音ならば260km/h運転にこだわらないということになり,首都圏を脱したあたりから札幌までの350km/h運転が実現することになった.

この辺の動きも新しい話は無いが,整備新幹線区間における速度向上の話は時折聞くので放棄されていないように思われる.しばらく様子見かな.

もう一箇所,問題があった.青函トンネルである.在来線の貨物列車が走っていたため,新幹線が高速走行しているとすれ違い時に貨物列車が風圧で転倒する危険があったため,新幹線は140km/h運転になっていた…

青函トンネル内の速度向上についても,特に新しい動きは無い.

そこで,もう一本トンネルを掘る案が出てきたが長大海底トンネルは工費が高い.そこで,新型の新幹線電車が走ることを前提に勾配をきつくして,トンネル延長を短くすることになった.30‰勾配が採用されたため,トンネル延長は元の54kmから35km程度へと大幅に短縮された.

新トンネルの話はあるようである.”初夢”とは若干異なり,新トンネルを単線の貨物用として掘削し,旧トンネルを原則として新幹線用にするという構想は聞いたことがある.

元のトンネルについても在来線貨物列車だけ走らせるだけではもったいないという話になり,新幹線用の広軌線路を使用してカートレインも運行されることになった.これに伴い旧トンネルは国道指定されることになり,旧トンネルを道路財源で買い取った形となってそれが新トンネルの建設財源になっている.今や青函旧トンネルは国道5号の一部であり,国道5号の起点は函館から青森に移された.新幹線が通れるトンネルが2本になったことで夜間運転が実現し,新幹線を経由する北海道行き夜行便が復活した.

鉄道行政と道路行政の融合は残念ながら進行していない.航空行政もそうだ.相変わらず縦割りで国土交通省が発足して15年以上になろうかというのに,全く相乗効果は無い.

北海道新幹線は計画としては旭川終点であるが,さすがにフル規格は厳しいという話になり,道内幹線鉄道計画は大幅に見直された.主要路線は新幹線と直通する三線軌でミニ新幹線が函館以北の北海道新幹線と直通し.三線軌でない区間は寒冷地仕様のFGTが直通している.こうして道内幹線鉄道網は一新された.

北海道新幹線の終点駅である札幌駅の構造が地下になりそうであったり,あるいは現役の西側になりそうであったりと,どうやら延伸を考えていない構造のようだ.残念.FGTも雲行きが怪しい.

つづく

大阪は副首都になれるか(用地確保編)

前回は副首都の立地場所として,平常時における大阪は悪くないという話であった.今回は「大阪に副首都としての機能を受け入れる空間はあるのか」という話である.要するに用地確保の問題である.

すでにNHKや日銀といった一部の機関は非常時に大阪で全国的機能を代替できるように準備しているという話があったかと思うが,最も重要なのは日本政府そのものの各省庁等をはじめとする機関である.これら機能とほぼ同じものを大阪に立地させるには,(ハコモノ云々という話はあるものの)やはりある程度のハコは用意しなければならない.

東京の霞ヶ関地区(およびその周辺の官庁街)と同程度の面積が確保できるかどうかが一つの目安だろうか.概ね1.5-2㎢程度か.

以下,地図のスケールは全て同じである.


【夢洲案】
大阪府下で探してみると,まず考えられるのは大阪湾の埋め立て地である.大阪湾の埋め立て地である咲洲や舞洲には既にいろいろと立地してしまっているので,夢洲なら今のところがら空きである.「統合型リゾート」と称するカジノ候補地でもある.面積的には十分広い.

だが,カジノはともかく隣の咲洲の高層ビルを大阪府庁舎にしようとして失敗したという黒歴史(長周期地震動に弱かった)がある.津波は大丈夫かな? その上,交通アクセスも今のところ道路が1本,ヒミツの地下鉄トンネルが1本という状況なので,かなり不便である.決定的なのは広域交通の弱さで,新幹線駅まで40-50分以上かかる.

【伊丹空港案】
これについては,ずいぶん前から伊丹空港を廃港にして跡地を首都機能移転先にする構想がある.

