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NancyのBRT(TVR)外から編

製品としてのTVRの終息に伴い,近いうちに無くなりそうなNancyのBRTであるが,車両としては3連節バスであり,Metzと同様,1両目は2軸,2両目と3両目はそれぞれ後ろ側に1軸ずつになっている.明確にステアリング機構が付いているのは先頭車の第1軸目のみである.

電気運転のトロリーバスであり,ナンバープレートが付いていることからもバス扱いのようである.

10年以上前からある3連節トロリーバスであるが,この乗り物は内輪差が出ないようになっている.トラムモード時は中央の1本レールに案内輪を沿わせることでレールに沿って曲線を曲がるようになっている.案内輪は各軸にあるようで,トラムモードとバスモードの切り替え地点を通過すると,案内輪を出すカタンカタンという音が時間差で聞こえてくる.

案内輪のある下回りを下から見ると,こんな感じ.

案内輪を含む1軸台車,というかバスの足回り全体はこんな感じ.

1本レールの無いところは,単純に3連節のバスとして走り,1本レールがあるところでは下の写真のような装置を使って案内輪をレールに載せる.

分岐器は下のようなものであり,一見,トングレールが左右に動くように見えるが,よく見ると実は鈍端式である.

NancyのBRT(TVR)内装編

製品としてのTVRの終息に伴い,今後どうするか注目されているNancyのTVR.基本的には連節バスベースの車両である.

今回はその内装編である.まずは出入り口付近.車椅子やベビーカー用の椅子のないスペースが確保されている.奥の連結部分はタイヤハウスが大きく,車椅子の通過は微妙な幅になっている.

タイヤハウスは巨大で,日本のノンステップバスのものとそう変わらない.一応荷物置き場になっているが,デッドスペースであり,Metzの3連節バスのタイヤハウスの処理の方がうまい.

運転席と客室は区切られており,運賃収受は完全に信用乗車を前提にしている.つまり,どのドアから乗ってもいいし,どのドアから降りてもいい.なので,車椅子であってもいちいち車内を大移動しなくても良いわけで,連結部分の通路が狭いことは大きな問題にならない.

LRTとほぼ同様のサービスを提供すべく,車内には超横長LCD表示器がある.現在位置が地図上に示されるなどの情報提供がされる.

信用乗車なので,乗車券(磁気カード方式)のリーダーがある.ICカード対応のものもある.運賃収受関係の機器類はこれだけ.

連節バスは狭い道路を走れないって?…これ見てから言えよ

単なる連節バスを「BRT」といってしまう日本であるが,その単なる連節バスの運行ですら,なにやら仰々しい会議を経なければ運行が難しそうである.

運行経路についてもいろいろと注文が付く気配があるが,単なる連節バスはそんなに機動性が低いわけではない.

フランスのMetzの3連節ではない普通の連節バスの様子だ.中心街に連節バスがやってきた.

そして,そのまま「ボラード」で進入規制がされた区域に突入!

いわゆるトランジットモールの定義に当てはまる歩行者エリアを連節バスが進む.日本の警察が見たら気を失いそうな光景である.

とりあえずこの位置からは,人混みに消えてゆく連節バスが観察できたが,面白いのはこの先である.観察位置を変えて,しばし待つ.場所は上の写真の奥の狭い街路の交差点である.

やってきた.連節バス.そして,この交差点を曲がった!

……ということで,「連節バスは狭い道路は走れない」は運転士の技能依存だということが判明しましたとさ.

#追記:これは「BRT」ではありません.単なる連節バスを使った路線バスです.

 

Metzの3連節BRT(走行空間編)

日本の「BRT」とは異なり,ちゃんとした「BRT」は原則として専用走行空間が確保されている.郊外の専用道路の場合もあれば……

大学の敷地内の専用道路の場合もある.下の写真はソルシー大学の構内で,ぐるっと1周する「単線」の専用道路だ.

市街地内では元々あった道路をBRTの路線にしており,一般車両のレーンを制限しても専用のレーンを確保している.

