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大阪は副首都になれるか(広域ネットワーク編)

平時に置ける大阪の全国的,広域的な位置はさほど悪くはない.東西方向に交通路が通り,日本海側にも比較的出やすい.瀬戸内海を介しての交通も利用でき,四国方面には陸路の橋もいくつか架かっている.

しかし,大災害発生時を考えた場合,淀川の河口であることが災いして,副首都として全国的な機能を立地させるには,あまり条件がいいわけではない.「耐震補強すれば…」という意見も出てくるだろうが,周辺の建物やインフラを含めて全て新品に取り替えるわけにはいかないので,地理的立地条件は重要である.

大阪は副首都になれるか(平常時編)
大阪は副首都になれるか(用地確保編)
大阪は副首都になれるか(地盤編)
大阪は副首都になれるか(都市の位置関係編)
南海トラフ、超高層揺れ最大6m…長周期地震動
ONE OSAKAの都市計画・交通計画は妥当な案か(防災強化編)

さて,今回の検討は,用地確保編に書いた各地の広域アクセス性である.何度も書くが,「副首都」なるプロジェクト構想は大阪市や大阪府の地域振興策ではない.

【夢洲案】
大阪湾の埋め立て地の夢洲であるが,既存の新幹線駅は遠く,新幹線の路線を少々変更すれば駅ができるという立地でもない.リニアが大阪までやってきた場合,新大阪駅から延長してここを終点にできないこともないが,何とか利便を確保できるのはその路線だけである.国土幹線的な高速道路からも外れており,阪神高速から支線を伸ばせる程度である.三空港へは阪神高速経由でアクセスできるが,いずれも自動車頼みである.

ということで,広域利便性ははっきり言って悪い.

【伊丹空港案】
伊丹空港を廃港にする案である.既存の新幹線駅はやや遠いが,山陽新幹線の路線を付け替えて駅を作れば対応できないこともない.リニアが大阪までやってきた場合,新大阪駅から延長してここを終点にもできる.幹線的な高速道路も近い.伊丹空港を廃港にしてしまうので,国際空港へのアクセスは不便であり,首都の代役を果たすには少々能力不足は否定できない.ここから大阪の都心を経由して関空までの新幹線レベルのアクセス鉄道が欲しいところ.

ということで,夢洲よりはるかにマシだが,国際空港アクセスに課題ありと言ったところである.

【万博記念公園案】

万博記念公園を転用する案である.既存の新幹線駅はやや遠く,東海道新幹線の経路変更をするにも少々離れている.リニアや北陸新幹線が大阪まで達する場合,ここを経由するようにした上で,駅を設置する必要があろう.高速道路については非常に便利である.空港については,伊丹空港へは高速道路経由ですぐであるが,関西空港へは遠いため,上記のリニアや北陸新幹線を関空まで延ばす必要がある.

ということで,万博記念公園を活用する案も,国際空港アクセスには課題がある.

【陸上自衛隊信太山演習場案】
信太山演習場の転用案である.既存の新幹線駅は遠く,近くを新幹線の線路が通っているわけでもない.なので,リニアや北陸新幹線が大阪まで達する場合,大阪の都心を経由した上でここに達する必要がある.ここまでリニアや北陸新幹線が来るのなら,関空はすぐなので,結局関空まで路線整備をすることになる.高速道路については阪和自動車道があるので,一応大丈夫.空港については,伊丹空港は遠いが,関空は至近である.

ということで,関空は近くていいのだが,結局リニアや新幹線などを延伸する羽目になりそうな立地である.

【巨椋池跡地案】
巨椋池跡地案である.既存の新幹線駅は遠く,近くを新幹線の線路が通っているわけでもないので,リニアや北陸新幹線が大阪まで達する場合,ここを経由した上で大阪まで達する必要がありそうである.リニアをここ経由にした場合「奈良市付近」かどうか議論になりやすい位置である.高速道路については各方面とも非常に便利.空港については,伊丹空港は遠く,関空については距離があるのでリニアか北陸新幹線を大阪以遠に延伸してアクセス鉄道とする必要がありそう.

