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整備新幹線地方負担分の出来高払い案

例えば佐賀県では整備新幹線なんぞ要らんと言っている.だが,開業すれば相応の利用増があり,利便も向上するはずで,メリットがあるなら受益者負担があってもいい.ゴネまくって払わずに着工してFree Ride出現はさすがにまずい.

ところが,おそらく,佐賀はそんなメリットがあるはずという不確実な話には応じたくないだろうと思う.

そこで,リスクヘッジ案.出来高払い案である.

九州新幹線(鹿児島ルート)沿線の熊本では,在来線時代比137%(博多‐熊本間)のようなので,(ちょっと丸めて) +40%なら満額負担.+20%なら半額負担,+10%なら1/4負担,+0%以下なら負担なし,(逆に,+60%なら1.5倍負担)でどうだろう.

もちろん,開業前には実績はわからないので,満額30年間の分割払いを基本(+40%の場合)として年々の負担額を決め,これを基準に毎年の支払額を増減させるってのはどうだろうか.

Pey per Ride方式.

「おっ,新幹線運賃に上乗せすればいいのか」と思ったあなた,それは違います.
地元負担の話です.

# 合意したものを守れと言っても,技術的に困難なものはできないよねぇ.

北陸新幹線「湖西ルート」は「米原ルート」の劣化版

北陸新幹線の敦賀‐小浜‐京都‐新大阪のルート整備に手こずるなら,「湖西ルート」でいいじゃないか,という声もある.(Youtubeでどっかの議員さんが説明していたかと思うが,reloadしたら行方不明になった.)

だが,残念ながら「湖西ルート」は,解決すべき課題の多い「米原ルート」の,さらにその劣化版にすぎない.

【1】フリーゲージトレインの場合

要するに新幹線の建設をやめてしまうという話である.FGT用車両のスペック的には在来線130km/h,新幹線270km/hなので,十分に見える.

乗客の利便的には現在の敦賀駅での乗換えがなくなるものの,所要時間的にはあまりメリットはない.一時,北陸新幹線の敦賀以西での導入の検討もされたが,メンテ費用&導入費用が高額なので,すぐに話は経ち消えになった.まぁ,はっきり言って新幹線ではない.

車両開発が中止になっているが,それを再開せよとの意見もある.
メンテ費用が高額になるのは,台車が重いから&複雑(たわみやすい車軸と軸受)で摩耗が大きいかららしい.資料によると,車軸を60万km事に交換することになるらしいが,国交省の基準の半分の距離で全般検査ということになる模様(メンテコスト2倍の論拠はおそらくこの点).すでにFGT用の台車は軽量化済みで,今のところ「伸びしろ」は無い模様.

FGTはスペインで実用化されているが,欧州の鉄道は貨物列車の走行を想定して軸重が22t以上(100km/h運転)で設計されており,少々重くてもOKの模様.これに対し,日本の在来線は1級線でも軸重18t(110km/h運転).日本のFGTは130km/h運転想定なので軸重12tで設計されている模様.そんで,どうやら軽量化も現状では行き詰まっている模様(できそうなら多分開発は継続させていると思う).

さらに,ただでさえ高額な新幹線車両なのに,FGT車両はその倍の価格の模様.

ということで,コストばかりかかる割にはほとんど便利にならない案の模様.

【2】ミニ新幹線の場合

湖西線は立派な高架橋なので,これを改軌すればいいではないかという話もある.残念ながら湖西線は在来線なので,建築限界も在来線サイズであり,フル規格の車両を走行させるのは困難だ.新幹線の線路中心間隔4.3m,車両の幅3.4mなので,すれ違い時の車体側面間隔は0.9m.対して在来線の複線間隔は3.8m(車両の幅3.0m)なので,そのまま標準軌化すると側面の間隔は0.4m.アブねぇ.おそらく曲線部では車体同士がぶつかる.

