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日本に本物のBRTは出来るか?(連節バスは十分条件か)

日本では最近,「連節バス+PTPS=BRT」という定義をしているのではないかと思われるが,やはり違和感がある.特定の目的地まで多くの客を運ばなければならないのなら,「長〜〜〜いバス」としての連節バスはありだとは思う.
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他に写真がないので,ここばかり出てきて恐縮だが,特にここがどうということは無くて,これはこれでとにかく数を確保するという所期の目的は達していると思う.
忠節バシを連節バスが走るご時世か.
しかし,LRTのゴムタイヤ版交通機関として見ると,運転席横のいつもの「関所」は相変わらず存在しており,降車にやたらと時間がかかったり…
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通行のプライオリティーが低くて,昭和40年前後の各都市の廃止直前の路面電車を思い出す風景にはやはり違和感がある.これは果たして最新鋭の都市交通か…といわれると,やはり違う.「長〜いバス」だ.
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確かに,たくさん運ぶことができるようになると,交通計画の教科書では「中量輸送機関」の範疇に分類されるのだが,それを目的とした連節バスをBRTと呼ぶなら,それは本来の意味とは違う.もしそうなら,鉛直方向に積み上げたこれもBRTということになるけど,違うだろ?
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茨城県のBRT(かしてつBRT編)

2007年に廃止になった鹿島鉄道の代替バスは「かしてつバス」と呼ばれる.運行はかしてつではなく,関鉄グリーンバス.その路線の一部が鹿島鉄道線の路盤を転用したバス専用道になっており,「かしてつBRT」と呼ばれているらしいので行ってみた.


常磐線の石岡駅から出て,このあたりから専用道路に入る.

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石岡南台駅.かつてのプラットホームを転用しているように見えるが,そうではなくて,左側はバス停標識が停留所本体.右側は屋根付き.
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元の鹿島鉄道線時には使われていたであろう跨線橋とその下の駅舎(?)は,今は使われていない.ハードウェアは作る金があっても運営に手厚い保護をすることができないのが日本のシステム.
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所々に道が太くなった行き違い箇所が有り,上下便が交換する.
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一般道との交差部分は「踏切」が付いているが,専用道の優先通行を確保するというものではなく,一般道から誤って専用道に車両が進入しないようにするだけである.バスが近づくと遮断機が上がるが,バスそのものは原則一旦停止のようである.もっとも,交差する一般道の交通量が少ないので,このような交差点が遅延の原因にはならなさそう.
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道路としては貧弱だが,便数も少ないので,さほど交換待ちも問題にはなってなさそう.並行する国道(下の2枚目)が,時間帯によっては渋滞するようで,それなりに効果はある模様.なお,運賃は普通のバスなみ.運行本数は残念ながら少ない.
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ここで終点.
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専用通路が確保され,定時性確保の努力がされているのは評価できるが,本数が少なくて1本逃すと待ち時間が長い.値段も安くは無く,海外のLRTのゴムタイヤ版だと思い込んではいけない別物である.廃止鉄道線の代替バスとするとまぁOKか.高頻度運転も,低廉な運賃も,中心市街地活性化も,P&Rも,信用乗車etc…もなく,これをBus「Rapid」Transitと呼ぶのは個人的には若干抵抗有り.

KIX-エクスプレスのラフ検討

関西国際空港へアクセス鉄道としてリニアを整備せよ,という構想がある.おそらく上海のトランスラピッドに感化されたものだと思うが,果たして芽があるかどうか,ラフなフィージビリティスタディをしてみよう.起点を新大阪にすると,関空までの最短の鉄道延長は約50kmであるので,この数字を使ってみる.
最高速度を500km/h,加速度および減速度を山陽新幹線なみの2.5km/h/sとすると,加減速に要する時間は各200秒である.このとき,加減速時の平均速度は250km/hであることから,加減速時に要する走行距離は各々13.9kmと計算できる.残りの22.2kmが500km/hでの巡航となり,これに要する時間は160秒である.結局,合計560秒(=9.3分)が全区間の所要時間となり,特急はるかの48分と比べて38.7分の短縮である.建設費は東京-大阪間が約9兆円なら,1/10程度の距離なので9000億円といったところか.
次に,加減速度を阪神電車なみの4km/h/sにしてみると,加減速に要する時間は各125秒,加減速時に要する走行距離は8.7km,500km/hでの巡航距離は32.6km,走行時間235秒となり,合計485秒(=8.1分)が全区間の所要時間である.特急はるか比39.9分の短縮.
じゃぁ,通常タイプの新幹線ならどうだろうか. 最高速度を250km/h,加減速度を2.5km/h/sとすると(実際には速度が上がると加速度が落ちるが),加減速に要する時間は各100秒,加減速時に要する走行距離は3.5km,250km/hでの巡航距離は43km,走行時間619秒となり,合計819秒(=13.7分)が全区間の所要時間である.特急はるか比34.3分の短縮.建設費は最近の整備新幹線の見積である100億円/kmをもとにすると,5000億円か.
ついでなので,最高速度160km/hの在来線タイプならどうだろうか.加減速度を2.5km/h/sとすると,加減速には各64秒,その間の走行距離は1.4km,160km/hでの巡航距離は47.2km,走行時間1061秒となり,合計1189秒(=19.8分)である.特急はるか比28.2分の短縮.建設費はあんまり安くはならないので,5000億円程度か.
まとめると,こうなる.さて,どれを選ぶ?