ということで,この案でも国際空港アクセスには課題がある.

【陸上自衛隊祝園分屯地】
祝園分屯地案である.巨椋池と広域利便性の性質は似ている.既存の新幹線駅は遠く,線路も遠いので,リニアや北陸新幹線が大阪まで達する場合,ここを経由する必要がありそう.ただし,リニアについては,ここなら「奈良市付近」の範疇には何とか入りそう.高速道路については一応何とかなりそう.空港については,伊丹空港は遠く,関空についてはリニアか北陸新幹線を大阪以遠に延伸してアクセス鉄道とする必要がありそう.

ということで,この案でも国際空港アクセスには課題がある.

【陸上自衛隊長池演習場】

長池演習場案である.祝園分屯地案と広域利便性の性質は似ている.既存の新幹線駅は遠く,線路も遠いので,リニアや北陸新幹線が大阪まで達する場合,ここを経由する必要がありそう.ただし,リニアは,「奈良市付近」か議論になりそう.高速道路は新名神が横を通る見込み.空港は,伊丹空港は遠く,関空についてはリニアか北陸新幹線を大阪以遠に延伸してアクセス鉄道とする必要がある.

ということで,この案でも国際空港アクセスには課題がある.

以上のように,ほとんどどの立地に共通するのは国際空港アクセスである.唯一関空の近い信太山演習場案であっても,こんどは陸上交通の面での鉄道の広域アクセスに課題があり,結局は関空までリニアか新幹線を作ることになりそうである.

ということは,関空への高速鉄道整備は副首都機能の立地が大阪府下および近隣である限り必須のプロジェクトであることがわかる.そうすると,立地場所を選ぶには国際空港アクセス以外の面での優位性から選ぶことになりそう.リニアや北陸新幹線の経由上に無理なく立地できるところとなると,この中では万博記念公園案,祝園分屯地あたりが合格?


みどりの券売機プラスとの闘い(撃沈)

撃沈された報告である.

今回の希望ルートは以下のようなものである.本来は新幹線で一本.

  1. 京都駅から新幹線で名古屋へ
  2. 名古屋で「ひだ」に乗り換えて富山へ(乗り継ぎ割引)
  3. 富山から東京まで新幹線

書いてしまうと,かなりシンプルな経路である.ところが,これが「奴」からは買えないのだ.

京都から富山への特急券を買おうとすると,新幹線乗り継ぎのボタンか,もしくは発着駅と時刻を指定して検索するかの選択肢である.

「奴」は必ず,京都→金沢→富山の新幹線乗り継ぎのルートを示してくる.時間帯によっては,京都→米原→金沢→富山のルート候補が示されることもある.

だが,次の候補,次の候補,次の…最後まで候補を全て見ても,京都→名古屋→富山の候補は出てこないではないか.ついに手詰まりか.いよいよ,あの電話機に頼らないといけないのだろうか.ボタン操作だけでは買えそうにない.

今回は撃沈.手痛い2敗目.ただいま通算2勝2敗.まさか,こんな簡単な経路で負けるとは…

初夢鉄道答え合せ(鉄道航空融合編)

最後に鉄道航空融合編の答え合わせである.

海外出張の帰路である.航空搭乗券は現実世界では正式な紙券が廃止されているが,夢の中ではさらに進んでおり,ICカード搭乗券になっている.顔写真等の個人情報とともに搭乗便および座席が書き込まれており,券面には感熱式の概要表示もある.ICカード登録の顔情報と旅券の写真情報と実際の顔の三つが一致しないと飛行機に乗せてもらえない.

すでに関東の普通車グリーン券をICカードで買うとカードに購入情報が書き込まれて車内でセンサーにタッチするだけで良くなっているので,これを進化させればできないことはなさそう.実現はそう遠くないかも.旅券と国際航空券の融合という方向性もあるかも.