ということで,車体が在来線サイズのミニ新幹線を導入ということになると思う.在来線を改軌して走行させればOK.めでたしめでたし…とはならない.

まず,湖西線(および北陸線の一部)は特急専用線ではないので,貨物列車や普通列車どうする? 架線電圧も違うが,まぁ,これは何とかなるとして,貨物列車は米原経由にするとしても,普通列車は残さざるを得ない.普通列車用の車両にも標準軌の台車を履かせる?

それから,山科駅から西側どうする?

複々線のうち2線を改軌すると,現在複々線で捌いている列車を全て狭軌の複線で処理することになり,線路容量が不足する…ということで採用できる案ではない.

複々線のうち特急の走る外側線2線を狭軌と標準軌の三線軌にすると,車体の中心がミニ新幹線と既存の在来線の車両でずれるので,車両の側面がホームと接触したり,橋梁の荷重設計の範囲外だったり,隣接する線路を走行する列車と接触する可能性があったり,沿線構造物と接触する可能性があったり…ということで,構造物の移設が必要になり,案外安上がりではない.

米原ルートなら米原駅で東海道新幹線に乗り換えさせるという方法も採用できるかもしれないが,在来線のJR琵琶湖線で改軌や三線軌が使えない場合のミニ北陸新幹線は,山科駅が終点&乗換えということになりかねない.超不便.敦賀で乗り換えさせるのと変わらない.

山科駅から京都駅までは何とか新線をつくって,東海道新幹線に合流させるという方法も無きにしもあらず.だが,米原ルートでも東海道新幹線への直通は課題が多く,ほとんど同じ問題を抱え込む.新大阪京都間という短区間とはいえ,東海道新幹線の線路容量を消費することには変わりがない.新幹線「雷鳥」のわずか40kmの乗入れのために「のぞみ」の運転を諦めなくてはならない.JR東海にとっては悪夢かも.リニア開業後なら線路容量空いてるはずという見解もあるとは思うが,そうでもないかもしれない.それから,今のところ誰も語っていないが,現状では山陽新幹線においてのぞみ号16両編成は少々長編成すぎて持て余し気味という話もあり,リニア開業を機に東海道山陽新幹線は12両編成化(忘れている人も多いが,35年くらい前のこだま号は12両編成だった)する可能性もあると思う.運転本数は3割増くらいになり,線路容量の余裕はなくなる.誰がJR東海を説得する?

保安装置も同じではないので,新幹線「雷鳥」用の車両には東海道山陽新幹線用のATCと東北新幹線系統用のATCの両方積む必要がある.米原駅で乗り入れる場合は,米原駅での停車中にこれらの保安装置を切り替えればよかったかもしれないが,京都駅手前の東山トンネルの中で合流させるとなると,自動切り替えが必要かも?

ということで,米原ルート以上に問題が多い.

【3】フル規格新線の場合

湖西線に沿ってフル規格の新線を建設すると,小浜を通らなくなる.一応,小浜は整備計画の経過地に指定されているので,誰が福井県を説得する?

福井県の合意を得るために,敦賀から小浜を経由して琵琶湖若狭湾快速鉄道ルート沿いに琵琶湖の西側まで達し,そこから湖西線に沿ってフル規格の新線を建設するとしよう.福井県はOKと言うかもしれないが,その先の建設費の一部は(現行ルールのままなら)滋賀県が負担する.でも滋賀県は「新幹線いらん」と言っている.米原ルートと同じ問題が発生するが,誰が説得する?

湖西線に沿ってフル規格の新線を建設すると,湖西線は並行在来線化する.(現行ルールのままなら)JRが「湖西線いらん」と言うと,滋賀県が県営鉄道として引き受ける必要が出てくる.江若鉄道の線路を引き剥がして湖西線を建設したという歴史的背景を考えると,廃線にするわけにもいかない.湖西線の並行在来線問題,誰が滋賀県を説得する?

