整備新幹線の地元負担問題の解決策(積極財政政権限定)

ネバネバした緊縮財政から,もしかしたら,かなり久しぶりの積極財政政権になりそうな気配が出てきたわけだが,もしも積極財政が実現したら整備新幹線の地元負担問題は解決するかも,と思っている.

現行の整備新幹線の建設スキームでは,新幹線の建設費のうち,アチコチやりくりした残りの額を「国:地方=2:1」の割合で負担することになっている.そんで,この見かけ上「1/3」負担を巡って,難色を示す自治体が少なくないわけだ.

「見かけ上」と書いたのは,新幹線の財源構成はかなり複雑で,わかりやすいのは福井県庁のこの図である.

建設費のうち,「国:地方=2:1」の対象にならない分が少なくなく,残り部分の地元1/3負担についても,半分くらいはこっそり国が穴埋めしてくれるというシステムになっている.この結果,実質負担は800億円÷1兆1200億円=約7.1%ということである.33%ではない.ホントはこのレベルだが,地元県民に向かって建設費の1/3(33%)だというような説明をする首長さんがいたりして,困ったもんである.

さて,積極財政権限定の解決策とは,ズバリ「全額国負担」である.現状でも地方負担は10%以下なので,この際,全額国負担でもいいじゃないかという話である.その方が合意形成的にもシンプルだ.

こういう話をすると,特に大都市圏から「受益者負担ガー」という声が出てきがちであるが,輸送は起点があって終点がある.片方の端だけが受益者ということはなく,もう一端も受益者である.その「もう一端」とはどこか.大都市圏にほかならない.

大都市圏はこれまで,1円の建設費負担もなしに新幹線の恩恵を受けてきている.東海道新幹線の地元負担はいくら払った? 山陽新幹線の地元負担はいくら払った? 東北・上越新幹線は?

じゃぁ,すでに開業した整備新幹線の沿線は払い損ではないかという話になる.整備新幹線の建設費は,(年次間のデフレータの操作はしていないが)以下の表のとおり.

億円 km 億円/km
北海道新幹線 新青森-新函館北斗 5,783 149 38.8
東北新幹線 八戸-新青森 4,547 81 56.1
盛岡-八戸 4,565 97 47.1
北陸新幹線 金沢-敦賀 16,779 125 134.2
長野-金沢 16,988 228 74.5
高崎-長野 8,282 117 70.8
九州新幹線 博多-新八代 8,794 121 72.7
新八代-鹿児島中央 6,401 126.1 50.8
西九州新幹線 武雄温泉-長崎 6,197 66 93.9

建設費を単純合計すると,約7.8兆円.単純に1/3にすると2.6兆円だが,上の「地元負担は実質7.1%」だとすると5,500億円.これくらいのオーダーの額なら,沿線に「返却」してもいいじゃないか.

単年度で返すのがしんどいなら,10年かけて返却なら年額550億円にしかならない.国の年間予算の0.05%レベルである.

ネバネバ政権では実現しそうに無い案だが,積極財政政権ならこれくらいはあってもいいんじゃないかな.

これで,西九州新幹線も,四国の新幹線も,北陸新幹線も,かなりやりやすくなるのでは?

運転席で”私物の鉄道関係の本”を8分間読みふける

このお話.

【乗客は見ていた】50代運転士が列車の運転席で”私物の鉄道関係の本”を8分間読みふける「気が抜けるタイミングで読んでしまった」客からの指摘で発覚『強化型保安監査体制』適用中のJR北海道


まぁ,アカンといえばあかんが,こっちのほうがすごいぞぉ.

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IMG_7984

IMG_7984のコピー
 休憩中じゃなくて,運転中だ!!!

(なお,日本国有鉄道時代には客席と運転席の間は遮光幕で常に仕切られており,隙間から覗くと週刊漫画雑誌を読みながら運転しているのを目撃したことあり.)

LRTの運転士(PRAHA編)

学研都市線「神戸行」

列車の運行が乱れると,普段あまり見ない行先が登場する.

まずは「甲子園口行」
これは本数は少ないが,一応,夜遅くだが毎日走っている.