今回の帰路の経路は,FRA->HEL->KIX->KYOである.つまり,独フランクフルト発,ヘルシンキ乗換,関空着,それからそのまま鉄道に乗って京都まで.昨今の鉄道と航空の有機的結合政策によって,国内大都市主要駅にも空港のレターコードが割り当てられ,ICカード1枚で乗れるようになっている.予約情報は旅行会社のカウンタか,自宅のPCに繋いだカードリーダでICカードに書き込める.

国内航空路線の代わりに幹線鉄道網が組み込まれている例は,日本ではまだ無いが,欧州では独仏などで既に実現し始めている.残念ながら,日本での動きはないものの,こういった融合に関する書籍は発売されたようである.

関空から京都までは,特急はるか,ではなくて新幹線である.毎時4本が関空から大阪経由京都まで走っており,その先は2本が東海道新幹線直通,残りが山陰新幹線方面と北陸新幹線方面である.大阪経由の山陽新幹線直通と,向きが逆であるが四国方面行きもある.これら列車の運行会社は航空会社と提携しており,通常の列車便名とともに航空便名もついている.いわゆる共同運行便である.

航空便名が付いた列車はまだ日本では走っていないが,関空新幹線の話は私案レベルでは出てきた(しかも,北陸や四国の各新幹線が関空乗り入れ可能な形態).

関空以外にも高速鉄道が乗り入れいる国際空港があり,成田空港にはスカイアクセス線経由で,ミニ新幹線タイプの新幹線電車が各方面から乗り入れている.羽田空港は東北方面から東海道新幹線の車両基地の横をかすめる線路を経由して新幹線が乗り入れている.もっとも実現が早かったのは福岡空港の国際線ターミナルであり,第二滑走路開業に合わせて博多駅から単線の新幹線が乗り入れ可能な線路が建設された.

関空以外の高速鉄道乗り入れの話は,残念ながら全く進んでいない.

#なお,一連の夢が正夢か逆夢かは定かではない.

全般を通じて,逆夢はあまり無さそうで,話が進んでいないものが多かった.だが,いくつかの話は正夢になりそうな感じでもある.さて,来年はどうなるだろうか.

 

新幹線基地の井戸掘削—JR東海と摂津市の裁判泥沼化—

これマズいなぁ,と思った記事.

JR東海が東海道新幹線の水の確保のため、鳥飼車両基地(大阪府摂津、茨木両市)で井戸の掘削を計画し、摂津市が掘削禁止を求めて提訴している問題で、同社は摂津市に対し…情報源: 地盤沈下に影響? 新幹線基地の井戸掘削 JR東海と摂津市の裁判が泥沼化   – 産経WEST

市境付近で地下水をくみ上げようとしているが,訴えている市の外なので,摂津市との協定の対象外だとして争っているというお話.詳しくはリンク先を参照.

地下水は市境など知ったこと無く流れているので,市境のわずか外側だからといって摂津市に影響が無いとは限らない.なので,市の主張はごもっとも.協定の範囲外なので,法的拘束力は無いという鉄道会社の主張もごもっとも.

この辺の論争は法廷に任せるとして,こういったトラブルが出るということが全国に知れ渡ってしまったことの方が大問題.今後,この鉄道会社が新規に工事をしようとすると,地元自治体や住民の目が厳しくなってしまい,「法やルールの抜け穴を使って意図しないことをするのではないか」と見られてしまう.つまり協力を得られなくなる可能性あり.特に駅ができない沿線が要注意.

これから約30年にわたって大規模な工事をしようとしているのに,頭が痛くなる話である.こういった小さな話を発端に,大きなプロジェクトが実行しにくくなる可能性無きにしも非ず.千里の堤も蟻の穴から崩れかねないというお話.

#なお,この鉄道会社は実は今までに大きな工事をしたことがないので,自治体や沿線対応はあまり慣れていない,という話は業界内ではたまに聞く.

