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誰も聞かないのね

よく北陸新幹線は東海道新幹線に乗り入れできない,という.

その理由は,東海道新幹線が過密だから,東海道新幹線と北陸新幹線のシステムをつなぐには費用がかかるから,だという.

でも,誰も当事者に聞かないのね.

東海道新幹線は片道いったい何本の列車を通す能力があって,今何本の列車がとっていて,どの区間に空きは何本分あるのですか?

とか,

東海道新幹線は何分ごとに列車が運転できて,今何本走っていて,何本分空いているのですか.

とか,

「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」のシステムを接続するには何億円かかるのですか?

とか,

「東海道山陽新幹線」と「北陸新幹線」を米原で接続する場合のシステム改修費用と,京都駅で接続する場合のシステム改修費用と,新大阪駅でで接続する場合のシステム改修費用は,それぞれ何億円なんですか?

とか,

米原で接続するのが高くて東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転できないのなら,新大阪で東海道山陽新幹線と北陸新幹線を直通運転するのも費用が高くてできないんですよね.

とか.w

福井-新大阪かがやき55分

この試算によると福井-新大阪間が…

オリジナル小浜ルート173km,かがやき50分,はくたか61分
小浜京都経由ルート193km,かがやき55分,はくたか68分

…と書いてあるが,想像するに,概ねこういう計算かな?

のぞみ号の表定速度=515.4km÷150分=206.2km/h
ひかり号の表定速度=515.4km÷180分=171.8km/h

■オリジナル小浜ルート
173km÷206.2km/h=50.3分
173km÷171.8km/h=60.4分

■小浜京都経由ルート
193km÷206.2km/h=56.1分(+6分)
193km÷171.8km/h=67.4分(+7分)

当たらずとも遠からず,か?
(よくやる方式)

■舞鶴をまわったとすると,小浜-京都が概ね55km,小浜-舞鶴-京都が概ね125kmなので+70km.つまり福井-舞鶴-京都-新大阪は約263km.

263km÷206.2km/h=76.5分(+26分)
263km÷171.8km/h=91.8分(+31分)

現行のサンダーバードが106分なので,舞鶴まわると1.5兆円〜2.5兆円かけて15〜30分しか短縮できないことになる.やっぱり寄り道しすぎだな.

#西側の速達便は「きらめき」,各停便は「らいちょう」じゃないのか?

(舞鶴はともかく)敦賀-京都-学研奈良-天王寺-関空が悪くはない理由

北陸新幹線のルートの話である.

敦賀から大阪までのルートに関して,敦賀-舞鶴-京都-学研奈良-天王寺-関空(-四国方面)というルートが提案されている.このルート,一部分を除いてそうスジの悪い話ではない.いくつか理由がある.

基本は北陸新幹線であるので,その視点で書くと…

【大阪へ】
北陸方面から大阪に用がある場合は,新大阪の代わりに天王寺を使ってもそう大きな利便性低下にはならない.新幹線駅のターミナルとしては,これまで暗に新大阪が想定されていたと思うが,新大阪駅周辺に用事があるケースは希であり,地下鉄かJRで淀川の南まで乗り換えて移動することになる.どうせ乗換が発生するのならば天王寺でもさほど不便ではない.天王寺は大阪の南側主要ターミナルである.

【山陽新幹線沿線へ】
北陸方面から山陽新幹線沿線に用がある場合は,京都駅で乗り換えれば良い.現状でもサンダーバードから山陽新幹線に乗り継ぐ場合は,移動距離の短い京都駅が使用されることもある.

【国際空港へ】
北陸新幹線沿線の地元向け時刻表には,サンダーバードの時刻だけでなく京都駅や新大阪駅でのはるか号との乗り継ぎ時刻表が存在する.直通運転されれば利便性が向上する.集客に苦労してきている関空のヒンターランドを確実に北陸まで拡げられるわけだ.