湖西線並行ルートから京都駅を経由して新大阪まで新線を作るなら,おそらく地下線になり,北陸新幹線東西ルート案と同じ問題が発生する.ということで,これは無理.

京都駅で東海道新幹線と乗り換えさせる方法もないではないが,「北陸新幹線京都駅」を建設する必要がある.でも湖西ルートの北陸新幹線京都駅が建設できるのなら,小浜ルートの新幹線駅も建設できるよね.ということで,これも無理.

京都駅で東海道新幹線と湖西ルートとを接続して直通運転するには,東海道新幹線の京都駅の東側がヤヤコシイ.東海道新幹線建設時に用地買収で揉めた地域だ.じゃぁ,東山トンネル内で合流という話になるが,上の「ミニ」で書いた話と同じ問題が発生する.

ということで,フル規格の場合も米原ルート案と同等以上に課題山積.

…ということで,米原ルート案以上に問題が多いのが湖西ルート案ということになる.

大阪「副首都」入門(今北産業編)

予想通り「副首都」を蒸し返す人が出てきたようなので,ざっくり忙しい人向けに説明すると,以下の3項目(3行でなくてスマン).

    • 平時における大阪は国土の双眼構造の観点でも理想的な位置(ただし,整備新幹線や基本計画新幹線の完成は必須).
    • 日本国にとって「副首都」が必要な局面は,大災害等発生時などの非常時(平時には副首都を設ける積極的理由は無い).
    • 非常時における大阪市は津波や地震動の点で適地ではない(京阪神圏内には別の適地がある).

なお,もう少し詳しい情報が必要な場合は,以下の「副首都」入門リンク集からどうぞ.

大阪「副首都」入門リンク集

大阪「副首都」入門リンク集

はーい,選挙が終わって「副首都」を蒸し返す人が出てきそうなので,主な「副首都」入門リンクをまとめておきますね.

大阪「副首都」入門(今北産業編)

地震動予測地図と首都機能バックアップ

地震動予測地図とリニアの近畿圏サブターミナル

国土強靱化-副首都機能候補地を勝手にリストアップ

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(副首都編)

大阪は副首都になれるか(平常時編)

大阪は副首都になれるか(用地確保編)

大阪は副首都になれるか(地盤編)

大阪は副首都になれるか(都市の位置関係編)

大阪は副首都になれるか(広域ネットワーク編)

大阪は副首都になれるか(かつての首都機能移転候補地との比較編)

都構想は大阪を副首都にするための布石…か?

 

北陸新幹線米原ルート入門リンク集

北陸新幹線米原ルート推進の参議院議員さんが当選したようで,たぶん「米原ルート」を蒸し返す人多数と思われるため,(主な)リンク貼っておきますね.

「米原ルート」の開業時期(1)

「米原ルート」の開業時期(2)

「米原ルート」の開業時期(3)

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その1)

北陸新幹線の建設費が2倍!? -新聞記事の精度- (その2)

北陸新幹線の建設費が2倍!? -米原ルート- (その3)

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 米原ルートは早期開業か- (その4)

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 北陸・中京新幹線- (その5)

北陸新幹線の建設費が2倍!? – B/CのBをup- (その6)

北陸新幹線の建設費が2倍!? – 有識者でも米原ルート推奨?- (その7)

「敦賀・新大阪間に関する説明」見っけ

 

あと,舞鶴ルートの件も.

北陸新幹線の敦賀-大阪間はなぜ「舞鶴経由」がマズイのか

 

中速鉄道・・・だけでは劣化版高速鉄道

新幹線が無理なら「中速鉄道」という話が出ている.石破さんが国会でそういう話をしたらしい.

石破さんといえば,かつて「単線新幹線」という話を国会でしたことがあるが,この単線新幹線の出どころは多分私である.当時,政府に出入りしている人の「なんかいい話無いっすか」という問に対して「そうねぇ,新幹線を単線整備してコストカット・・・云々」と話したら,どうもそれを石破さんに喋ったらしく,まだ詳しい調査してないのに国会でフライングされてしまったわけだ.