元々あった街路なので,BRT用の2車線を十分に確保できない場合もある.そういう場合は信号機をつかって交互通行だ.

中心街部分は公共交通専用の通路と歩道の組合せ,つまり,いわゆるトランジットモールだ.ここは石畳になっている.残念ながらBRTの乗り心地はガタガタしており,あまり良くない.

中央駅前広場も一般車と区別されており,石畳の専用通路だ.

時には専用通路を確保することが難しい場合もある.そんなときには一般車両とレーンを共有することもある.下の写真は片方向は専用通路になっているが,反対方向は一般車とレーンが共通である.

十分な広さが確保できる場合は一般者用の道路と別に歩道やBRT専用道路が建設される.

日本の「BRT」って一般車に交じって運転されてるところがあるんだってねぇ.それって単なるバスだよね.

 

気になる風景

昨年度までの欧州調査は「中心街のすべての交差点を訪れる」という方針の調査だったが,大変疲れたので,本年度は「朝から晩まで都市交通に乗り続ける」にしてみた.

基本的に座っているだけなので「楽勝」と思いきや,そもそも長時間座ることを想定していない椅子に座り続けることになったため,予想の以上に苦痛であった.尻が痛い.

さて,何度も同じ場所を繰り返し通過していると,特に理由はないのだが気になる風景が目にとまって,頭から離れなくなることがある.例えば…

単なる民家の庭木だが,日本じゃこういう刈り方しないよね.

 

Metzの3連節BRT(停留所編)

Metzの3連節バスを使ったシステムが単なる「長いバス」でないのは,車両以外の部分がほぼ完全にLRTと同じシステムになっているからである.

例えばこれは停留所.両側の広告は近年日本でもおなじみになりつつある「JCDecaux」の文字が入っており,停留所の管理はこの会社の広告収入を原資にしていることがわかる.

設備的には,街灯,ゴミ箱,大きな屋根,椅子,切符類の券売機,駅名標,路線図,時刻表,電光掲示,プラットホームである.(メルシー病院前)

バスが到着するとこんな感じ.(ポンピドゥセンター前)

別の停留所でも,基本仕様は同じである.(ソルシー)

停留所に券売機があることからわかるように,事前に乗車券の購入が必要であり,車内には券売機類はなく,運転士も運賃収受には一切関与しない「信用乗車」が導入されている.

また,電光表示器があることからわかるように,バスの位置は管理されており,いつ来るかわからない,などということはない.

線路さえ敷けばLRTと寸分違わないシステムになっている.

ここまでするのなら「BRT」を名乗ってもいいかもしれないが,バスだけどこかから買ってきてきても,それは単なる「長いバス」である.画竜点睛を欠く.

 

Metzの3連節BRT(曲線通過編)

Metzの3連節バス.全長が長いと内輪差ができる可能性が高まるが,どうやってるかというと…

右に曲がります.まずは第1軸が右に舵を切り…

2両目は1両目に引っ張られて若干曲線の内側をまわり…

時間差で最後軸が右に舵を切ることで…

特に問題なく曲がってゆく.

そして最後の車軸も元に戻る.

内輪差が無いように1両目の走行した軌跡を2両目がなぞり,3両目もなぞる…かというとそうではなさそうだ.特に乗車中に観察するとよくわかる.通常の2連節バスの後ろに3両目がぶら下がる構造であり,3両目がひどい内輪差にならないように最後軸が操舵されている.要するに,内輪差は通常の連節バス程度には存在するようだ.

車道が狭い割に連節バスが自在に走っているのは,1つは運転士が慣れていること.もう一つは,内輪差で少々歩道の端っこを踏んづけても気にしないこと.このあたりが理由のようだ.バスが曲がってきたら,歩道の端っこから離れた方がが良さそうであった.

Metzの3連節BRT(外から編)

フランス東部のMetzの三連節バス.全体像はこんな感じ.この写真は右側が前(運転席側).1両目が前後の2軸で,その後ろに後ろ側だけ車輪のある2両目,さらに後輪だけの3両目がつながっている.