敦賀と京都の間の経路として舞鶴を経由する点については,さすがに遠回りなので北陸新幹線の効果を完全に消し去ってしまう.だが,敦賀−京都間の途中で山陰方面に分岐する路線を設けるというのならさほど悪い話ではない.

「山陰新幹線」沿線の視点で書くと…

【京都・大阪へ】
山陰方面から北陸・山陰分岐点を経由して京都駅,天王寺駅を結ぶので,単純に山陰新幹線の終点を新大阪駅にするよりも沿線人口が増える.

【リニア新幹線へ】
リニア京都駅は旗色がずいぶん悪いが,学研都市付近にもしもリニア奈良駅ができたとすると,ここを北陸新幹線/山陰新幹線が経由することで山陰方面からリニア学研奈良駅経由で名古屋や東京方面に行ける.

【国際空港へ】
北陸新幹線の場合と同様に,関空のヒンターランドを山陰地域まで拡げられる.


京都の視点で書くと…

【リニア新幹線へ】
京都から単に東京に行くだけなら名古屋駅乗り換えでも充分だが,リニアの沿線は他にもある.北陸新幹線や山陰新幹線は東海道新幹線ほど列車の運行本数は多くはないだろうから,線路容量は空いている.ならば京都駅-リニア学研奈良駅間に高速運転の近郊列車を運転すればアクセス列車になる.近鉄や京都市営地下鉄に乗り入れさせることができれば,アクセス利便性向上と同時に京都-奈良間の時間距離が大幅に短縮する.この区間列車は地域交通の一種なので条件次第ではJR以外の鉄道会社による2種営業でもいいだろう.整備新幹線は上下分離されてるからね.

【国際空港へ】
現状では「はるか」で関空まで90分弱であるが,新幹線ならば半分の40分ほどだろう.都市圏内の交通になるので,関空アクセス列車の運営はオープンアクセスでもいいかも.

【北陸・山陰へ】

もちろん,北陸新幹線や山陰新幹線として使える.


奈良の視点で書くと…

【京都・北陸へ】
現状では,観光ルートとしては京都や大阪と連携する程度だが,北陸との連携を考慮できるようになる.

【国際空港へ】
現状では近鉄とラピートを乗り継いで90分程度だが,これも30分程度で結ばれるようになるだろう.

【学研奈良副首都駅】
関西学研都市は京阪奈丘陵に位置する.つまり海岸に近い堆積平野上では無いということであり,津波や長周期地震動といった点では立地が有利である.そこに東西方向のリニア新幹線と南北方向への北陸新幹線/山陰新幹線/四国新幹線/関空アクセス線が乗り入れることで関東の首都機能をバックアップする土地としての条件が向上する.


関空から先は和歌山をかすめて四国方面につなぐことも考えられているが,これを四国の視点で書くと…

【国際空港へ】
現状では四国各県から海外に行くには,関空経由よりも各県の空港から羽田か成田に飛んで,そこで乗り換えた方が便利だろうが,これが関空経由にすることができる.関空のヒンターランドを四国まで確実に拡げられる.

【大阪・京都へ】
大阪に用にある場合は,北陸新幹線の場合と同様に天王寺で乗り換えれば良い.京都までは直通だ.山陽新幹線沿線へは,そもそも岡山乗換が便利なので,あまり考える必要は無い.

【リニア新幹線へ】
東京方面に用がある場合は,四国から瀬戸大橋経由で新大阪まで新幹線が直通できるようになれば新大阪経由でリニアに乗れる.さらにリニア学研奈良駅で乗り換えるオプションを付け加えることができ,特に徳島方面からは便利になるだろう.


最後に大阪からの視点である.

【上町台地】
新大阪駅は淀川に近く,あまり対災害面で堅牢とは言い難い.その点,天王寺駅は上町台地に位置するので有利である.災害リスク分散の観点で有効で望ましい.新大阪と比べて利便性が大きく劣るということも無い.中心街へのアクセス利便性を向上させるのなら,この標準軌高速新線と標準軌の地下鉄線を直通運転する専用アクセス高速列車を走らせてもいいだろう.線路容量は空いている.天王寺から関空まで15分程度,本町から直通で25分程度,梅田からは30分程度であろうか.なにわ筋線よりは関空に早く着く.