航空ネットワークの関空への完全集約が必要なので,”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れが必要であるばかりか,この地区から関空へのアクセス交通整備が必須である.JR宝塚線や阪急伊丹線,阪急宝塚線など通勤鉄道線が近隣に複数あるほか,山陽新幹線も近いので路線をちょっと曲げれば新幹線駅を設置することも困難では無い.高速道路も至近である.大阪や阪神圏の市街地にも近い.ただし,ここを転用してしまうと京阪神圏の空港は全て海岸地帯になり,地震災害時には同時に空港が使えなくなる可能性がある.

【万博記念公園案】
結構便利な位置だが,公園をつぶすことにはいろいろ意見が出そう.

高速道路は至近であり,モノレールや通勤鉄道もある.万博開催期間中には地下鉄が臨時で延伸されていたこともあるので,その気になれば地下鉄もOKであるほか,阪急千里線も近い.新大阪はやや遠いので,東海道新幹線をひん曲げるか,これからつくるリニアの経路をひん曲げるかする必要があるかも.空港は大阪空港まで割と近いものの,関空へのアクセスの課題は多く,迅速な移動が難しい.

【陸上自衛隊信太山演習場案】
やや南北に細長いが面積はある.自衛隊の移転が必要.

近隣に阪和線や泉北高速鉄道線があるので,通勤輸送の確保は何とか可能そうに思える.高速道路はすぐ横を走っている.だが,広域アクセスは課題が多く,新大阪は結構遠いため,リニア新幹線を延伸してここまで引き入れるか,例の”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れ線をこの地区経由にする必要があると思われる.山陽新幹線方面からは,なにわ筋線を新幹線対応で建設してここまで直通させる必要がある.

以上が大阪府下のまとまった土地であろう.いずれも一長一短である.


神戸〜阪神都市圏方面では,まとまった土地が無さそうなので,東方向で探してみる.

【巨椋池跡地案】
大阪市の北東で京都市の南方,木津川,宇治川,桂川の三線が合流する地点の東側であり,かつては巨大な池があった地区である.現在は干拓されて広大な田んぼになっている.

通勤鉄道は京阪と近鉄が近傍を走っているので,その気になれば線路を敷きかえることは可能であろう.高速道路は東西南北に走っているので問題無し.広域アクセスの面では,新幹線駅がやや遠いので(奈良の人には叱られそうだが)ここを副首都にするならリニアはここを通した方がいいだろう.だが,空港については伊丹,関空ともに遠く,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われる.だが,最初に書いたように,この土地はもともと淀川水系の三線合流地帯の巨大沼地であったところなので,地盤が良いとは言いがたく,水害の危険性も高そうなので,あまり高度な利用には向いていないと思われる.

【陸上自衛隊祝園分屯地】
河川近くの沼地がダメなら,じゃぁ丘陵地はどうだろうか.上の巨椋池から10-20kmくらい南に行くと京阪奈丘陵というほぼ手つかずの丘陵地帯がある.その中の国有地はというと,大面積なのはやはり自衛隊がらみである.

ここを転用するには自衛隊の移転先が必要である.近隣の丘陵地帯も手つかずに近く,大面積の確保はしやすい.通勤鉄道は周辺に複数あるが,支線等の延伸は必要である.いずれの線も高速運転向きではないので,大阪市内までは時間がかかる.既存の新幹線駅は遠いので,これからつくるリニア駅はここへのアクセスを念頭に設置する必要がある.奈良市にも近いのでリニア奈良駅とすることもできる.また,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われ,一部の試案にあるように,北陸新幹線と関空アクセス新幹線を接続して空港アクセス鉄道とすることが有効と思われる.

【陸上自衛隊長池演習場】
祝園の近くには長池という演習場もある.ここは他よりやや狭い.

演習場の移転先が必要という点を含めて,上の祝園とよく似た状況である.通勤鉄道はJR奈良線くらいしかない.

以上のように,大阪湾の埋め立て地と巨椋池の埋め立て地とは論外として,大阪府下および周辺にはいくつか候補地はありそうである.


初夢鉄道答え合せ(東海道新幹線編)

続いて東海道新幹線編の答え合わせである.

左寄りのマスコミがいろいろ揶揄していたことに反し,開通したリニアは好調である.だがその陰で従来の東海道新幹線をどう活用するのかが課題になっている.