ステアリングは1両目の前輪と3両目の後輪だけに付いているようで,1両目の後輪と2両目の後輪は固定のようだ.つまり,通常の連節バスの後ろに,さらにステアリングつきの3両目がくっついている形.

下の写真は運転席側.一方向にしか走らないので,運転席はここだけ.狭い専用道路を走っているが,コマが付いた自動操舵というわけではない.

「ホーム」と車体の隙間はこの程度.健常者にはほとんど問題ないが,車椅子が自力で越えられる隙間ではない.

ということなので,1両目の前のドアの下には,自動で板が出てくる装置が付いている模様.

こちらの写真は,後ろ姿.つまり,運転席の有無にかかわらず,外観はほぼ同じに設計されており,「LRT風」になっているということ.

エンジンは3両目の後ろ側から音が聞こえてくるので,この運転席風のスペースの下側に収まっていると思われる.

エンジン直近の1軸だけが動軸だとまともに走行できそうもないので,他の車輪が動軸になっていると思われる.低床式バスなので,床下に推進軸があるわけでもないため,エンジンで発電してモータを回す方法だろうと思われる.

 

Metzの3連節BRT(内装編)

日本では単なる連節バスを「BRT」と紹介しているようであるが,欧州では既に三連節バスが走り始めており,これを使ったBRTシステムが構築されている都市がある.

日本でも紹介が始まっているフランス東部のMetzの三連節バス.話題になりつつあるので,百聞は一見にしかず,ということで行ってみた.

通常は外側からの紹介が多いだろうが,写真整理の都合上,三連節バスの内装の紹介からである.外観の色は3-4種類あるが(緑青紫橙?),路線系統別に色分けされているわけではなく,どの色のバスが走ってくるかは決まっていない.

これは緑.前面を写しているように見えるが,実は後ろ姿である.

外観のアクセントカラーと内装のアクセントカラーは同じものが使われており,緑のバスの内装は緑系である.

下の写真は1両目後ろ側から2両目の中を写したもの.2両目は前の方にはタイヤがなくて床がフラットであり,椅子の下は空間が空いている.ここで盲導犬や介助犬が寝ていることも.

2両目の後部はタイヤの部分が出っ張っており,出っ張りの上に椅子がある.手前の円形部分は連結部分であり,ここに立っていると曲線通過時にぐるぐる回る.

3両目の一番後ろはエンジンがあったりする関係で一段高いところに5席並んでいる.手前のポールにはICカード式の乗車券のリーダーがある.

下の写真は(紫系のバスの)1両目の後ろから運転席方向を写したものである.手前の椅子左右2席ずつはタイヤハウスの上に配置されており,かなり「標高」が高い.タイヤが丸形なので,席が背中合わせになっている.ボックス席状にするためか,さらにその前の席についても「標高」が高い(タイヤハウスがあるわけではない).

左右の席間はかなり狭く,車椅子が通過できるような幅はない.通常の乗客についてもこの隙間を常々移動させるような設計ではないように見える.

丸形のタイヤハウスに席が背中合わせ…とは,こういう状態.無理矢理全席進行方向を向かせて,足の置き場に困る日本のノンステップバスよりはずっと居住性が高い.

車椅子スペースは1両目の運転席直後のドア付近に確保されており,かなり広い.この1両目のドアから出入りすることを想定している模様.写真中央奥の席はタイヤハウスの上に設置されており,席は進行方向と逆向きである.

わかりにくいが,写っている2席の向こう側は運転席であり,運転士が運賃収受等をするような設計には全くなっていない.日本のJRの電車のように客席と運転席は完全に分かれている.

収容定員は,座席40,立ち席115,車椅子2の模様.製造メーカーはベルギーのVAN HOOLというメーカで,ExquiCity 24というタイプの模様.

動力源は通常のディーゼルエンジンの他,天然ガス仕様,トロリーバスとのハイブリッドタイプ,燃料電池,電気運転等々様々なものが準備されている模様.

残念ながら,日本の大型車メーカでは真似できないねぇ.

やはり日本の公共交通は,車両の面でも遅れているかも.