続いて「神戸行」
これは珍しい.たしかに一応,折り返し可能な駅ではある.

…まぁ,そんだけ.

軌道回路と接触限界(東急田園都市線事故)

東急田園都市線で回送列車と営業列車が接触事故を起こした件.

下のYoutube動画の開始早々(1秒),下側の回送電車の最後尾運転席の直下に分岐器があり,その分岐器の前方すぐのところのレールに白色の継目板が左右ともにあてがわれているのが見える.

この白色は,おそらく営業列車の走る本線側の軌道回路と回送電車の走る側線の軌道回路を分離するための絶縁だろう.(この写真が分かりやすそう)

ということは,軌道回路という「列車の在線センサー」的には回送列車は営業線から離脱したという検知をしており,営業列車側に「進行」現示のGOサインを出した原因.

 

一方,ちょっと見にくいが,下の航空写真の中央の「東急田園都市線」の「急」の字の下に白い点が見える.これが接触限界(車両接触限界標).上のビデオだと,回送電車の右から2枚目のドア付近.ここよりも合流する分岐器側(右側)だと電車同士がぶつかるという位置.

回送電車の運転席はこの白い点よりも右側に出ており,分岐器の真上にある.つまりぶつかる位置で停車してしまった.


要するにまとめると,「センサー」は本線にはないと判断していたけれど,実際には本線の走行を支障する位置に回送電車が止まってしまったということ.

事故調査委員会がなかなか「営業再開!」と言ってくれないのは,このシステム的なバグ(軌道回路の境目と実際の接触限界のズレ)が解消されない限り,事故が再度起こる可能性があるから,ではなかろうか.

(…がしかし,こんな箇所は全国各地にアチコチありそうなのが悩ましいところ)

なお,「見習い運転士ガー」とか騒いでいるマスコミは,お門違いの可能性大なので無視しましょう.調査能力が無い可能性大.

予想だが,「バグが解消されるまで,回送電車の入っていった引き上げ線の使用は停止」という条件で復旧が認められ,さらに全国の鉄道会社に「同様のバグがないかどうか調査せよ」というお達しが出るのでは.

(復旧した模様)
(予想通りお達しが出た模様)

米原ルート「実現難しい感触」

この話.

米原ルート「実現難しい感触」 北陸新幹線で京都維新代表

https://www.47news.jp/13219902.html

https://www.sankei.com/article/20250929-SWQE3TCXZFP5FJZO5KDJI3LSDA/

前原誠司代表は29日、北陸新幹線敦賀(福井県)―新大阪延伸を巡り、滋賀県を通る「米原ルート」は、「実現が難しい感触だ」との見解を示した。


選挙の公約に掲げる前に,ちょっと考えればわかる話なんですけどね.公約,軽いよね.

「…第3の案をまとめ、提示する取り組みに移りたい」と話した。

第3の案ありますよぉ〜.

北陸新幹線「京都駅付近の地上ルート」まとめ&リンク集

副首都法案の骨格判明 → 地方振興策と勘違いしてる?

副首都への特例措置としては、①国から税源を移譲②規制の特例措置③首都機能の代替に必要なインフラ整備のための財政措置④国会や中央省庁の機能を一部移転-とした。

情報源: <独自>維新「副首都法案」の骨格概要判明 「二重行政」解消、税源移譲や省庁一部移転も – 産経ニュース


「副」って「正」が機能しない場合のサブのはず.市長が機能しない場合の副市長,大臣が機能しない場合の副大臣,社長が機能しない場合の副社長.

とすると,副首都というのは首都が機能しない場合のサブ.日本国のBCP(事業継続計画).つまり,国の機能であって,地方政府のプロジェクトではない.

①国から税源を移譲

副首都は国の機能であって,大阪をはじめとする自治体の機能ではないので,どうして国から地方に税源移譲しないといけないのか理由がなさそう.

②規制の特例措置

国の統治システムを複線化する必要があれば,制度整備はなされると思われるので,何を規制緩和するんだろう.この際の便乗?