リニアの議論の陰で,今後の東海道新幹線をどう活用するかの議論があってしかるべきなのだが,そういう話はまだ始まっていない.人口減少社会に突入している状況下において保持するインフラの量が倍増する鉄道会社にとっては,旧来のインフラをどのように活用してどのように増収につなげてゆくか,それは鉄道会社の今後の盛衰を左右するほどの生命線のはずである.放っておいても客が増えると思ってるんだろうか?

東京駅で東北新幹線とスルー運転できたおかげで,…同時に北関東にも東海道新幹線の列車が折り返すための設備を設置した駅が新設されている.

残念ながら東海道新幹線の活用策の議論が進まないので,スルー運転の話も無い.

こういった折り返し設備を活用して長距離列車が首都圏スルー運転されるとともに,時速200km/h運転の快速電車が新幹線線路上で運転されるようになった.この高速快速電車は,車両は英国のclass-395のような列車で,….

かつて,全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画が策定される前は,首都圏において主要各方面に高速通勤新線が計画されていた.東海道新幹線の活用策についても通勤輸送の話があるのかもしれないが,そろそろ新駅計画を含めて話が進んでもいい時期じゃ無いかと思う.(…が,何も動かず)

線路容量に余裕のできた東海道新幹線では,物流サービスも始まっている.少子高齢化の進行に伴い,高速道路を走行するトラックの運転手の確保が問題になっている.

トラック(やバス)の運転手不足は深刻化しているようである.

自動運転技術も進行して高速道路上のトラックのカルガモ走行も実用化されてきているが,異常気象時への対応や非自動化車両との干渉などの課題が完全に解消されておらず,隊列走行による運転手の削減は限定的である.

車の自動運転技術は日々向上しているようであり,比較的道路状態が安定している高速道路については結構自動化の実用化は近いかもしれない.

そこで,東海道新幹線のこだま号のように各駅に停車して荷物を積み卸しする列車が設定されるようになり,高速軽量貨物の輸送に活躍することになった.荷下ろしは自動化されており,サービス開始前に懸念されていたほど停車時間は必要ないようである.重量物は依然としてトラックか在来線の貨物列車で運ばれている.

残念ながら新幹線鉄道網を活用した物流サービスについては,全く話が進んでいない.Amazonがドローンで物品配達しようとしているご時世なのに,である.

東海道新幹線は2015年以降285km/h運転が徐々に導入されたが,その後,一部の直線の多い区間を中心に部分的に300km/h運転が導入されている.だが,曲線が多いので数分の時間短縮にとどまっており,画期的な時間短縮にはなっていない.

東海道新幹線の285km/h運転は(あまり大きな話題になっていないが)始まっている.全列車が285km/h運転に移行した後は,もしかしたら本当に部分的に(例えば米原−京都間などで)さらなる高速化が行われるかもしれない.

リニア開業後の東海道新幹線は,当初は京都と横浜の人々が…ふたを開けると京都発着の客は名古屋駅でほとんどリニアに乗り換えてしまっており,横浜の客も品川駅に向かっているので予想よりも旅客が少なく,けっこう空席の目立つ列車が多い.…リニア橋本駅への出やすさが売り文句になっているようだ.商業ビルについても似たような傾向に見える.

まだリニアは開業していないので,この辺の客の流動変化については何とも…

線路容量がずいぶん空いているので,大阪近辺では関空アクセス列車はリニアではなくて東海道山陽新幹線の支線として建設した方が良いという議論になり,北陸新幹線も乗り入れることになった.…

私案レベルでは北陸新幹線を関空新幹線と直通運転すべしなどという話が出てきている.

当初はリニアと東海道新幹線で半々の客を受け持つ予定だったが,結果はリニアは大人気.あれだけネガキャンしていたマスコミの人々も手のひら返しで賞賛している.東海道新幹線は静岡と京都と北陸方面の人のための支線新幹線のようになってしまい,国土の構造が変わってしまった.

北陸新幹線は開業前はいろいろと揶揄されていたが,実際に開業するとテレビ番組は金沢特集だらけ.はてさて,リニアはいかに.

つづく

大阪は副首都になれるか(平常時編)

副首都なる機能を大阪に置くことが適切かどうか,いろんな面から考えてみよう.副首都は国家機能なので,単なる大阪の地域振興事業ではない.すなわち,大阪の人さえ良ければ良いというものではない.多面的検討は必要である.

まずは何も特別なことは起きていない平常時の場合についてである.