さて,中速鉄道の話である.

欧州でも高速鉄道整備が無理なところは在来線改良,中国でも準高速鉄道という考え方がある.でも,欧州の在来線改良は運転速度が150-200km/hであって,国際的な高速鉄道の250km/hという基準を満たさないというだけの話である.中国の準高速鉄道も同様.

昨今話題の中速鉄道は,最高速度が150km/h程度らしいので,上記よりも更に遅く,国際的には単なる在来線改良である.あんまり便利ではない.

さて,よく調べてみると「中速鉄道」で成功している国もある.スイスである.スイスは九州程度の面積,人口密度は四国程度.可住地面積の割合も日本とよく似ているが,高速新線は50km程度しか無く,あとは最高速度160km/h程度の在来線ばかりで,曲線の多い低速山岳路線も散見される.

ところが,この国,鉄道の理想を「速い」から「早い」に転換して成功した.乗客数を概ね倍増させている.その基本概念は下の動画である.

矢印は都市間列車を示しており,毎時決まった時刻になると主要駅を出発し,決まった時刻までに主要駅に到着する.

長距離移動には乗り換えは付き物なので,「じゃぁ,乗り換えるならいつでも確実に乗り換えできるようにしよう」と運転間隔を等間隔にして拠点駅では別方面の列車に確実に乗り換えられるようにしたものである.

金をかけて劣化版高速鉄道を整備するんじゃなくて,どこにどれだけ金をかければ,「より早く」目的地に着けるようになるかを考えるべきである.

北陸新幹線の敦賀-大阪間はなぜ「舞鶴経由」がマズイのか

北陸新幹線の敦賀‐小浜‐京都‐新大阪のルート整備が手こずってるのなら,舞鶴経由にせよという意見がある.舞鶴経由を主張する人は京都府(∉京都市)の人が多い.

「敦賀から西進して,舞鶴を経由して,福知山を経由して,京都駅経由して大阪に至れ」というかなりひどい主張もある.舞鶴の位置はこの辺(東舞鶴駅).ほぼ敦賀の西方&大阪の北方である.福知山は舞鶴よりもさらに西側である.

京都府には昔から(最近の資料ではあまり見かけなくなったが)「京都縦貫幹線鉄道構想」というのがあり,折に触れてこの構想が頭をもたげてくる.

舞鶴経由ルートは,かつての敦賀‐大阪間のルートの議論の際に出てきたものだが,北陸の人が京都や大阪に行くのに舞鶴や福知山を経由させられるという点で極めて筋の悪い議論である.

敦賀‐新大阪間は直線距離で114kmほど,現行の小浜京都駅経由案が約140kmであるのに対し,敦賀‐舞鶴‐福知山‐京都‐新大阪だと217kmほどにもなり,時間的には新幹線化を全く無効にしかねない案である.加えて,北近畿引き回しの刑としての運賃増までオマケで付いてくる.

しかも京都駅を経由する時点で京都市内の工事に関する諸問題を回避できない.流石にこれはダメである.新幹線版のドラゴンラインだ.

最近の「舞鶴経由」は京都駅を経由しないことを想定しての発言だと思うが,それでも遠回りだ.舞鶴に寄って,後は新大阪へ直行でも約153km.途中には京丹波駅が作れるかどうか.新大阪駅は南北方向になり,もはや山陽新幹線との直通という将来ビジョンはナシで.完成すれば京都府下における南北の分断は確定的か?

京都駅を無視してもいいと思っている人は,サンダーバードに乗ったことがないのだろう.大阪駅をスカスカの状態で出発した特急は新大阪,京都と順に客を積んでゆき,京都駅を出発した時点でようやく席が埋まる.京都駅は北陸特急利用者の主要な旅の発着地である.京都駅を経由しない時点で利用価値ほぼ半減する.

