鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

リセット症候群

降ってわいた選挙のシーズン到来である.

どこの誰がどうかは言及しないが,リセットだとか,一新だとか,ガラガラポンだとか,そういう雰囲気のキーワードを訴えるケースが多そう.

でも,実際のパソコンでリセットしなければならないような状況だと,リブート後には悲惨な結果が待っていることが多い.ガラポンについても,周到な準備をしないままの安易なガラポンは事態が悪化しそう.

数理計画手法の一つに遺伝的アルゴリズムというパソコン上で自動実験をさせるような方法がある.数値がどうやって改善されてゆくのか,しばらく様子を観察してみると,小規模な改善(突然変異)と他のケースでうまくいったものの一部を取り入れてゆくケース(交叉あるいは交配),これの積み重ねで長期間のうちに大きな改善につながっている.こういった小規模改善や他からの導入の場合でもうまく行かないことの方が多く,何度も何度も試行錯誤が行われるうちに改善が発見されてゆく.ガラポン的な変化をわざとさせてみると,状況が悪化して消えてゆくことがほとんどであり,さっぱり改善につながらない.

ついついまっさらな紙の上に理想の絵を描きたい衝動に駆られるのは理解できる(*)が,実際には現状を受け入れた上で,どうやってゆくのかが真のプランナーやリーダーの腕の見せ所のはず.もしも人生のことならば,安易に「リセット」だとか,「ガラポン」だとか,なかなか怖くて口にできないよね.

(*)まっさらな紙の上に自由に描くことができる状況でも,現実を理想状態に導くのはなかなか難しい.もし簡単にできるのなら,計画経済はもっと成功していただろう.

大阪環状線から103系電車が引退

103系電車がまもなく運用終了らしい.…が,こんなもん毎日見られると侮っていた関係で,写真のストックは少ない.

こういう形の電車は,子供の頃に和歌山駅に行くとみられた.オレンジ色で,ロングシートで…でも,お面が少し違っていた.今考えるとあれは103系ではなくて72系というさらに旧型の電車だったかも.

その後,小学校高学年の夏に大阪環状線で「クハ103-1」なる製造番号1番の電車に乗ったのを覚えており,その後,和歌山から大阪まで予備校に通う羽目になった際には環状線で利用.その後,阪和線で再び「クハ103-1」を確認.阪和線を爆走すると,隙間風がひどい電車だった.そして今は京都の博物館に収蔵されている.

現職に就いた後,しばらくは片町線でもこれに乗って通勤.

最初の製造から53年の超長寿命ちゅうことやね.内装のリニューアルとかしてたけど,乗客サービスの点ではさすがに引退が適当かも.

 

Metzの3連節BRT(曲線通過編)

Metzの3連節バス.全長が長いと内輪差ができる可能性が高まるが,どうやってるかというと…

右に曲がります.まずは第1軸が右に舵を切り…

2両目は1両目に引っ張られて若干曲線の内側をまわり…

時間差で最後軸が右に舵を切ることで…

特に問題なく曲がってゆく.

そして最後の車軸も元に戻る.

内輪差が無いように1両目の走行した軌跡を2両目がなぞり,3両目もなぞる…かというとそうではなさそうだ.特に乗車中に観察するとよくわかる.通常の2連節バスの後ろに3両目がぶら下がる構造であり,3両目がひどい内輪差にならないように最後軸が操舵されている.要するに,内輪差は通常の連節バス程度には存在するようだ.

車道が狭い割に連節バスが自在に走っているのは,1つは運転士が慣れていること.もう一つは,内輪差で少々歩道の端っこを踏んづけても気にしないこと.このあたりが理由のようだ.バスが曲がってきたら,歩道の端っこから離れた方がが良さそうであった.

Metzの3連節BRT(外から編)

フランス東部のMetzの三連節バス.全体像はこんな感じ.この写真は右側が前(運転席側).1両目が前後の2軸で,その後ろに後ろ側だけ車輪のある2両目,さらに後輪だけの3両目がつながっている.