普段の平和な時期における大阪の位置は悪くない.東京からは適度に離れており,西日本に対しての地理的な距離自体は比較的近い.加えて,東京よりもアジア各国に対して若干近く,アジアのゲートウェイ都市になりうるポジションを占めることもできる.

だが,東京が国内の東日本に対して陸路のアクセスがほぼ完璧になってきているのに対し,大阪の広域アクセスは弱く,九州や四国の人々が一堂に会するには東京が便利,などという笑えない状況は続いている.

大阪を中心とする広域道路ネットワークについては,一部まだ工事中/未着工区間もあるものの概ね先が見えている状態である.だが,トラックや観光客はともかく,ビジネスマンが道路を使って広域移動することは希であるので,大阪を中心とするビジネス広域交通は今ひとつであると言える.

つまり,平常時における副首都大阪としての大きな課題は,国内広域アクセスであり,具体的には中央,北陸の各新幹線の完成はもちろん,四国新幹線や山陰新幹線などのネットワークをも完成させることが必要である.同時により遠方の国内や国際交通を担う航空ネットワークの要である空港アクセス時間の短縮も必要である.(逆に,こういった広域公共交通ネットワークを充実させることができないと,副首都には厳しいということ)

なお,関空アクセスについては,これまでにリニア新幹線や通常型新幹線の乗り入れ,あるいはなにわ筋線といった提案がなされているが,リニア新幹線は単線だと役に立たず,かといって複線だと兆単位近くの投資が必要で厳しい.なにわ筋線については新大阪からノンストップで40分などという試算もあるようだが,現状でも1駅停車で48分で到達するので,2000-4000億円の投資の割には効果がマイルドすぎる.なにわ筋線での関空アクセス構想を自画自賛してらっしゃる方もいるが…あんまりインフラプロジェクト構想のセンスないよね.バックのブレインを変えた方がいいと思う.

ちなみに,関空への通常型新幹線乗り入れ構想を”口撃”している人もいるが,フランスのTGVはシャルルドゴール空港に乗り入れているし,ドイツのICEはフランクフルト空港に乗り入れている.スイスのインターシティーはチューリヒ空港やジュネーブ空港に乗り入れているし,オランダのスキポール空港へはTGVの国際版のタリスが発着する.ロンドンのヒースロー空港へは新幹線のような列車こそ走っていないが,ヒースロー急行という準高速鉄道が乗り入れている.フランスやドイツには航空便名の付いたTGVやICE列車が走ってさえいる.

センスのないインフラ構想って恥ずかしいよね.


初夢鉄道答え合せ(リニア編)

さて,年末になってきたので,今年の重大ニュースを振り返ってみよう…と言いたいところだが,単に振り返ってもつまんないので,年始に見た夢が正夢だったのか,逆夢だったのかをチェックしてみよう.まずは,リニア編である.

こんな夢を見た.その夢の中では,リニアの東京-大阪間はもちろん完成している.使いにくいと言われた品川駅はサブターミナル化し,リニアは東京駅に乗り入れている.あまりの所要時間の差があったため,東海道新幹線を使う人が少なくなり,東京駅には14-19番線の6線も必要なくなった.そこで14-15番線だけ残して残りはリニア用ホームに改造されている.14-15番線も東北新幹線と直通できるように配線変更されて首都圏内はスルー運転されており,もはや東京行きあるいは上野行きなどと言った新幹線は珍しくなっている.

リニアの大阪延伸(同時開業)の話は,残念ながら進んでいない.政治家の皆さんは「同時開業」を異口同音に唱えるが,誰も具体的かつ有効な策は打ち出せていない.最近,コンセッション方式なる方法を唱える経済学者もいるが,それって当サイトで1年半以上前に書いた方式の一つ(No.1)だよね.他にも案があるよぉ.

リニアの東京側ターミナルに関しての計画の進化はないので,「初夢」が正夢か逆夢かの判別はついていない.東北新幹線系統と東海道新幹線系統のスルー運転も,見えていない.技術的にはそんなに難しい話じゃないんだけどね.