初夢鉄道答え合せ(西日本新幹線編)

続いて西日本新幹線編の答え合わせである.

日本海側の高速鉄道ネットワークは東北方面が羽越准新幹線,北陸はフル規格であるが,山陰新幹線をどうするかが課題であった.そのまま当初計画どおり大阪を起点にすると,北陸,東海道,中央,四国の各新幹線が大阪の一点に集中する.

山陰新幹線については,今までほとんど議論はなかったが,北陸新幹線の敦賀以西の話とからめて,議論が始まりつつある.新幹線ネットワークの大阪一極集中についても,実質的な利便性を確保しながらも非常時には大阪を経由せずに東西間交通の確保が可能な方法が見えてきている.

さすがにまずいので東西間交通の非常時バイパスになり得る山陰新幹線については,起点を大阪ではなく京都に移し,さらに一部は北陸新幹線と線路を共用させ,実際の工事起点は京都と若狭の間の山中になった.常用設備ではないが,北陸新幹線と山陰新幹線の直通連絡線も設けられた.

まだ議論は進んでいないが,北陸新幹線の敦賀以西の経路として小浜経由で京都へという案が出つつある.同時に「舞鶴を経由して…」という人まで出ている.舞鶴はさすがに経由地としては遠回りだが,途中分岐ならあるかも.

鳥取までは比較的地形が険しいので新線になったが,その先については准新幹線規格になっている.こうすることで,日常的には大阪経由でリニアを含めて各方面への移動ができるとともに,緊急時には大阪を経由せずに日本海側だけで東西方向に移動ができる.

山陰新幹線については,京都府下の動きが(北陸新幹線の経路問題という形で)出つつはあるが,まだ鳥取…島根方面に関する具体的な話は無い.

九州東側の新幹線についても同様に基本的に准新幹線規格であるが,宮崎空港に鉄道が乗り入れていることを活かし,宮崎空港と東九州准新幹線の有機的結合が実現している. 大分でも四国方面と繋がっており,陸の孤島感はかなり少なくなっている.農産品や水産品の輸送は東九州新幹線+四国新幹線という経路で軽量高速貨物輸送列車が活躍する.

先日,日豊本線全線乗ってみたが(もちろん分割で),新幹線のスピード感に慣れているのでかなり厳しいものを感じた.…が日豊本線の新幹線化の話は全く動きが無さそう.

【祝】インド新幹線!

めでたい!

 【ニューデリー=黒沼晋】安倍晋三首相とインドのモディ首相は12日午前(日本時間同日午後)の首脳会談で、ムンバイとアーメダバードを結ぶインド初の高速鉄道建設を巡り、日本の新幹線方式を採用することで一致

情報源: 日経:印高速鉄道、日本の新幹線方式を採用 日印首脳会談

どこかの国と違って,約束はきちんと守ってくれると信じる.

インドは大きな都市が数百キロごとに位置しており,高速鉄道に向いていそうだ.それから,インドの鉄道網の特徴は,線路の軌間が1676mmという変わったサイズになっており,(たぶんインド新幹線は標準軌で建設されるだろうから)インドの在来線と高速鉄道はそのままでは直通できない.

つまり,日本とよく似た状況なわけであり,割り切って日本の新幹線システムを導入するのが良さそうである.

もっとも,インド新幹線の軌間を1676mmで設計できないことはないと思うが,そのような広軌で建設して在来線に乗り入れとしても,こんな路線と新幹線が直通運転するのはあんまり現実的では無く,別の交通システムとして建設した方が良さそう.

 

初夢鉄道答え合せ(南海道新幹線編)

さらに南海道新幹線編の答え合わせである.概して「夢」は夢でしかない傾向にある.

全国的な新幹線ネットワーク推進によって大方の中規模以上の地方都市は高速鉄道ネットワークに組み込まれることとなったが,多数の中規模都市が取り残されている地域があった.紀伊半島から四国を経て九州東側に至る地域である.昔の表現を使うならば,九州以外はほぼ南海道である.