建設費 所要時間 短縮 △1分あたり
リニア新幹線500km/h 9000億円 8.1分 △39.9分 226億円/分
通常新幹線250km/h 5000億円 13.7分 △34.3分 146億円/分
在来線160km/h 5000億円 19.8分 △28.2分 177億円/分

新聞記事の精度(京都民報編-その3)

タブロイド紙の件の続きである.コメントまだ1面だが,この面以外は独自の内容は書かれていないので,1面だけコメントすれば充分なレベルの内容である.
駅建設関係部分についても,市が噛みつかれているようだ.ポイントは,駅建設に関する費用負担である.この紙に限らず,公共事業の費用が発生することは,これ即ち全て悪であるという前提で記事が書かれることが多い.この記事も例にもれていない.
公共事業が是か非かを判断するのは,費用に見合った効果が生じるか否かであって,支出が生じることが全て悪ではない.支出ばかりで何の効果も出なければ悪い事業,支出に見合った効果が出ればいい事業.非難する場合は,何の効果も出ないということを(悪魔の証明にならない範囲で)それなりに説得力のある理由を述べてから非難する必要がある.・・・で,この記事はというと,市がまだ説明していないことだけを以て「マイナス」と結論づけている.論が飛んでますが.現時点で非難できるのは,”説明を”までですね.「マイナス」かどうかは調べたり検討したりしてないので,言えないよね.
残りの8面,9面にも記事が続くらしいが,8面は主に以下の話のダイジェスト,9面はリニア計画に反対している学者のお話のダイジェストなので,以下省略.
詰まるところ,このタブロイド紙は,茶化した記述+浅い分析+他記事のダイジェストの構成のようで,的確な独自分析には至ることが出来なかったようである.(まぁ,週刊誌なら,そんなもんか.)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(輸送力編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(失敗尻ぬぐい編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(地震対策・復興編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(環境編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(安全確保編)
リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(番外編+まとめ)

どうしてできない新幹線(鉄道「政策」の上下分離を)

(ずいぶん昔だが)鉄道事業法が改正になって,線路の保有(第三種)と列車の運行(第二種)が別事業として実施できるようになった.もちろん,両方一体でもできる(第一種).いわゆる「上下分離」である.最近はLRT事業を睨んで,軌道事業でも似たようなスタイルが導入できるようになってきている.
ところで一方,トラック事業とかバス事業はどうだろうか.もちろん道路を運輸業者が自ら造って,その上でトラックとかバスを運行しても構わないのだが,通常はそんなことはせずに道路は公共(あるいは,それに近い事業体),走行する車両は事業者という分担が普通である.
さて本題である.鉄道の重要性が見直されていると言われている昨今だが,その割にはさっぱり整備が進まない.正便益不採算(*)が原因だとかなんだとかいろいろ言われているが,政策の上下分離ができていないことも原因ではないだろうか.経営の上下分離にあらず.
(*)社会的には事業実施した方がメリットが大きいことは明白なのだが,企業会計的には赤字になるので民間事業のような形態では成立させにくい,という話.
バス事業だと,インフラ部分の整備は公共で道路や街路などのインフラ整備部門のお仕事.その上は民間のバスが走り,これの管理・監督は公共の運輸部門のお仕事である.じゃぁ,同じようなシステムを鉄軌道にも導入したらどうだろうか.つまり,インフラ部分の整備は公共のお仕事なんだがインフラ整備専門部門のお仕事.その上を走行する車両等のシステム管理は,同じく公共のお仕事なんだが運輸システム専門部門のお仕事.
ちなみに現在の鉄道関係では,下物のインフラ整備部分も上物の運輸そのものの管理も同じセクションのお仕事.わが国でも交通基本法が導入され,通路概念に近いものが入ってきているので,通路確保のお仕事と,それを使って実際に運ぶお仕事を概念的に分離して,実際の政策も分離した方がいいのではないだろうか.
国土交通省が発足してもうすぐ15年.未だ何も変わらないというのでは,省庁再編の意味があったのか?