続いて…

致命的な被害はなかったものの,首都圏でM6クラスの直下地震が発生したことを機に首都機能の本格的な受け皿を関西に求めることになり,ある程度まとまった土地が探された.その影響もあり,リニアの名古屋以西ルートは京都と奈良で揉めていたが,京都でも奈良でもない場所にリニア駅ができることになり,同時に副首都駅になった.副首都機能の稼働開始間もなくして大地震と大津波が太平洋岸を襲い,静岡県下の東海道新幹線の海岸に近い区間では復旧に数年以上の期間を要する被害が出ている.新幹線の線路を内陸に付け替えるべきかどうかで議論が出ているようだが,結論は出ていない.

幸い,今のところ首都圏の直下大地震は発生していないので「正夢」にはなってはいない.がしかし,大地震の危機は過ぎ去ったという話は聞かれない.2011年からもうすぐ5年,そろそろ「のど元過ぎれば熱さ忘れる」ような状態になりつつある.

リニアの名古屋以西についての進展はないので,ルートについても(表面的には)何も進んでいない.「副首都」に言及する政策案を提言する政党も出始めているが,現時点では防災を意識しているのかそれとも関西の振興策なのか判然とせず,目的がぶれたレベルにとどまっている.

首都圏直下地震と南海トラフ地震は独立事象ではなくて連動する可能性が否定できないが,現中央政府は有効な対策を打ち出せないまま5年を消費してしまおうとしている.大阪地方政府も数年を消費したが,かけ声の勇ましさに比べて成果は少ない(というか,「黒歴史」に近いプロジェクトがいくつかあった).

それから…

終点は大方の予想どおり新大阪駅になった.関西空港への延伸の要望はあったものの,空港アクセス客を運ぶほど線路容量に余裕がなるわけではないことが分かってきたため,関空アクセスの改善は別の方法が採用されることになった.航空ネットワークと鉄道ネットワークの結合政策の影響もある.

リニアの西進に手が着いていないので,リニア大阪駅の位置も公式には出ていない.関空アクセスリニア案がお話にならないのは,「夢」を検証するまでもない.

さらに…

リニアは500km/h運転で営業開始されたが,開業後も数々のデータやノウハウが蓄積し,もう少しスピードアップできることが分かってきた.東京-大阪間67分であったものをほんとうに1時間で結ぶべく,600km/hでの営業運転が検討され始めており,試験運転では700km/hも記録されている.

リニアの速度向上の話は現時点ではまだ時期尚早のようであり,「正夢」には至らず.

リニアの完成により三大都市圏のリニア駅の拠点性が高まったので,全国的な幹線鉄道網の再編の気運が盛り上がってきており,同時に便利な鉄道網と航空ネットワークの結合も実現しそうである.

これについても,何の議論もされておらず,この国には幹線鉄道のまともな国策は無いようである.

つづく

 

三線軌+単線並列

「ミニ新幹線」の線路を観察してみよう.区間は奥羽本線の秋田−大曲間である.

写真中央の線路は狭軌(軌間1067mm),右は標準軌(軌間1435mm),右の線路の奥には「新幹線」の車両が走っている.この区間は基本的には狭軌と標準軌がそれぞれ単線で敷設されているという珍しい形態である.

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右の標準軌から分岐した線路が狭軌をクロスして,左側の車庫へとつながる.

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車庫には標準軌用のローカル線電車が置いてあるので,このあたりでは普通電車は狭軌と標準軌の2種類あるようだ.運用がめんどくさそう(JR東日本て,割とめんどくさい車両運用を平気でやってるよね.).

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単線並列なので,信号機もそれぞれの線路に設置されている.そんなわけで,線路の幅の違いさえ無視すれば,まるでヨーロッパの線路(*)のような感じである.

(*)ヨーロッパでは単線並列が普通なので,複線区間では2線ともに信号機が建っている.

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「新幹線」ではあるが,車両サイズはミニ,つまり在来線規格相当なので,トンネルがあっても掘削しなおすこと無く,元々のトンネルがそのまま使える.経費節減.

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途中の小駅は,ローカル列車が発着するホームだけ.「新幹線」は通過なのでホームが無い.経費節減.

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「新幹線」用の線路には,当然ながら時々「新幹線」が走る.

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単線区間ばかりでは上下列車の交換に不便があるので,一部の区間は非常に珍しい三線軌になっている.写真奥に写っている片渡り分岐器は「新幹線」だけが通る.ここから先は,当分三線軌が続くので「新幹線」は走りながらすれ違える.

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橋梁も在来線のものを流用できるので,経費節減.ただし,単線用の橋梁は重心がずれたりするので,使えないこともあるらしい.