残念ながら全国的新幹線網の再構築の議論は全く進まず,相変わらず整備新幹線の沿線だけで話をしている.一方で,整備新幹線沿線以外からの新幹線整備の要望は,この一年,強まることはあっても弱まることはなかった.

リニアの経路が南海トラフの大地震の影響を最小限にするために,三重県内を経由したものの三重県駅は当初予想よりもやや北側にできたため県庁所在地の津市へのアクセスが課題として残ってしまった.副首都機能立地のために若干リニアがずれた奈良市の高速鉄道連結も課題である.和歌山は大阪都市圏内と思われがちであるが,実際にはかなり遠い.四国は橋は繋がっているが大きな半島状態である.九州東側は長らく見向きもされていない.

リニアの名古屋以西の議論もほとんど進んでない.南海トラフが怖いといって東京-名古屋間を内陸経由にしておいて,名古屋以西,特に伊勢湾岸付近での対災害性の検討がユルいように見えるが,大丈夫か? 副首都機能の議論も特に進んでないが,首都圏直下地震は過去に何度も起きているという実績があるので,場合によってはもう間に合わない可能性もある.

まずは三重や奈良の利便向上であるが,当初は中央新幹線計画によって利便を向上させるはずであった.ところが,…2010年代半ばにおいて行われた国土計画の見直しにおいて,リニア新幹線とそれ以外の新幹線の役割分担も見直され,リニアは幹線中の幹線,それ以外の新幹線はリニアの支線のような扱いとなった.そこで,奈良や三重などもこの基本方針に従い,リニアに対するアクセス高速線として近鉄が強化され,実質的な利便性は確保された.

リニア駅は既設鉄道線との接続が微妙な駅が多そうだが,どうもネットワークとして機能させようという意識が薄い路線になってしまいそうである.駅アクセスにとどまらず,リニア新幹線と既設新幹線の関係は,いずれは現状における新幹線と在来線特急の関係のようになる可能性が高いはずだが,リニア新幹線を幹とする全国的幹線鉄道網の体型再構築の話は全く進んでいない.在来線特急相当のサービスも残るであろうから,三層構造になることも考えられるのだが,仕事してる?>国の担当部署殿

四国については瀬戸大橋や大鳴門橋はできていたものの,新幹線用の空間は長らく未使用だったので,これらを活用しながら安価でかつ実質的な利便性を確保する策が取られた.まず,すぐにできる策として岡山から瀬戸大橋までの新線が建設され,瀬戸大橋は完成していた空間を活用して四国に渡る路線ができた.

瀬戸大橋ルートって,安くて,すぐできて,効果が大きい「ポスト整備新幹線プロジェクト」のうちの一つのはずだが,地元の盛り上がりに比べて,国の動きはまるで石像状態である.日本の新幹線整備のネックは当該政府機関になりつつある.

大阪から西に延びる四国新幹線については,関空付近までは航空路線網と高速鉄道網を一体化する政策に従って「関空新幹線」として建設され,新大阪で東海道山陽新幹線や北陸新幹線などと接続された.

北陸新幹線と関空アクセス新幹線を整備すべし,という案は,私案レベルでは出てきた.

関空から先は和歌山市北部をかすめながら紀淡海峡を経由して徳島に至ったが,海底トンネルについては青函新トンネルと同じく電車専用線として建設され,急勾配を採用することで延長が大幅に短くなり30km弱となった.これにより当初構想に比べて建設費が2000億円あまり安くなった.

紀淡海峡(友が島水道)経由の四国新幹線の要望は強くなってきている.海底トンネルについては,海底下部分の延長が短くならないと,工費はあまり安くならないという話もあるようだ.トンエルの地質調査については,中断されてしまっているのだが,ある程度は既に調査が行われている.