福知山や舞鶴への新幹線整備は「山陰新幹線」として議論すべきであり,「山陰本線」が京都駅を起点にしていることを考えると,山陰新幹線も工事の起点は京都駅起点が妥当だ.だが,北陸新幹線の京都市街での新幹線工事ができないなら,山陰新幹線の京都市街の工事もできない.

結局は北陸新幹線の新大阪-京都(-敦賀)間の一部は山陰新幹線との重複区間として捉えるのが適当であり,新大阪-京都(-敦賀)間の工事は,実質的に山陰新幹線の一部着工と捉えるべきだ.変な線路の取り回しを考えるよりも,どうすれば工事ができるのかについて,真面目に考えたほうが良い.

10年くらい前の「与党検討委員会・中間とりまとめ」には,(気にせず読み飛ばしている人も多いとは思うが)こういう記述がある.

「北陸新幹線が日本海側と太平洋側を連絡する重要路線であることも考慮し、将来的なものを含めて他の日本海側の幹線鉄道網との関係についても配慮されるべきである」

将来的な他の日本海側の幹線鉄道とは山陰新幹線にほかならない.わざわざこのように記述されているのは,敦賀-新大阪間は単なる北陸新幹線の一区間というだけでなく,京阪神圏と日本海側の山陰各地とを結ぶための重要な区間だという意味も込められている.インフラの計画というのは,B/Cだけでなく,このような条件も含めて考案されるものだ.

#綾部(3万人)は舞鶴(7万人)よりもさらに西になるので,舞鶴経由が実現しても綾部経由になるわけではない.そもそも,どちらの都市も,人口規模の観点ではわざわざ新幹線を経由させる都市規模ではなく,たまたま線路が通過する場合に,他に有力な設置地点がなければ駅ができる程度の規模である.

「四国に新幹線って要りますぅ?」って人

「四国に新幹線って要りますぅ??」って言う人がいる.大都市部在住の人が多い.

四国4県で人口は約363万人.結構大成功の北陸新幹線沿線の北陸3県の人口は約284万人.

つまり「四国 > 北陸3県」.

北陸新幹線沿線には,新潟県の南西の端っこや長野県の北東部も含まれているので,足してみる.新潟県の南西部の人口は約24万人.長野県の北東部の人口は約75万人.ついでに安中市も入れて,合計約389万人.

ようやく「四国 < 北陸新幹線沿線」になった.

ところが,北陸新幹線の敦賀-高崎間は約471kmであるのに対し,瀬戸大橋を渡って四国各県に伸ばす構想の「四国の新幹線」の延長は302km.

つまり,「四国の新幹線」の沿線人口は,1kmあたり1.20万人であるのに対し,建設済みの北陸新幹線の沿線人口は1kmあたり0.83万人にすぎない.

1kmあたり沿線人口は「四国の新幹線 > 北陸新幹線」

つまり「四国に新幹線って要りますぅ?」って言う人は固定観念に毒されている.

#四国の新幹線は,高知県南部とか徳島県の吉野川沿いとかカバーしてないぞ,という人は,自分で詳しく計算してみよう.

まぁ結局費用負担の話かなぁ…

北陸新幹線の敦賀ー大阪間の建設の話が行き詰まってる感があるが,京都府市議会市民団体仏教会等々から出されている疑問点については,技術面では,ほぼこの(↓)公式見解で回答されているように見える.(耳をふさいで「あーあーあー 聞きたくない聞こえない」?!)

