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嬉野と武雄市議会 全線フル規格化求め意見書可決

ずいぶん前の記事で恐縮だが…

嬉野市と武雄市の両市議会は18日、九州新幹線長崎ルートについて、2022年度開業の厳守や、開業後の全線フル規格化などを求める意見書を可決した。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発遅れによ

情報源: 嬉野と武雄市議会 全線フル規格化求め意見書可決|佐賀新聞LiVE

同じ県内であっても地域によって目指すべき方向が違う例.

「フリーゲージトレイン」が何の問題もなく開発され,本当に新幹線と在来線を自由自在に行き来できればこういう話にはなりにくいのだが,実態はなかなか理想通りには話が進まない.

今を去ること15年くらい前,神戸にある車両メーカーの中で調整中とおぼしき初代FGTを見たのが初めての遭遇だった.2代目は博物館展示物として四国でお目にかかり,まるで量産先行車のような3代目は見たこと無いが,さっぱり役に立っていない模様.

さて,こういった地域により意見が異なるというのはこの場所に限った話ではなく,どこでも起こりうることであり,本来ならばどこかの部局が大所高所から全体をどうするか決めて,それに向けて説得を図るべきなのだが,「どこかの部局」の姿は見えず,全体構想の方針も定まらない.

短区間ならば,同じ整備方式で連続させてしまうのが長期的視点では得策なのだが,この九州新幹線長崎ルートに限らず(北陸新幹線のルート問題や山陰新幹線の分岐問題なども),路線通過地の沿線がその都度計画の主導権を握ってしまうという,広域交通ネットワークの計画としては本来あってはならない変な方法がまかり通っている.

(全体の最適) Σ(個別の最適)

というのが一般的なんですけどねぇ.

仕事してる?
どうすんのさ?

すり減ったレールの再利用

すり減ったレールは交換される.

じゃぁ,交換されたレールはその後どうなるかというと…

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拡大してみよう.

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再利用されている.この継ぎ目の手前の方がすり減った再利用レールの模様.

希なケースだと思うが,1)すり減ったのが片側の角部分だけで,2)全体のすり減りは少なくて,3)新品レールを買うお金がない鉄道会社,という条件の時にこうなる模様.

もちろん,すり減った部分が車輪にあたらないように向きを入れ替えているとともに,本線ではなくて列車の通過の少ない側線で使われている.

 

単線の工事費は半分で済む…のか?

福井新聞のこの記事

新幹線の必要性の話とか,北陸新幹線のルートの話とかはともかく,この部分がちょっと引っかかった.

…山陰新幹線は「東海道新幹線のように1時間に何十本も走るわけではないので、複線でなくてもいい。単線でも車両がすれ違いできるようにすれば、工事費は半分で済む」と述べた。…

うーん.さすがに半分にはならないかも.

時間に余裕ができたらちょっと考えてみるが,単なる勘としては「半分」と「全部」の間くらいじゃないかなぁ.

でもまぁ,いわゆるビーバイシー(B/C)のCの部分の話なので,例えば 75%なら,ビーバイシーがギリギリ1のプロジェクトだったりすると,

1.07 ÷0.75 ≒1.43

となって,ギリギリ1という事態を脱することができる.B/C=1 .07 と B/C=1.43 だと,だいぶ印象が違うよね.ということで,そういう使い方をしてください.

(まぁ,いろいろと制約条件の多い整備方式だけど)

緑化軌道のメンテ

手入れの届いた芝がまぶしい.鹿児島の路面電車.ほぼ全線にわたって緑化軌道になっているようだ.ところが,南国特有の悩みがあるらしい.

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これ.温かいので,草がよく育つらしい.

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言われてみると,あちこちニョキニョキ生えている.

いちいち草取りしてるとたいへんだ.

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そこで登場.芝刈り機,じゃなくて芝刈り電車.

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厳密に言うと散水車が軌道芝刈り機を牽引しているようだ.このロータリーカッターで草刈り.