その先については複線化の準備工事は行われたが,軌道は単線を基本とし,駅部と信号場ですれ違うことになった.毎時片道2本の完全等間隔パターンダイヤを前提として駅と信号場の配置が決められており,大幅に工費を節約しながら利便性を向上させることが実現した.もちろん,ウナギと穴子の混成編成である.

ある程度仕様を割り切った新しい新幹線の整備規格というのは,そろそろ議論されてもいい頃だと思うが,そんな様子はない.高速道路は暫定2車線とか,高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路とか,いろんなあの手この手の工夫があるが,新幹線整備に工夫はあるのか? 国は整備新幹線でわが国の新幹線整備は完全終了だと思っているようである.ただ,整備新幹線沿線以外で新幹線整備を要望している地方では,もっと新幹線整備の工費を安くする方法はないだろうか,との模索はあるようである.

高速道路が川之江付近のJCTで全路線が結節していることを参考に,高知方面については川之江付近から分岐してほぼ真南に向けてトンネルだらけの新線が建設された.こちらも毎時片道2本の完全等間隔パターンダイヤを前提として線路施設が計画された.

高知方面も具体的な話は進んでいない.運行計画とインフラ整備計画の有機的統合というのはあってしかるべし.

豊予海峡にもトンネルが掘られたが,こちらも急勾配を採用して3000億円近く工費を節約した.こうして,かつて第二国土軸と呼ばれた西日本の新たな国土軸の主要部分が完成している.

紀淡海峡が進まないので,豊予海峡も進まない.

こうしたコストダウンとともに,インフラ整備の上下分離の原則も見直されている.道路系の輸送は,インフラ部分が国土交通省の建設系の事業で,その上を走る車両等システムは運輸系の管轄という上下分離が行われている.幹線鉄道については,インフラ部分の整備も完成後の輸送も運輸系の管轄であり,完全には政策部分が上下分離されていない.そこで,四国の新幹線整備を機に,幹線鉄道についてもインフラ部分は建設系の事業で,その上を走る輸送システムが運輸系の管轄という政策の上下分離が行われるようになり,財源制度も同時に見直された.

この「新たな上下分離政策」を早く実現しようよ.

日本の公共交通政策が欧州と真逆な件

欧州では,都市間交通は自由化されて競争状態に置かれているが,都市内交通は運輸連合が組織されるなど保護状態&需給調整状態にある.ローカル線も地域経営が当たり前.

日本では逆に,都市内交通は2000年以降は自由競争状態が原則に置かれて,運輸連合を組織しようとすると「談合組織だ!」と言われてしまうというガラパゴス状態.ローカル線も「自由競争」の元に放置状態.

都市間交通についても,航空はともかく,新幹線については地域独占(路線独占)が許されて,公設民営の整備新幹線であっても形式的な入札すらせずに最初から運営事業者が決まっているという需給調整状態.これもガラパゴス状態.

これでええんか?

 

初夢鉄道答え合せ(東日本新幹線編)

続いて東日本新幹線編の答え合わせである.

1970年制定の全国新幹線鉄道整備法はさすがに古いという話になり,「新全国幹線鉄道整備法」に衣替えされた.「新」の文字の位置が違うだけに見えるが概念が大きく変更されている.それまではフル規格の新幹線を何が何でも作るんだという前提で計画が組み立てられていたが,全部フル規格というのは無理っぽいことが見えてきたので,昔「ウナギを頼んだら穴子が出てきた」と揶揄された方式を前面に押し出すとともに,穴子の他にもハモやウツボも用意した.

残念ながら,幹線鉄道政策全体の見直し議論は全く進まず,相変わらず整備新幹線の議論だけであり,しかも次に着工する区間の沿線選出の議員さんが活躍する,という構図は変わっていない.沿線選出でも国全体を見渡して議論ができればいいんだが,なかなかそうは運んでいないようである.