【広域交通の冗長性向上】
ずいぶん前に書いたとおり,全国新幹線網構想のネックは新大阪駅である.利便性を損なうことなくターミナル分散できる案であるので,冗長性が向上する.

…ということで,「遠回りさえしなければ」なかなか悪くない案である.新大阪に集めるだけが能では無い.

なお,いずれ山陰新幹線を建設するとするならば,どこかで必ず北陸新幹線と山陰新幹線を分岐させることになる.北陸新幹線を遠回りさせずに京都市北方で山陰・北陸を分岐させた方がスマートである.

初夢鉄道2016(西日本大震災編)

こんな夢を見た.

やはり起きてしまった.大中小の順番でやってくると言われている南海トラフ系の地震,今回は300年ぶりの「大」の番のようである.紀伊半島沖を震源として大規模な震源域がまず東に広がり,次いで東海地震が間髪を置かずして発生,M8クラス後半のようだ.そして数分後,揺れが収まりかけたその瞬間,今度は紀伊半島から西側へと震源域が広がり,さらに日向灘,沖縄方面へと岩盤破壊が進んだ.全部あわせてM9クラスか?紀伊半島の各市町村とは連絡が取れない.四国方面の太平洋岸も同じようだ.

何とか,リニアの東京-名古屋間は開業していたので,迂回ルートの確保はできた.だが,太平洋岸の発電所が停まっているところが多く,所定の本数が走らせられない.捌けない旅客は北陸新幹線経由で移動しているようだ.東海道新幹線は,やはり浜名湖付近の被害が大きい.砂地盤なので,津波と大振動のために地形そのものが変化してしまっている.こうなる可能性は1964年の新幹線開業時からだいたいわかっていたので,国鉄時代に無理をしてでも対策をしておけばという後悔があるが,今さら言っても仕方がない.

この西日本の震災発生から2ヶ月ほどして,何年か前から活発化していた富士山がついに噴火しそうである.大方の予想に反して山頂や宝永火口や南東の側火山ではなくて北東側の側火山が怪しい.リニアが通っている都留市付近まではやや距離はあるので火砕流は大丈夫だが,降灰がどの程度あるか楽観できるような状況ではない.多量の場合は火山灰除去のためにリニア求めなくてはならないかもしれない.

地域振興を裏目的として制定された副首都は結局大阪になっていた.震災前は順調に機能し,関西活性化に役立っていた.だが,今般の南海トラフ地震に伴う大津波は太平洋岸各地を襲うだけでなく,紀伊水道から大阪湾まで入り込み,淀川や大和川流域まで入ってきた.もちろん,大阪の中心街にも入ってきた.

もとより海抜の低かった大阪平野の海岸沿いでは浸水被害が大きく,大阪市内の主要な地下街は水没している.遮水対策はしていたが,全ての浸水経路を防ぎ切れていなかったため,当分地下施設は使えなさそうである.地下変電所もやられたので,大阪市内のかなりの部分で電気が使えない状態になっている.オフィスが機能しないので,市内に立地した副首都機能も満足に動いていない.地域活性化ばかりに目を奪われて,国土のリダンダンシーのことを後回しにしたツケが回ってきた.日本はぼろぼろの東京首都圏でなんとかしなくてはならなくなってしまった.

首都もぼろぼろ,主要国土軸もぼろぼろ,瀕死の状態になってしまった.国籍不明の偵察機が頻繁に上空を横切っているが,もはやそれをなんとかする力も残っていない.一寸先しか見ずに先見の明の無い指導者に導かれた結果がこれであった.

…というところで目が覚めた.

初夢鉄道2016(地方創生編)

こんな夢を見た.