 京都府内自治体説明会 (資料)

・地下水の件 → 地下水の流れの上流側ふさいでません,酒造用井戸避けてます,地下水がトンネル内に流れ込むの防ぎます,京都には既にいっぱい地下トンネルあります,これまでの地下工事でも大きな影響出てません

#そもそも,山岳トンネル(例えばリニアのトンネル)は地平より上なので,山の地下水がトンネル経由で自然流下する可能性があるが,地面より下の地下線だと地下水はポンプで汲み上げでもしない限りトンネルから自然流出しないけど・・・

・国定公園の件 → 一番コアな場所は避けてます,似たような事例は他にも既にあります,河川への影響ほとんどありません,地上の工事気を付けます

・残土の件 → 重金属気を付けます,すでに重金属の処理やったことあります,ダンプの渋滞気を付けます,残土は車両基地の盛土に使います

・文化財の件 → 主要な文化財は回避します,地下水位の影響はなさそう,かなり深いところを掘るので地表に影響ありません

#少なくとも寺院の多い左京と東山は工事と全く関係ないけど・・・

・巨椋池の治水の件 → 調節池設けます,詳細解析します

「あーあーあー 聞きたくない聞こえない」

ということなので,基本的には同じ話を100回繰り返すしかないでしょうなぁ > 工事担当機関殿

*–*

さて,説明を求められても「工事担当の関係機関」が答えられない点はある.費用負担の問題だ.

既設の北陸新幹線の駅間距離は平均20kmくらいなのだが,小浜-京都間は60kmくらいになりそうである.平均駅間の3倍くらいだが,ほぼトンネルだけで駅設置予定はない.無理やり駅を設置しても山間部で誰も使わない.「そんな区間に金出せるか!」という主張は一理ある.

これまでの費用負担は「20-30kmほどの建設費負担に対して1駅ゲット」が暗黙の了解だったわけだ.高崎-軽井沢間約45kmの途中に半ば無理やり安中榛名駅が建設されたのも,この暗黙の了解に基づくわけだ.

ところが,小浜ー京都駅間60kmは半ば無理矢理にも駅が・・・設置できそうもない.あるのは山地のみ.

実は別の整備新幹線でも「無理矢理にも駅が・・・設置できそうもない」区間は存在している.それは「奥津軽いまべつ-木古内間」つまり津軽海峡区間(トンネル約54kmを含む約88kmの海峡線)である.北海道新幹線は国と地方の負担で建設されており,地方とは北海道と青森県であるが,青函トンネルの建設費を北海道と青森が出したかというと・・・出していない.

青函トンネルの建設は新幹線建設とは別メニューで建設されており,地方負担分は無く,(国鉄の清算によって結果的に)国費によって建設されている.

整備新幹線の地方負担のルールは変更すべきではないという意見があることは承知しているが,メリットのない負担は不合理でもあるので,「駅の設置できない長大区間については全額国費」という新しい整備スキームが検討されてもいいのではないかと思う.(あと,やたらと工事費の高い区間の費用負担の平準化のスキームも)

#最近,この手の話をすると「コイツは間違っている!成敗せねば」的な人が出てくるんだが,そういう人の主張はほぼFAQに含まれており,話が平行線で時間の無駄なので,電話とかかけてこないでね.新聞記事の感想は新聞社へ.

フルサイズ新幹線電車の函館駅乗り入れ

北海道新幹線を函館駅に乗り入れるという構想があるが,様々な否定的見解が出ているようだ.

その中に,フルサイズの新幹線電車を函館駅に乗り入れるためには,線路が道路などの下をくぐる際にヘッドクリアランスが足りないという話があるらしい.在来線の架線高さは最低4.4mであるのに対し,新幹線は4.8mなので,40cmほど足りない可能性がある.

…ところが,そういう問題を解決する案はある.

いずれも,仙山線の写真である.

電化する際,狭小トンネル部分の架線を剛体架線にしてヘッドクリアランスを確保するというものである.同様の対策は近鉄でも見られる.

交流電化の場合は,電線と構造物を一定程度離す必要があるが,仙山線は交流電化であるので,その点も実績的に一応クリアされている.心配なら,函館本線の場合は跨線橋をくぐる部分だけでトンネルよりははるかに区間が短いので,当該部分だけ無電区間にするという手が無いでもない.

これでも足りなければ,盤下げすればよろし.

#「Youtuber」は,できない理由を並べ立てて注目を浴びるのが仕事のようである.