2010年代半ば以降,「地方創生」政策が掲げられ,かつての「均衡ある国土の発展」の再来かと思われたが同じ轍は踏まなかった.国土の均衡を掲げていた全総は新産業都市,定住圏構想,テクノポリス,物流のための高速道路網完成等々,産業立地を最優先にしていたがほとんど失敗であったことを反省していた.一連の全総でほとんど唯一成功したのが新幹線であったため,新幹線整備に力を入れる方式になっていた.だが,建設資金は限られており,無い袖は振れない.そこで,穴子やハモ,ウツボである.おいしければ良い.もちろん,必要に応じてウナギも出す.

”地方創生”のためには新幹線が重要であるという認識は,ここ数年顕著に上昇してきているように思われるが,その認識向上は主に地方部におけるものであり,中央政府では相変わらずである.整備財源は相変わらず国家予算のppmオーダーであり,遅々として進まず.

例えばミニ新幹線でお茶を濁していた奥羽新幹線に対しては,地元はフル規格化を要望していたが,山岳の線形が厳しい区間だけがフル規格新線が建設され,あとはミニ新幹線のまま高速化が図られた.高速化の敵は踏み切り,駅構内,曲線などであるが,都市部では都市計画事業として高架化事業が積極的に進められ,欧州都市並みに都市内からは踏み切りが消滅した.都市を抜けた郊外部では単独の立体交差事業がいくつか進められ,やはり踏み切りがほとんど消滅した.曲線部分については,曲線改良を目的とした土地区画整理事業が認められるようになり,改良が進んだ.こうして,フル規格では無いミニ新幹線区間も160km/hでの連続運転が可能となった.国土交通省ではこのような新形態を准新幹線と呼ぶようになっている.

これは一部分であるが正夢になりそうな気配である.山形新幹線の板谷峠部分に高規格新線を建設して所要時間を短縮するとともに天候に対する輸送の安定性を向上させよう,という構想が動き出しつつある.正月にこの話を書いたが,サクランボの美味しい季節にはそういったお話を現地でする機会にも遭遇した.なお,山岳部以外の高速化については,今のところ動きはない.

羽越線などの貨物列車が多く走る区間ではFGTが活躍しているが,やはり難所については新線建設が行われ,貨物列車も130km/h運転されている.もちろん都市部は高架化が進行し,全線にわたって130km/hの連続運転が可能になっている.国土交通省ではこのような形態についてはスーパー在来線と呼ぶようになっている.

FGTは実用化の目処が立たず.残念.在来線の目立った改良もなく年末を迎えた.

従来の全幹法に基づく新幹線計画では,茨城県内や長野県内の中規模以上の都市が高速鉄道ネットワークから外れていたが,こういった新しい鉄道政策により実質的な新幹線ネットワークに組み込まれるようになっている.

こういった新ネットワーク構想も進まず.残念.

北陸新幹線は敦賀から先大阪までのつなぎ方で長らく揉めていたが,結局,大都市の京都をスルーするのはまずいということで,若狭湾近辺をかすりながら京都市内で東海道新幹線に接続される今までにない案が採用された.さらに敦賀-米原間は准新幹線によって結ばれ,中京方面にも利便性が向上している.

書いてみるもんだね.前半は概ねあたりつつあるかな? 東海道新幹線に京都駅から合流するかどうかは現時点では不明.敦賀−米原間の「准新幹線」も不明.

大阪まで北陸新幹線が繋がることで,北陸新幹線と東北・北海道新幹線を大宮で方向転換するだけで直通運転できるようになり,夜行新幹線が「トワイライトエクスプレス」の名で運転されるようになった.大きな車体を活かして居住性抜群で大人気だ.この頃には整備新幹線の260km/h規制が緩められていたが,新大阪発札幌行き列車は先を急ぐ列車ではなかったので,途中駅に長い目に停まりながらゆっくり走っている.

北陸新幹線がまだ大阪までの目処が立っていないので,新幹線版トワイライトエクスプレスはまだ見えてこない.