2015年春に北陸新幹線が出来た後,ずいぶん金沢が注目されてにぎわったせいもあり,地方創生に新幹線は有効だという社会的認識が形成されるきっかけとなった.翌年,北海道新幹線が函館市の北方まで出来た際も,函館まで新幹線で行って道南観光をした後,千歳空港アウトという観光ルートが一般的になり,こちらもそこそこにぎわった.

妙なプロジェクトに金を出すよりはこっちに出した方が確実だという話になり,財務省の査定は新幹線とそれがらみの案件は通りやすくなった.いわゆる整備新幹線も残工事の完成は時間の問題と言うことがわかってきたため,「新」整備新幹線の策定,つまり基本計画線のうち,有望な路線や区間を新たに整備計画にしようかという話になってきていた.

ある程度地域バランスをとりながら,数路線区が取り上げられ,整備計画になるとともに具体的な工事の段取りについても着手された.これまでの整備5線は昭和40年代策定で半世紀以上かかって完成していたため,時間のかかりすぎだと言うことを反省し,現実的な時期に完成できるように資金計画が練られた.新たな整備計画線は,そこそこ客数が多い区間や大都市部における区間など,沿線開発も重視しながらも実際の利用客数がある程度見込める区間が選定されている.

一方,リニア新幹線については相変わらず各種の申し出—名古屋以西の区間について何らかの公的資金を投入して早期全線完成するための各種の案など—については,断り続けていた.東京大阪間の鉄道の影響は非常に大きいので,このような態度を受け,企業の大阪からの流出は大きくなり,東海道新幹線の客数の名古屋を境に多段落ちが激しくなってきており,東海道新幹線の客単価が下がり始めていることが幹部の気になり始めていた.

北陸新幹線の敦賀以西のルートについては,一時期大幅な遠回りの提案もなされたりしたが,いわゆる小浜ルートの変形である京都経由案が現実視され,実際にそのようなルートで実現した.東海道新幹線へ京都から乗り入れる件についても例のごとく運営会社から突っぱねられたため,京阪間は淀川の南側を経由して大阪に達するルートとなり,山陽新幹線との直通運転が実現した.あれほど北陸新幹線とのシステム統合の費用ガーと叫んでいた割には,あっさりと東海道山陽新幹線と北陸新幹線系統のシステム統合が行われた.これにより,東海道新幹線経由の客はさらに減少することになってしまい,悩ましさを増した.あまり急がない客や北関東の客は,大地震をおそれてなるべく北回りで移動しようとする人が増えている.山陽新幹線沿線と直通することで北陸新幹線沿線への移転を考える企業も増えている.

リニアの工事は事前から言われていたように,南アルプスで難工事になったが,何とか当初予定通りの完成にはこぎ着けた.2027年秋には名古屋まで開業したが,東京側のターミナルが品川,西側が名古屋のため,北関東から関西に至るには東京駅と品川駅と名古屋駅で計3回もの乗換が必要になり,少なからぬ客が乗り換え無しの北陸新幹線に流れている.東海道新幹線での収益で名古屋開業時の借入金を返済し,大阪延伸工事をするつもりだったが,厳しい状況になりつつある.大阪の企業が中京圏に移転する例があるのが多少の救いであった.

「新」整備新幹線の検討がなされた際,その他にも多数の新幹線建設の要望があったが,現実的な期間内に建設可能な路線だけが選ばれたために幹線鉄道改良をどうするのかが課題になっている.フリーゲージトレインを当て込んでいたが,なかなか使い勝手の良い設計にすることができなかったため,FGT特急が走っている区間はかなり限定的であり,結局在来線改良もしなければFGT特急を走らせることも出来ないという話になった.このような背景もあり,全幹法の暫定整備手法の規程を台車の重いFGTをも考慮した枠組みに改正されることとなり,暫定整備手法の適用条件もかなり緩和されることになった.

…というところで目が覚めた.新年おめでとうございます.

南海トラフ、超高層揺れ最大6m…長周期地震動

ほらね,センス無いだろ?