ステアリングは1両目の前輪と3両目の後輪だけに付いているようで,1両目の後輪と2両目の後輪は固定のようだ.つまり,通常の連節バスの後ろに,さらにステアリングつきの3両目がくっついている形.

下の写真は運転席側.一方向にしか走らないので,運転席はここだけ.狭い専用道路を走っているが,コマが付いた自動操舵というわけではない.

「ホーム」と車体の隙間はこの程度.健常者にはほとんど問題ないが,車椅子が自力で越えられる隙間ではない.

ということなので,1両目の前のドアの下には,自動で板が出てくる装置が付いている模様.

こちらの写真は,後ろ姿.つまり,運転席の有無にかかわらず,外観はほぼ同じに設計されており,「LRT風」になっているということ.

エンジンは3両目の後ろ側から音が聞こえてくるので,この運転席風のスペースの下側に収まっていると思われる.

エンジン直近の1軸だけが動軸だとまともに走行できそうもないので,他の車輪が動軸になっていると思われる.低床式バスなので,床下に推進軸があるわけでもないため,エンジンで発電してモータを回す方法だろうと思われる.

 

Metzの3連節BRT(内装編)

日本では単なる連節バスを「BRT」と紹介しているようであるが,欧州では既に三連節バスが走り始めており,これを使ったBRTシステムが構築されている都市がある.

日本でも紹介が始まっているフランス東部のMetzの三連節バス.話題になりつつあるので,百聞は一見にしかず,ということで行ってみた.

通常は外側からの紹介が多いだろうが,写真整理の都合上,三連節バスの内装の紹介からである.外観の色は3-4種類あるが(緑青紫橙?),路線系統別に色分けされているわけではなく,どの色のバスが走ってくるかは決まっていない.

これは緑.前面を写しているように見えるが,実は後ろ姿である.

外観のアクセントカラーと内装のアクセントカラーは同じものが使われており,緑のバスの内装は緑系である.

下の写真は1両目後ろ側から2両目の中を写したもの.2両目は前の方にはタイヤがなくて床がフラットであり,椅子の下は空間が空いている.ここで盲導犬や介助犬が寝ていることも.

2両目の後部はタイヤの部分が出っ張っており,出っ張りの上に椅子がある.手前の円形部分は連結部分であり,ここに立っていると曲線通過時にぐるぐる回る.

3両目の一番後ろはエンジンがあったりする関係で一段高いところに5席並んでいる.手前のポールにはICカード式の乗車券のリーダーがある.

下の写真は(紫系のバスの)1両目の後ろから運転席方向を写したものである.手前の椅子左右2席ずつはタイヤハウスの上に配置されており,かなり「標高」が高い.タイヤが丸形なので,席が背中合わせになっている.ボックス席状にするためか,さらにその前の席についても「標高」が高い(タイヤハウスがあるわけではない).

左右の席間はかなり狭く,車椅子が通過できるような幅はない.通常の乗客についてもこの隙間を常々移動させるような設計ではないように見える.

丸形のタイヤハウスに席が背中合わせ…とは,こういう状態.無理矢理全席進行方向を向かせて,足の置き場に困る日本のノンステップバスよりはずっと居住性が高い.

車椅子スペースは1両目の運転席直後のドア付近に確保されており,かなり広い.この1両目のドアから出入りすることを想定している模様.写真中央奥の席はタイヤハウスの上に設置されており,席は進行方向と逆向きである.

わかりにくいが,写っている2席の向こう側は運転席であり,運転士が運賃収受等をするような設計には全くなっていない.日本のJRの電車のように客席と運転席は完全に分かれている.

収容定員は,座席40,立ち席115,車椅子2の模様.製造メーカーはベルギーのVAN HOOLというメーカで,ExquiCity 24というタイプの模様.

動力源は通常のディーゼルエンジンの他,天然ガス仕様,トロリーバスとのハイブリッドタイプ,燃料電池,電気運転等々様々なものが準備されている模様.

残念ながら,日本の大型車メーカでは真似できないねぇ.

やはり日本の公共交通は,車両の面でも遅れているかも.

 

国境を越える路面電車(2)

フランス東部のストラスブールの中央駅の地下から,D系統のトラムに乗って約30分.