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まぶしい芝を保つには,秘密兵器があった.

単線での走りながらのすれ違い

単線で走りながらすれ違うには,一体どれだけの長さの複線区間が必要だろうか.

単線の途中に複線区間を作り,そこに両側から同時に電車が進入したとする.

  1. 「単線→複線」の分岐器を通過し,進入完了を検知しての分岐器を転換
  2. すれ違い
  3. 「複線→単線」の分岐器を通過し,進出完了を検知して分岐器を元に戻す

理想通りならこれだけなので,分岐器から進入完了を検知する地点までの距離の2倍ほどもあれば十分で,新幹線でも複線区間は2-3kmであろうか.分岐器の速度制限があると,その分,減速しないといけなくなるので,さらに数km伸びることになる.

だが,もしも片方が遅れていたりすると…

  1. 「単線→複線」の分岐器を通過し,進入完了を検知しての分岐器を転換
  2. すれ違……わない
  3. 対向列車が遅れているので「複線→単線」の分岐器が開通しておらず,この分岐器の手前までに減速して停車

ということになるので,今度は安全に停車できるまでの距離が関係してくる.

新幹線の運転速度を260km/h,分岐器の制限速度160km/h,旧式のアナログATCを前提に考えてみると,こんな感じだろうか.

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さらにブラッシュアップすべき点はいくつかあり…

  1. アナログATC→デジタルATCとすることで,減速距離を短縮
  2. 進入完了を検知するまでには4閉塞も必要なく,1閉塞で十分
  3. 複線区間に入ってから減速しているが,減速してから複線区間に入れば複線区間を短縮できる

…あたりかな.それについては,またいずれ.たぶん,複線区間である信号場の長さは半分〜1/3くらいになるはず.

で,話を大本に戻すと,国会の質疑で登場した「暫定の単線新幹線」とは,この図の信号場を前提とした路線のことだろうと思う.

単線でのすれ違い

単線路線でのすれ違いの様子をビデオで見てみよう.

部分的な複線化工事中の時期の宇野線(岡山→茶屋町)である.等速だと長いので,8倍速にしてある.後ろ向きで撮影.

クリックして別ウインドウで再生

途中で二度列車とすれ違う,後の方の列車は駅でのすれ違いだが,最初の列車は部分的な複線区間での走りながらのすれ違いである.

つまり,適切な長さの複線区間を作っておけば,そこですれ違うダイヤを組むことができるというわけである.

じゃぁ,新幹線が走りながらすれ違うには,どの程度の長さの複線区間があれば「適切な長さ」かな… (つづく)

 

北陸新幹線延伸ルート大もめ、過熱する自治体間の綱引き

また揉めてます.

北陸新幹線の福井県・敦賀-大阪の延伸ルートをめぐり、滋賀県が公表した独自の試算結果が波紋を広げている。試算では候補としてあがっている3ルートのうち、滋賀県が推す…

情報源: 【関西の議論】「一方的な主張だ!」滋賀県の独自試算に京都府抗議メール…北陸新幹線延伸ルート大もめ、過熱する自治体間の綱引き

どこかが何かの試算をすると,誰かが噛みついたりするということが繰り返されているが,どの試算を見ても「変だな」と思う結果自体はほとんど無くて,概ね妥当な結果に見える.数字はね.

じゃぁ,その試算結果のうち,数字のもっとも良いものが最適実行可能解かというとそうじゃないのが悩ましいところ.

プレイヤーが多数いる場合,全員がベストの結果を享受できるような解はまず無い.誰かが「親(胴元)」になって,ベストではない結果を甘受しなければならないプレイヤーに対して「補填」や「補償」をすることを前提に調整すれば,とりあえず一定の結論に帰着はできる.

だが,だれも親や胴元になる気も無く,我こそはベストの果実を頬張るべきだと言っている限りは,自然ととある結論にたどり着く,というのは難しそう.

まぁ,本来なら調整役は国なんだけど,機能してないよね.日本の鉄道政策.