どうしてできない新幹線(「しない」シリーズ編)

  • Question:これ,なーんだ?
  1. 政策立案しない
    • 40年前の政策のまま.国土政策が大きく変わっているのに,鉄道政策はそのままでいいのか?
  2. 財源確保しない
    • 特定財源無し.他の資金確保の案なし.新幹線建設の純粋な国費は公共事業支出の1%程度です(国家予算の1%ではありません).
  3. 予算確保しない
    • 予算要求は前年度踏襲すればいい方で,工事が一段落することを理由に減額要求すらしかねない状況にある.国土強靱化のような「千載一遇のチャンス」も見す見す逃しつつある.
  4. ”ご説明”しない
    • キーパーソンへの働きかけしない.国会答弁もしどろもどろで,よく聞いていても,主語と述語の対応関係もよくわからない状況.
  5. 主導権発揮しない
    • イニシアチブとらないので,いろんな局面で姿が見えない.
  6. PRしない
    • 本来は鉄道の社会的重要性の広報を率先してしなければならないはずだが,不十分.Webサイトは最近ちょっとマシになったが,まだ貧弱.
  7. 工夫しない
    • 旧来の手法に凝り固まっており,新しい鉄道システムなどの工夫がほとんどない.
  8. 調査しない
    • 自ら調査はせず,外郭団体や民間会社まかせ.
  9. 設計しない
    • もちろん,設計も外郭団体や民間会社まかせ.
  10. 施工しない
    • 当然だが,工事も外郭団体や民間会社まかせ.
  11. 運営しない
    • まぁ,当たり前だが民間会社のお仕事なので.
  • Hint:業界では「お公家様」と呼ばれているらしいです.
  • #「しない」が入ってないけど,「鉄道に対する愛情がない」とか「国民の方を向いていない」とかも付け加えてもいいかも.管理するだけで,このすばらしいものを拡げよう,活用しようという姿勢が感じられないんだが.ここが活躍しなければ,他には該当するセクションがないんだが.

新聞記事の精度(京都民報編-その1)

次は京都民報という左系のタブロイド紙の場合である.なるべく正しい情報を得ていただくために,(超繁忙期とか,原始的な質問過ぎる場合を除いて)新聞や放送番組等への情報提供は基本的には断わらないのでこの紙の取材にも応じた.波床の名前が出てこなくても,提供した情報に基づいて記者の独自の分析で記事が書かれていることもある.そういった中,この紙の記事は久々に見る違和感である.カギ括弧の中が編集されていることはもちろん,私以外の各所への取材結果についても切り貼りして記者に都合の悪い部分は切り捨てられているので,事実関係をまとめたというよりは,全体の主張は記者の創作意見である.…というか,週刊誌みたいな書き方なわけやね(ぁ,週刊誌か).
京都民報2014年6月15日版には…

  • (タイトル部分)「ルート変更は困難」「推進派ブレーンが明言」

…と書いてあるが,まず,「推進派」じゃねぇよ,だ.市民でもなければ府民でもなく,職場も大阪平野の端っこなんだが.この紙に限らず,マスコミはラベルを貼りたがる傾向にある.そうした方が自分の意見を書きやすくなるのでそうしたがるんだろうと思うが,そんな単純ではない.リニア新幹線全線早期開業に関しては遅れると国土の二眼構造を崩しかねないので「推進」だが,ルートに関しては特にどれも推してませんが.事実関係をなるべく正しく伝えるのが社会的使命だと思っているので,特定の立場はとってないですよ.全線早期開業以外では,国の整備計画に関する審議過程が法令の想定する過程と異なっているのでダウトだと言ってはいますが,ルートは特にどれを推進とは言ってないんですがね.(機会は少ないが)奈良県内のルートで揉めてる件について聞かれれば,奈良県内ルート各案の長所短所など説明したりしてますけど.
次に,「ブレーン」の部分だが,もし私が京都市のブレーンならば,この京都民報紙を含めて複数の新聞や通信社などのブレーンということにもなってしまう.特定の立場に対して特定の情報提供はしてないですよ.市に対して説明している内容,京都民報紙に対して説明している内容,その他で説明している内容は,質・量ともにほとんど同じです.テキトーなラベル貼り作業はやめましょう.
それから,記事冒頭のリード部分だが…