③首都機能の代替に必要なインフラ整備のための財政措置

副首都は国の機能なので,国の負担でインフラ整備されるのが基本.地方のインフラ整備で地方負担があるのは,受益者が地方だから.

副首都の受益者は国全体なので,基本は全額国庫負担のはずなので,地方政府への「財政措置」は不要では?

④国会や中央省庁の機能を一部移転-

どこに何を移転するか…だが,副首都プロジェクトは最悪ケースを想定するのがスジ.

最悪ケースとは,首都直下地震と富士山噴火と南海トラフ大地震の三連コンボ.過去には元禄関東地震(1703),宝永地震(1707),宝永大噴火(1707)という三連コンボがあったので,備えるべき.

首都直下地震で首都東京が機能不全中に,副首都が南海トラフでアウトというのは避けなければならない.ところが,大阪市の西半分は南海トラフでアウトの可能性アリ.

少なくとも副首都の適地は大阪市ではない.

…ってわかってんのかな.

 

大阪「副首都」入門(今北産業編)

大阪「副首都」入門リンク集

岐阜羽島と岐阜駅を結ぶLRT構想

 

名鉄「あのぉ〜,僕のこと忘れてませんかぁ.
一応,頑張ったら直通運転できるんですけど.
つーか,毎日ちょびっとやってるんですけど.27分デス.

 



おまけ:2005年春までの様子.(こっちは学生が確実に乗ってくれる可能性アリ.)

電車VVVF化に補助金あってもいい

自動車の販売では「エコカー」は売り文句になっている.
環境に良いという側面の他に,ランニングコストを抑えられるからである.

じゃぁ,「エコ電車」とか「エコ鉄道」とかの言い方はあるかというと,あんまり聞いたことがない.もともと「エコ」なので,売り文句にはならない.

さて,ここ数日,2035年までに鉄道車両(電車)をVVVF化(インバータ)を完了させるだとか,非電化区間でもハイブリッド車導入を原則とするなどの議論が話題になっている(個別交通である自動車のほうが問題なのに).

じゃぁ,どれくらい旧型電車と新型電車では効率が違うのかというと,この資料にあった.旧型(従来型)比で,最新型は75% OFF の模様.おぉ,すごい.「省エネ電車」として導入されたチョッパ制御車両が「従来型」なのは時代の流れか.

たしかに冷蔵庫やエアコンを買い替えると,インバータが優秀なせいもあってか,電気代が下がる.電車の電気代もしかり,ということか.

環境への影響というと,走行時の「ランニングコスト」の他にも,製造時の問題とかもあるので,どうなんだろうと思ったが,この資料の図6によると,気動車も電車も運行時のエネルギーが一番多いようだ(60年分という期間設定がちと長すぎのような気もするが).

確かに電車の最新インバータ化は効果がありそうだ.

ところで,自家用車を買う際には,エコカーを買うと補助金が付いてきたりするわけだが,例えばトヨタのプリウスの本体価格が300-400万円に対して,補助金は55万円もあるのか.本体価格比15%.

じゃぁ,電車を買い替えるときも,この程度の補助金は出すよね.1両あたり2億円として,3000万円の補助金.あってもいいと思います.

 

MMT(現代貨幣理論)の要修正ポイント

経済学者ではないので,この話題に深く首突っ込むのはやめておくが,理系というか工学系の人ならすぐに気づく「要修正ポイント」があるので,それに関してのメモである.

もっとも,以下の「要修正ポイント」は,MMT(現代貨幣理論)に限った話ではなく,世の中の経済政策全般に共通する話でもある.

さて,MMT(現代貨幣理論)については,wikipediaにはこう書かれているし,詳しく知りたい人はGoogleで検索するなりAIに問ってみるなりしてください.自国通貨建ての国債を政府が発行できるのなら,国債発行を通じて市中に資金供給すればよく,必ずしも国債の償還は不要だという論であり,市中に資金供給する具体的方法として公共事業等をすればよいという話である.

そんで,これに対する反論として,資金供給過多になってインフレを起こすとか言われてたりするわけだ.そんで,そんで,その反論の反論としてインフレ率を監視して資金供給量をコントロールすればいいとか,増税してコントロールすればいいとかいう議論になってたりするようだ.