鉄道ルート問題は北陸新幹線だけに限らず,高速鉄道一般ですね.プレイヤーは府県だけではなくて,国や鉄道会社も含みます.鉄道会社も自らがガリバーだということの自覚が無いケースが多そう.

#噛みつかずに傍観するだけ,という選択肢もある模様.

「今後の新幹線」の運行頻度

新幹線というと,基本的には東海道新幹線に見られるようにほぼ3分間隔で運転できる能力がある.本数で言うと,毎時20本.ただし,各駅停車型と速達型が混在していたり,終着駅近傍では回送列車が走っていたりするので営業用に使えるのは毎時15本程度までである.

近年開業した整備新幹線については,変電所が小さな容量であったり,駅の待避設備が簡略化されていたりする関係で東海道新幹線のような高頻度運転は即座にはできない.

しかし,複線で新幹線用のデジタルATCを完備しているという点では東海道新幹線と同様であり,適切な設備投資をすれば抜本的に作り替えなくても高頻度運転ができるわけだ.つまり,基本的には高級インフラが整備されているわけである.

じゃぁ,実際にその能力のどの程度を使っているのか見てみよう.

  • 東北新幹線の新青森-盛岡間…毎時1本が原則で,朝晩の瞬間最大風速的に時間あたり2本がある程度.
  • 北海道新幹線の新函館北斗-新青森…毎時1本程度.
  • 北陸新幹線の富山-長野間…早朝は毎時3本,その他は毎時2本.富山-金沢間はさらに毎時1-2本追加.
  • 九州新幹線の鹿児島中央-熊本…ここも早朝は毎時3本,その他は毎時2本.熊本以北は毎時1本程度追加.

…ということで,本数が多い区間もあるが,末端区間になると毎時1-2本程度処理できればOKというレベルだ.

じゃぁ,これから新幹線化されることが望まれている区間について見てみよう.例えば,であるが…

  • 奥羽新幹線関係の秋田-盛岡間(秋田新幹線)…判で押したように毎時1本.
  • 同,山形-福島間(山形新幹線)…毎時1-2本.
  • 山陰新幹線関係の鳥取-上郡間(智頭急行など)…毎時1本以下.
  • 同,鳥取島根県境付近(山陰本線)…毎時1-2本程度.

…ということで,やはり毎時1-2本程度処理できればOKというレベルだ.

つまり,高速運転できさえすれば毎時15-20本も処理できる能力は必要では無いということだ.

こう書くと,地方部に新幹線は不要などという短絡的な議論に陥りがちであるが,要は本数は必要ではないが高速性は必要と言うことなのである.そういうインフラ整備手法がまだ開発されていないということだ.

えっ? 飛行機で十分だって? 飛行機で隣県に行けるかい?
えっ? 高速道路でいいだろって? 高速道路が本当に「高速」だと思ってるの?

 

高速鉄道の単線運用

国会まで出てしまったので,基本的な解説はしておく必要があろうかと思うので,例の国会質疑背景の続きである.

質問に「単線で新幹線…」という話が含まれていたので,今回は高速鉄道の単線運用の話である.

高速鉄道で単線というとなんだかとんでもない話に思えるが,既に日本でも160km/h運転の単線運用は存在した.過去形なのは,並行して新幹線が整備されてしまったので,高速運転する特急が新幹線化されてしまったからである.

そう,ほくほく線である.ほくほく線では単線で新幹線の一歩手前である160km/h運転していただけでなく,トンネル内に無人の信号所を設けてすれ違いまでやっていた.ということなので,適切な設備があればとんでもない話というわけではない.

高速鉄道での適切な設備というと,キモは保安装置であるATCだ.ATCは単線運用できるのか,というと,日本国内のものは(確か初期の山陽新幹線用のものを除いて)単線運用できない.初期の山陽新幹線用のATCは確か夜行便の運転を考慮して限定された機能であったが単線運用が考慮されていたかと思う.