ストラスブール市の郊外までやってくると,路面電車は橋を渡る.

 

橋を渡ったところはドイツのケールだ.

電停は多くの客で賑わっている.オレンジ色のはっぴのような服を着たおじさんは,どうやら券売機の操作方法を教えているようだ.まだ延伸開業して半年経過していないので,慣れない利用者が多いようだ.

この多くの客は何の目的でケールにやってきたのか不思議だったので,後をついて行ってみた…

しばらく歩くと,そこには,ケール市の中心商店街があった.

ここの「国際列車」は日常生活レベルでケール市とストラスブール市を結びつけたわけやね.

 

国境を越える路面電車(1)

日本ではあり得ないが,欧州の国境附近の都市が路面電車整備をして,その路面電車網を拡大させてゆくと端っこの方で国境を越えてしまうことがある.

割と古い方ではここ.

ドイツ西部のザールブリュッケン.市街を抜けると,ドイツ鉄道の線路を走り…

終点駅の手前に「RFF」の看板があり…

そして終点駅は…

フランスの駅だ.路面電車だが国際列車である.

元々は国鉄列車が走っていたような区間なので(実は本数は少ないが,まだ毎日数本は走っている),路面電車でありながらザールブリュッケンとサルグミヌ駅間はレールパスが有効だったりなんかする.

 

この踏切が閉まるのは列車通過の●分前

日本の大都市には「開かずの踏切」があり,何かと都市計画上の大きな門痔になったりなんかする.抜本的に解決するには,何百億円もかけて立体交差にするわけで,結構やっかいだ.

さて,ドイツのザールブリュッケンから郊外方向に近郊電車S1で15分ほど乗ると,Kleinblittersdorfという小さなまちの駅に達する.試しに降りてみる.

近郊電車と言っても路面電車がそのまま郊外鉄道線を走るTram-Trainだ.終点まで乗り続けると,国境を越えてフランスのサルグミヌまで行ってしまう.

写真には踏切が写っており,橋を渡った向こうの奥の教会はフランス.こっちはドイツ.そんな場所である.この踏切,警報器が付いているものの,音は一切発することなくいきなり赤ランプが点滅して遮断機が降りる.

さて,何がやってくるのかなぁ…私の乗る電車まではまだ6〜7分もあるのに.

何も起こらない.

2〜3分経過.

何も起こらない.

仕方がないので,電車に乗るべくホームに向かうと電車がやってきた.

そして,電車がホームに着くと,電車の後方に位置するあの踏切が上がった.

こんな場所で,数分も前から遮断機を下ろしているわけだな.んんん〜

 

ドイツ西部の南北幹線鉄道ルートの改良

鉄道工事の失敗でエラいことになっているドイツ西部の南北幹線鉄道ルートであるが,何が行われてるんだろうか.

全体の路線としては,フランクフルトからマンハイム,カールスルーエ,フライブルクなどを経由してスイスのバーゼルに至る路線である.

そんで,工事の事故の発生したラシュタット附近では,左のような現在線の線形を右のように約15kmにわたって付け替えようとしている模様.変更する部分の北部では,住宅地付近の路線を高速道路の横に付け替えるとともに,急曲線のあるラシュタット駅については,附近の市街地の地下をトンネルで抜け,そして件の陥没事故のあった附近で現在線に戻すという工事のようである.

ラシュタット駅はICEが停まる必要のない駅なので,こういう路線改良(というかバイパス線の線増)ができる.

実は南部ですでに似たような改良工事が行われており,左のような旧線に対しライン川の沿ったぐねぐねの区間をバイパスするように,約5kmのトンネルでバイパスし,走行距離も約3km短縮するという事業が実施され(右),既に供用されている.

こうやって,ドイツでは日本の新幹線の線路のような高速新線の建設工事が行われなくても,ふと気がつくと200km/h以上で走行できる路線が徐々に増えてゆくという具合である.地図だけ見て「ドイツはICE用の新線整備が少ない」などと思っていては実態の認識を誤る.

日本は…方策が硬直化してるよね.