それから,首都圏では東日本の高速鉄道網が充実することで大宮-東京間の新幹線の線路容量が逼迫し,大宮から別線で新宿に至る新線が作られ,今や新宿駅も新幹線始発駅として活躍している.新宿-品川間の延伸の話も聞くようになった.

大宮-新宿間の新幹線新線も,現時点では具体化していない.

つづく

初夢鉄道答え合せ(北海道新幹線編)

続いて北海道新幹線編の答え合わせである.

2014年度終わり頃になって北海道新幹線の開業前倒しが決まり,その当時は2030年頃に開業することになった.その当時は,と書いたのは実はさらに伏兵があったわけである.つまり,オリンピックである.2026年の冬季五輪に札幌が手を上げたわけであるが…

今のところ,札幌オリンピックの話もさらなる北海道新幹線開業前倒しの話も出てきていない.

札幌-東京間は1000km以上もあり,新幹線といえども航空からか客を奪うことが難しく,経済合理性の観点では函館延伸も札幌全線開業両方とも,航空と同程度のサービスレベルを提供するのがやっとで交通サービス水準を向上させたとは言えず,厳しい状況であった.

この辺の厳しい状況は白日の下にさらされつつある.青函トンネルの扱いが他の整備新幹線とは異なって特殊な扱いになっていることが大きな原因になっているんじゃ無いかと思う.

そこで…実際に実行された.

一つ目は速度の向上であった.新幹線電車そのものは350km/h運転できるようにブレーキ系統を中心に改良が行われ,同時に盛岡以北の整備新幹線区間の260km/h運転の縛りを緩めることが検討された.結局,盛岡以南と同レベルの騒音ならば260km/h運転にこだわらないということになり,首都圏を脱したあたりから札幌までの350km/h運転が実現することになった.

この辺の動きも新しい話は無いが,整備新幹線区間における速度向上の話は時折聞くので放棄されていないように思われる.しばらく様子見かな.

もう一箇所,問題があった.青函トンネルである.在来線の貨物列車が走っていたため,新幹線が高速走行しているとすれ違い時に貨物列車が風圧で転倒する危険があったため,新幹線は140km/h運転になっていた…

青函トンネル内の速度向上についても,特に新しい動きは無い.

そこで,もう一本トンネルを掘る案が出てきたが長大海底トンネルは工費が高い.そこで,新型の新幹線電車が走ることを前提に勾配をきつくして,トンネル延長を短くすることになった.30‰勾配が採用されたため,トンネル延長は元の54kmから35km程度へと大幅に短縮された.

新トンネルの話はあるようである.”初夢”とは若干異なり,新トンネルを単線の貨物用として掘削し,旧トンネルを原則として新幹線用にするという構想は聞いたことがある.

元のトンネルについても在来線貨物列車だけ走らせるだけではもったいないという話になり,新幹線用の広軌線路を使用してカートレインも運行されることになった.これに伴い旧トンネルは国道指定されることになり,旧トンネルを道路財源で買い取った形となってそれが新トンネルの建設財源になっている.今や青函旧トンネルは国道5号の一部であり,国道5号の起点は函館から青森に移された.新幹線が通れるトンネルが2本になったことで夜間運転が実現し,新幹線を経由する北海道行き夜行便が復活した.

鉄道行政と道路行政の融合は残念ながら進行していない.航空行政もそうだ.相変わらず縦割りで国土交通省が発足して15年以上になろうかというのに,全く相乗効果は無い.

北海道新幹線は計画としては旭川終点であるが,さすがにフル規格は厳しいという話になり,道内幹線鉄道計画は大幅に見直された.主要路線は新幹線と直通する三線軌でミニ新幹線が函館以北の北海道新幹線と直通し.三線軌でない区間は寒冷地仕様のFGTが直通している.こうして道内幹線鉄道網は一新された.

北海道新幹線の終点駅である札幌駅の構造が地下になりそうであったり,あるいは現役の西側になりそうであったりと,どうやら延伸を考えていない構造のようだ.残念.FGTも雲行きが怪しい.

つづく