じゃぁ,国外のものはと言うと,台湾に売ったシステムのATCが単線運用できるものであり,日本国内の信号メーカーや運行管理システムメーカー等のwebサイトにその旨が記されている.

例えば,日本信号の資料京三製作所のサイト

つまり,基本的な要素技術は日本にも存在している.使っていないだけ.

海外では線路が2本あっても単線の線路×2というのが基本であり,ICEやTGVもそういう路線を高速運転している.高速新線を走るICEやTGVが徐行(たぶん160-200km/h)したかと思うと,隣の線路に転線し,しばらく走ると元の線路上で線路のメンテナンスをしていたり故障した列車が立ち往生していたり,はたまた走行中の別の列車を走りながら抜いたり,という光景は何度かお目にかかっている.はっきり言って,右側通行か左側通行なのか判然としないくらい自由自在に左右を行ったり来たりすることはさほど珍しくない.

#今までに見たことのある双単線運用の例としては…

  1. ドイツでICE乗車中,転線したかと思うと元の線路上でTGVが立ち往生しており,これを横目に通過.しばらくして元の線路に再び転線.
  2. スペインで高速新線をTalgo列車が高速走行中,横の線路には同じ方向に走るほとんど同じ編成のTalgo列車の最後尾が見えた.約5分ほどかけて,じりじりと追い抜いた.
  3. (高速鉄道ではないが)カナダで都市間特急列車(150-160km/h程度)に乗車中,同じ方向に走る約60両編成の貨物列車を5分ほどかけて追い抜き.
  4. このほか,線路のメンテナンスや検査箇所を避ける目的の転線は日常茶飯事(ほぼ乗車毎に遭遇するレベル)

暫定整備計画の欠点

昨日の記事で取り上げた国会の質問中,「暫定整備で単線の新幹線を…」と言う旨の発言があったかと思うが,こういうことである.

現在,新幹線を整備する際に,フル規格高速新線を即座に整備しにくい場合には,ミニ新幹線やスーパー特急方式と言った「暫定整備計画」という手法が採用できることになっている.

ところが,この暫定整備計画は残念ながら欠陥だらけであり,はっきり言って役に立たない.

もちろん,フル規格新線の途中にごく短区間だけミニ新幹線区間がはさまるとか,フル規格新幹線から短い枝線を分岐させるとか,そういったものならば許せるのだが,距離が長くなるとその欠点が顕在化する.

ざっと整理すると,各手法には赤字で示した箇所のような欠点がある.

例え暫定であっても,なるべくフル規格新幹線に近いようなサービスレベルが確保できることが望まれるのだが,そういった手法が現時点では未開発なのだ.

この表の「本当のニーズ」を単線システムで実現できないだろうか,というのが国会での質問の背景であろう.

整備手法の課題と本当のニーズ

フル規格
新幹線

ミニ新幹線
(山形/秋田)

スーパー
特急方式

本当の
ニーズ

概要

複線の
高規格新線

軌間を
標準軌に

軌間以外は
新幹線準拠で
建設して,
後に新幹線化

???

速度

260km/h
以上

120km/h
程度

140〜
160km/h

260km/h
以上

片道
本数

15本/時
以上

1〜2本/時

複線区間は
多数運転

2本/時
くらい

費用

50〜100
億円/km

数億円/km
(激安)

50〜100
億円/km

なるべく安く

信頼

ほとんど
遅れない

普通列車・踏切
大雨・大雪

普通列車
貨物列車

ほとんど
遅れない

車両

新幹線(大型)
320km/h対応

新幹線(小型)
320km/h対応

在来線特急

「高速」新幹線
(サイズは不問)

直通

新幹線
直通

新幹線
直通

在来線
(乗換)

新幹線
直通

新規

既存

新規/既存

どちらでも

その他

費用の問題

建設期間短い
(改軌のみ)

新車開発して
200km/hまで

 未開発
手法

※ ”背景であろう” って書いてみたが,暫定整備計画の欠点を指摘してるのはどうやら私以外いなさそう.