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他ではなかなか見られない珍しい分岐器.

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なかなか快調に走る.

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そして,三線軌区間は終了.

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変電所も在来線と同じものを使えるので,経費節減.

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今さら言ってもしょうが無いが,西日本方面でもつべこべ言わずにさっさとミニ新幹線を導入しておけば良かったんだけどねぇ.

一方,そうこうしているうちに東北方面では次の段階へ進もうとしているのであった…

 

羽越新幹線用の空間

有名な話なので,今さらであるが…

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上越新幹線の長岡駅の新潟方面ホームには,「線路予定地」がある.

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富山方面から柏崎などを経てここでいったん上越新幹線と合流するということか? この空間が本来目的で使われる日は来るのだろうか?

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(その他まとめて編)

引き続きこれである.残る項目については,重複が多いので,まとめて記述.

 

「5.二重行政の根絶」

副首都、国際エンターテインメント都市”OSAKA”を実現するためには、大きな投資が必要であり、1円の税金も無駄 にできません。二重行政は典型的な無駄です。現在、二重行政の解消は、大阪会議における“話し合い”がまったく機能 しないまま、依然として二重のままになっています。あらゆる手段を使って二重行政の解消に正面から取り組みます。

まず,副首都の部分であるが,本当に国家の重要機能を大阪に配置する場合には,それは国家事業になるので基本的には地方自治体である大阪府や大阪市の支出を当て込むようなものにはならないでしょう.なので地方による「大きな投資が必要」ではないと思いますけど.

それから「国際エンターテインメント」実現を目指す場合は,エンターテインメントの基本的な部分は「民活」じゃないかと思いますが.

 

「6.大阪を豊かにする「1.」から「5.」を実現するための統治機構改革」

副首都大阪を確立するためには、大阪に強力な行政機構が必要です

副首都は国家機能なので,強力な行政機能が求められるのは副首都機能そのものであり,大阪府(や市)が首都機能を果たすわけではありません.東京都は都市としては首都ですが,地方行政府としての東京都が日本を牛耳っているわけではありません.

もっとも,副首都が防災を強く意識したものであるのなら,地理的に淀川河口付近に位置する大阪市が適切な場所かどうかは,かなり慎重な議論が必要ですね.

 

「9.市町村への権限委譲」

事務事業を移管する場合には,関連する財源も移さないと,移された側は「仕事だけ降ってきた」という状態になりかねませんが,大丈夫???

 

「12.市民サービスの充実(大阪市)」

(1) 公共施設の避難所機能強化
(2) 密集市街地対策の推進
(3) 南海トラフ大地震への対策
(4) 要支援者の把握サポート

具体的に何しようとしているんしょうか.防災の専門家が怒ってるんですけど.

在阪マスコミは,そろそろ社会部だけじゃなくて政治部を創設した方がいい時期に来ていると思う.それとも「長いものには巻かれろ」か? ならばネット上の”便所の落書き”の方がマシだな.
(あーこわいこわい.)

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(防災強化編)

引き続きこれである.今回は,「4.防災強化」についてである.

大阪市域内と大阪市域外の縄張り争いをなくして大阪全体で防災力を強化します。

「縄張り争い」が防災力強化のポイントだと思っているようである.そういうセンスなので,府庁舎を埋め立て地の高層ビルに移そうなんてことを考えたのね…

(1) 防潮堤の津波浸水対策の推進
(2) 消防施設・装備の充実(大阪消防庁の設立)
(3) 災害に強いみどり空間の整備
(4) 府強靭化計画による防災力強化
(5) 拠点病院の耐震化補助

他にもたくさん防災減災でしなければならないことがたくさんあるんだけども,防災に関する詳細な指摘は防災の専門家に任せることとして,一点突っ込みを入れておこう.

これ→「府強靭化計画」

”強靱化”のキーワードは,自民党が国政与党に戻ってくる前から,小チンピラのおバカ学者こと藤井聡先生が提唱していたお話で,その後,内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)就任→国策化→法制化の流れをくむものなんだが,堂々と入れちゃうのね.いいんですよ.大事なことですからw.

つづく

在阪マスコミは,そろそろ社会部だけじゃなくて政治部を創設した方がいい時期に来ていると思う.(あーこわいこわい.)