 内閣府の専門家検討会は17日、南海トラフ巨大地震が発生した場合、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の超高層ビルが、最大6メートル揺れる可能性があるなどとする予測を初めて公表した。

情報源: 南海トラフ、超高層揺れ最大6m…長周期地震動

いや,読売新聞の記事がセンス無いんじゃなくて,大阪の港湾地区の超高層ビルに大阪府庁の一部機能を移してしまったということ.よりによって,一番ひどい箇所に.

ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(防災強化編)
大阪は副首都になれるか(用地確保編)
大阪は副首都になれるか(地盤編)

一部の政治家の方は,専門家の意見を無視するのがかっこいいと思い込んでいるようだが,重大事が起こって割を食うのは府民なので念のため.府庁が機能しないと,多くの死人が出ることもありますのでね.

#ガーガーがなり立てるトップの場合,いろいろと忠言したい人がいたとしても黙っちゃうよね.府庁にも(市役所にも)事情のわかった専門職がたくさんいるはずなんだけどね.

日本の公共交通政策が欧州と真逆な件

欧州では,都市間交通は自由化されて競争状態に置かれているが,都市内交通は運輸連合が組織されるなど保護状態&需給調整状態にある.ローカル線も地域経営が当たり前.

日本では逆に,都市内交通は2000年以降は自由競争状態が原則に置かれて,運輸連合を組織しようとすると「談合組織だ!」と言われてしまうというガラパゴス状態.ローカル線も「自由競争」の元に放置状態.

都市間交通についても,航空はともかく,新幹線については地域独占(路線独占)が許されて,公設民営の整備新幹線であっても形式的な入札すらせずに最初から運営事業者が決まっているという需給調整状態.これもガラパゴス状態.

これでええんか?

 

大阪は副首都になれるか(用地確保編)

前回は副首都の立地場所として,平常時における大阪は悪くないという話であった.今回は「大阪に副首都としての機能を受け入れる空間はあるのか」という話である.要するに用地確保の問題である.

すでにNHKや日銀といった一部の機関は非常時に大阪で全国的機能を代替できるように準備しているという話があったかと思うが,最も重要なのは日本政府そのものの各省庁等をはじめとする機関である.これら機能とほぼ同じものを大阪に立地させるには,(ハコモノ云々という話はあるものの)やはりある程度のハコは用意しなければならない.

東京の霞ヶ関地区(およびその周辺の官庁街)と同程度の面積が確保できるかどうかが一つの目安だろうか.概ね1.5-2㎢程度か.

以下,地図のスケールは全て同じである.


【夢洲案】
大阪府下で探してみると,まず考えられるのは大阪湾の埋め立て地である.大阪湾の埋め立て地である咲洲や舞洲には既にいろいろと立地してしまっているので,夢洲なら今のところがら空きである.「統合型リゾート」と称するカジノ候補地でもある.面積的には十分広い.

だが,カジノはともかく隣の咲洲の高層ビルを大阪府庁舎にしようとして失敗したという黒歴史(長周期地震動に弱かった)がある.津波は大丈夫かな? その上,交通アクセスも今のところ道路が1本,ヒミツの地下鉄トンネルが1本という状況なので,かなり不便である.決定的なのは広域交通の弱さで,新幹線駅まで40-50分以上かかる.

【伊丹空港案】
これについては,ずいぶん前から伊丹空港を廃港にして跡地を首都機能移転先にする構想がある.

航空ネットワークの関空への完全集約が必要なので,”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れが必要であるばかりか,この地区から関空へのアクセス交通整備が必須である.JR宝塚線や阪急伊丹線,阪急宝塚線など通勤鉄道線が近隣に複数あるほか,山陽新幹線も近いので路線をちょっと曲げれば新幹線駅を設置することも困難では無い.高速道路も至近である.大阪や阪神圏の市街地にも近い.ただし,ここを転用してしまうと京阪神圏の空港は全て海岸地帯になり,地震災害時には同時に空港が使えなくなる可能性がある.

【万博記念公園案】
結構便利な位置だが,公園をつぶすことにはいろいろ意見が出そう.