まぁ,どの話も一応,わかる.

だが,残念ながらこの辺に議論の限界があったりするのかなぁとも思ってしまう.

上の話を簡単に書くと,「理想とする状態に比べて,実際の状況が大きすぎる場合,小さくするような方向のコントロールをする」という話(逆に,実際が小さすぎる場合は,大きくなるようにコントロール)であるが,これは制御工学の範疇である.ネガフィードバック(NFB).

工学系の人ならすぐに気づくと思うが,NFBをかけると理想状態に制御できるんだけれども,要注意点としては「時間的な遅れがあるとうまく制御できない」だ.電子回路の発振の話みたいなもんだね.

NFBとか理由のわからん話をされてもなぁ,という人向けには,バネに吊るした重りの挙動の説明がいいかも.

バネに重りを吊るして,ゆっくりと手を離す.バネが伸びて一定の長さのところで重りは止まる.経済学的に言うと均衡点だ.理想状態.

ところが,何らかの理由で「理想状態」からズレるとどうなるか.下方向にズレるとバネの力が強くなって「理想状態」に戻そうとする.ところが位置的な「理想状態」に達した段階ではバネの力は釣り合い状態に戻るものの,重りには上方向の勢いがあって「理想状態」では止まらずに今度は上方向にズレる.そうするとバネの力が弱まり…以下,延々とこの繰り返し.いわゆる単振動である.

経済学系の論文でも時刻tで微分された速度相当の変数や加速度相当の変数といったものが登場するものもないことはないが,実践的政策ではあまり気にされている気配がない.(むしろ逆に,ちょっと遅れてコントロールするほうがbetter的な話があったりする.)

まとめると,「要修正ポイント」としては,「逆方向のコントロールをする」だけじゃなく,「制震ダンパーみたいなシステムも組み込む必要アリ」だな.

新幹線整備の地方定額負担案

現行の新幹線建設スキームでは,建設される路線の沿線で地方負担が発生し,(実態はかなり色々ややこしい財源構成になっているが,一応は)国:地方=2:1になっている.

ところが,山岳地帯ばかりで駅の設置もできないのに高額な請求書が来ることを警戒する動きが無きにしもあらず.

例えば,北陸新幹線の高崎-敦賀間は延長470.6kmに対し,新設された駅数が18駅(高崎駅除く)なので,平均駅間距離は26.1kmである.つまり26km分の建設費負担をすると1駅付いてくるということが期待されるわけだ.

ところが,今もめている北陸新幹線の敦賀ー新大阪間については,(小浜京都ルートの南北案だと)駅間距離は次のような感じ.

敦賀-小浜:35km,小浜-京都:63km
京都-松井山手:20km,松井山手-新大阪:27km

1区間以外は,概ね平均的な駅間だが,小浜-京都間が平均26kmの倍以上ある.しかも,(どういう割り振りするのか不明だが)都市部の地下線工事で異様に建設単価が高い.そりゃぁ「請求書」に警戒するのも頷ける.

整備新幹線で駅間距離が長い区間は実は他にもある.それは,北海道新幹線の奥津軽いまべつ−木古内間の74.8kmで,青函トンネルを含む区間だ.

じゃぁ,青函トンネルの建設費を青森県と北海道が折半したかというと…してない.建設時期が異なるし,整備新幹線計画が正式に動き出す前に建設開始されたので,地元負担の考え方がないので,全額国持ちということになる.もしも現行の「2:1」のスキームができた後でのトンネル建設だったなら,おそらく地元負担で揉めたであろう区間でもある.

ということで,青函トンネルを参考に,地形が険しくて駅が設置できないような区間については,国の負担を原則とするという方法は考えられる.

もっと簡単なルールにするなら,地元負担は「設置される駅1つにつき線路26km分」に設定するとういう方法もある.

(地下線など)難工事で工費が高くなる区間の沿線と,田畑に単純に線路を敷くだけの区間では同じkmの建設でも負担が異なる.だったら,工事単価にかかわらず,地元負担は駅1つと線路26km分の定額払いに設定するという方法もある.