  • …(略)…しかし推進派のブレーンは「誘致は困難」と明言.…(略)…

…明言してねぇよ.カギ括弧付けて印象操作するのはやめましょう.カギ括弧は実際に口から音波として発している必要があるとともに,抜き出すなら文意が伝わる範囲にしなければならないんだが.特に「明言」と書く場合は実際にそう発言してないと書いちゃあいけません.カギ括弧の使い方は小学校の国語で習いましたよね.大幅に編集したり記者の見解にカギ括弧を付けて,意見を聞いた人が発言したかのように見せかけるのはやめましょう.
私の意見は本文の記述にある「計画変更の時間的余裕がない」部分までが基本.計画変更のためには取り除かなければならない問題は多数あり,時間も限られていることは確かだが,それを以て誘致が「困難」かどうか判断するのは市や府ですよ.鬼の首取ったような書き方しているが「計画変更の時間的余裕がない」点については,他紙ではずいぶん前に同内容の記事が出てるんで,今さらなんだが…
1面本文最後の方には…

  • 波床氏は言います.「市が期待しているのは観光客でしょう.それなら,東海道新幹線にお座敷列車を走らせる方がよっぽど効果があるんじゃないですか.」

…なんか,悪意のある編集だな.「言います」と書くなら,カギ括弧内は無編集が原則だが,やはりこの部分も編集されている.編集権があっても,主旨の変わる変更は御法度であるが,後半部分を切り捨てて主旨を変える手法のようだ.「よっぽど効果がある」などという比較発言もしたことがないので,これは記者の創作である.フルで書くなら,こうだろ.

  • 観光客に期待しているのかもしれないが,将来的に観光都市として生きてゆくなら,東海道新幹線に観光列車を走らせるだけでも十分でしょう.ですが,京都は奈良とは違い,政令指定都市であり,多数の産業もある.リニアのルートから外れると,長期的には衰退する可能性もある.

記者の要約能力が低いか,話を聞いてないかのどちらかやね.波床発言風部分についてまとめると…

  • 多様な意見は大切だが,ペンで勝負しているなら,情報源にも敬意を表しましょう.ジャーナリストが創作してはいけません.”主旨は変えてない”と思っているのなら,それは聞いた話を要約する能力が低いのでしょう.肯定するにしても,否定するにしても,正しい情報に基づいて,正確に分析しましょう.論の展開がいい加減だと,週刊誌の記事みたいになっちゃいますよ.(ぁ,週刊誌か)

その他にもツッコミどころの多い記事なので,続きはまた後日.

リニア新幹線整備の理由(どうしてこうなった編)

リニア新幹線の計画過程に限らず,残念ながら,わが国の近年の新幹線計画は総じてグダグダである.
本来なら社会の状況が変わるたび,いや,法令に書いてあるとおりに国土整備の方向性などが変わるたびに計画を見直して行かなくてはいけないのだが,猪突猛進,いっぺん決めたら方向が変えられない.突っ走っているならまだしも,行き詰まっていても方向が変えられない.あらら,困った,困った.(いっぺん決めたことを再検討すると,議論噴出しそうで怖いから手を付けない,パンドラの箱だと思ってるのだろう.)
いわゆるPDCAがまわってない状態である.Plan-Do-Check-Action…全国大学の土木系教室を悩ませているあのシステムである.見事に存在しない.企業の方には,ISO9000シリーズといった方が分かりやすいか.
政府担当部署の内部的にはOKなのかもしれないが,昨今の世間的にはNGな事務システムであ