高速道路は至近であり,モノレールや通勤鉄道もある.万博開催期間中には地下鉄が臨時で延伸されていたこともあるので,その気になれば地下鉄もOKであるほか,阪急千里線も近い.新大阪はやや遠いので,東海道新幹線をひん曲げるか,これからつくるリニアの経路をひん曲げるかする必要があるかも.空港は大阪空港まで割と近いものの,関空へのアクセスの課題は多く,迅速な移動が難しい.

【陸上自衛隊信太山演習場案】
やや南北に細長いが面積はある.自衛隊の移転が必要.

近隣に阪和線や泉北高速鉄道線があるので,通勤輸送の確保は何とか可能そうに思える.高速道路はすぐ横を走っている.だが,広域アクセスは課題が多く,新大阪は結構遠いため,リニア新幹線を延伸してここまで引き入れるか,例の”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れ線をこの地区経由にする必要があると思われる.山陽新幹線方面からは,なにわ筋線を新幹線対応で建設してここまで直通させる必要がある.

以上が大阪府下のまとまった土地であろう.いずれも一長一短である.


神戸〜阪神都市圏方面では,まとまった土地が無さそうなので,東方向で探してみる.

【巨椋池跡地案】
大阪市の北東で京都市の南方,木津川,宇治川,桂川の三線が合流する地点の東側であり,かつては巨大な池があった地区である.現在は干拓されて広大な田んぼになっている.

通勤鉄道は京阪と近鉄が近傍を走っているので,その気になれば線路を敷きかえることは可能であろう.高速道路は東西南北に走っているので問題無し.広域アクセスの面では,新幹線駅がやや遠いので(奈良の人には叱られそうだが)ここを副首都にするならリニアはここを通した方がいいだろう.だが,空港については伊丹,関空ともに遠く,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われる.だが,最初に書いたように,この土地はもともと淀川水系の三線合流地帯の巨大沼地であったところなので,地盤が良いとは言いがたく,水害の危険性も高そうなので,あまり高度な利用には向いていないと思われる.

【陸上自衛隊祝園分屯地】
河川近くの沼地がダメなら,じゃぁ丘陵地はどうだろうか.上の巨椋池から10-20kmくらい南に行くと京阪奈丘陵というほぼ手つかずの丘陵地帯がある.その中の国有地はというと,大面積なのはやはり自衛隊がらみである.

ここを転用するには自衛隊の移転先が必要である.近隣の丘陵地帯も手つかずに近く,大面積の確保はしやすい.通勤鉄道は周辺に複数あるが,支線等の延伸は必要である.いずれの線も高速運転向きではないので,大阪市内までは時間がかかる.既存の新幹線駅は遠いので,これからつくるリニア駅はここへのアクセスを念頭に設置する必要がある.奈良市にも近いのでリニア奈良駅とすることもできる.また,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われ,一部の試案にあるように,北陸新幹線と関空アクセス新幹線を接続して空港アクセス鉄道とすることが有効と思われる.

【陸上自衛隊長池演習場】
祝園の近くには長池という演習場もある.ここは他よりやや狭い.

演習場の移転先が必要という点を含めて,上の祝園とよく似た状況である.通勤鉄道はJR奈良線くらいしかない.

以上のように,大阪湾の埋め立て地と巨椋池の埋め立て地とは論外として,大阪府下および周辺にはいくつか候補地はありそうである.


国内幹線鉄道網に忍び寄る乗継ぎ割引解消の甘い誘惑

新幹線と在来線特急を乗り継ぐと在来線特急料金が半額とか,直通運転している新幹線の特急料金は通しの料金体系とか,そういった印象があるが最近は段々と違う方向に向かっている.

山陽新幹線と九州新幹線は直通運転しているが会社をまたいで乗車すると急激に料金が上昇するし,東北新幹線と北海道新幹線については料金が高いことが新聞沙汰になってしまった.目立たないが北陸新幹線も会社境界をまたぐと高くなる.