リニア新幹線大阪延伸前倒しへ…で終わりじゃないよ

こういう話がある.
<新成長戦略>リニア中央新幹線 大阪延伸前倒しを明記へ (毎日新聞) – Yahoo!ニュース.
「健全経営と安定配当が大前提」 リニア大阪前倒し開業論でJR東海社長 – MSN産経ニュース.
当初のリニア新幹線の大阪延伸計画は2045年.もちろん,大阪近辺では「もう死んどるわ」という感想を持って受け止められていたが,まずは(同時とは言っていないが)早期開業を目指す国の方針が出てきたことは喜ばしいことである.
ところで,早期開業ばかり注目を浴びているが,名古屋から西の区間については,整備計画の審議段階において大阪まで繋ぐことの重要性については確認できているが,その経路については十分な審議がされておらず,唯一の論拠が1973年に決めたから,だけである.
もちろん,国の決定は重要なのだが,何度も書くように当時の政策背景は新全総であり,昔風の言い方をするのならば新幹線のネットワークを全国に拡げる「新幹線の建主改従」であった.いっぽう,リニア新幹線は当の鉄道会社が声高らかに主張するように「バイパス」であり「改築」である.昔風に言うなら「新幹線の改主建従」である.世の中の政策も1970年代の高度成長の産めよ増やせよの時代ではなくなっており,同じ国土政策の方向性とは言い難い.
要するに,名古屋と大阪という両端はともかく,途中の通過経路はほんとにそれでいいのか,議論されていないのが問題だということである.現在の状態は言葉は悪いが名古屋以東の議論にくっついて西側の話も通ってしまった状態だといっても過言ではない.
建設前倒しの理由が「新たな成長戦略」であるならば,どういう経路が成長にとって最適であるのかは今一度考えた方がいいだろう.1970年代のように新線建設して新駅つくれば周辺に無条件で機能が張り付く時代ではなくなっている.
もし,この辺の舵取りを間違えて既存の大都市が衰退などすれば,「成長戦略」ではなくなるし,推進した関西の議員さん達は関西全体に目配せできるだけの慧眼を持っていなかったということになるし,東西間の輸送を一手に引き受けるんだと意気込んでいたはずの鉄道会社は沿線の顧客の利便を確保することが出来なかった田分け者の誹りを受けることになるし,いずれも歴史に名を刻んでしまうことだろう.(悪い意味で)

リニア新幹線反対論は妥当な指摘か?(ゆっくりしろ編)

気になる反対論には,こういう意見もある.論点部分としては,こうである.

  •  しかし、環境評価書を提出したとはいえ、未解決の課題や不安は数多く残っている。このまま突き進んでよいのかと、思わずにはいられない。

ふむふむ,それで…?

  •  例えば、工事によって大量に発生する残土への懸念がある。東京−名古屋区間は南アルプスを貫通し、9割近くが地下かトンネルを通る。「土」より「岩」に近いものも含む残土が約5680万立方メートル(東京ドーム46杯分)発生すると言われる。

記事には具体的な部分としてこれしか書かれていないので,これが最重要項目だろうか?

  •  ところがその置き場や処分法はほとんど決まっていない。…(中略)…具体的なあてが示されているわけではない。

新聞社が懸念を示さなくても,工事実施計画の認可が待っているので,残土の処理が決まってないと許可が下りないでしょうねぇ.残土処理がいい加減で,大目玉食らった鉄道会社も過去にはありますので.…それで…?

  •  残土は、土砂崩れを起こす危険があるほか、運搬の過程で周囲の動植物や景観に影響を与える恐れもある。本来なら、残土の処理計画を明確にし、それが環境上、問題のないことを具体的に確認したうえで評価書をまとめるべきだが、そうした作業は工事の認可後となる見通しだ。

…? 誰の見通し? 新聞社の見通し? そういう予定が公表されたの? そこ大事なんだけど.そこ明らかじゃないと,結論部分が導けないんだけど.肝心な部分ぼかさないでね.新聞社の憶測? 誰の見通し?

  •  一度、走り出せば…(略)…である。「着工ありき」ではなく、環境、安全、経済合理性など、幅広く、長期的な観点から、精査を尽くすべきだ。認可決定前に、国会で徹底審議を行ってもらいたい。

環境と,安全と,経済合理性は,名古屋から東部分については整備計画に関する答申を出す段階で審議されてますが…??? 新聞社がよくわからないから,もういっぺん国会でやって欲しいという話かな? 公表資料読めば書いてあるけど.名古屋から東部分は.(名古屋から西部分は,かなり曖昧,というか議論はほとんどされていない)
以下,米国への売り込みの話が続くが,話が発散するので略.

  •  一方、自民党内では関西選出の議員らが、45年に予定されている大阪までの延伸を、国の資金を使って前倒しするよう政府に求めた。JR東海が総工費9兆円を見込む国家的巨大事業だ。長期の視点に立って、冷静に再点検しても時間の無駄にはならないはずだ。

長期の視点に立つと,大阪延伸が20年弱遅れることが看過できないから,急いでいるわけだが.急いでいる理由知らないのかな,この新聞社は.名古屋-東京間もゆっくりできない理由があるんだが.こっちも急いでいる理由知らないのかな,この新聞社は.