在来線と新幹線の乗り継ぎも,いつの間にか九州島内の特急と新幹線の乗り継ぎ割引制度は無くなっているし,山形と秋田の両「新幹線」は在来線区間の特急料金は半額では無くて約3割引にしかなっていないので,通しで乗ると結構割高である.そのほかにも「あれ? ここって乗り継ぎ割引無いの?」と思う箇所はいくつかある.

もちろん鉄道事業者の言い分としては「もともと1本の列車だったものを部分的に新幹線にしたから乗り継ぎ割引にしていただけであって,もともと別列車だったところは割引にはなりませんよ」だろう.

だがしかし,客はそんなことは知ったことでは無い.比較対象は並行する航空路線であったり,高速路線バスであったり,マイカーであったりするわけだ.実際の支払額が高ければ鉄道の競争力は失われ,回り回って地球環境をも悪化させる.

「乗り継ぎ割引解消で増収」なんてこと考えてませんか? 消費税率上げて,かえって税収低下を招いた某国政府のアホな政策は他山の石ですよ.

 

大阪は副首都になれるか(平常時編)

副首都なる機能を大阪に置くことが適切かどうか,いろんな面から考えてみよう.副首都は国家機能なので,単なる大阪の地域振興事業ではない.すなわち,大阪の人さえ良ければ良いというものではない.多面的検討は必要である.

まずは何も特別なことは起きていない平常時の場合についてである.

普段の平和な時期における大阪の位置は悪くない.東京からは適度に離れており,西日本に対しての地理的な距離自体は比較的近い.加えて,東京よりもアジア各国に対して若干近く,アジアのゲートウェイ都市になりうるポジションを占めることもできる.

だが,東京が国内の東日本に対して陸路のアクセスがほぼ完璧になってきているのに対し,大阪の広域アクセスは弱く,九州や四国の人々が一堂に会するには東京が便利,などという笑えない状況は続いている.

大阪を中心とする広域道路ネットワークについては,一部まだ工事中/未着工区間もあるものの概ね先が見えている状態である.だが,トラックや観光客はともかく,ビジネスマンが道路を使って広域移動することは希であるので,大阪を中心とするビジネス広域交通は今ひとつであると言える.

つまり,平常時における副首都大阪としての大きな課題は,国内広域アクセスであり,具体的には中央,北陸の各新幹線の完成はもちろん,四国新幹線や山陰新幹線などのネットワークをも完成させることが必要である.同時により遠方の国内や国際交通を担う航空ネットワークの要である空港アクセス時間の短縮も必要である.(逆に,こういった広域公共交通ネットワークを充実させることができないと,副首都には厳しいということ)

なお,関空アクセスについては,これまでにリニア新幹線や通常型新幹線の乗り入れ,あるいはなにわ筋線といった提案がなされているが,リニア新幹線は単線だと役に立たず,かといって複線だと兆単位近くの投資が必要で厳しい.なにわ筋線については新大阪からノンストップで40分などという試算もあるようだが,現状でも1駅停車で48分で到達するので,2000-4000億円の投資の割には効果がマイルドすぎる.なにわ筋線での関空アクセス構想を自画自賛してらっしゃる方もいるが…あんまりインフラプロジェクト構想のセンスないよね.バックのブレインを変えた方がいいと思う.

ちなみに,関空への通常型新幹線乗り入れ構想を”口撃”している人もいるが,フランスのTGVはシャルルドゴール空港に乗り入れているし,ドイツのICEはフランクフルト空港に乗り入れている.スイスのインターシティーはチューリヒ空港やジュネーブ空港に乗り入れているし,オランダのスキポール空港へはTGVの国際版のタリスが発着する.ロンドンのヒースロー空港へは新幹線のような列車こそ走っていないが,ヒースロー急行という準高速鉄道が乗り入れている.フランスやドイツには航空便名の付いたTGVやICE列車が走ってさえいる.

センスのないインフラ構想って恥ずかしいよね.